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「鬼のウォン売り」が止まらない…地獄の韓国経済に世界が実力低下を危惧する

プレジデントオンライン / 2020年6月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ca-ssis

■海外投資家による「韓国売り」が始まった…

通貨ウォンは、年初から新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化を背景に、ウォン安傾向にあります。韓国と言えば、コロナによる死者数を300人以下と感染抑制に成功した国という評価があるものの、現在は再び、新規感染者が5月28日は79人、29日に58人が確認されました

しかし、第2波はどの国でも想定されており、第2波による経済への悪影響は韓国に限ったことではありません。進行するウォン安はコロナとは別軸で考える必要があります。つまりこのウォン安は、韓国経済そのものに対して、成長性を感じられない海外投資家による「韓国売り」なのです。

韓国経済は、1965年の日韓基本条約をバネに成長した背景があります。日本の賠償や借款など数億ドルに及ぶ「資金」により経済発展の基礎を固めつつ、さらに、日本からの「技術援助」で国際競争力を付けることができたのです。その結果、韓国は輸出特化の経済戦略を築いてきました。しかし、この輸出競争力にいま、陰りが出ています。それは、中国からの追い上げです。

韓国はなぜ、置き去りにされたのか。それは、韓国自身が日本を基盤にして近代化してきたという認識の欠如から、いまの状況に陥っていると言えます。

■“反日”による空白時間が韓国経済のツケに

中国は2025年までに世界の製造強国の仲間入りを目標にしており、2018年は15.5%にすぎない半導体自給率を25年までに70%に引き上げるという計画を示しています。5G、半導体、IoT、自動運転、EV(電気自動車)、AI(人工知能)の全ての分野で中国は主役になることを計画しています。その未来は、もう目の前に迫っています。しかし、韓国はこの全ての分野で出遅れています。基幹産業である半導体ですら、中国に取って代わられるところまで来ています。なぜ、韓国はテクノロジーの進化が遅れたのでしょうか。そこには「反日」が関係しています。

李明博大統領時代から朴槿恵大統領の時代、そして現在の文在寅政権でも日本に対しては厳しい姿勢を取り続けています。特に、李氏は竹島上陸と日本の天皇への謝罪を要求し、朴氏は慰安婦問題で日本の政府への謝罪要求を行いました。世界で、技術革新のスピードが一気に早まった、ここ12年の間に、韓国政府は日本に対する“抗議活動”に労力を費やし、韓国は日本からの新産業の情報を得ることができなかったことが、韓国経済の停滞を招いた一つの要因となっています。

■香港問題による米中対立の激化は韓国経済に打撃

貿易問題から始まった米中間の摩擦は新型コロナウイルスによって強まり、米国はナスダック市場の新規上場ルールの厳格化により中国企業の「締め出し」に動いています。さらに、米中対立の最前線となった香港をめぐっては、中国が香港での反政府デモなどを取り締まる「国家安全法」の導入を決定したことを受け、米中の対立はさらに深まる見通しです。韓国は対中輸出が約26%を占めており、中国依存度が高い構造になっています。さらに、GDPの70%強を輸出が占めるほど貿易依存度が高い国にとって、世界の2大大国である米中の対立の激化は韓国基幹産業である、「機械と電子部品」「輸送機」への打撃が大きい点も「韓国売り」を加速させているのです。

『朝鮮日報』(2019月12月18日)「韓国1世帯当たり家計債務が8000万ウォンに肉薄」では、韓国統計庁、金融監督院、韓国銀行が発表した「2019年家計金融・福祉調査結果」によると、19年3月時点での韓国の1世帯当たりの家計債務が前年比3.2%増の7910万ウォン(約744万円)となり、8000万ウォンの大台に迫っていると伝えています。債務の増加ペースは可処分所得の伸びの2.7倍にもなりました。韓国は、不況の影響で高所得の自営業者による所得が減少しています。

■韓国の格差社会の誕生

韓国は、5人に1人が自営業であり、韓国国民の家計が圧迫され、消費者心理が冷え込み、国内の内需が伸び悩んでいる構造になっているのです。実際に、00年代後半から、一生懸命に働いても、月額10万円も稼げないという、最低限の生活を送るための収入を得ることができないワーキングプアが問題になります。

韓国の格差社会が生まれたきっかけは、1997年後半に韓国を襲った「IMF危機」がきっかけです。97年はアジア通貨危機が起きた年で、この通貨危機の原因は米国が短期金利であるFFレートを引き上げたことによって、新興国に向かっていた世界の資金が一斉に米国に戻り始め、韓国も通貨危機に陥りました。財政破綻の危機に直面した韓国政府が、IMFから多額の資金援助を受けるため、国家財政の主権をIMFに譲り渡したのです。そこから、這い上がるために、1998年2月に就任した金大中大統領は、IMF体制からの早期脱却を目指しました。ここで、資本市場の開放、公企業の民営化、そして労働市場の柔軟化およびリストラ強行など、新自由主義的な政策を行うことによって、2001年8月には韓国はIMFから借り入れた資金を早期に返済し、経済主権を取り戻しています。しかし、その過程で中産階級が崩壊してしまい、国内の格差が進んでしまったのです。

■韓国財閥は低い労働生産性の温床

韓国財閥は、中小企業の製品を買いたたくことで利益を伸ばしています。その結果、韓国では中小企業は成長が見込めない状態になっています。ニッセイ基礎研究所の『韓国の貧富の格差がさらに拡大―持てる者の土地資産は急増、持たざる者の所得は大きく減少―』(2019年3月14日)のレポートによると、韓国の5大財閥グループが保有している土地の帳簿価格は07年の23.9兆ウォンから2017年には67.5兆ウォンに43.6兆ウォンも増加しています。一方、統計庁19年2月が発表した「2018年第4四半期家計動向調査」によると、所得下位20%世帯の1カ月名目所得は123万8200ウォンで1年前と比べて17.7%も減少したことが明らかになったとしています。

中小企業やベンチャー企業、また大企業の企業内起業がイノベーションを起こすことで、経済は活性化されます。韓国は財閥だけが利益を得る構造から抜け出すことができずに、イノベーションが生まれる土壌が育っていないのです。さらに、韓国には深刻な人口問題があります。現在の韓国は、日本以上の少子高齢化が深刻化する可能性があるのです。韓国統計庁のデータによれば、早ければ19年の5165万人をピークに韓国の総人口は減少に転じる見通しです。本格的な労働力不足による時代が迫っているのです。持てる者と持たざる者の間に広がる格差をどのように縮めるか、韓国政府が真剣に向き合わなければならない問題なのです。

■韓国の外貨準備高の減少

最後に、コロナショックを受けた金融市場でのリスク回避の強まりによって、新興国からの資金流出について言及します。IMFのデータを元にフィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の調査によると、2月から3月にかけて外貨準備高の減少が大きかった国・地域は、ブラジル(193億ドル)、トルコ(156億ドル)、インドネシア(95億ドル)、韓国(90億ドル)、香港(78億ドル)などでした。総じて脆弱な新興国は、外貨準備高を大幅に減少させてしまったように見えます。

一方、外貨準備高の増加が大きかった国は、日本(1810億ドル)、ドイツ(428億ドル)、フランス(255億ドル)、イタリア(121億ドル)、スペイン(104億ドル)などです。外貨準備高の変動を見ても、あらためて、明暗が別れたことがおわかりでしょう。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。

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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)

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