衝撃告発「コロナより金!」なぜ女帝小池はホストを殴るのに、満員電車には優しいのか

プレジデントオンライン / 2020年7月7日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/greir

■満員電車、会社、学校、ホストクラブと何が違う?

「じゃあ満員電車はどうなんですかね」

学生ホストのセイヤさん(仮名)が不満そうにつぶやく。梅雨寒の時期、歌舞伎町の夜明けの風が心地いい。私は店にいるより、こうして路上で話すほうが好きだ。

「だって俺、ホストだけど満員電車にも乗るし、学校も始まったから授業にも出てます。普通に生活してます。俺たちがコロナうつしてるなら、電車禁止にしたほうがいいですよ」

セイヤさんはまだ学生で、空いた時間でホストをしている。ホスト業界もガッツリ系だけではないし、昼キャバならぬ昼ホスの2部営業制を敷いている店もある。

「確かに店も先輩も全然気にしてないですよ、コロナ。気にしなきゃいけないのはわかってます。だけどなんで俺たちだけ晒すんですかね」

歌舞伎町のホストの大半はコロナになんか興味ないし、金にならないことはしない。ホストと話をしても大半は、裏の話は何も知らないし、知っている人は口をつぐむ。これはキャバ嬢も同じで、本業ではないセイヤさんのような学生さんが一番話してくれる。本職はうかつに本音を語らない。まあもっともな話だ。

セイヤさんが言いたいことは、ホストクラブやキャバクラがやり玉に挙げられているが、満員電車や再開した会社、学校はどうなのかということだろう。

「全部が歌舞伎町とか、全部がホストなら言われても仕方ないけど、テレビで名指しってむかつきますね」

■「夜の街」の住人だって満員電車に乗る

クラスター多発の歌舞伎町、とくにホストクラブはその悪目立ちと好奇の目から東京アラートのやり玉に挙げられた。もっとも、その東京アラートそのものが6月11日に解除され、19日には接待を伴う飲食店の自粛も解除された。都は特定業種を名指ししたにもかかわらず、結局のところ全面解除したことになる。パチンコに至っては結局何もなかったのに世間の非難を浴び続けた。一体何だったのか。揚げ句の果てに連日50人以上の感染者が確認されている。それどころか100名を超えている日もある。

「客だって夜の女ばかりじゃないです。普通のOLさんだっています。みんな会社行ってますよ。リモートの人なんて元々来ませんし。コロナなのになんで出社なのって愚痴ってますよ」

出社は嫌だがホストクラブには行く。本来、人間は自分の欲望に正直な生き物だ。一連のコロナ禍でそれらを嫌というほど見せつけられた。そんな彼女たちが出社する。職場クラスターも記憶に新しい。

「キャバとか風俗だってそう、普通の子の小遣い稼ぎですよ。だからそいつらも電車に乗るし、普通に生活してるし、会社に行ってるのもいる」

それはそうだろう。ガッツリ金と女の野望に染まった専業ホストを除けばバイト感覚、キャバ嬢、風俗嬢に至ってはOLやフリーターの兼業も多い。主婦や専門職、食えないフリーランス(それは役者だったり、クリエーターだったり)のシノギだったりする。そしてそんな女の子も出社する。コロナかどうかなんて、誰にもわからない。

■ホストも学校に行くし、色んな県から通っている

「俺も再開したんで学校行ってます。満員電車にはサラリーマンもOLも、夜の仕事もいます。車で来てるホストは稼いでるホストだけ、みんな寮の奴以外は電車ですよ。なのに満員電車は絶対責めませんよね?」

確かに、この一連のコロナ騒動でマスコミ、とくにテレビが決して触れなかったのが満員電車だ。もちろん緊急事態宣言中の車内はガラガラだったが、都県をまたぐ移動の自粛が叫ばれる中でも首都圏の在来線はおおむね平常通り、都心および隣接県にコロナかもしれない人を運んだ。

「夜の街の人間だって東京だけじゃない。埼玉とか神奈川、千葉とかの人もいますよ、全員都心に住んでるわけじゃない。実家暮らしもいます。東京の会社だってほとんどは埼玉とか神奈川、千葉でしょ、同じじゃないですか」

「夜の街」なる感染者のみ具体性をもって発表されるが、現実には感染経路不明を含めその他「謎の感染者」も存在する。発表の仕方も含め、未知のウイルスとはいえあまりに大衆迎合ではないか。これは取材後の話だが、6月29日に埼玉県知事が「東京の飲食店の利用自粛を」と呼びかけた。埼玉のビジネスマンの大半は都心に勤務しているといっても過言ではない。国が非常事態宣言を解除したいま、そんなことを言われても経済活動のただ中にいるサラリーマンをはじめとした労働者は困るだろう。全員飲食店で罹患(りかん)したわけでもあるまいし、正直よくわからないパフォーマンスだ。

■クラスターの原因も予想にすぎない

「在宅の人とか地元で働いてる人はいくらでも言えますよね、なんか嫌だ」

まだ若いセイヤさんの上滑りは仕方のない話、それでも言いたいことはわかる。「砂漠のインド人は魚を食わぬことを誓う」というゲーテの格言どおり、現代人も砂漠のインド人だった。ネットを中心にここぞとばかりに地方マウント、在宅マウントで大都市圏の人々やそれでも出勤しなければならない職業人、そして自分には必要のない娯楽の従事者を非難した。

それでもホストクラブなど夜の店のクラスターが目立つのは確かだ。やはり飛沫感染、密室での長時間の会話は感染原因のひとつだろう。基本、不特定多数がベラベラしゃべらない車内や密にならない屋外、いま私とセイヤさんのいる歌舞伎町の路上のような、こういった開放空間でクラスターは発生しづらいと考えていいだろう。ましてや私もセイヤさんもマスクをしている。また密閉空間の飲食でも牛丼屋や立ち食いそば屋のように黙々と食べるようなところでは発生していない。あくまでマスクをせずに密閉空間で長時間のおしゃべり、これが一番まずい。

「でもそれも予想ですよね、わかんないから言ってるだけで」

■結局コロナよりカネ、命なんてピンとこない

セイヤさんはイラついているようだ。そして彼自身の事情を話してくれた。

「うちは仕送り頼れないんで、全部俺が稼いでるんです。奨学金の返済って厳しいんですよ、闇金かってくらい厳しいです。貧乏人は大学行くなって言われりゃそれまでですけど、俺は行きたいんです。それには金になる仕事しかないんですよ、誰も助けてくれないしね」

奨学金は借りる先にもよるが、容赦のない請求や取り立てが横行していることは私も知っている。その多くは委託された債権業者によるものだ。債権業者の多くはかつての消費者金融の残党やそのノウハウを手にした連中で、大手企業の名前だけ冠した孫会社、ひ孫会社で好き勝手している。「債権管理回収業に関する特別措置法」に基づくものだが、改正してさらに強化しようと一部議員および業者が結託している。

「でもそんなのでも借りなきゃしょうがない、返さなきゃしょうがないんですよ。コロナより金です。命なんてピンときません」

若者の正直な気持ちだろう。私だって20代の頃は生き死になんて考えもしなかった。程度の差こそあれ、生き死によりも金と仕事と遊びである。コロナ禍はせっかく好転しつつあった日本の若者をも苦しめようとしている。それは団塊ジュニア、氷河期世代の苦しみともまた違う苦しみかもしれない。しかし私たちが苦労したからと、彼らに強いるのも筋違いだ。それにしてもホストクラブのクラスター取材が若者の貧困話となるとは。

■もう打つ手はないと分かっている

「奨学金返してる学生は多いですよ。ホストもそうだけど、風俗嬢にも多いんじゃないかな」

人間はそれぞれの事情で、それぞれの場所にいる。コロナをまき散らすな、あれを規制しろ、これを禁止しろと声高に叫んだって疫病を抑え込めるわけもない。

「無自覚なんですよね、罹ったかなんてわかんないし。だから買い物はするし飲み食いもするし電車にも乗る。女とも会います」

結局、セイヤさんはどうすればいいと考えるのか。

「どうにもなんないでしょ、治す薬とかないと。俺たちが考えることじゃないです。ホストクラブに来る子の愚痴聞いてると全体朝礼とかで集まったり、狭いとこで会議とか、何百人も1箇所でテレアポしてるとか、そんなのばっかりですよ。どうにもなんないけど稼ぎたい、みんな本音はそうなんじゃないの?」

乱暴な言い方だが実際そうだろう。かといって日本は経済的自由権を侵害できるような国ではない。アメリカ同様、日本はコロナを抑え込めず、それなりに共存しながら経済活動をするしかない。連日クラスターが発生したとしても。

■クラスターでも大して死んでないって、みんな思ってる

「クラスターでも大して死んでないからいいんじゃねって、みんな思ってるっしょ」

それは緊急事態宣言を全面解除し、感染者が増加しても再宣言する気のない国の姿勢にも表れていると言ったら言い過ぎだろうか、仮に緊急事態宣言を再宣言したとして、協力するにも国民のほとんどは経済的に限界だろう。セイヤさんの暴論に同調したくはないが、多くの人の本音かもしれない。コロナが心配なら自粛を続ければいいし、食ってくことを優先するなら働けばいい、遊びたいなら遊ぶ、それぞれがそれぞれを非難するだろうが、これはどうにもならないだろう。歌舞伎町の現状はコロナ後を模索し、混沌のままにある日本と私たちそのものだ。

そして朝、ホストのセイヤさんは学生に戻り、新宿駅方面に消えた。通勤客と通学客のごった返す日常の中に。

セイヤさんも満員電車に乗っている——これもまた、私たちが避けられないコロナとの共生である。

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日野 百草(ひの・ひゃくそう)
ノンフィクション作家/ルポライター
本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。ゲーム誌やアニメ誌のライター、編集人を経てフリーランス。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。2019年『ドキュメント しくじり世代』(第三書館)でノンフィクション作家としてデビュー。近刊『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。

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(ノンフィクション作家/ルポライター 日野 百草)

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