「115kg→75kg」ダイエット中の僕が飲み会の前後に必ずやっていた事
プレジデントオンライン / 2020年7月10日 9時15分
※本稿は、朽木誠一郎『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■ダイエット中の飲み会、どうする?
社会人になると、学生時代のような「突然の飲み会」というのは少なくなるのではないでしょうか。もちろん人にもよると思いますが、僕の場合はむしろ、前もって計画された会食や飲み会がほとんどになりました。
会食や飲み会で困るのは、摂取エネルギーが増えがちなところ。同時に、できるはずだった運動ができなくなるため、その分より太りやすくなってしまいます。ですが、もし予定された会食や飲み会なら、それに対するプランを練ることもできるはず。一例を挙げてみます。
糖質制限は効果の予測が難しいため、このプランでは再びカロリー制限に切り替えて計算しています。
火曜日と金曜日に飲み会がある週について、プランを練ってみましょう。
僕の基礎代謝はこの時点で約1500キロカロリーほど。筋トレを続けてきたおかげで、まだ軽肥満の状態ですが、やや高めです。取材などで動き回る身体活動量をあわせて、大体毎日の消費エネルギーが2500キロカロリーくらいでしょうか。つまり、食事による摂取エネルギーが1600キロカロリー以下であれば、ダイエットは成功すると予測できます。
■前後2日間でつじつまを合わせよう
たとえば会食がイタリアンのコースだったとしましょう。前菜、パスタ、サラダ、肉料理、デザートとお酒で、1食1600キロカロリーということがあり得ます。もし他の2食を450キロカロリーの「おにぎり・ゆで卵・サラダ」にしたとしても、摂取カロリーは2500キロカロリー。差し引きで±0、太りはしませんが、やせないペースです。
しかし、です。前もってイタリアンのコースであることがわかっていれば、それを楽しみに、前日や翌日を「おにぎり・ゆで卵・サラダ」の食事で納得したり、運動量を増やしたりすることができるわけです。
もし、前後の2日で調整するとしたら、その2日は摂取と消費の差し引きカロリーがマイナス1350キロカロリーになるように調整します。これは食事だけで達成しようとするとかなり厳しい数字になるので、運動が必要です。食事による摂取エネルギーを1600キロカロリーにした上で、450キロカロリー分の運動、すなわち体重80キロ時点の僕なら、だいたい1時間ずつのゆっくりのジョギングを実施する、ということになります。前後の4日で調整なら、30分ずつの運動を追加。このようにすれば、会食や飲み会の影響を分散させていくことができるのです。
■運動時間を考えれば週2回が限度
他の日にもっと運動ができれば、さらに会食の余裕を持つことができます。逆に、1時間のジョギングを体力的に週に2回(あるいは30分のジョギングを週に4回)しか追加できないのであれば、会食は週に2回が限界であるとも言えるでしょう。
実際問題、そもそも忙しくて運動ができていないわけなので、会食は週に2回までとし、それ以外はよほどのことがない限りは次週に回すか断るようにしました。これも、ダイエットに集中する期間を決めているからできることで、期間が決まっていなければ、飲み会ができないことがストレスになってしまいそうです。
とはいえ、このように明確に数値化できれば、漠然とした「ダイエットの難しさ」からは解放されます。主観と客観の差が、ダイエット管理アプリやアクティビティ・トラッカーの力で埋まっていれば、このように「食べすぎ/飲みすぎが予想される日」があっても、つじつまを合わせることは決して、不可能ではありません。あとは、ここまでダイエットを続けてきた自分であれば「できる」と自信を持つことです。
■おいしいものを食べながらでも減量は続けられる
そうやって、目標までの40日間を走り抜けていくわけですが――正直、定期的においしいものを食べることができるので、精神的な負荷はそこまで高くありませんでした。ただし、ゆるやかな糖質制限への意識は持ち続けており、会食や飲み会のときに、炭水化物だけでお腹がいっぱいになることは避けるようにしていました。
その結果、週2回のペースで会食や飲み会があったこの時期、なんと、予定どおり10日間で1.25キロのペースで減量を続けられたのです。
ただでさえ忙しい時期に、会食が続くと「もうダメだ」と思ってしまいがちです。しかし、このように、何が問題であるかを同定し、解決方法の列挙と選択をし、計画と実施、成果の評価をする。こうすれば、「会食があっても、前後でつじつまが合えば大丈夫だ」と思うことができて、心も軽くなります。
また、進捗が悪ければ、プロジェクトの終了時点を延ばし、計画をゆるやかに延長すればいいだけです。僕の場合は、あくまで計画どおりだったので、スピードをキープしただけ。ちょっと遅れが出たくらいで、失敗ではありません。みなさんも仕事でそういうこと、ありますよね……?
しかし、ここで大きな問題になるのが、つじつまを合わせる主な方法である運動の時間の確保。仕事も忙しくなる中、いかにして運動をするのか。思わぬ効果的な方法を、僕は見つけてしまったのです。
■仕事と同様に「運動」もタスク化する
具体的にしたのは、とても簡単なことです。仕事の日程を管理しているツール(僕はGoogleカレンダーなのですが)に、「取材」や「会議」と同等のタスクとして、「運動」を記入、他の予定が入るのをブロックするようにしました。
たとえば、ある日は11~12時が取材で、14~17時を執筆に充て、18~19時で会議、21時~会食の予定だとします。その場合は9~10時に運動をタスクとして、予定表に入れてしまいます。
こうすると、それまでは「他のことをするより寝ていたいから9時に起きればいいや」と思っていたところが、「9時~の予定があるから8時に起きよう」「明日は早起きするから早く寝よう」となり、その分、メリハリのある生活が送れるようになったのです。
あるいは、ある日は20時~の予定が何も入っていなかったとします。そんなとき、「できたらここで運動をしよう」と思っても、結局、なんだかんだ仕事が増えたり、終わらなかったりで、20時になってもダラダラと仕事をしてしまったりすることがあるのではないでしょうか。
しかし、20時~の運動をタスク化し、優先順位を仕事と同等にしておけば、運動を後回しにする理由はありませんよね。むしろ、仕事を後回しにするか、あるいは、そうならないように「時間当たりの効率を上げよう」という発想になるはず。「20時~の運動はマストなのだから、20時までに仕事をきっちり終わらせよう」「万が一、終わらなかったら、明日の朝からのタスクを見直そう」と考えることができます。まさにこれは、カレンダーとタスク化による進行管理、プロジェクトマネジメントの一環です。
■とうとう、その瞬間が訪れた
その瞬間は、予想外のタイミングで訪れました。
実はダイエット期間、僕は朝晩に体重を計測するようにしていました。基本的に、朝の方が体重も体脂肪も数字が高く出るため、あまり当てにせず、その日も参考にするつもりで体重計に乗ったのですが……。
ちょうどダイエット開始から150日目の朝――数字は74.4キロ。スタート時からマイナス30キロ、最「重」体重時からは合計40キロのダイエット、達成です。朝の体重・体脂肪率は変動が大きすぎ、夜に測るそれらは順調に10日間でマイナス1.25キロのペースで推移していたので、その日も夜に測って達成のつもりでした。やや拍子抜けをして、パンツ1枚の間抜けな姿でしばし、呆然としてしまいました。体重計の上に乗ったまま。
まず考えたのは「インスタに投稿しなきゃ」ということだったので、僕のダイエットにおけるインスタの効果はすごく大きいのだな、とひとりで苦笑してしまいました。なんとなく、実感がないまま、2日前の飲み会の分のジョギングの30分に出かけようとして、「あれ、もうやらなくていいのかな」と迷い、でも何かの間違いだったらイヤだから……と走りに行き、仕事をして、夜に家に帰って、もう一度、計測してみると、むしろちょっと増えて74.8キロ。いずれにせよ、達成で間違いなさそうです。
■肥満は、一度落ちると這い上がれない沼
終盤、あらためて僕が感じていたのは、「肥満の沼」の怖さでした。
忙しい仕事ではあるので、タスクはテトリスみたいなパズルゲームのように降ってきます。消しては降り、消しては降ってくる仕事。それを容量の範囲内で処理しながら、ダイエットという別の「ゲーム」にも取り組まなければならない。そちらのゲームではマリオのアクションゲームのように、肥満者特有のクセや環境といった通常の敵をやっつけながら、定期的に会食や飲み会という「ボス」が登場し、進捗を阻んできます。
肥満は本当に、一度、落ちてしまうと這い上がれない沼のよう。こんなにキツいことをして、「なんでこんなにがんばってるんだっけ」という想いは、常に頭のどこかにありました。
それでも、沼の縁に手をかけることができたのは、なぜだったのか。振り返ってみたときに、ひとつ思い当たることがあります。
それは、「進むべき方向が見えていたこと」。ただ闇雲にもがくだけでは、沼の中で力尽きてしまうでしょう。どこから光が差していて、どうすれば最短距離で抜け出せるのか。それを知っていたからこそ、僕はなんとか150日間をかけて、自分の望んだ体型になることができたのでした。
■ダイエットをいかにハックするか
ダイエットのときに、進むべき方向とは。それは、現時点でもっとも正しい方法で、食事と運動の改善に取り組むことです。
しかし、それだけでは正直、うまくいかないと思います。できるだけ望ましい方法を続けられるように、ダイエットをいかにハックするか。それを可能にするためには、針路がわかっていないと難しいでしょう。これはもちろん、取材に協力してくれた専門家の方々がいなければ、成し遂げられなかったことでもあります。
針路がわかってさえいれば、ダイエット管理アプリやアクティビティ・トラッカー、インスタなどのSNS、LINEの運動報告グループ、Googleカレンダーでのタスク管理など、できることは一気に増えます。
このハックの方法は、おそらく、人によっても最適なものが異なることでしょう。僕の事例を参考に、ぜひ、各々に合った方法を導き出してみてください。
■リバウンド防止で太りにくい習慣をつける
最後に、もうひとつだけ、大事なことを。ダイエットは終わりません。今後、リバウンドを防ぐには、今後も「摂取エネルギー<消費エネルギー」の状態を保つことが必要です。そもそも食べすぎ・飲みすぎはしないように心がけ、余分なエネルギーを摂取したら、有酸素運動で解消する。筋トレをして基礎代謝を高め、太りにくくしておく。そんな生活習慣はこれからも継続しなければなりません。
ただし、今後は予備タンクではなく、摂取した分を消費すればよいため、これまでよりはだいぶ、ラクになるでしょう。これからも必要なのは、摂取エネルギーと消費エネルギーをなるべく正確に把握すること、同時に、余剰分のエネルギーをしっかり消費すること、です。そのためにダイエット管理アプリやアクティビティ・トラッカーの利用は継続し、健康を意識することを、止めずにいようと思います。
効果のない“ダイエット”とは、これでさよなら。今後もエビデンスのあるダイエットを続けていきます。もう二度と、肥満の沼に足を取られないように。
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ライター・編集者
地方の国立大学医学部を卒業後、新卒でメディア運営企業に入社。その後、編集プロダクション・有限会社ノオトで基礎からライティング・編集を学び直す。現在は報道機関に勤務しながら、フリーライターとしても雑誌『Mac Fan』連載「医療とApple」など執筆中。主著に『健康を食い物にするメディアたち』(ディスカヴァー携書)。近著に『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』(KADOKAWA)がある。
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(ライター・編集者 朽木 誠一郎)
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