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地銀消滅3大リスクと忍び寄るSBIの影

プレジデントオンライン / 2020年8月22日 15時15分

■厳しい業績でも当面は破綻しない

2020年3月期決算を発表した上場地方銀行78行の業績を振り返りましょう。57行は、連結純利益で減益となりました。みちのく銀行、清水銀行、島根銀行の3行は赤字転落です。原因はコロナ禍での株価下落です。

21年3月期については、「未定」とした3行を除く75行で、連結純利益は前期比約20%減の計5916億円となる見通しです。75行とも最終黒字の予想ですが、コロナの影響を正確に織り込めておらず、貸し倒れに備えた与信関係収支の悪化により、下振れする可能性は大きいと考えられます。

具体的なコロナの影響を考えると、マイナス要因とプラス要因もあります。

マイナス要因は、貸し倒れリスクが高まること、そして、手数料ビジネスの収益が悪化しそうなことです。地方銀行でも、近年、M&Aのフィーや、投資信託、保険などの販売手数料の存在が大きくなっています。コロナ禍ではM&Aの動きも鈍るでしょうし、個人の投資意欲も減退することが予想されます。そうした状況では手数料収入の伸びは期待しにくいでしょう。

プラス要因になるのは、主たる業務である、融資需要の増加です。

■地域密着の強みが発揮しにくくなる

コロナ禍では新規の融資がしにくいと考えがちですが、国の支援により、銀行は信用保証協会の保証付きで中小企業向けに融資ができます。しかも金利は都道府県により異なりますが概ね1.2~1.3%程度と、既存の地方銀行の貸出金利水準(1%前後)に比べて高水準です。貸しやすいし、利ザヤも大きい、というわけです。

さらに追い風となるのが、20年6月に成立した「改正金融機能強化法」です。

地方銀行などに公的資金を注入しやすくするための改正で、金融機関が公的資金を申請できる期限を4年間延長(26年3月末まで)、資金枠を12兆円から15兆円に拡充しています。資金注入の際に求められた収益目標の策定や経営責任の明確化が不要になったほか、15年以内を目安とされていた返済期限も撤廃されています。公的資金を受けると国へ配当を行う必要がありますが、配当率が引き下げられ、銀行の負担が軽減されます。

こうした措置は、地域の金融機関を支えることで、地元企業と雇用を守る、という狙いがあります。淘汰されるべき企業の延命になるという側面は否めませんが、コロナ禍においては、必要かつ効果的な措置だと考えられます。

手数料ビジネスの悪化、融資の焦げ付きなどによる与信費用から、今期の業績は厳しく、天気に例えれば「雨」でしょう。とはいえ、健全性の目安となる自己資本比率4%(国内業務のみを行う銀行についての国内基準)に抵触する銀行もなく、現状、破綻懸念は大きくないとみています。

中長期的なリスクとしては、対面・現金から、非対面・デジタルへの流れが起き、地域密着の強みが発揮しにくくなることです。法人への貸し出し、事業承継などは変わりませんが、リテールのサービスについては再考を迫られる可能性があるでしょう。

当局はコロナ前から地方銀行の再編を促しており、SBIホールディングスとタッグを組んだ島根銀行や福島銀行ほか、同じエリアの地銀が提携して効率化を図る例も出ています。再編の動きにも注目しています。

(三菱UFJモルガン・スタンレー証券 アナリスト 安岡 勇亮 構成=高橋晴美)

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