仕事ができない人の文章は「エスプレッソのような濃度」で書かれている
プレジデントオンライン / 2020年8月28日 15時15分
※本稿は、竹村俊助『書くのがしんどい』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■エスプレッソのような文章を書いてはいけない
わかりやすい文は、ちょうどいい「濃度」である、とも言えそうです。たとえばこんな文はどうでしょうか?
……って、もうわからないですよね? 「検索技術の進歩」くらいで、もういいや、となります。
これはコーヒーの濃度でたとえるなら「エスプレッソ」を飲まされている感じです。飲みにくい。一口飲んだだけで「わっ、苦(にが)っ」となってしまいます。情報が一気に来るので、濃すぎて苦いのです。
この文章はどうすれば適度な濃さにできるでしょうか? まずはきちんと中身を理解して、かみ砕いた表現に換えていきましょう。
難しくなりがちな文章の特徴は、イメージしづらい「熟語」がたくさん出てくることです。例文にも「進歩」「向上」「代替」などの熟語が出てきます。これを減らすだけで、スッキリ見えるだけでなく中身も伝わりやすくなります。
・進歩 → 進んでいる
・向上 → 上がっている
・代替 → 代わりになる
・超越 → 超える
・到来 → 来ている
このポイントを押さえつつ改善していくとこうなります。
わかりにくい文というのは、読者から時間を奪っているのと同じです。「はい、エスプレッソ」と出されても、読者は苦くて飲みにくいから、いちいちミルクを入れたりして薄めないといけない。
わかりやすい文を書くことは、読み手に時間のプレゼントをするのと同じくらい価値があるのです。
■「過不足」のない文章を心がける
伝わる文章は、過不足のない文章とも言いかえられます。
そのためにも「なるべくシンプルに言えないか?」を考えることです。いきなり高度なことをしようとせず、基本を押さえることがなにより大切なのです。
料理がうまい人ほど、まずレシピどおりにつくります。新しい料理をつくろうと思ったときに、料理上手な人ほどレシピを見ながら、きちっと分量を計ってつくる。だから、おいしくできるのです。
料理が下手な人ほど、なぜかレシピを見ずにいきなり「アレンジ」してしまいます。ベーシックなカレーすらできていないのに、「カレーにコーヒーの粉を入れるとうまいって聞いたから入れてみよう」みたいなことばかりやるのです。
同じことが文章でも言えます。「美しい文章を書きたい」「頭がよさそうな文章が書きたい」という思いが先行してしまって、そもそも伝わってすらいないのに、いきなりアレンジをしてしまうわけです。
アレンジをしていいのは、基本がきちっとできているシェフだけです。基本的な肉じゃがをつくれるから、「じゃあ、カレー肉じゃがをつくろう」とアレンジしたり、「ちょっとはちみつを足してみよう」といった小技が使えるのです。
ぼくらはプロの作家ではありません。まずはシンプルを目指しましょう。
■削ることができるものは、なるべく削る
余計なものはどんどん削っていきましょう。余計な脂肪をとりのぞいて、なるべくシンプルにしていくと、過不足のない「筋肉質」な文章ができあがります。
どう削ればいいのか、ひとつずつ見ていきましょう。
<① 「説明しなくてもいいもの」を削る>
説明しなくてもいいものは、削ります。
この文は、
ここまで削ることができます。
まず、朝はだいたい起きるものだから、「朝起きると」ではなく「朝」だけで十分伝わります。「空が晴れていて」も、晴れるのは空に決まっているので「空が」を削ります。「これ、必要かな?」と迷ったら、まず削ってみることです。そこで意味がわかればそのままにしておきましょう。
また、「本当に」や「とても」「すごく」といった強調の言葉も使いがちです。ここぞというときに使うのは効果がありますが、あまり多く使ってしまうと逆効果です。
「うちで飼っている犬と一緒に」は「愛犬と」の3文字で表すことができます。「家の近く」も「近所」でOK。難しい熟語は避けつつ、まずはなるべくシンプル、簡潔を目指しましょう。
<② 「私は」「思います」を削る>
よく見るのが、「私は○○だと思います」という文です。「私は」は、あえて言わなくてもわかる場合が大半です。
本の原稿整理をしていると、「思います」がやたら多い著者の方もいます。そもそも「思っている」から書くのです。よって、わざわざ「思います」と書かなくてもいいでしょう。あえて断言を避けて言葉を和らげる効果はありますが、思い切って「思います」を取ると文に覚悟が生まれます。
■言わなくてもわかるものは削り、一文はコンパクトにする
<③ 「○○ですが」「○○なので」は危険>
注意したいのが「○○ですが」という言い方です。
文が長くなりがちな人の文にはたいてい「○○ですが」という謎の「が」が入っています。文をつなげるために「が」を使い始めると、文がややこしくなっていきます。
こういった文も
とシンプルにできます。分けられるならどんどん分けましょう。
同じような例に、「ので」もあります。「が」と同じように、文が長くなりがちな人は「ので」を使いがちです。
「立派な文を書かなくてはいけない」という意識が強いと、つい「○○なので」と書いてしまいがちです。「ので」と書いてしまったため「その後に何か言わないといけない」気分になって、余計な情報を入れてしまうのです。
ぼくの夢は出版社をつくることなので(あ、「ので」を入れてしまった……何か書かなきゃ……)お金を貯めています。
「お金を貯めています」ということが言いたいわけではなかったとしたら、「ので」を書く必要はないのです。
<④ 余計な「という」を削る>
これもよく言われることですが、余計な「という」も削りましょう。
ではなく、
たしかに「出版社をつくる」の部分を強調したいときは「という」を入れるときもあるかもしれません。ただ、まずは「という」を外してみて、違和感がなければそのままでいいでしょう。
■「短くできるのであれば短くしたほうがいい」
<⑤ 前置きを削る>
前置きが冗長な人もいます。
ネットでよく見かけるのが、こんな文章です。
これは余計な前置きです。雑誌のリードのような文なのですが、いまどきこれをていねいに読んでくれる人は稀(まれ)です。いきなり本題に突入したほうがいいのです。
わざわざ言わなくてもわかるような部分は全部カットします。
余計な部分を全部カットして、
にすればいいのです。
ぼくの考えは「短くできるのであれば短くしたほうがいい」というものです。読み手のことを考えれば、短い文で何かを伝えられるのであれば、それに越したことはありません。長い文章は、実は「読者ファースト」ではないのです。
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編集者
1980年岐阜県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本実業出版社に入社。書店営業とPRを経験した後、中経出版で編集者としてのキャリアをスタート。その後、星海社、ダイヤモンド社を経て、2019年に株式会社WORDS代表取締役に就任。SNS時代の「伝わる文章」を探求している。主な編集・ライティング担当作は『段取りの教科書』(水野学)、『ぼくらの仮説が世界をつくる』(佐渡島庸平、以上ダイヤモンド社)、『メモの魔力』(前田裕二)、『実験思考』(光本勇介、以上幻冬舎)など。手掛けた書籍は累計100万部以上。オンラインメディア「note」に投稿した「WORDSの文章教室」は累計150万PVを超える。
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(編集者 竹村 俊助)
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