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東大を学費0円で卒業した男が教える「平均的年収でも受けられる減免制度」

プレジデントオンライン / 2020年8月18日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bankrx

国公立大学と一部の私立大学には、家庭の経済状況と成績基準により授業料の全額または半額が免除される制度がある。日本財団子どもの貧困対策チームの本山勝寛氏は、「奨学金と比べて知名度が低いが、成績も親の収入もあまり厳しい基準ではなく、幅広い人が対象となりうる。ぜひ活用してほしい」という——。

■授業料を4年間まったく支払わずに済んだ

奨学金については、メジャーな社会問題として各種メディアに取り上げられ、多くの人が知ることとなった。一方で、同じ高等教育とお金に関わる制度である「大学授業料免除制度」については、メディアもまったくといっていいほど取り上げないため、一般的にはあまり知られていない。

その結果、家庭の経済状況によって大学進学をあきらめないといけないと、一般的に信じられているのではないだろうか。しかし、私自身は大学授業料免除制度の恩恵を受けて、授業料を4年間まったく支払わずに東大を卒業できた。しかも、そういった授業料減免を受ける大学生は決して特別な例外ではなく、かなりの人数いるのだ。

これだけ素晴らしい制度が知られていないのは、まさにもったいない話だ。では、メディアではあまり取り上げられないこの制度の実態をみてみよう。

日本には国公立大学と一部の私立大学で、家庭の経済状況と成績基準により授業料の全額または半額が免除される制度がある。

国立大学の年間授業料は2017年現在で標準53万5800円(月額約4万5000円)なので、4年間でおよそ215万円の給付型奨学金を受給するのと同じ経済的支援を受けることになる。

■81万人が授業料減免の対象と推計

こういった授業料減免の恩恵を受けている学生は、文科省によると、2014年度の国立大学では延べ18万1000人、公立大学1万2000人、国立高等専門学校は延べ4000人、公立高等専門学校は400人、2015年度の私立大学は4万人だった(「家庭の教育費負担や公財政による教育分野への支出等」より)。

ただし、国立大学や高専は延べ人数で計算されており、1人が2回分(2学期分)計算されているものもある。国公立2014年度実績と私立の2015年度実績を合わせた参考値ではあるが、国公私立の延べ人数の合計によれば、23万7400人が授業料減免の対象で、財政規模は約490億円だった。

これが2020年度からは高等教育無償化によって、私立大学や短期大学、専門学校でも授業料減免者数が増える見込で、大和総研によると約81万人に増加すると推計されている。

■成績は厳しい基準ではない

では、具体的にどういった学生が授業料減免を受けられるのだろう。主に成績と家計の収入によるが、成績は日本学生支援機構の第二種奨学金の学力基準との均衡を考慮するとあり、さほど厳しい基準ではない。したがって、家計収入によって減免が定められることになる。

具体的には、世帯人数に対して免除を受けられる総所得額が設定されている。

たとえばサラリーマンの場合は、世帯ごとの減免が受けられる収入額の上限は図表1の通り。ひとり親世帯の場合や、きょうだいの有無ときょうだいが小中高大のいずれに通っているかなどによって、それぞれ上限額が定められている。

家計に関わる基準
日本学生支援機構HPより

たとえば、4人家族の事例で考えてみよう。両親と本人、弟(妹)の4人家族で、お父さんがサラリーマンで給与収入が461万円、お母さんは専業主婦、本人は自宅外通学、弟(妹)に高校生がいるとする。 この場合、第3区分で授業料が3分の1減免される対象となる。また、お父さんの収入が295万円以下であれば第1区分で全額免除に該当する。

■世帯収入564万円でも対象になり得る

次に共働き世帯の4人家族の事例で考えてみる。両親と本人、高校生のきょうだいがいる世帯で、お父さんがサラリーマンで給与収入が409万円、お母さんの給与収入が155万円、本人は自宅外通学、弟(妹)が公立の高校生とすると、第1区で授業料3分の1減免の対象となる。両親の世帯収入を合わせると564万円でも対象になるということだ。この世帯の場合、世帯収入が491万円で授業料が3分の2減免、世帯収入410万円で全額免除となる。

授業料減免の基準はイメージよりも低いと感じるのではないだろうか。世帯収入が410万円から564万円というと、平均的な収入に近いが、それでも全額または3分の2、3分の1免除の対象になり得るのだ。

さらに、これら授業料減免対象の家庭は給付型奨学金を受けられる世帯でもある。第1区分の自宅外通学で月6万6700円、第3区分の自宅外通学で2万2300円、第3区分の自宅通学でも9800円が支給される。これらは給付型のため、貸与型奨学金と異なり返さなくてもよい奨学金だ。

■この制度を多くの学生や家庭が知らない

本山 勝寛『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。:貧困の連鎖を断ち切る「教育とお金」の話』(ポプラ新書)
本山 勝寛『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。:貧困の連鎖を断ち切る「教育とお金」の話』(ポプラ新書)

東大生の中には家計収入が450万円未満の家庭が13.6%いるが、その大半の学生が実際に授業料減免を受けている。ほかの国公立大学でも同様だったが、私立大学や専門学校にも対象が大幅に拡がった。

こういった事実はほとんど報道されないため、多くの学生や家庭が知らない状況だ。また、授業料免除制度があることはなんとなく知っていても、計算式や収入基準額などを知らないため、自分がその基準に当てはまらないと思い、申請をしていない学生も一定数いると思われる。

私は、この大学授業料免除のおかげで、親の収入がない状況でも大学を卒業することができた。「自分の家は貧しいから大学進学なんてできない」と、経済的理由で初めから大学進学をあきらめてしまっている高校生には、ぜひこの制度を知ってもらいたい。また、周りの先生や大人からもしっかりと伝えていただきたい。

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本山 勝寛(もとやま・かつひろ)
日本財団子どもサポートチーム チームリーダー、人材開発チーム チームリーダー
東京大学工学部システム創成学科卒業。ハーバード教育大学院国際教育政策専攻修士課程修了。『16倍速勉強法』(光文社)、『最強の独学術』(大和書房)、『今こそ「奨学金」の本当の話をしよう。』(ポプラ新書)など著書多数。5児の父で、4 回育児休業を取得。「学びと社会のイノベーション」をテーマとしたオンラインサロン「MSI塾」を主宰。

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(日本財団子どもサポートチーム チームリーダー、人材開発チーム チームリーダー 本山 勝寛)

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