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2045年、「桜井誠総理」が誕生するまで…都知事選で見えた超絶怒涛シナリオ

プレジデントオンライン / 2020年8月18日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/djedzura

■「桜井誠総理」誕生というシナリオ

1923年のミュンヘン一揆の際、逮捕・投獄されたヒトラーが、まさかその10年後にドイツの首相となり、ヒトラー内閣を組閣して瞬く間にドイツ全土を掌握したことを信じる者は当時誰一人として居なかったであろう。

事程左様に、政治や歴史とは、わずか10年であっという間に激変するモノである。そこで、こういう妄想をしてみる。今般の東京都知事選挙で前回都知事選挙(2016年)から約1.5倍の得票伸長をした元在特会(在日特権を許さない市民の会)会長で日本第一党党首の桜井誠氏がこの国の総理大臣になったら――。

あり得ない想定だが、「絶対に天地がひっくり返っても可能性はゼロである」というのも、遺憾ながら目下の社会情勢に鑑みるとそう断言することはできないのではないか。何しろ自民党は「LGBTには生産性が無い」とか「(性暴力被害者である)伊藤詩織さんにも(性被害の)責任がある」などとBBCに対し堂々と開陳してはばからない杉田水脈氏を衆議院比例中国から公認しているほどの党であるのだから、遠い将来桜井氏を公認しないとも限らない。

本稿ではこの「あり得ない(だろう)世界線」をあるものと想定して書き進める。なお、自民党は与党として未来日本においても存続し続けるという悪夢のごとき前提条件をも付加しておく。ある種の思考実験である。

■2030年代、移民の増加で分断が加速

まず憲法の規定により総理大臣は衆参両院における首班指名によって選出されるので、桜井氏が総理大臣になるためには衆参どちらかの国会議員になる必要がある(衆院指名が当然優先)。桜井氏は現在1972年福岡県生まれの現在48歳だが、まず今般都知事選挙における約18万票の獲得票数からして、都知事になることは到底ないだろうが、区議会議員については余裕で当選水準をクリアしている。

桜井氏の政治家としてのキャリアは東京都区における諸派区議会議員からスタートすると仮定して、1期を務めたのち都議会議員に転身しさらにもう1期務めたと仮定すると大雑把な計算で氏は56歳。日本は西暦2027~28年とする。そこから衆議院解散のタイミングに併せて自民から公認を受け、衆院比例東京ブロックで出馬し、何とか当選する。国会議員桜井誠氏の誕生である。

さらに次の衆院解散でも再選すると衆院解散タイミングを3年として+6年で桜井氏は62歳。西暦では2032年~2033年。この時点で桜井氏が衆院議員を2期やるとなると、日本の社会情勢は末期的である。桜井氏の主張する外国人排斥は現在、妄想的で根拠に基づかないものだが、2030年代初頭の日本にあっては実習生という名の実質的な移民が加速度的に増え、総人口の5~10%に迫り、移民とその子孫が都市部でコロニーを作ったり、日本人の正規雇用を簒奪したりしているという欧米型の多文化社会の負の側面がいよいよ社会階層の全てを巻き込んで表出していると考えねばならず、桜井氏と似たような思想を持つ議員が自民党の中ですでに一派閥程度の規模にまで成長しているとする。

■2045年、桜井誠が総理に

そうして現在では陰謀論や妄想に基づく外国人排斥が、日本社会のあらゆる階層に於いて「現実社会の生活実感」として認識されるとき、桜井氏の主張もまた「正しいのではないか」と受け止める有権者も増えよう。2040年。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば日本の総人口は現在よりマイナス1500万人程度の1億1000万人程度になっている。が、一方でこれに対して1000万人の移民とその子孫が存在して総計で人口を1億2000万人とすると、非日本人人口は総人口の8~10%になる。

いよいよ移民とその子孫の権利や主張を代弁する政党や政治家が現れてくる。こうしたことを危機と受け止める日本人有権者は増え続ける。自民党は主義主張の全く違う社会党の村山富市を「政権奪取」というただその一点に於いて自社連立というミラクルCをやってのけ、首班指名した「前科」があるのだから、桜井氏を首班指名しないという保証はどこにもない。西暦2045年。桜井氏は73歳。超高齢化社会にあっては、定年規定さえ外せばまだまだ国会議員として現役である。衆院当選を重ね、もはや自民党内でも中堅から重鎮になりつつある桜井氏が首班指名され総理大臣となる。

■一度は排外主義、ヘイト色を薄めるが…

その際には、自らが40代以前に行っていた在特会や日本第一党でのヘイト履歴を「行き過ぎであった部分もあった」などと反省しつつ、内側には激しい妄想的排外主義を潜伏させている。ヒトラーが1933年1月に首相となったとき、ナチ党からの入閣者はゲーリングをはじめわずか数人であった。ヒトラー内閣は中道保守のドイツ中央党と連立を組んだ連立政権で、首相よりも強い権限がある大統領が上位に存在した。誰しもがヒトラー内閣は早期に瓦解すると思ったが実際は違った。ヒトラーは親衛隊を使った白色テロを起こし、共産党とユダヤ人という仮想敵を作り、わずか約2カ月後の1933年3月、全権委任法が成立してドイツのほとんどすべてを掌握した。

しかしこのヒトラー内閣の蛮勇は、ワイマール共和国の構造的欠陥や国際情勢によってもたらされた「快進撃」であり、流石に未来の日本に於いて同様の事態は起こりえないであろう。桜井首相は「自らによる過去の排外的言動」を反省しつつ、自由と民主主義を基調とする力強い日本、などと喧伝してヘイト色、排外主義色を見かけ上大幅に減退させるポージングを採る。しかし内閣が発足して初めての国政選挙(参議院選挙等)で自党が勝利すると、徐々にだが確実に内面に秘めたヘイト色をむき出しにして、2~3年もすれば在特会や日本第一党の主張に回帰するだろう。

■安倍総理という現実の延長といえる

このような世界線は万が一にもあり得ないことであって単なる妄想に過ぎないが、よく考えるとこの妄想は当初雑誌『正論』や『WiLL』を愛読する「ホシュ」おじさんに過ぎなかった安倍晋三氏が、総理大臣になって長期政権になると、徐々にその地金をむき出しにして『Hanada』にまで登場するという現実の世界線の拡張版であると言えなくもない。

いや実のところまさしく目下の現実を目一杯拡張させたのがこの世界線である。恐ろしいのは、現実でも桜井氏の得票は東京における区議会議員であれば当選ラインにいるという事で、「桜井区議」の誕生は、選挙のタイミングさえ合致すればすぐにでも実現するのである。今般東京都知事選挙での桜井氏の得票は、元航空幕僚長の田母神俊雄氏が東京都知事選挙に出馬した2013年の「保守層」の約60万票(その後逮捕・起訴)のうち、「反安倍」「妄想的排外主義」までの極論に走るこのうち3割のちょうど18万を集約したに過ぎないが、このレベルでも選挙区さえ選ばなければすぐにでも東京都区議になれるのである、という暗澹たる現実から目を背けるべきではない。

よって私たちは厳に警戒と監視を怠ってはならないのである。ヘイトや陰謀論や妄想的排外主義は無視して消滅するのを待つ、という従来の進歩派の対応では最早生ぬるくまるで効果が無い。それが萌芽した瞬間に逐一叩き潰さなければならない。

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古谷 経衡(ふるや・つねひら)
文筆家
1982年、札幌市生まれ。立命館大学文学部卒。保守派論客として各紙誌に寄稿するほか、テレビ・ラジオなどでもコメンテーターを務める。オタク文化にも精通する。著書に『「意識高い系」の研究』( 文春新書)、『日本型リア充の研究』(自由国民社)など。

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(文筆家 古谷 経衡)

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