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「韓国が一番」自画自賛を繰り返す文在寅は戦時中の大本営発表とそっくりだ

プレジデントオンライン / 2020年8月18日 15時15分

2020年8月15日、ソウルで行われた「光復節」の式典で演説する韓国の文在寅大統領(韓国・ソウル) - 写真=AFP/時事通信フォト

■労働市場が悪化しても都合よい発言ばかりの韓国政府

韓国、文在寅(ムン・ジェイン)大統領をはじめ閣僚の発言を見ていると、経済統計などを政権に都合よく主観的に解釈することが多いようだ。

例えば、8月12日に洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政相が、どうみても韓国の労働市場は悪化しているように見えるにもかかわらず、「5月から雇用状況は毎月着実に改善している」と述べた。

その発言には、韓国国内のメディアからも批判が出ている。見ればすぐにわかる事象について、現役の閣僚がそうした発言をする理由はよくわからない。

就業者の減少幅が縮小したという変化はあるものの、今年3月から7月まで5カ月続けて韓国の就業者は減少した。7月の就業者数は27万7000人減だ。「労働市場は厳しい状況になりつつある」というのが事実に基づいた理解だろう。

なぜ、韓国政府の高官は、経済運営や不動産価格の高騰問題に関して自らに都合よい発言を繰り返すのだろうか。そうした例を見ていると、戦時中の大本営発表と同じなのだろうと考えてしまう。

一方、サムスン電子を筆頭に韓国企業は健闘している。当初、財閥企業を批判した文氏はその状況を自画自賛しているが、それは必ずしも文氏の成果ではない。今後、韓国経済が落ち着きを取り戻し、雇用を創出するために、サムスン電子をはじめとする財閥企業の重要性は一段と高まるだろう。

自国内外の経済環境を虚心坦懐に理解し、必要な政策を立案・施行することができるか否か、文大統領の姿勢が問われることになるはずだ。

■文在寅の発言は矛盾している

文大統領には自国内外の環境の変化を冷静に確認し理解するよりも、都合よく発言する傾向があるようだ。ある意味では、自分に甘いと言える。それは、財閥企業に関する政策をはじめ同氏の経済運営姿勢から確認できる。

大統領に就任した当初、文氏はサムスン電子など財閥企業の改革を進めると述べた。同氏は経済を牛耳る財閥企業の利権にメスを入れて公平な競争環境を整備すると自らの政策の意義を説いた。

2018年に入ると、韓国にとって最大の輸出先である中国経済の成長が限界を迎えはじめた。その上に米中の通商摩擦が激化し、韓国の輸出は大幅に減少した。サムスン電子などは“中国製造2025”を推進し半導体需要が高まっていた中国市場での競争力を高め、不安定ながらも収益を獲得した。それが韓国経済を支えた。

その状況下、文氏は財閥企業の生産施設を訪問するなど、当初と異なり財閥寄りの姿勢を取り始めた。一方、文氏は経済成長率以上のペースで最低賃金を引き上げた。結果として、中小企業を中心に雇用が削減された。

その事実はサムスン電子などの財閥企業の収益が経済を支える一方、文政権は経済の実力を低下させたと言い換えられる。

■「韓国が最も善戦している」という解釈

しかし、7月下旬、文氏は「韓国経済が奇跡的に持ちこたえた」と発言し、自らの政策を自画自賛した。4~6月期の企業業績を見ると、世界的に見てもサムスン電子やSKハイニックスの半導体事業や造船業界は好調だ。航空大手はリストラに加えてICチップの輸送などが支えとなり、黒字を確保した。

冷静に考えると、財閥企業は景気後退に陥った韓国経済にとって重要な下支えの役割を果たしている。それは文氏の功績によるものではなく、サムスン電子などの自助努力に支えられている。

客観的に韓国経済の状況を説明すると、大手財閥企業の努力によって半導体産業などが収益を確保し、マクロ経済を下支えしたというべきだ。それでも、文氏は「国際社会の中で韓国が最も善戦していると評価されている」と述べるなど、情報やデータの一端を都合よく解釈し成果を主張している。

■不動産価格の高騰とマンションを保有する政府高官

不動産価格の高騰に関する政府高官の姿勢からも、自らに都合よくふるまう心理が確認できる。文政権が発足した2017年5月からの3年間でソウルのマンション価格は平均で5割程度値上がりした。

各種データを見ると、不動産価格の高騰が、働き手世代の将来不安を高めていることが示唆される。韓国統計庁が実施した「家計の資金繰りと生活水準の調査(2019年)」によると、家計の保有資産価額は平均432百万ウォン(邦貨換算額で約3900万円)だ。そのうち住宅など不動産が75%を占める。家計にとって住宅取得の負担は大きい。不動産価格上昇は家計の負担(不動産の購入や賃貸の費用)を増大させる。

また、IMFの報告では、50代以上の世代に資産が集中し20~40代との世代間格差が拡大している。それに加えて、韓国銀行は「金融安定報告書」の中で、リタイア後の生活維持に借り入れへの依存度が高まるとの見通しを示している。

住宅取得のハードルが高まるだけでなく、借り入れに頼って人生を送らなければならない状況下、30代、40代を中心に将来への不安は高まる。

韓国の世論調査会社リアルメーターによると、8月7日時点で文大統領の支持率は43.9%と前週から2.5ポイント下落した。30代と40代の支持率低下が顕著であることはそうした不安の表れだ。雇用環境の悪化も人々の不安を高める。

しかし、洪楠基経済副首相兼企画財政相の発言は、政権が事実を直視していないことを示している。それに加えて、不動産価格の高騰に世論が不安・不満を募らせる中で、政府高官は複数のマンションを保有して資産を運用した。

そうした心理は強く、盧英敏(ノ・ヨンミン)秘書室長は政府高官に自宅以外の住宅を売却するよう指示した一方で、資産価値の高いソウルの物件を保有し続けたことが判明した。

また、金照源(キム・ジョウォン)民情首席秘書官は市場実勢を上回る価格でマンションを売りに出したうえ、仲介業者のサイトに情報を掲載しなかった。

それは、政権の指示と異なり売却の意思がないとみなされても仕方ない。そうした姿勢が世論の不支持や批判を招いている。

 

■アニマルスピリッツが発揮される環境を整備せよ

今後、文氏に求められることは国内外の状況に真摯に向き合うことだ。それが韓国の社会と経済の先行きに無視できない影響を与えるだろう。

現在、韓国経済は相対的に健闘している。今後の展開を考えた時、世界経済のデジタル化が進むことによって、サムスン電子をはじめとする半導体産業の重要性は高まる。文氏には人々のやる気を支え、経済全体でアニマルスピリッツが発揮される環境を整備することが求められる。

現在、就職を断念する人が増加していることを考えると、文政権は現実に向き合い、規制緩和などを進めて人々の新しい取り組みを支えるべきだ。

また、韓国を取り巻く経済環境は大きく、かつ急速に変化している。特に、韓国は最大の輸出先であった中国から追い上げられている。4~6月期、世界のスマートフォン市場で中国のファーウェイが首位に立ったことはそれを確認する良い材料だ。

ファーウェイは中国製の部品の割合を増やして5G対応のスマホを投入し、シェアを高めた。それは中国が急速に技術力をつけ、米国の圧力に対抗する体制を徐々に整えていることと言い換えられる。

米国の制裁強化によって中国の半導体調達は難航し、半導体生産能力の増強にもより多くの時間はかかるだろうが、先端分野における中国の成長力は高い。それは、中国の半導体需要に支えられた韓国経済にとって脅威だ。

■文在寅はまた一段と「反日姿勢」を強めるだろう

文氏がそうした変化を直視するよりも、これまでのように自画自賛する発想を続ける場合、韓国経済が安定と成長を目指すことは難しくなる可能性がある。その場合、国内の経済格差は一段と拡大し、世論の不満が爆発する可能性がある。

そうした展開が鮮明となれば、文氏は世論の目線が自らに向かわないよう、反日姿勢を強める可能性が高い。6月以降、文氏が重視してきた南北の宥和(ゆうわ)政策が難航していることの影響も軽視できない。

わが国は構造改革を進めて先端分野での競争力を高めつつ、国際世論を味方につけて文政権に冷静な行動を求める必要がある。

このように考えると、韓国の社会と経済の安定には文政権が真摯に自国内外の環境に向き合い、現実的な政策路線を目指すことが欠かせないだろう。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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(法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)

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