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20代30代で「上位5%社員」になる人のリモートワークは、普通の社員と何が違うのか

プレジデントオンライン / 2021年1月7日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Imgorthand

■2021年は労働環境が大きく変わる

2021年を迎えるにあたり、600社以上の企業の「働き方改革」を支援してきた立場から見える「ビジネスパーソンの未来」とはいかなるものか──。

今後はますます雇用の流動化が進み、新卒で入社した会社でキャリアを終えることはレアケースになる。そして、専門性を活かして場所を選ばずに活躍できる人だけが成功する。望むと望まざるとにかかわらず、そういう傾向がますます強まることはまず間違いない。

昨年『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓したところ、ビジネスパーソン中心に大きな反響を得た。

クライアント企業25社で「トップ5%」の人事評価を得ている社員の行動を分析し、共通する特徴を明らかにしようと調査を重ね、定点カメラやICレコーダーの記録、メールの履歴などをAIで解析。「その他95%社員」との行動習慣の違いを明らかにして、その結果を書籍化したものだ。

意外だったのは、コロナ禍で突然のテレワークに直面した20代を中心に、若い世代が強く反応したことだ。

彼らは上の世代を見ている。「このままこの会社に居て、自分には未来があるのだろうか?」と、真剣に悩んでいるのである。

自社にロールモデルがいない。あるいは、未来が期待できない。ならば……と各企業の「トップ5%社員」に学ぼうというのだ。あるいは、そのうえでもっと自分を成長させられるところに新天地を求めたい、というのだ。

■20代で未来は変わる

彼らの姿勢はおそらく正しく、今後は29歳までに自分をいかに磨くかで、40歳以降のキャリアが大きく変わってくる。私自身の体験を通しても、そうした変化が進んでいることを強く感じる。

社会人になった20年前。当時の私は、典型的な日本の古い体質の大手企業に就職した。そこでは「長く働くこと」が美徳とされ、時に徹夜作業をすると同情され評価もされた。目の前の仕事を必死にこなすことで技能が磨かれて、上司の言うとおりに実直に働いていればキャリアを拓くこともできた。上司に気に入られれば、3年に一度の人事異動発令でステップアップし、それがキャリアアップになったのである。

尊敬する経営者にも、若い時分はモーレツに働き、努力と成果を積み重ねて出世レースを勝ち抜いた方が多かった。その背中を追って、私も寝る間を惜しんで働き続けた。

ところが──。29歳で心と体のバランスを崩し、働くことができなくなってしまった

無制限に働いて成果を出し続けることは限界だと自覚し、そこから「短い時間で成果を残す働き方」にシフトした。無駄なことをやめて成果につながる作業に全集中した。体力勝負でやみくもに働くのではなく、目的を意識して内省しながら仕事のやり方を変化させるようにしたのである。

体を壊したことをきっかけに、最初の会社を辞めて外資系通信会社に転職。のち起業を経て、さらにマイクロソフトへ転職することになったのだが、「短い時間で成果を残す働き方」の積み重ねが偶然のチャンスを引き寄せ、マイクロソフトの役員、そして現在のキャリア(2つの会社の代表)へと私を導いた。

現在は、週休3日30時間労働を貫いている。働き方を自分で決め、人に左右されない生き方を実現することが可能になっている。

振り返ると、その都度修正を繰り返す働き方にシフトしたことで、40代のいま、自由と責任を得ることができている。あのまま最初の企業で滅私奉公を続けていたら……と想像すると、恐ろしいものがある。

■20代が直面している「3つの壁」

当時の私と同じく、いまの20代のビジネスパーソンも苦しんでいる

これまで600社16万人以上の働き方改革を支援してきたが、2020年に入り20代のモチベーション低下が顕著となった。2019年と2020年に2万9000人のクライアント企業の社員にアンケートを取ったところ、20~50代で「モチベーション増えた・やや増えた」と答えた比率が最も低いのが20代だった。

【図表1】モチベーション調査
画像提供=株式会社クロスリバー

「モチベーション減った・やや減った」と答えた比率が最も高かったのが20代で、3分の1は士気が下がっている。コロナ禍でテレワークが進んだが、デジタルネイティブでテレワークにも適用しやすそうな世代が、かえってほかの世代よりも大きな悩みを抱えていたのである。

調査結果をまとめたところ、20代は「3つの壁」に直面していることが浮かび上がってきた。

■①「労働時間」の壁

2019年に労働基準法が改正され、大企業も中小企業も残業の上限が設定された。会社はこぞって労働時間の管理を強化し、勤怠管理システムを導入してテレワークでも労働時間を管理できるようにした。

たしかに、寝食を惜しんで働き続けるようなスタンスはもう古い。人生100年時代には、70歳まで健康に働くことを前提にしないといけない。ところが、クライアント企業600社16万人を対象に匿名で調査したところ、実は74%の社員が「残業をしたい」と考えていることがわかった。とくに、20代だけを見れば81%が残業規制に反対と回答しているのである。

【図表2】従業員の74%が残業したがっている
画像提供=株式会社クロスリバー

上位3つの理由の中で注目すべきは、「スキルアップしたい」からという回答だ。従業員1000人以上の大企業で見ると、4分の1以上が「スキルアップのために残業したいのに、労働時間を抑制されている」ことがわかる。労働時間の「壁」があって、思うようにスキルアップの時間を取れていないと考えているのである。

■②「声掛け」の壁

残業規制によってスキルアップの時間が減っただけでなく、先輩から教えてもらう機会も減っているのが現状だ。

以前ならチーム内の先輩の席に行って「いま、ちょっといいですか?」と業務の質問をすることができた。先輩の電話対応を席の隣で聞いて勉強することもできた。しかし、コロナ禍の影響でテレワークが進み、気軽に声を掛けることができなくなってしまった。

先輩などに声を掛けにくくなったことで、孤立した若い世代が塞(ふさ)ぎこんでしまっている。結局は自分で時間をかけて調べ、答えにたどり着くほかないのだが、きわめて効率が悪い。

また、キャリアを形成するうえで重要な「偶然の出会い」がテレワークによって減っている。

出勤していたときは廊下やランチでカジュアルな会話があり、そこで社内の人を紹介してもらったり、思いもよらないプロジェクトの話に遭遇したりした。これまでは、こうした「偶然の出会い」が新たな経験をする機会と成長をもたらしてくれたが、テレワークではそもそもそんな偶然に出会うチャンスが大きく減ってしまう。

■③「評価」の壁

テレワークの普及により実力評価の機運が高まっている。労働時間ではなく、残した成果を評価する傾向が強まっているのだ。608社の人事責任者にアンケートを取ったところ「2年以内に評価制度を変更」すると55%が回答しており、成果主義の評価が加速していることがわかる。

しかし、これは新人や20代社員にとっては不利な部分もある。十分な権限をもらっていないのに突出した成果を残すのは難しい。2020年はテレワークで研修もままならなかったので、学習機会も先輩たちに比べ減っている。さらに、テレワークが常態化する中で成果主義が加速すれば、生き残りをかけたライバルとなった後輩は、先輩たちから助けてもらえないケースも出てくることは容易に想像できる。

「十分な機会をもらっていないのに、成果主義でアウトプットを残し続けるのは難しい」、率直にそう考える若手社員が多くなっているのである。

このような「3つの壁」が立ちはだかる中で、「このまま30代を迎えても大丈夫なのか」という不安が高まっている。「30代前半までが転職の限界」といわれる日本の労働市場において、自社で市場に評価される人材になれるのか、社外に転職できるのか、そんな不安の声を匿名アンケートの中で多く聞いた。

20代を中心とした若手社員の悩みは深い。

アスファルトの地面にさまざまな方向を指す矢印とスニーカーを履いた足
写真=iStock.com/Delpixart
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Delpixart

■「トップ5%社員」がやっていた5つのこと

では、30代以降も活躍しているビジネスパーソンは20代のとき何をしていたのか。20代でも社内外で評価されている人材は何をやっているのか。

彼らは必要なスキルや人脈をすでに構築していて、テレワークにも柔軟に対応できている。成功のスタイルを確立しているため、働く場所やツールに左右されることもない。だからこそ彼らは、たとえ転職しても、その先ですぐに活躍することができる人材でもある。もちろん40代以降になっても、激変する雇用環境であろうとも自分なりの成果をあげていくはずだ。

そこで、前述の調査で浮かび上がった「3つの壁」を乗り越え、成長するための、「トップ5%社員」が実践する「5つのアクション」を紹介したい。

■アクション①:修正力を重視する

20代で突出した成果を残す社員は、完全な目的志向で、端的に表現すれば「ずるい」人たちだ。目的を明確にして、それを最短距離で達成しようとするが、常に通例を破り、2段飛び3段飛びでゴールに到達しようと考えている。

「トップ5%社員」になる「成果を出し続ける社員」は無駄が大嫌い。資料作成では「差し戻し」という行為が生産性を下げることを知っている。「差し戻し」を防ぐために、「途中フィード=フィードフォワード」というプロセスを加えている。具体的には、「完成度20%」の時点で提出先に見てもらい、意見をもらうというものだ。

時間をかけて作成する設計図や報告書なども、フィードフォワードを徹底することで「必要以上の品質」になることを避けている。100%の品質を目指して作業をするのではなく、まずは作業を進め、途中で相手の意見を組み込んで修正する。また、そのための能力を高めている。

そのほうが、短時間で確実に成果を残すことができると知っているのである。

■アクション②:業務遂行能力より「巻込力」を高める

今後、「ジョブ型雇用」が日本企業にも浸透していくことは間違いない。働く時間の長さではなく、また、場所にとらわれることもなく、「成果を出す人」を評価するトレンドが加速する。そうした環境では、1人で作業をこなすのではなく、より多くの人を巻き込んでより多くの目標を達成する人が評価されるようになる。

かつてはIQ(知能指数)の高い人が、仕事の処理能力の高い人と評価されてきた。しかし今後は、EQ(心の知能指数)が高く、より多くの人を巻き込んで複雑な問題を解決できる人が評価されるようになる。

顧客のニーズがいっそう複雑かつ高度になっていく中で、一人でこなせることには限界がある。周囲を巻き込み、多様なスキルを持つ人材を活かして、チーム力で課題解決することが求められるようになる。

そんな中で「トップ5%社員」は、周囲を巻き込むために「自己開示」「返報性の原理」を使っている。彼らはみずから腹を割って話をする。自分の弱みを見せて相手との距離を縮めて関係を築く。

普段から率先して周囲の人をサポートしているため、その人が困ったときには周囲が率先してサポートしたくなる、そんな「返報性の原理」を普段から使っているのである。

業務上の知識を高めることも必要だが、チームを組んで1+1=2ではなく、3や4にする「巻込力」を20代で身につけておくべきだ。

■アクション③:客観的な目を持つメンターとつながる

人材としての市場価値を高めながら成長していくためには、客観的に自分を見てくれる存在が必要だ。そこで、「トップ5%社員」は20代のうちにメンターを持っている。メンターとは、人材育成の指導方法のひとつで、客観的な立場で指導してくれる役割の人のことを指す。

「トップ5%社員」は、20代のうちにメンターを持つ比率が一般社員に比べて3.7倍も多い。「トップ5%社員」は「自分もああいう人になりたい」と思える人にお願いして、3カ月に1回、30分程度の1対1の対話をしている。

継続的に成長していくためには、「振り返る」ことが大切。効果的な振り返りをするためには、自分の置かれた立場・状況をできるだけ俯瞰的に見られる人にメンターになってもらうのがよい。3カ月の行動と成果をメンターとともに振り返って、その後の行動に活かしていけば着実に成長できる。

私自身も28歳のときに社内1人、社外2人のメンターを持ち、3カ月に1度面会して悩みや希望を聞いてもらった。異なる環境でビジネスをしている方々で、自分では気づかない能力や、まったく意識していなかった市場ニーズなどを教えてもらい、毎回大きな気づきを得ることができた。

■アクション④:インプットよりアウトプットを習慣化

若手社員で意欲の高い人は、積極的に読書を通して学んだり、セミナーに参加したりすることでスキルアップを目指している。とくに「トップ5%社員」は書籍を年48.2冊読んでいて、これは「95%一般社員」の約20倍の数である。

30代で「トップ5%」に入った社員にヒアリングすると、61%が20代後半から読書の習慣を身につけ、30代でも継続していることがわった。

最高の成果を出し続ける若手社員は、インプットで終わらせないことがポイントである。インプットで終わったらただの自己満足であって、アウトプットすることで自己成長につながる。

とくに20代で「トップ5%社員」に入るような人は、たとえば読書をしたらnoteやTwitterにまとめと意見を投稿するなど、アウトプットを習慣化している。メンターとの定期的な対話の機会に、自分の学びをプレゼンすることをルール化している人もいた。

新たな行動に挑戦し、継続するのは難しい。しかし、「トップ5%社員」はすでに行っている習慣の前に新たな行動を少しだけ入れている。通勤電車でNewsPicksを10分読んだり、寝る前に15分だけ読書したり……。

これは「プレマックの原理」と呼ばれ、習慣化された行動の前に習慣化されていない行動をセットすることで、新たな行動が強化されて習慣になるというものだ。「トップ5%社員」の多くがこれを無意識のうちに実践していた。

■アクション⑤:文字でなく映像でコミュニケーションする

成果を出し続ける「トップ5%社員」は、コミュニケーションによって相手を思い通りに動かすことを目指している。そして、相手を動かすために、「伝える」ではなく「伝わる」コミュニケーションを心掛けている

「伝える」は自分本位で、「伝わる」は相手本位。「伝わる」とは、自分が思い描いている動画や画像とまったく同じものが相手の頭に思い浮かぶこと。相手を動かすのが目的だから、相手の特徴や興味・関心に寄り添ってコミュニケーションすることが必要不可欠だ。

コミュニケーションによって相手を動かそうとする「トップ5%社員」は、なるべく文字ではなく画像や動画で表現しようとしている。そのほうがイメージを正確に伝えられるからだ。「トップ5%社員」はパワポ資料の5枚に1枚は大きな画像を挿入してイメージを共有する。一方、「95%の一般社員」は、1枚に多くのアイコンを使って相手を困惑させている。

ところで、オンライン会議でビデオをONにしない若手社員が多くいる。自宅のプライバシーを気にしていたり、ボサボサの髪を見せたくなったりするのかもしれない。だが、「トップ5%社員」である20代は、多くがみずから率先してビデオをONにして参加している。先輩や上司の発言をうなずきながら聴き、発言するときももちろん映像はONにして、笑顔とジェスチャーで相手に伝わるように話している。結果、好印象を持たれ、周囲を巻き込みやすくなっている。

オンライン会議中は映像ONで感情共有を
画像提供=株式会社クロスリバー

上司は「見えないこと」に対して不安を抱きがちだ。オンライン会議中に聞いていないのではないか、内職をしているのではないかと疑ってしまうこともある。あらぬ疑いを持たれずに、そして、能動的に会議に参加している姿勢を見せるためにも、ビデオをONにすることをおすすめする。

■グレート・リセットに備えよ

現在のコロナ禍も、いずれは収まるだろう。しかし元通りにはならない。

2021年1月に開催される世界経済フォーラムのテーマは「グレート・リセット」。持続可能かつレジリエンス(適応、回復する力)ある未来を実現するため、経済・社会システムの基盤を構築し直すという意味である。

越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

これは、企業や個人にも当てはまる。

テレワークは働き方の選択肢として今後も永遠に残る。実は私は、みなさんがよく使う某ビデオ会議アプリの日本法人設立にかかわっている。数年前の設立時に、まさか日本人ビジネスパーソンの誰もが使うような状況になるとは想像もしていなかった。

「出社すること」や「働く時間」で評価されることはなく、より短い時間で成果を残せる人が評価されるように時代は変わる。これまで積み重ねた経験や実績がリセットされ、「汗」が評価されたアナログ時代の経験や実績を持たない若手社員にも、先輩たちと同じ競争のスタートラインに立つことができるようになる。

変化が激しく不確実な時代で戸惑うこともあるだろう。しかし、20代社員のほうが固定観念に染まらず新たな一歩を出しやすいはずだ。

来るグレート・リセットをチャンスに変えるためにも、成果を残しやすくなる「トップ5%社員」の「5つのアクション」のどれかに挑戦してみて欲しい。実践して振り返り、よいと感じたら続ければいいし、そうでなければ修正すればよい。

その積み重ねができることこそ、「変化を生き抜くための適応力」でもあるのだから。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスターCaster Anywhere事業責任者
元マイクロソフト業務執行役員。国内および外資系通信会社に勤務し、ITベンチャーの起業を経て、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、600社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。若手向けのオンライン講座は約1万人が受講し、満足度は98%を越える。著書に『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『巻込力』(経済法令研究会)など13冊がある。

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(株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスターCaster Anywhere事業責任者 越川 慎司)

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