テレワークでどんどん太る人は「食生活の5つの沼」にハマっている
プレジデントオンライン / 2021年1月19日 11時15分
※本稿は、女子栄養大学栄養クリニック監修『テレワークごはん』(女子栄養大学出版部)の一部を再編集したものです。
■テレワークで健康になる人、太る人
テレワークで3食、自宅でとるようになったビジネスマンも多いことでしょう。
女子栄養大学栄養クリニック(※)の管理栄養士、春日千加子さんによれば、昨年から増えたテレワーク中の食生活で、ビジネスマンは大きく2つの傾向に分かれるそうです。
・テレワークで飲み会が減り、家で食事することが増え、さらに空き時間にも運動をするようになり、以前より健康になったAさん。
・テレワークで、通勤時間が減って運動不足になり、仕事の合間に間食もつい増えて、体重の増加とともに、血糖値などの数値が悪化してしまったBさん。
昨年を振り返って、あなたはどちらでしたか?
春日さんによれば、Bさんのようなケースは、「テレワークで陥りがちな食生活の5つの沼」にハマっていることが多いそうです。
※女子栄養大学栄養クリニックは、医師の管理のもと、
■テレワークで太る人の「食生活の5つの沼」
【一の沼 同じように食べてもなぜか太る】
テレワークでは、往復の通勤がない分、思っている以上に活動量が減っています。例えば、徒歩20分、電車(立つ)40分の場合は、往復で266kcal(※)消費しています。これだけ消費カロリーが減っているので、特に運動をすることなく、通勤時と同じように食べていると、
体重は着実に増加していきます。
※体重50kgの女性の場合。(エネルギー算出/女子栄養大学金子義徳教授)
【二の沼 糖質中心になりがち】
パスタやチャーハンなど、めんやごはんものが増えると、糖質(炭水化物)のとりすぎや、野菜やたんぱく質不足になりがち。
【三の沼 1日2食になりがち】
3食用意するのが大変で、つい朝食や昼食を抜いてしまう……。じつはこれは、体重が増加しやすい食べ方です。特に朝食は重要な“体内時計”のスイッチ。午前中の仕事の能率に影響します。
【四の沼 インスタントや市販食品に頼りがち】
市販のお弁当やインスタンラーメン、レトルトのカレーやパスタソース。これらの食品は塩分や脂質が多く、野菜が少ないため、活用の仕方にくふうが必要です。
【五の沼 仕事中にお菓子をつまみがち】
仕事中、口さみしくなってついお菓子を食べて気分転換。人目もないからつい食べ過ぎてしまいがち。
以上が「5つの沼」です。
「もし心あたりがあったら要注意! このような食習慣を長期にわたって続けてしまと、血液中の血糖や中性脂肪、コレステロールなどが増えやすくなり、動脈硬化や生活習慣病につながっていきます。また、新型コロナウイルスなど感染症への抵抗力も弱まってしまいます」(春日さん)
■行動を「増やす」目標を立てよう
テレワークは自分でコントロールできる範囲が増える半面、一度マイナスの習慣にハマると、自力で抜け出しにくいとうデメリットがあります。
「そんなときは、『体重を減らそう』『運動をしよう』というような漠然とした目標をたてるよりも、具体的な“行動”を“目標”にすることとがおすすめです」と春日さん。
「一般的に“減らす”習慣はハードルが高いので、まずは“増やす”“変える”から始めてみるとよいでしょう」
■体重を一日2回測ろう
春日さんが沼から抜け出す、効果的な第1歩としておすすめするのが、「1日2回体重をはかる」という「増やす」行動を目標にすることです。
「すでに1日1回は実践している方が多いかもしれません。それでも効果はありますが、朝夕2回量る方がグッと効果が上がります。私たちが行っている栄養クリニックのダイエットコースでも、参加者の方にはできるだけ1日2回でお願いしています。朝と晩の体重の変化を知ることで、1日の自分の食行動の修正ポイントが自覚できるようになるのです」(春日さん)
体格により個人差はありますが、朝の体重から夜の体重の増加量が「+0.5~1kg程度」なら、体重はキープできます。就寝中に汗や代謝でその程度の体重が減るからです。逆にそれ以上だと体重は増えていきます。
体重の増加する要因には「食べ過ぎ」「遅めの夕食」「活動量が少ない」「おやつの食べすぎ」などがあります。体重の変化が数値として見えることで、自然と自分のその日の食事を振り返って、問題に気づくことができます。
【体重を量るときのポイント】
①朝は起床直後に。トイレをすませて1日でいちばん軽い体重をチェック。
②夜は夕食直後、1日でいちばん重い体重をチェック。忘れてしまいがちなら就寝前と決めても。
③服装は朝、夜はできるだけ同じものにする(部屋着やパジャマなど)。
そして体重が増加傾向にある人は、まずは「間食」や「夕食」から見直してみるとよいでしょう。
■3日間「おやつ日記」をつけよう
「仕事の合間についおやつ」がとまらないという人は、「3日間“おやつ日記”をつけてみる」のがおすすめです(増やす行動目標)。
食事以外に口に入れたものをすべてノートに記入します。およその時間も記入しておくとよいでしょう。砂糖入りコーヒーなど、甘い飲み物も忘れずに記入します。
「あるテレワーク中の男性では仕事しながら、チョコレート(1箱)290kcalとカフェオレ(スティックタイプ加糖1本)70kcal、昼休みにコンビニでお弁当と一緒に買ったプリン1個180kcl、夕食後に夜食にせんべい1枚60kcalと、1日で間食や夜食で600kcalも食べているケースもあり、『これなら太るわけだ』と、驚いていました。このように自分で無意識に行っている行動パターンに気がつくことができ、自然と抑制につながります」(春日さん)
■寝る3時間前までに食事をすませる
「夕食」については、まず食事の時間帯から見直してみましょう。“時間栄養学”では夜は体に脂肪をためやすい時間帯であることがわかっています。できれば、「寝る3時間前までに食事をすませる」のが理想です。忙しい日も遅くとも2時間前までには夕食を終えるよう意識します(変える行動目標)。1日3食の配分も、「朝食」や「昼食」でしっかり食べて、「夕食」は腹八分目にすると良いでしょう。
また、テレワークになってから「夕食後にも、ついスマホやパソコンを見て夜更かしをしてしまう」「夕食後の夜食にお酒やお菓子を食べてしまう」といったことも体重の増加につながる行動です。
「夜遅い夕食を減らす」、「夜食を控える(減らす行動目標)」などにより、睡眠の質もよくなり、体重も減りやすくなります。夜型を朝型の生活習慣に変えることがとても重要です。
■低糖質ダイエットで、集中力が低下する?
なお、体重を減らすといっても、最近はやりの、極端に糖質を減らすようなダイエットは危険です。糖質は体内でブドウ糖になり、私たちの活動を支えるエネルギー源となります。極端に糖質を制限してしまうと、体内の脂肪や筋肉を分解してエネルギーを得ようとするため、筋肉量が減少する可能性があります。
一方でエネルギーが不足しないよう、肉類ばかりを摂りすぎると、体重は減少しても、肉の脂に多く含まれる飽和脂肪酸の摂取量が増えてコレステロールが上がる要因にもなります。
さらに脳はブドウ糖が主なエネルギー源ですから、エネルギーが不足して集中力が低下するなどの弊害も出てきてしまいます。
テレワーク中に増えた体重を減らす場合は、急激に減らすのではなく、1カ月に1kgずつのゆっくりペースで、筋肉をキープしながら行うことがポイントです。
特に感染症が流行している今、しっかり栄養をとって、健康をキープしながら、体重管理することが重要になります。
昨年秋に出版した『おうち太り・栄養不足・自炊疲れ すべて解決! テレワークごはん』(女子栄養大学 栄養クリニック監修)では、手軽に栄養をしっかりとりながら、健康と体重をキープするワザと、それらを無理なく実践するためのアイデアと料理をたくさん紹介しています。「15分で作れる昼ごはん」など、「早・うま・栄養しっかり」レシピも充実しているので、ぜひ参考にしてみてください。
実はかくいう筆者も、昨年テレワークになった折、「栄養つけなきゃ」と食事をしっかり食べ、そしてついついお菓子もつまんでいたら、あっという間に1カ月半で2kg体重が増加。その後、上記の本を企画し、自分でもアイデアを実践しながら、1カ月で1kgずつ戻しました。特に「1日2回体重を量る」はその後も続けています!
テレワーク中、沼にハマったなと思ったら、まずは1つ「行動目標」をたてて、1週間続けてみてください。きっと「体が少し軽くなった」「調子がいい」など何らの効果を実感できるはずです。そうして1つずつ試していくうちに、新しい働き方に合わせた、新しい自分の食事スタイルがみつかるはずです。
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(女子栄養大学出版部 構成=女子栄養大学出版部 城市真紀子)
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