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「批判ばかりで中身がない」菅首相を追及する蓮舫氏が自爆した根本原因

プレジデントオンライン / 2021年2月1日 18時15分

参院予算委員会で立憲民主党の蓮舫代表代行(右下)の質問に答弁する菅義偉首相(左)=2021年1月27日、国会内 - 写真=時事通信フォト

新型コロナ対策で論戦が続く通常国会が荒れている。検査体制の強化、ワクチン接種のスケジュールなど国民の生命、健康に直結する議論は脇に置かれ、国会議員の不適切な行動や発言ばかりが俎上にのせられる。いまや論争の主役は「上級国民の乱行」になっている――。

■「SNSで『国会議員は上級国民』と拡散されている」

テレビなどで繰り返し報じられているように、1月27日の参院予算委員会での菅義偉首相と蓮舫氏(立憲民主党)の論戦は特筆するべきものだった。

質問に立った蓮舫氏は冒頭、与党2議員の「不祥事」を取り上げた。自民党の松本純国対委員長代理、公明党の遠山清彦幹事長代理が、緊急事態宣言発令下に銀座の高級クラブを訪れていた問題だ。

「あのね。SNSで『国会議員は上級国民』と拡散されているんですよ。えらい迷惑ですよ、私たち」

民主党政権時代、事業仕分けで官僚たちをやり込めた、あの口調で迫る蓮舫氏。緊急事態宣言で国民の行動を縛り、さらに新型インフルエンザ特別措置法と感染症法改正案では、さらに、休業に応じない事業者や、入院に応じない感染者に罰則を科す議論が始まっている中、国会議員が夜の銀座に出入りしているのは示しがつかない。蓮舫氏が言うようにSNSでは「上級国民」に対する批判の声があふれた。

■「私自身は精いっぱい取り組んでおるところであります」

「申し訳ない」と繰り返す菅氏に蓮舫氏は「怒りは感じないのか」と挑発。さらに菅氏の語りに「熱意」が感じ取れないことを指摘し続ける。そして、クライマックスを迎える。

「そんな答弁だから、言葉が伝わらないんです。国民に危機感が伝わらないんですよ。あなたには総理としての自覚や責任感、それを言葉で伝えようとする、そういう思いはあるのですか」

これに対して菅氏は「少し失礼じゃないでしょうか」として、こう言い放った。

「私は、少なくとも総理大臣に昨年の9月に就任してから、なんとかこのコロナ対策、1日も早い安心を取り戻したい、という思い出全力で取り組んできた。できることはさせていただいている。私自身は精いっぱい取り組んでおるところであります」

■立川志らく氏は「そんな議論は飲み屋でやってくれ」

このやりとりで潮目が変わった。SNSでは、蓮舫氏の追究が、あまりにも礼を失していた、との非難が多く見られるようになった。28日以降のテレビ情報番組も、与党議員の銀座通いや、頼りない答弁をする菅氏ではなく、蓮舫氏の「無礼な」質問の方をフォーカスする内容が増えた。

国会
写真=iStock.com/TkKurikawa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TkKurikawa

いくつか例をあげると、フジテレビ系「バイキング」ではMCの坂上忍氏が「正直、失礼だなと思った」と、菅氏に肩入れ。TBS系「グッとラック!」では立川志らく氏が「そんな議論は飲み屋でやってくれ」と斬って捨てた。志らく氏は「言葉が国民に伝わるかどうか」というパフォーマンスについての議論は、志らく氏自身も含めたコメンテーターや、サラリーマンの居酒屋談義に任せておけばいいのであって、政治家は政策論を戦わせるべきだ、という考えだ。

31日のTBS系サンデー・ジャポンではテリー・伊藤氏が「(蓮舫氏は)政治家としてよりも、人間として未熟」と発言。MCの爆笑問題・太田光氏は「(蓮舫氏は上級国民ならぬ)追及国民と言われている」と言って笑わせた。

■蓮舫氏は「謝罪ツイート」、また起きたブーメラン現象

異彩を放ったのは29日の衆院本会議でのできごとだ。日本維新の会の足立氏は「長らくコロナを取り上げてこなかった蓮舫議員や維新以外の野党がなぜ、急にコロナ対策に奔走する菅総理や閣僚を偉そうな口ぶりで糾弾できるのか。総理にうかがいます。彼らはなぜそうも偉そうな態度を取る事ができるのでしょうか」と質問した。

曲がりなりにも野党の一角を占める議員が、野党議員を批判してその感想を首相に求める、という異例の事態に、議場は沸いた。

集中砲火を浴びた形の蓮舫氏は28日、自身のツイッターで「いつも反省するのですが、想いが強すぎて語気を張ってしまうことを。提案した内容がきちんと皆さんに伝わるよう、引き続き取り組みます」と「謝罪」に追い込まれた。

2012年に安倍氏が首相に返り咲いて以来、野党勢力は、政府・与党の問題を追及していくうちに、自分たちにも問題が発覚。逆に批判を受ける「ブーメラン現象」が続く。今回も、その典型例といえる。

■「一生懸命やっているからしかたない」と開き直り?

しかし、冷静に考えると27日の質疑は、蓮舫氏も問題だが、菅氏側も問題があったことを指摘せざるを得ない。

菅氏の「言葉が伝わらない」という批判は首相就任以降、しばしば指摘されてきたことだ。時として感情をあらわにし、野党を挑発するような発言もした安倍晋三前首相とは違い、菅氏は官僚が用意した紙に目を落とし、淡々と読む展開が延々と続く。蓮舫氏が指摘したことは、多くの国民も同意するはずだ。

そして「失礼ではないか」とした後、「私は、少なくとも総理大臣に昨年の9月に就任してから……」と続く答弁は、言い換えれば「一生懸命やっているからしかたない」と開き直っているともとれる。政治は、結果責任が問われる。一生懸命やっているから、休んでないから、成果が出なくてもいいという話にはならないだろう。

かつて集団食中毒を起こした企業の社長が、記者会見の後、質疑の続行を求める記者団に「私は寝ていないんだ」と発言して世論の批判を一身に浴びたことがある。そういう事態になりかねない発言だった。

■「政治への信頼を深く傷つけてしまった」と議員辞職に

自民党内には「蓮舫氏の自爆のおかげで、批判は野党に向かう。菅内閣の支持も上向くだろう」という見方もある。しかし、それはあまりにも楽観的すぎる。

「銀座通い」問題の余波は続く。松本、遠山の両氏は1月29日、責任をとって役職を辞任。遠山氏には新たに公設秘書がキャバクラなどの飲食費を政治資金から支出していたことも発覚した。クリーンを標榜している公明党にとっては大変なイメージダウンだ。

話はこれで収まらない。遠山氏は2月1日、「政治への信頼を深く傷つけてしまった」と議員辞職に追い込まれた。

松本氏の銀座訪問には、大塚高司国対副委員長、田野瀬太道文科副大臣も同席していたことが判明。3人は離党届の提出に追い込まれた。

これまで、国会議員の出席は自分1人と説明してきた松本氏は「事実と違うことを申し上げ、心からおわびしたい」と謝罪。菅氏は首相官邸に報告に来た田野瀬氏に対し「あるまじき行為だ」と叱責した。

銀座訪問問題は、辞任ドミノの様相を呈してきた。

■国会議員を監視する「自粛警察」の様相

新型インフルエンザ対策特措法と感染症法の改正案は、修正協議で、大幅に野党に譲歩。主導権は野党側が握っていた。この修正協議でも「銀座問題」は与党に重くのしかかっていた。

自民党内では金田勝年元法相が国会近くのホテルで秘書らと4人で会食をしていたことも明らかになった。金田氏の場合は、昼食で人数も4人ということで、どこまで問題視すべきかについては、議論もあるだろう。

ただし、国民世論や、マスコミは国会議員を「上級国民」として監視し、何かあればただちにやり玉にあげ続けるのは間違いない。コロナ第1、2波のころに問題になった「自粛警察」に似ている。

31日投開票の東京都千代田区長選では、自公推薦の候補が小池百合子東京都知事が推す候補に苦杯を喫した。1月26日の配信記事「『コロナ禍の選挙は投票率が高い』地方選で自民党が負け続ける根本原因」で紹介したように地方選での与党の苦戦は続く。この問題での逆風は、与党側に強く吹いていると考えた方がいいだろう。

(永田町コンフィデンシャル)

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