「稼ぐだけではない」副業する人が圧倒的に幸せになれる6つの理由
プレジデントオンライン / 2021年2月16日 15時15分
※本稿は、清水正樹『専業禁止!! 副業したら本業成果が上がる仕組み』(小学館)の一部を再編集したものです。
■アサヒビール、カゴメ、ヤフー……大企業が副業を次々許可する時代に
2018年に厚生労働省が「モデル就業規則改定」を発表して以来、副業に柔軟な姿勢を示す企業は徐々に増えてきました。
たとえば、大手企業であればソフトバンクやメルカリ、サイボウズ、タニタ、ロート製薬、ユニチャーム、リクルート、エイチ・アイ・エス、アクセンチュア、マイクロソフト、ヤフーなど。
さらに、2019年10月にはみずほフィナンシャルグループが、2020年1月にはアサヒビールが、4月からはカゴメが副業を解禁するなど、大手の製造業や金融業でも、こうした動きが進んでいます。
また、ヤフーでは、2020年10月から他社で本業の仕事を持つ人材を副業の形で自社の業務に受け入れることを決めるなど、副業人材の受け入れ体制の方も、少しずつ整ってきています。
今後はさらにこの動きが進むことが予想されますから、企業にとって社員の副業を許可することは、他社と差別化できるポイントになるでしょう。
それと同時に、「副業禁止」は企業にとってマイナスイメージになってしまう可能性もあります。副業や兼業を禁止していると、働く人の成長の機会や自由な意志を奪うことにもつながりかねないからです。
実際、私の周りでもすでに、転職先を考えるときには副業や兼業ができるかどうかが基準の一つになっているという人もいます。
また、今はまだ副業をしていなくても、将来的にはすることを考えているため、副業禁止の会社を対象外として見ている、という人もいました。
最近では50代以上の人にも「セカンドキャリア」という考え方が広がってきていますし、労働人口が減っていく分、労働力不足も顕著になっていきます。現在より転職人口も増え、転職活動も柔軟になっていくはずです。
そうした中では、企業も人をつなぎとめる工夫や、変化に対応する努力をしなければ、優秀な人が入ってこないばかりか、人材の流出にもつながりかねないでしょう。
■副業が個人に与える6つのメリット
では、副業をすることで、働く人にはどのような効果やメリットがあるのでしょうか。
もちろん、その人自身の資質や経験、また職種や業種によって違いはありますが、私自身の経験や多数の副業経験者の話から考えてみると、大まかに以下の6つが挙げられると考えています。
①普段の仕事では得られないスキルや経験値が上がる
②業界や領域を越えた視点が身に付く
③主体的、自律的に働くようになる
④人脈やサード・プレイスの確保
⑤社外で得た知識や経験を会社に還元できる
⑥収入アップとリスク分散による安心感
では、これら6点のメリットについて詳しく見ていきましょう。
①普段の仕事では得られないスキルや経験値が上がる
まずは、一つの会社にいるだけでは味わえない経験値やスキルが身に付くということです。
会社や業界によって仕事の進め方はまったく違いますから、副業をしていると「こんなやり方があったのか」と驚くこともあります。
良い意味で「会社での常識」が崩れるのです。
ましてや副業では、ホームではなくいわばアウェイの場で仕事をするわけですから、慣れた業務やスタッフばかりではありません。いつも通りのやり方がまかり通らない分、思考する機会が増え、経験値や考える力、スキルが上がっていくのは当然です。
また、通常の会社であれば通りにくいビジネスにも、副業ではチャレンジすることができます。
たとえば、「ハリネズミにドールハウスを組み合わせてみたらどうか」なんて企画は、業績目標や株主の存在を考えたら、勤め先の会社では積極的に進められない新規事業でしょう。
本当にハリネズミで採算がとれるのか、ハリネズミのカフェより猫のカフェの方が無難ではないのか……などと反対されて、結局その企画は潰れてしまう可能性が大きいでしょう。
しかし副業であれば、こうしたニッチなスモールビジネスが成立することもあります。むしろ副業だからこそ、面白いチャレンジができると思うのです。
そして、副業を許可することによって会社側としては「いろいろな仕事を経験してみたい」という社員のニーズに応えることができますから、結果的にやる気のある人材を手放さなくて済むというメリットもあるでしょう。
■人材業界にいるからこそ、ホストクラブの組織構造を立て直せられたワケ
②業界や領域を越えた視点が身に付く
2つ目は、社員に、本業だけでは得られない複合的な視点が身に付くということです。
たとえば、エンファクトリーのメンバーに、オウンドメディアの編集職に就いている志賀亮太さんという方がいます。志賀さんは、副業でも他社のメディアの編集を複数されています。仕事内容は本業と近いのですが、スポーツスクールや社会人大学院、英語学習メディアなど、業界が多岐にわたっているそうです。
すると、それぞれの業界で、SEO(Search Engine Optimization/検索エンジン最適化)やCVR(Conversion Rate/ウェブサイトのアクセスのうち登録や購入などにつながった割合)の視点が養われることになり、それが本業でも役に立っているといいます。
一人が複数の業界に関わることで、多くの学びがあるということです。
こんな例もあります。
人材業界で働く知人が副業でホストクラブのコンサルティングを頼まれたのですが、いろいろ話を聞いてみると、そのホストクラブでは売れっ子ホストが頻繁に引き抜かれて困っていました。またクラブの店長の役割も不明瞭で、給料も安く、モチベーションも高くありません。
そこで彼は、人材業界でいろいろな組織を知っていたところから、外資系保険会社のような組織構造をこのホストクラブに応用してみたらどうかと考えました。
一部の外資系保険の会社では、一人ひとりのエージェントがあげてきた営業実績の一部がマネージャーにも入る仕組みになっています。その構造を取り入れて、部下のホストが売上を上げたら、その一部が店長にも入るような仕組みを提案したのです。
すると、これまでモチベーションの低かった店長が積極的にホストたちのフォローアップをするようになり、チームワークが良くなりました。
店長の収入がアップすると、ホストたちも店長の職を目指すようになり、職場から離脱することも減りました。
ある業界で成功している組織構造のフレームワークを別の業界に当てはめてみたら、組織がうまく回るようになったのです。
また、「いつかは自分で経営をしてみたい」と思っているなら、それを副業で実現することもできます。会社に在籍しながら、経営者目線を育てることができるということです。
■外に出てはじめて社内のリソースに気付ける
③主体的、自律的に働くようになる
3つ目の効果は、主体性や自律性を得られることです。
会社から仕事を与えられるのではなく、自ら手を挙げて行う副業では、当然主体的にならざるを得ません。
また、限られた時間で仕事を進めるためには、効率的に動く必要があります。常に「いつ、どの順番で何を行うべきか」と思考する癖がつきますから、自然とクリエイティビティも上がっていくのです。
私の知りあいにも、副業によって、集中的に仕事をする方法や時間管理のコツを学んだ、と話す方はたくさんいます。
また、私が会社という組織を離れて個人で仕事をしたときに気が付いたのは、「会社がいかにリソースを持っているか」ということでした。
会社の持つヒトやモノ、カネといった資源や企業価値があるからこそ、社員は自分たちの業務を遂行できるのです。
個人が自分の名前だけで稼ぐというのは、実は大変なことです。
やってみて初めて、会社の持つビジネスモデルがいかに優れたものかということもよくわかりますから、その分、会社にはきちんと貢献しなければいけないという意識も生まれます。
そうした会社のありがたみを、副業で実感したという方は少なくありません。
■「仕事の越境」を体験すると、自己肯定感が上げる
たとえば、岡田由美さん(仮名)は、本業では大手WEB企業でコーディングの仕事をしていますが、副業では、WEBのコーディングだけでなく、デザインやディレクションなどもトータルに行っているそうです。
部分的な仕事が多い本業と違って、副業では一人何役も行うなど包括的に仕事をしているため、本業では得られない満足感を得ることも多いといいます。
しかし、さまざまな企業と副業をした上であらためて本業の会社を見てみると、大企業であるため安定しており、リソースも十分にあることがよくわかったそうです。
そのため転職や起業はせず、副業でいろいろな仕事を経験して自分のスキルを広げていきたいと話していました。
ときに、会社と社員は「組織vs個人」といった対立構図で語られることがありますが、そもそも会社という船が沈んでしまえば、その船に乗っている社員も全員沈んでしまうわけです。
これまでは、社員は会社の指令に従っていればいいという受動的な考え方が一般的でしたが、経済的に厳しい時代には、会社と社員が協力して荒波を乗り越えていく必要があります。
会社が社員に副業の機会を与えることで、社員は会社の恩恵にあずかるだけでなく、自分自身でもスキルを身に付けて会社にも環流させることができるのです。つまり、「仕事の越境」を体験することで、自己肯定感が上がり、ひいてはそれが本業の成果を上げることにつながるという、本業と副業のシナジーはすでにさまざまな業種で報告されています。
これからは、お互いの利益を考える「相利共生」の意識を持ったフラットな組織が強くなっていくのではないでしょうか。
■所属するコミュニティが複数になると、自分自身がより満たされる
④人脈やサード・プレイスの確保
4つ目の効果は、コミュニティや人とのつながりを手に入れられることです。
「20代・30代の副業意識/実態調査」(d’sJOURNALによる2019年11月の調査)によると、副業を経験したことのある人に「なぜその副業を始めたのか」を聞いてみたところ、もっとも多かったのが「収入を増やしたい」でしたが、2番目に多かったのが、「いろいろなコミュニティに属したい・人と交流したい」というものでした。
社会人になると新しいつながりやコミュニティをつくる機会は減り、知り合うのは会社の同僚や取引先の人などに留まることが多いため、こうした希望を持つ方も少なくないでしょう。
実際に副業をしていると、会社だけでは得られないつながりや人脈がどんどん増えていきます。
サード・プレイスとは自宅と会社以外で心地よく過ごせる、文字どおり「3つめのコミュニティ」のことですが、仮にプライベートや本業の調子が悪いときにも、サード・プレイスで理解し合える仲間がいたり、励まされたりすると、メンタル的にも強くなるように感じます。
私自身、興味の範囲が広い性格なので、一つの業界や一つの役割に留まらず、所属するコミュニティが複数になることで、自分自身がより満たされるように感じています。
■自分の世界が大きく広がるきっかけに
⑤社外で得た知識や経験を会社に還元できる
そして5つ目が、社外で学びの機会を獲得することによって得た知識や経験を、会社に還元できることです。
これは非常に大事なことだと思っています。私も副業で得た知見や人脈を本業で大いに活用していますが、③でふれた効果とはまた異なる、こうした本業と副業のシナジーが、自分を大きく成長させてくれると感じるのです。
エンファクトリーのメンバーで、新規事業の立ち上げを行っている松岡永里子さんも、同様のことを話しています。
松岡さんは副業でプレゼント用バルーンのECサイトでディレクターをしていますが、ECサイトの立ち上げからコンテンツ制作、ディレクション、集客や売上の分析、SEO対策なども行い、総合的に関わっているとのこと。
その副業で知り合ったフリーランスの方には、本業でのお仕事もお願いするなど、複合的なつながりを持てるようになったのがとても嬉しいと語っています。
また、クライアントとECサイトの話をする際も、自分の実体験をもとに具体的に話せるようになったそうです。
つまり、副業の経験によって自分の世界が大きく広がったといえるでしょう。
複数の職場や仕事に関わることによって、収入面やスキル面、精神面など、さまざまな側面で人生を拡張できるのです。そしてそれは、必ず本業への還元につながります。
■副業は自律型社会を生きるための武器になる
⑥収入アップとリスク分散による安心感
6つ目は、経済的な安心感を得られることです。大企業でさえリストラの可能性がありますから、本業以外にも収入源を持っておくことは大きな安心感につながります。
これらはスキルや能力とはいえませんが、こうした安心感が与える余裕は、ビジネスを行っていく上で大きなメリットとなるでしょう。
エンファクトリーの社員に、副業としてパグなどの短鼻の犬種に的を絞った犬用の洋服やグッズを制作し、インターネット経由で販売をしている山崎俊彦さんがいます。
山崎さんによると、エンファクトリーの前に勤めていた会社が、ある日突然倒産してしまったそうです。
会社員一本で暮らしていると、このように突然会社や仕事がなくなるリスクがあることを実感した山崎さんは、きちんと自分で生きていくスキルを身に付けなければいけないと考え、次の勤務先に副業を推奨しているエンファクトリーを選んだといいます。
また、ある知人は転職先を探している期間に副業で稼ぐことができたため、収入補填ができて助かったと話していました。知り合いの方に「今、転職期間中で時間があります」という話をしたところ、「それなら、うちの会社の営業を手伝ってほしい」という話になり、お手伝いをして、成果報酬である程度まとまった金額を稼げたそうです。
考えてみれば、生きていく上でお金というのは非常に大切なものです。
にもかかわらず、多くの人がきちんとお金の知識をつけないまま社会人になり、会社からのお給料だけを頼りに暮らしています。
しかし、今後は年金受給などもどうなるかはわかりませんから、資産運用もしっかり考えておかなくてはいけません。
同様に副業も、自律型社会を生きるための一つの武器になるでしょう。
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エンファクトリー 取締役 執行役員CBO
1986年千葉県生まれ。オンラインショップ「スタイルストア」や、専門家がオウンドメディア上の記事執筆を行う「専門家@メディア」、複業プラットフォーム「Teamlancer」、DX支援(コンサルティング~受託制作・開発)を行う「enFactoryLAB」など多種多様な事業を行う、株式会社エンファクトリーの取締役 執行役員CBO。同時に、ハリネズミと触れあえる“ちくちくCAFE”オーナー、合同会社flasco/共同代表、イノベーション・エンジン株式会社/アドバイザー、株式会社ネットショップ総研/監査役、その他フリーランスとしてさまざまな企業のWEBマーケティングや新規事業コンサルティングに携わるなど、複業活動にも取り組む。
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(エンファクトリー 取締役 執行役員CBO 清水 正樹)
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