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「確定拠出年金を預貯金か保険で構成」退職時、老後資金の少なさに愕然とする人の特徴

プレジデントオンライン / 2021年4月19日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

確定拠出年金は、個人型・企業型ともに、残高総額の過半を預貯金や元本確保型の保険が占めています。セゾン投信の中野晴啓さんは、「この人たちは実質的には拠出金を運用に振り向けず、まったく増えない状態を好んで選んでいることになります。そして、将来退職時に愕然とすることになるのです」と指摘します――。

■節税メリットはおまけにすぎない

日本でも確定拠出年金制度(DC)に参加する人が企業型で約750万人、個人型(イデコ)で約200万人と、米国の定着度合いにはまだまだ遠く及びませんが、着々と普及へ向かい始めています。しかし参加者は増えていても、残高の半分以上が預貯金あるいは元本確保型保険という中身を見ると、本来のDCにおける制度主旨への理解が正しく浸透しているとは到底言い難いのが現状です。実際金融機関でも、「イデコは節税メリットがこんなにお得」という類いの誘導で説明されることが多く、制度目的をきちんと伝える努力が足りないとも感じています。

もちろんDCは年間拠出金額が全額所得控除の対象となることから、各人の拠出金に対する所得税率分が還付される経済的メリットは大きいわけですが、当該制度主旨はその枠内でしっかり運用を続けることにこそあるのであって、むしろ所得控除は制度に付与されたおまけというくらいに理解してほしいのです。

■828万円が30年後に1500万円以上に

ちなみに2022年度から、「イデコ」は65歳まで拠出可能期間が伸び、それ以後も75歳までは継続して制度内運用が可能で、その間に積み上がった運用益が全額非課税となることのほうがはるかに重視すべき経済的恩恵であると考えるべきです。

たとえば企業年金がない会社員が毎月上限拠出額である2万3000円を30年間拠出して運用を続けるとした場合を考えてみましょう。世界経済の成長を相応に取り込む国際分散型のバランスファンドで長期的な成長軌道から得られるリターンを年率4%と仮定すると、拠出総額828万円が30年後に1500万円超にまで育ち、その拠出額との差額にあたる源泉所得税(現状20%)が課税免除される予定です。要するに長期投資による果実を丸ごと享受できる効果は実に大きく、制度内でしっかりと長期運用を継続することが大目的であることを理解できるはずです。

■維持手数料分が目減りするだけの人も

ところが「イデコ」の利用実態はというと、拠出した先に預貯金あるいは元本確保型保険を選択している残高比率は54%と、過半がゼロ金利前提のノーリターン商品なのです。この人たちは実質的には拠出金を運用に振り向けず、まったく増えない状態を好んで選んでいることになります。たとえば一般的な銀行の「イデコ」だと、年間6000~8000円程度の維持手数料が控除されるため、毎年その分だけ拠出残高が目減りすることを看過しているわけです。

繰り返しますが、「イデコ」はしっかりと長期運用して将来に向けお金を育てていくために創設された制度であって、お金を育ててこそ長期運用益の非課税特典が活かせるのです。なかんずく年間所得がない人(=節税効果が見込めない人)にとっては、「イデコ」で積み立てながらも運用益を出していないなら、毎年維持手数料をドブに捨てているだけの残念な状況を自ら選んでいることになってしまいます。

積み木で作るiDeCoの言葉
写真=iStock.com/SB
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SB

■企業型DCも拠出総額の過半がノーリターン商品

さて企業型DCでも課題は同様で、拠出総額13兆5000億円(2020年3月末)のうち過半が預貯金と元本確保型保険になっています。企業型DCの場合、これらを選んでいるケースでは運用におけるリスクを極度に嫌っている人だけでなく、きっと当該制度が一体何なのかという根本さえ理解していない、関心がない人たちが少なからずいるはずで、知らないことがより深刻なのです。

そもそも日本における企業型DCは、企業退職金制度としての確定給付型(DB)から、会社都合による移行需要によって導入が普及してきた経緯があります。DBは企業側が従業員に将来給付する退職金を予定通りの金額で支給するため、その額を満たすために必要な予定利率を会社側が約束して従業員の代わりに運用していく制度です。しかし、ここ数十年にわたるゼロ金利時代で、予定運用利回りの達成が困難になってきたことにより、運用責任を従業員各自の主体性に委ねることを目的にDCへシフトしたわけです。

したがって会社型DCの制度下では、各人が自己の判断と責任できちんと長期運用しないままならば、本来DB制度下で想定されていた退職金額に対し、大幅に不足したままになっていることに、当事者は気付かないといけないのです。

■知らないと損をすることのオンパレード

しかし企業サイドからは、DC制度への移行に関するそうした本質的意図と、そこへの説明が圧倒的に不足したままです。そのため、運用に無関心、乃至は毛嫌いしている人たちは、元本を育てて増やすことに対する必要性を認識することなく、減らなければいいと預貯金や保険型を選択しているのだとすると、将来退職時に愕然とすることになるのです。

少なくとも、企業がDB時に予定利率としてコミットしていた以上の期待リターンを前提にした長期運用に参加しなければ、企業型DCに移行した意義は従業員の立場としては皆無になるわけです。

世知辛い世の中は、知らないと損することのオンパレードです。このコラムを読んだ皆さんは、企業型・イデコともに、確定拠出年金制度はちゃんと自らの将来を見据え、まっとうな長期運用を続けることが必然の「じぶん年金」であることを強く認識して、自ら考え強い意志を持って取り組んでください。

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中野 晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信・代表取締役会長CEO
1987年明治大学卒業、クレディセゾン入社。関連会社資金運用部にて債券のポートフォリオ運用に従事後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用や、海外契約資産の運用アドバイスを手がける。2006年セゾン投信を設立。

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(セゾン投信・代表取締役会長CEO 中野 晴啓)

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