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「衆参3選挙で全敗でもいつも通り」菅政権から反省の言葉が出てこないワケ

プレジデントオンライン / 2021年4月28日 9時15分

衆参3選挙で自民党が全敗したことについて、記者団の質問に答える菅義偉首相(左)=2021年4月26日、首相官邸 - 写真=時事通信フォト

■自民党は広島で勝利する「1勝1敗1不戦敗」を狙っていた

菅義偉政権が発足して初めての国政選挙となる参院広島選挙区の再選挙、それに衆院北海道2区と参院長野選挙区の補欠選挙が4月25日に投開票され、自民党が全敗した。

北海道2区は候補者の擁立を見送った不戦敗とはいえ、自民党が敗れたことには違いない。

自民党は保守王国の広島で勝利を収める「1勝1敗1不戦敗」を狙っていた。ところが、結果は3戦3敗だった。今後の菅首相の政権運営にとって大きな打撃である。一方、立憲民主党、国民民主党、社民党などの野党陣営は今回の善戦で活気づいている。

ちなみに勝者の顔ぶれは、次の通りである。

与野党が対決した参院広島選挙区では、野党各党が推す諸派の宮口治子氏(45)が自民党の西田英範氏(39)を破って初当選した。衆院北海道2区は野党統一候補の立民の松木謙公氏(62)が、参院長野選挙区も立民党が勝って羽田次郎氏(51)が当選を決めた。

■新型コロナ対策への不満と政治とカネの問題は深刻

投開票翌日の26日午前、菅義首相は官邸で「国民の審判を謙虚に受け止め、さらに分析をしたうえで、正すべき点はしっかり正していきたい」と語ったうえで、政治とカネの問題について「自民党総裁として重く受け止めたい」と述べた。また、衆院解散の判断に与える影響には「常日ごろから申し上げているが、新型コロナウイルス対策を最優先に取り組んでいくという考え方に変わりはない」と説明した。

衆参3選挙の争点は、①菅政権の半年の評価、②政治とカネの問題、③新型コロナ対策の3つだった。

なぜ菅政権は全敗したのか。北海道2区補選は、収賄罪で在宅起訴された元農相の吉川貴盛氏(自民党離党)の議員辞職に伴うもので、「勝ち目が薄い」と当初から自民党は候補者の擁立を見送った。

広島再選挙は2019年の参院選を巡る買収事件で有罪が確定した河井案里氏(自民党離党)の当選無効に伴って行われたもので、やはり自民党の政治とカネが大きな争点となり、自民党に対する信頼が崩れ、自民支持がかなり減った。

長野補選は新型コロナに倒れた元国土交通相の羽田雄一郎氏(立憲民主党)の死去に伴う選挙で、雄一郎氏の弟の羽田次郎氏が野党各党の支持を得て与野党一騎打ちに勝利した。

全敗の理由は、有権者の新型コロナ対策への不満と自民党が自ら招いた政治とカネの問題だと整理できる。

■「9月に衆院を解散して総選挙」の可能性大

これまで菅首相は記者団との懇談で「政治家は衆院を解散して勝たなければ続かない」と話していた。つまり衆院解散後の衆院選を乗り切って首相を続投したい。これが菅首相の本音だろう。

続投には、衆院解散の時期を見極める必要がある。国民の支持がより多く得られるタイミングで解散総選挙に踏み切って勝たなければならない。

衆院議員は10月21日で任期満了を迎える。自民党総裁の任期満了はその約1カ月前の9月30日だ。この前に都議選(7月4日投開票)と東京五輪(7月23日~8月8日)、東京パラリンピック(8月24日~9月5日)がある。問題の新型コロナ対策も大きい。

荒天の日の国会議事堂
写真=iStock.com/uschools
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/uschools

こう考えていくと、菅首相は9月に衆院を解散して総選挙に打って出る公算が高い。その場合、総裁選は衆院総選挙後に先送りにするだろう。もちろん衆院選で勝つことが前提だが、衆院選の勝利後に総裁選に臨めば、総裁選は問題なく通過して自民党総裁も続投できる。

東京パラリンピックが9月5日で閉幕する。そのころには新型コロナのワクチン接種の効果もかなり出ているはずだ。突発的な政治日程にも左右されるだろうが、東京パラリンピック終了1週間後の「9月12日の日曜日」が衆院総選挙の投開票日になるのではないか。

■新聞社説の酷評は「世論の声」である

読売新聞を除く全国紙が一斉に、衆参3選挙での自民党の全敗を4月26日付の社説で取り上げている。各社説の見出しを並べてみると、どれも菅政権に手厳しい。

「自民3戦全敗 政権運営、反省の時だ」(朝日新聞)
「衆参3選挙で自民全敗 政権半年への厳しい審判」(毎日新聞)
「自民党『3敗』 有権者の厳しい声を聞け」(産経新聞)
「菅政権は選挙全敗を真摯に受け止めよ」(日経新聞)

菅首相をはじめ政権幹部はこうした新聞社説の酷評を受け止め、日本という国の舵取りに全身全霊で取り組んでほしい。

まず朝日社説。冒頭部分から参院広島再選挙などの惨敗に対し、「菅首相は一連の審判を重く受け止め、政権運営全般の反省につなげねばならない」と主張し、さらにこうも指摘する。

「広島はもともと、衆院の7小選挙区のうち六つを押さえる『自民王国』である。地力の差がありながらの敗北は、事件へのけじめも疑念解消への取り組みも不十分な、自民と政権に対する有権者の強烈なしっぺ返しといえる」

「有権者の強烈なしっぺ返し」とはまさにその通りだ。菅首相はこの朝日社説の批判の言葉を正面から受け止めるべきだろう。

■いまの野党の実力で自民・公明政権を倒せるのか

最後に朝日社説はこう訴える。

「一方、共闘が功を奏し、3勝した野党も慢心は禁物だ。長野では、立憲の候補者と共産、社民の地元組織が結んだ政策協定に国民民主が反発し、推薦を一時白紙とする混乱があった。近づく衆院選に向け、選挙区での候補者の一本化と同時に、共通の公約づくりや政権の枠組みに対する考え方のすり合わせを急がねばならない」

自民党政権を嫌い、野党を好む朝日社説らしさが滲み出ている。だが、いまの野党の実力で自民・公明政権を倒せると考えているのだろうか。もしそうだとしたら、旧民主党政権による原発事故対応の杜撰さを忘れている。野党の主流の立憲民主党は、あの旧民主党なのである。

■「対応が再三後手に回り、緊急事態宣言の発令に追い込まれた」

次に毎日社説。「与党が補選・再選挙で1勝もできないのは異例の事態だ」と書いたうえで、政治とカネの問題が最大の争点となった広島の参院再選挙に触れてこう指摘する。

「しかし、自民党の二階俊博幹事長は事件を『他山の石』と評し、首相も選挙応援に入らなかった。政治不信の払拭に取り組む姿勢が全く見えなかった」

二階幹事長の言葉も菅首相の行動も有権者を馬鹿にしている。政治家の存在価値は私たち国民のためにどれだけ骨身を削って働いたかにかかっていることを自覚してほしい。

毎日社説は指摘する。

「まず、新型コロナウイルス対策だ。対応が再三後手に回り、3回目となる緊急事態宣言の発令に追い込まれた。感染対策の『切り札』と位置づけるワクチンも、海外からの調達に手間取り、国民にいつ行き渡るのか見通せていない」
「日本学術会議の会員候補6人を任命しなかった問題は、拒否の理由を説明せず、全く解決していない。放送事業会社に勤める長男が総務省幹部を接待した問題についても、『長男は別人格』とかわし、真相解明に向けて消極的な態度を貫いた」

■「国民感覚からかけ離れたもの」「独善的な政治姿勢」

新型コロナは人類が経験したことのない新興感染症で、コントロールするのがやっかいな病気である。世界中どこの国でも対策に苦労している。毎日社説は「対応が再三後手に回った」と酷評するが、常識のある新聞社説である以上、対策の難しさも考慮すべきではないか。

ただ、この半年間の政権運営を振り返ってみると、日本学術会議の会員任命や長男の別人格発言など、菅首相からも問題が浮上した。

毎日社説はこう指摘する。

「首相は『当たり前の政治』を掲げ、国民目線の政策をアピールしてきた。しかし、実際の政権運営は、国民感覚からかけ離れたものだった」
「この半年間で浮かび上がったのは、国民と向き合わずに、説明に意を尽くさない独善的な首相の政治姿勢である」

毎日社説が指摘するような「国民感覚からかけ離れたもの」や「独善的な政治姿勢」があるとすれば、それは解散総選挙での急所となりかねない。日経新聞の見出しの通り「菅政権は選挙全敗を真摯に受け止めよ」といいたい。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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