「パンケーキ、から揚げもヤバい」おいしそうな焼き色は10倍カラダを老け込ませる
プレジデントオンライン / 2021年6月8日 11時15分
※本稿は、牧田善二『20万人を診た 老化物質「AGE」の専門医が教える 老化をとめる本』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■酸化と糖化が老化の元凶
酸化は体のサビ。活性酸素が原因
酸化とは物質に酸素が結合する反応です。体に起こる「サビ」といわれています。大気中には20%の酸素が含まれており、さまざまな外部からの刺激で、体内に活性酸素(※)が発生します。この物質が過剰に生まれると細胞を障害してがん、心筋梗塞などの生活習慣病を起こします。
人間の体にはこの活性酸素から体を守る抗酸化反応防御機構が備わっています。活性酸素産生が抗酸化反応防御機構を上回った状態を「酸化ストレス」といいます。
酸化ストレスを起こす原因となるのは紫外線、大気汚染物質、タバコ、酸化した物質の摂取(古くなって酸化した油など)、過度な運動、仕事などがあります。
逆に酸化ストレスを抑える抗酸化反応防御物質には生体にあるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素と呼ばれる物質。さらにビタミンC、ビタミンE、カロテノイドなどの食べ物に含まれる物質があります。
いままではこの酸化が人間の老化の原因と考えられてきました。しかし、最近の研究では次に述べる糖化によって生まれるAGEが酸化以上に老化に深く関与していることがわかってきました。しかも糖化反応が進むと酸化反応も同時に進行し、その逆もあります。
つまり酸化反応と糖化反応は同時に進むことが多いので糖化酸化反応(Glycoxidation)と呼ぶことが提唱されています。
※ 活性酸素とは、我々が呼吸している大気中の酸素よりも活性化された酸素およびその関連分子の総称で、不安定でいろいろな物質と反応しやすい性質をもっている。
■「揚げる」「高温で焼く」とAGEが生の状態の10倍以上に
糖化は体のコゲ
糖化とはタンパク質や脂肪にブドウ糖が結合する反応です。こちらは体に起こる「コゲ」といわれています。
この反応によって体の中にAGEという物質ができてきます。この糖化は体の老化、特に肌のシワやシミの最大の原因であるだけでなく、がん、心筋梗塞、脳卒中、アルツハイマー病、骨粗しょう症、高血圧症、糖尿病などさまざまな病気の原因にもなっています。
つまり、AGEは「人類最大の敵」といえます。AGEはこれを多く含む食べ物を摂取することで体の中に溜まります。
AGEは高い熱を加えた調理によって大量にできます。具体的には肉や魚を「揚げる」「直火など高温で焼く」と生の状態の10倍以上にAGEが飛躍的に増えるので注意が必要です。
肉や魚は生が理想ですが、それが難しければ、煮たり蒸したりする調理法にしましょう。また、AGEはブドウ糖から生まれるので血糖値が上がる糖質、炭水化物をたくさん食べると増えます。そのほかに喫煙や紫外線もAGEを増やします。
61歳の女性で露出している額としていない太ももでAGE量は約4倍の差がありました(British Journal of Dermatology 2001, 145:10-18)。紫外線によるAGE産生の差だと考えられます。
■パンケーキ、から揚げ…「おいしそうな焼き色」が老化の原因
AGEは体内でも生成される
AGEはフランスの科学者ルイ・カミーユ・メラールが発見しました。タンパク質は、アミノ酸で構成されています。メラールは、アミノ酸(タンパク質)と糖質を一緒に加熱すると褐色になることを発見。メラールの英語読み「メイラード」から、この反応を「メイラード反応」と呼んでいます。
たとえば、パンケーキは、小麦粉(炭水化物※)と砂糖(糖質)、卵(タンパク質)を混ぜてつくります。フライパンで加熱すると褐色になります。これがメイラード反応です。AGEが大量に発生します。ワッフルやから揚げも褐色になります。これらもメイラード反応です。
タンパク質や脂質とブドウ糖が結びつくとAGEができます。食品中にもAGEは含まれています。一覧にしましたので、参考にしてください。
AGEは食べることで体内に取り込まれます。加えて、体内の糖質とタンパク質が体温で熱されて結びつくことでも生成されます。AGEは体に吸収され溜まると、なかなか体外に排出されません。体のあらゆるところに溜まって、組織を壊し、老化の原因となります。AGEを溜めないようにするため、糖質の摂りすぎに注意する必要があります。
※ 炭水化物は糖質+食物繊維のこと
■「ふけない調理法」AGEは調理法で含有量が変わる
できるだけ生に近い状態で食べる
AGEは同じ食品であっても調理法によって含有量が変わってきます。いちばん少ないのは生です。そのあとは、煮る、蒸す、焼く、揚げるの順となります。
高温の調理になるほど、AGEは増えていきます。魚であれば、焼いたり、揚げたりするより、生で食べるお刺身がベストなのです。食品から摂取したAGEはほとんどが消化の際に分解されます。
しかし10%は体内に吸収され、そのうちのさらに0.6から0.7%は体内に残ると考えられています。食事は基本的に毎日3食食べます。微量であっても、食べるごとに蓄積されていきますので油断はできません。毎食の食事でできるだけAGEを摂らないように調理法に気を配ることが大切です。
たとえば、ステーキなら十分に焼くのではなく、さっと焼いたレアに近い状態がよいということになります。AGEはKU(キロユニット)という単位で表されます。1日の上限は7000から1万KUです。少なくとも、これらを超えないように食べることが大切です。
たとえばベーコンは13グラムで約1万1000KUです。フランクフルトソーセージ(90g)も5分焼くと1万KUを超えます。できるだけ、AGE含有量の少ない食品を食べるようにしましょう。
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AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。 2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。 著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。
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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)
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