「なにか悩んでることある?」ダメ上司ほど聞きたがる社員面談のNG質問
プレジデントオンライン / 2021年9月2日 10時15分
■職場のコミュニケーション不足を補う“社員面談”の極意
コロナの影響で在宅勤務が増えた会社も多いでしょう。また、「働き方改革」により労働量の総量規制がかかり、リモートワークだけではなく、働き方や、働き方の変化によって社員との接し方が大きく変わっているという外部環境の変化があります。
そのような状況下で多くの上司が悩んでいるのは、このコミュニケーションの絶対量が減ってしまうことです。
リモートワークだと隣で仕事をしている時とは異なり、他愛のない話や、日々起こる疑問の解決もなかなか難しくなり、多くの上司や経営者が悩まれていることでしょう。
部下に手間暇かけて教育することが物理的に難しくなっている現状があり、OJT、現場教育の時間が圧倒的に減少しています。さらに在宅やリモートワークだけではなく、働き方自体が変わってきていますので、自然にコミュニケーションを取ることも難しくなっていると言えます。
そのため、コミュニケーションを取る時間を強制的にでも作っていかないと、コミュニケーションというものが生まれなくなっています。
その1つとして、面談の重要性が増しています。
とにかく何でも面談をすればいい訳ではありませんから、より短い時間でも高いコミュニケーション効果をしっかりと得られるような面談にしていく必要があります。
■面談の必勝法「相手に7割話してもらう」
きちんと面談を行うことができれば、間違いなく部下の成長にもつながり、信頼関係が生まれます。理解度が向上して、モチベーションアップにもつながっていきます。「いい組織」と呼ばれるような会社は、間違いなく面談が上手です。
面談が上手とは、1対1だけではなく、部下と上司の人間関係、信頼関係が構築できていて、だからこそコミュニケーションが円滑に進み、仕事がうまく回り高いパフォーマンスを生み出すことにつながります。いい面談は組織の風土改革にもつながります。
面談の必勝法は「相手に7割話してもらう」です。
皆様が普段されている面談で、7割話してもらっているか振り返ってみてください。実際の面接のほとんどは逆で、上司側が7割、下手をすれば8割、9割喋っていて、面談される側は聞いているだけです。
面談だけではなく、ミーティングや会議も、やはり自分たちが主体的に発言している量が多いと、その会議、面談、ミーティングの自己満足度が高まっていきます。
話してもらうことで、まずはこの時間が有意義なものだったと感じてもらう。そして、話してもらうことで、対象者のことを理解できます。
■面談する側は、事前準備を軽視してはいけない
これまでの面談で自分が7割話していたという方は、7割話してもらえるよう、面談の形を変えるよう試みてください。
相手に7割話してもらうためには「最近どうだ?」といった投げかけだけでは不可能で、事前準備が必要です。具体的には、相手を知ることです。相手を知らないと、こちらの質問が推測や的外れなものになってしまいます。
以下のチェックリストはすべて答えられるようにしておきましょう。
面談の対象者は、部下やメンターなどかもしれませんが、そこに対するチェックリストとして左のパーソナル部分があります。
あとは右側です。最近頑張ったことや力を入れていること、楽しいこと、ストレスを感じること、目標などもしっかりと把握しておきます。仮に把握できていなくても、事前にこれらの項目を書き出し、わからないことは聞いてみるのです。
いわば、営業活動とも同じです。商談に臨む前に顧客情報やニーズをできるだけ集めるように、面談でも相手のことをできるだけ知る努力をします。
■部下の本音を引き出す10のポイント
その上で、本音を引き出す対話術の10個のポイントをお伝えします。面談終了後に振り返って、出来たことと出来なかったことをしっかり把握し、改善していきます。この繰り返しがいい面談につながります。
まず、①から。いきなり本題に入らないのが1つのポイントです。
部下からすると、上司との面談は一定の緊張感があるもの。その状況下で、いきなり本題に入って「最近の仕事ぶりはどうなんだ?」や、「何か悩んでることあるか?」と聞いても、本質的な答えや本音は出てきづらいものです。
1時間の面談であれば、5分から7分ぐらいはアイスブレイクでたわいのない話から入っていただくのが大事です。
また、ここでも1つポイントがあります。言い方はよくないと思いますが、意図がわからない雑談や無駄話を極端に嫌い、アイスブレイクを「そんなこと話す意味ありますか」と言うような世代もいますから、無駄話ではないと意図を伝えてあげるようにしましょう。
質問には「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」があります。簡単に言えば、イエス、ノーや、AorBで答えられない質問がオープンクエスチョン、AorBやYESorNOであえて答えられるのがクローズドクエスチョンです。
クローズドクエスチョンのメリットは結論をすぐに出してもらえることです。しかし、面談とは速やかに結論を出してもらうような場ではありません。
「最近どう思っているの?」「どんなことをやってみたいの?」など、向こうの発言量が多くなるような質問をするほうが、話させる面談という意図に合致します。
聞いていると、「なんだこの話は」と思うことがたくさん出てきますが、話の内容ではなく、多く発言させることを1つの着眼点としてください。
■「聞いてくれている」という実感が部下の発言量を増やす
3つ目が反復です。「相槌を打つこと」だと研修で学んだことのある方もいらっしゃるかもしれませんが、話を聞いて「そうだね、では次に」と言うくらいの相槌では「聞いてくれていない」印象を与えて逆効果です。
一番簡単なのは、本人が言ったことをそのまま反復して返すことです。「こういうことをやりました」という話に対して、「そうなんだ。今日こういうことやったんだね、すごいね」と、そのまま返すだけでも、「聞いてくれている」という印象が残りやすいものです。
「聞いてくれている」印象を与えることが、より発言量を促進させる要因になります。
もう少し上級テクニックになると、相手の発言をオウム返しにするだけでなく「それだったらこういう感情になったのかな」というふうに、意図を汲み取って答えるようにします。
4つ目が共感・指示です。相手の発言、考えを否定せず、まずは受容することが必要です。
受容とは「その気持ちはわかる」と受け止めることです。その次の判断や行動が正しくないことはあるかもしれませんが、その人が思っていることに対して良い悪いは、極論を言えばありません。
そのため、「気持ちはわかる」としっかりと受け止めて、応援しているスタンスを取っていってあげないと、部下の心理的ハードルが上がってしまい、全然発言しなくなってしまいます。
7割話してもらうためには、まずは共感し、支持し、応援し、受け入れていくスタイルを見せていかないといけません。
■部下を否定してはいけない
5つ目は言い換えです。「つまりこういうことだよね」としっかり言い換えてあげることで、話した人の頭も整理されます。面談された側に1つメリットが生まれているのです。
メリットが生まれることは、面談の時間がいいものになっているということであり、「この人と話すと自分の頭のモヤモヤが整理される」と相手は感じます。そうなると、発言も積極的になっていきます。
6つ目は無意識的にやってしまうことが多いですが、意識してこの「肯定質問」をしていただきたいと思います。肯定質問とは、例えば、整理整頓ができない人に対して、「なんでできないんだ」ではなく「どうしたらできると思う?」という表現に変えるものです。
面談の目的は、相手の主体性をより促進させて、「相手に話してもらうこと」です。「なぜできないんだ?」と聞かれて、積極的に発言したいと思う人はいません。「否定で責任を追及するのではなく、あなたのために建設的で前向きな話をしている」のだとしっかり伝えていく必要があります。
上司は部下が間違ったことをしていたり、意味のないことをやっていたら、気付くと思います。しかし、そこを頭ごなしに否定して、結果的に「何を言っても却下されるならあまり言う意味がない」と思われると、部下の発言量は必然的に減っていきます。
■“気遣い”の枕詞を入れるといい
そのため、間違っていることや賛成できないこともすぐに否定はせずに「なんでそういうことを思ったの?」「僕はこう思うんだけど、どう思う?」など、しっかりと受け止めながら返してあげることが必要です。これが7つ目のポイントです。
日々の業務の忙しさに、なかなか部下と向き合えず「それは違うからこうやって」とバッサリ言ってしまうシチュエーションはよくあるかと思います。しかし、そこは改善をしていただくことが必要です。
8つ目は「忠告の前のワンクッション」です。一旦、すべてを受け入れることです。ただし、受け入れることと甘やかすことは意味が違い、適切な指導は必要です。
簡単なキラーワードで言うと「怒っているわけじゃないんだけど」というように、1つクッションを置くだけでも否定がだいぶ和らぎます。
いきなり「これこうしなきゃダメでしょ」と言われると、指導や指摘をされているというより、怒られている感覚になってしまいます。
感情的な受け取り方をされると、内容に関係なく「怒られたくないからやらない」となってしまい、本質的な課題解決につながりません。不足している部分や、もっと成長してほしい部分を指摘して直してもらえるようにアドバイスをしたいわけです。
そこで「怒っているわけではないけれど、これは一指摘として」という言葉を入れとよいでしょう。
■主導権を部下に委ねたほうがいい
残り2つのポイントは、良くない話題はいい話題で挟みましょうということと、最後は前向きな話題で終わりましょうというところです。結果的に最後の印象で、面談の良し悪しが決まると思っています。
厳しいことも言わなければいけない、しかしそれで終わってしまうと、ネガティブな感情のまま面談が終わってしまいます。
途中でそういった話はしても、最後は前向きに頑張ってみようという気持ちにさせて話を終える必要があります。また、こういった積み重ねで、結果的に面談が有益なものだったという印象を対象者にきっちりと植え付けることができます。
そうすると、この上司には色々なことを話したいと思ってもらえるようになり、発言量の多い面談につながります。そのため、最後は前向きな話で終わる、を意識してください。面談は、相手が主導になるようにうまくコントロールすることが、面談の実施者には求められます。
議論のテーマも話の内容もリードしてもらうように仕向けていきます。こちらが答えと思っていることはぐっとこらえて言わず、最後の結論として伝えたいところに持っていく。
同じ人との面談を何回も行うことで、最初は萎縮していて全然話してくれなくても、「この人には何を言っても大丈夫」「この人との時間は非常に有益なもの」と感じてもらえれば、自然と「今日はこういう話をしたいのですが」と言ってくれるようになります。
■面談は上司の力量が問われている
結果的には7割の発言量を得られる面談になりますので、このトークスクリプトはぜひポイントとして押さえください。アイスブレイクとしては、左のところで5つの質問を投げかけながら、ポジティブな内容にしていきます。
そして、話を引き出す上でも「こうしたほうがいいよ」や「今日はこういう話をしようか」という投げかけではなく「何かしたいことや話したいことはある?」「僕はこういうことを話したいと思っているんだけど、どう?」と、最後の意思決定は相手に委ねるようにすることが大事です。
その上で、課題を見つけていくための全体像の把握、そして適宜適切な答えを出してあげる。それも「こうしろ」と言うのではなく「こうしたほうがいいと思うんだけど、どう?」という言い方で、「自分で決めた」と思ってもらえるように誘導します。
そうすると、「自分で決めたんだったら責任をもってやろうか」といったことも言いやすいので、社員の自主性をうまく促していきます。
7割話してもらうことが大事とお伝えしましたが、7割話してもらう面談を通じて、社員の主体性や自主性をより促進させていくのが本質的な目的です。
最後に、アナログなことですが、まずは現状把握から。上司と部下、それぞれが話した時間を計測してみてください。
誰でも今日から始められることかと思います。1時間の中で大体自分が話している内容と時間を測って、5対5ぐらいだったらもう少し減らさないといけませんし、逆に、自分が7割、8割ぐらい喋っていて、向こうに2、3割しか話してもらえてないようであれば、改善していただく必要があります。
ぜひチャレンジしていただければと思います。
本内容は動画でも公開しています。また、もしご興味がある方は、より詳しい内容をまとめたマニュアルがございますので、こちらからダウンロードしてください。
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(船井総合研究所 社長online)
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