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「これは古い自民党との戦いだ」河野、小泉、石破連合は、"安倍支配"を本当に打ち破れるのか

プレジデントオンライン / 2021年9月22日 9時15分

自民党総裁選に向け、地方創生に関する座談会に臨む(左から)小泉進次郎環境相、河野太郎規制改革担当相、石破茂元幹事長=2021年9月19日、東京・永田町の衆院議員会館 - 写真=時事通信フォト

■自民党内の7派閥中6派閥が事実上の自主投票

自民党の総裁選が9月17日に告示され、行政・規制改革相の河野太郎氏(58)、前党政調会長の岸田文雄氏(64)、前総務相の高市早苗氏(60)、党幹事長代行の野田聖子氏(61)の4人が立候補を届け出た。

今回の総裁選は、自民党内の7派閥中6派閥が事実上の自主投票となった。だが、派閥による縛りがなくなったというわけではないだろう。

永田町には「政界は嫉妬と欲望の海」「受けた恩は仇で返せ」といった言葉がある。ましてや事実上、菅義偉首相の後を継ぐ日本の首相を決める選挙である。みな必死の思いで総裁選の行方を探っている。

■表向きは自主投票でも、裏では「締め付け」がある

告示前日の16日、河野氏を支持する議員の会合「河野太郎の総裁選必勝を期す会」が都内のホテルで開かれ、早々に支持を表明した環境相の小泉進次郎氏や出馬を取りやめて河野氏支持に回った元幹事長の石破茂氏ら57人の国会議員が集まった。そこで小泉氏はこう発言した。

「派閥の行動が『自主投票』と言われている。だが、水面下の動きを見れば全くそんなことはない。議員1人1人に強烈な働きかけがある。そんな声が若手の議員から私のところに届いている」

また石破氏は「変えなければならない自民党が存在している。古い自民党との戦いだ」と語った。「古い自民党」とは締め付けをかけてくるような古手の長老議員を指しているのだろう。

■総裁選の構図「菅対岸田」から「河野対岸田」に変わった

今回の総裁選の構図は「若手vs.古参」だ。それは9月2日付の記事「『首相続投のための策謀に国民はうんざり』自民党内からも公然と“菅降ろし”が出てくるワケ」でも指摘した。

菅首相は7月から8月にかけ、首相続投を目指して総裁選への出馬の意向を繰り返しアピールしていた。自民党内で最大派閥の細田派に強い影響力を持つ前首相の安倍晋三氏と、第2派閥の麻生派を率いる副総理兼財務相の麻生太郎氏も菅首相の再選続投を支持していた。

菅首相は自民党内からの批判を抑え込んで総裁選を無風で乗り切るため、9月中旬に衆院を解散して総選挙に打って出ようとした。党役員人事と内閣改造も、総裁選前に決行しようとした。

ところが、安倍氏から直接電話で反対され、若手議員からも猛反発された。菅首相はこの人事権を駆使した奇策が失敗し、万策尽きて気力を一気に喪失。9月3日に「首相退任・退陣」を表明し、総裁選への不出馬を明らかにした。

自由民主党本部
写真=iStock.com/oasis2me
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me

これによって総裁選の潮目が大きく変わった。一番早く名乗りを上げ、若手の支持を固めようと動いていた岸田氏は菅首相という標的を失い、反対に出馬を思いとどまっていた河野氏が出馬を表明し、総裁選は「菅対岸田」から「河野対岸田」に変わった。

ただし、河野氏に若手議員の代表格の小泉氏が支持に回るなどした結果、前述した「若手vs.古参」の構図は変わっていない。いや、変わっていないというよりもむしろ変化の中身がより濃厚になったと、沙鴎一歩は考えている。

■安倍氏は「河野氏を首相にしたくない」と考えている

ここで注目されているのが、安倍氏の言動である。

安倍氏は高市氏の支持を公言している。それは岸田氏を支持しないということではなく、河野氏を「首相にしたくない」と考えているからだ。

今回の総裁選は、382票の国会議員票と同数の党員・党友票の計764票で実施される。1回目の投票で過半数を取る候補がいなければ、上位2人による決選投票となる。決選投票は国会議員票(382票)と都道府県連票(47票)の計429票で争われる。

高市氏や野田氏が立候補したことで、1回目の投票でいずれの候補も過半数を獲得できず、決選投票になる可能性が高い。安倍氏自身も2012年9月の総裁選では、1回目の投票で石破氏に敗れたものの、決選投票に持ち込んで逆転勝利を収めている。

決選投票は国会議員票をひとつにまとめやすい。そのうえ、河野氏が強いとみられる党員・党友票は8分の1にまで減り、岸田氏が断然、有利となる。安倍氏は院政を引いて自らの権勢を維持し、憲法改正などに向けて次の政権を思うように動かしたいのだろう。

■菅首相が「河野さんを支持する」とわざわざ述べた理由

16日にBS日テレのニュース番組に出演した前東京都知事の舛添要一氏は、野田氏の立候補表明にからんで「無派閥で推薦人20人集めるのは至難の業。それにもかかわらず、野田さんは候補者になれた。1回目の投票で河野さんに決まるのを防ぎ、決選投票で岸田さんを勝たせるために調整した長老がいる」と話していた。おそらくその通りだろう。

また17日には菅首相が河野氏の支持を表明した。菅首相は「国難の中で大きな成果を上げてくれた。コロナ対策は継続が極めて大事だ。そうしたことを考えて、河野さんを支持する」と述べた。

安倍氏がいち早く高市氏の支持を表明しているのに対して、わざわざ「河野さんを支持する」と述べたのは強烈なメッセージだ。この発言が河野氏にプラスとなるかは微妙だろう。菅氏の求心力が落ちているからだ。しかし、もし河野氏が総裁選で勝つことがあれば、非常に重い意味を持つことになる。一連の「菅降ろし」にかかわった政治家は逆襲されることになるだろう。

■今年に入って自民党の国会議員は4人も有罪に

9月18日付の朝日新聞の社説は「総裁選告示『負の遺産』にけじめを」との見出しを掲げ、「直面する諸課題への処方箋を競うのはもちろんだが、9年近く続いた安倍・菅政権の功罪を総括し、『負の遺産』にけじめをつけることが、国民の信頼回復には欠かせない」と主張する。

朝日社説の指摘する負の遺産とは何か。

朝日社説は後半で「公文書の改ざんという前代未聞の不祥事であるにもかかわらず、真相解明が不十分で、政治家は誰も責任をとらなかった森友問題への対応は試金石といえる。きのうの共同会見では、野田氏が再調査を認める一方、河野氏は否定、岸田氏は後ろ向き。高市氏は裁判中を理由にコメントを避けた」と書き、こう訴える。

「4氏とも安倍、菅両政権で閣僚や党の要職を歴任した。その責任を自覚するなら、負の遺産も直視し、その清算に指導力を発揮すべきだ」

安倍・菅政権の罪である負の遺産は公文書の改竄問題のほかに、森友・加計学園の「モリカケ」疑惑や不透明な「桜を見る会」の問題もある。政治とカネの問題では、今年に入って有罪判決を受けた自民党の国会議員は4人もいる。参院選で地元議員に現金を配った河井克行・元法相は実刑判決を受けて控訴し、菅原一秀・前経済産業相は選挙違反で罰金刑が確定した。吉川貴盛・元農相も収賄罪で裁判中だ。

■秋元議員は「懲役4年の実刑」でも次期衆院選に出馬か

9月7日には統合型リゾート(IR)事業をめぐって収賄罪などに問われた秋元司・衆院議員が懲役4年の実刑判決を東京地裁に言い渡されたが、即日控訴した。議員辞職もしないうえに次の衆院選への出馬を表明している。開いた口がふさがらない。

総裁選の候補者4人には、朝日社説が指摘する負の遺産を含めて反省するとともに、その原因を検証してほしい。それができなければ、自民党は国民に見放され、腐敗していくだろう。

朝日社説は「領袖が立候補した岸田派以外の6派閥は事実上の自主投票」「まさに『本命』なき選挙戦である」とも書き、派閥の締め付けや縛りの存在については触れていない。総裁選の表面的な話ばかりではなく、ベテラン記者の論説委員らしい突っ込んだ指摘が読みたい。それができないから、新聞社説から読者が離れていくのだろう。

■しっかりとした「国家観」と明確な「説明能力」が首相の条件

9月18日付の読売新聞の社説は「長引くコロナ禍で日本の社会や経済には閉塞感が漂い、米中対立で国際情勢は激変している」と指摘し、こう訴える。

「新たな指導者には、確固たる国家観に基づく政策と、国民の理解を得るための説明能力が不可欠だ。各候補は所信を明快に語り、選ぶ側となる国会議員や党員はそれを十分に見定めてほしい」

見出しも「自民総裁選告示 国家観に基づき政策を論じよ」だ。やはり首相にとってしっかりとした「国家観」と明確な「説明能力」は必要不可欠である。

朝日社説と同様に読売社説も「党内7派閥のうち、岸田派を除く6派閥が支持候補の一本化を見送るという異例の展開である」と指摘し、こう解説する。

「かつて派閥は総裁選を結束して戦い、資金とポストの配分をテコに厳しく引き締めたが、今回は有力な『勝ち馬』の見極めが難しいという事情があるのだろう」

さらには「衆院小選挙区を中心とする選挙制度が定着し、党首の人気に頼る傾向が強まっていることも影響している。派閥の締め付けが弱まり、政策論争がしやすくなったことは評価できる。議員一人一人の見識が一段と問われよう」とも書く。

本当に派閥の締め付けはないのか。前述したように小泉氏が「議員1人1人に強烈な働きかけがある」と嘆いたことをこの読売社説を書いた論説委員が知らないわけがない、と思う。

最後に読売社説はこう主張する。

「派閥横断の若手議員らは、政治プロセスの透明化など党改革の断行を主張している。『自民1強』のおごりや国民への説明不足が指摘されている。党改革をどう進めるかも重要な論点である」

これまで安倍・菅政権を擁護することの多かった読売社説としては、自民党の改革を前向きに捉えている。権力の問題まで扱う新聞社説にとって擁護よりも批判する姿勢が欠かせない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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