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「目標達成にモチベーションは不要である」そんな大前提を誤解する人が多すぎる

プレジデントオンライン / 2021年10月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

高い目標を達成できる人とそうでない人は何が違うのか。経営コラムニストの横山信弘さんは「その人の当たり前の基準を上げるだけでいい。目標達成にモチベーションはいらない」という――。

※本稿は、横山信弘『絶対達成する人は「言葉の戦闘力」にこだわる』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■本来の意味もわからず「モチベーション」を連発するビジネスパーソンたち

私は、15年以上、企業の現場で目標を「絶対達成」させるコンサルティングをしている。その企業数は200社以上。関わった人々はのべ5000人に上る(講演や研修、セミナー、教材などを含めれば、1万社以上、10万人は超える)。

横山信弘『絶対達成する人は「言葉の戦闘力」にこだわる』(PHP研究所)
横山信弘『絶対達成する人は「言葉の戦闘力」にこだわる』(PHP研究所)

目標を達成できない企業に「絶対達成」の文化を定着させることが仕事である。だから、どのようにすればクライアント企業の方々に新たな行動を起こしてもらえるかを、いつも考えている。

どのような戦略を立てるべきか。どのような行動計画をつくるべきか。どのようにお客様と接触し続けるか。考えること、手や足を動かすこと、たくさん新しいことをやってもらわなければならない。

しかもスピーディにやる必要がある。なぜなら外部環境の変化は激しく、どんなに仮説を立てても結果は予想した通りにはならない。これまでの仕事のリズム、自分なりのペースでやっていては間に合わないことも多い。

だが、仕事のリズムやペースを崩されると、多くの人々が反発する。特に一定の経験がある社員はそうだ。その際に出てくる用語が、まさにモチベーションなのである。

「こんなやり方だとモチベーションが下がる」
「最近、部下のモチベーションが下がっている。もっとモチベーションを上げる取り組みをしなければならない」

と、組織のあちこちでそのように言う人が出てくる。

しかし、前述した通り、モチベーションという用語を使っている人の大半は、その意味を正確に理解していない。そのため、私たちは「部下のモチベーションをどう上げたらいいのか」などといった悩みには付き合わない。

このようなケースにおいては、「意欲」や「心の動き」など人の行動を変化させる動機付けとしてのモチベーションは関係がないからだ。

■やるべきことをやるのに「モチベーション」は関係ない

2年ほど前、ある支援先企業の経営会議で実際に私が経験したことだ。

営業部長が社長にこう反論していた。

「社長、目標を絶対達成しろとあまりにうるさく言うと、若い子たちのモチベーションが下がります。もっとソフトな言い方をしてくれませんか」

社長が腕を組んで黙っていると、総務部長も同調した。

「ノルマ主義だと思われたら、社員の反発は大きくなりますよ。実際に現場からそういう声をよく聞きます」

営業部と総務部の責任者からそう迫られ、社長は「少し考えさせてください」と返した。私がその場にいなければ、社長は2人から説得されていただろう。

営業部長と総務部長は60歳を超えている。一方の社長はというと、3代目で事業を承継したばかり。まだ40歳で、20歳以上の差がある。重鎮からの圧力は大きなストレスになっているようだ。

経営会議の後、自動販売機の前で缶コーヒーを飲みながら、そこにいた2人の営業に声をかけた。入社3年目と4年目の若手だ。

私は彼らに「モチベーションって言葉、今も使うのかな」と問いかけた。

すると「使います」と、すぐさま返ってきた。

しかし、そのうちの1人はこの言葉を足すのを忘れなかった。

「だけど……やるべきことをやるのと、モチベーションは関係がないです」

「やはりな」と思った。

■習慣とは本人にとっての「あたりまえ」

ビジネス用語としてのモチベーションの意味は、「あたりまえのことを、あたりまえにやるだけでなく、それ以上の行動をとるために必要な心の動き、意欲、動機付け」だ。

たとえば「朝9時に出社する」「お客様と約束した11時に訪問する」「1時間で20個の組み付け作業をする」「夕方6時までに納品する」……このような事柄が、もし「あたりまえ」になっているのであれば、当然モチベーションとは関係がなく人は動く。

朝の出社時刻が決まっているとしよう。その時刻から逆算して身支度をし、電車の時刻を調べて乗り、会社へ出かけるのにモチベーションは必要ない。

自動販売機の前で立ち話をした若手営業が言った通りである。

「やるべきことをやるのと、モチベーションは関係がないです」。

前夜に飲みすぎて、多少頭が痛くても、普通に家を出て出社しようとするのが常識だ。「意欲」や「心の動き」「動機付け」など一切必要ないのだ。なぜなら、それが習慣になっているからである。

習慣とはつまり、それが本人にとって「あたりまえ」になっていることを指す。そもそも「心の動き」や「感情」によって、できるとかできないとかが左右される領域のことではないと、潜在意識の下で認識していることだ。

このように、毎日の生活や仕事の中で「あたりまえ」だと認識していること、「習慣化」されていることは、モチベーションや「心の動き」に左右されないことがわかる。

■「若手がやる気をなくす」は言い訳だった

前述した会社でその後行ったヒアリング調査によると、「営業目標の絶対達成というスローガン」に対しての印象は、次のような結果となった。

部課長をはじめとしたベテラン社員(入社10年以上):「私は問題ないが、若手のモチベーションが下がるのではないかと心配だ」

若手社員(入社10年未満):「目標を絶対達成すべきならキチンと言ってほしい。社長が絶対達成しろと言っているのに、自分の上司が本気で取り組んでいないのなら、やる気をなくす」

まるで若手の代弁者であるかのように振る舞っていた営業部長や総務部長はトーンダウンした。社長の方針に口出しすることはなくなった。若手がモチベーションを下げる原因は、社長の方針に自分の直属の上司である中間管理職たちが同調していないことだったのだ。

これは多くの企業で見られる傾向だ。

先述した通り、自分のペースで仕事をしているベテラン社員ほど「現状維持バイアス」がかかっており、変化に対して強い抵抗を示すのだ。その際、自分が変化できないことを言い訳にできないので、「部下のモチベーションが下がる」「若手がやる気をなくす」と主張するのだ。

これはつまり「モチベーション」という言葉を本来の意味で使わなかった営業部長や総務部長によって、モチベーションという言葉が悪いほうに利用された例である。そしてこのようなことが会社の生産性低下につながるのだ。

疲れ果てたビジネスマン
写真=iStock.com/tuaindeed
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tuaindeed

■上司や社長の立場から「あるべき姿」を自問自答する

毎日の生活や仕事の中で「あたりまえ」だと認識していること、「習慣化されていること」はモチベーションに左右されない。

ということは、何が「あたりまえ」なのかを自分で意識してみることで、自分がとる行動がモチベーションを必要とするものなのか、否かがわかるはずだ。

さて、自分にとって何が「あたりまえ」なのか。営業部長として何をすることが「あたりまえ」なのか。ひとりの営業パーソンとして何が「あたりまえ」なのか。正しい自己分析が必要である。要するに、「あたりまえ」のことを日々キチンとできているかということを自己分析するのだ。

もし自分にとって、何が「あたりまえ」なのかを、今いち理解できないという人は、「今の自分は、いったいどうあるべきなのか?」――そう問いかけてみよう。そうすればわかるはずだ。

ビジネスにおいてであれば、自分の上司になってみるのだ。社長の立場から考えてもいい。お客様の立場からでもいいだろう。自分という人間は、どうあるべきなのか。その「あるべき姿」を繰り返し自問自答してみる。客観的に見つめ続ける。そうすれば、必ず見えてくるはずだ。

会社が設定した目標、上司から依頼された作業、期首に自分自身でコミットした行動目標――。これらは現在の自分にとって、それをやることが「あたりまえ」のことなのか。

そしてここまで自己分析できたら、次のステップとして、それらの作業や目標は、「あたりまえ」のことや「あるべき姿」にすべきなのかどうか? といったことを考えてみるべきである。

■ベテランと若手、どちらの戦闘力が高いのか

先述の会社での、営業部長と総務部長の発言がわかりやすい。

そもそも社長が「業績が低迷している現状を踏まえて、自社で設定した目標ぐらいは達成できる会社にしたい」という方針を打ち出したことが、事の発端だった。役員も幹部も、社長の方針に賛同した。だから私たち外部のコンサルタントが招聘されたのだ。

正しい意思決定プロセスを経て私たちが呼ばれ、さらに現場の営業パーソン自身の行動宣言もあるのに、突然手のひらを返したように、

「ちょっと待ってください」
「これでは若い子たちのモチベーションが下がる」

と言い出した背景には、私たちコンサルタントが想像以上に組織マネジメントに介入してきたことがあるだろう。

自分たちのペースで組織運営ができなくなり、課長をはじめとしたベテラン社員が部長に不平を言い、そして社長に対して、

「現場から不平不満の声が上がっています」

と、あたかも若手の営業パーソンが言っているかのような口ぶりで進言した。なぜ、このような誤解を招く言い分を主張したのか。それは心のどこかで、この件は自分自身で判断してもよいという愚かな価値観があるからではないか。

これは組織の一員としての、しかもリーダーとしての「あるべき姿」ではない。まだ若い社長を支えるのがベテラン部長の役割であり、「あるべき姿」ではないのか。意思決定プロセスにも関与しているわけだし、まったくもって覚悟が足りない。

ベテラン社員と若手社員。どちらの戦闘力が高いか、もうおわかりだろう。使っている言葉で、姿勢がよくわかる。

■「モチベーションが必要なケース」と「不要なケース」

このように「あるべき姿」を自分自身で決められると勘違いしている人は、行動が“モチベーション”に左右されるのは当然だ。

しかし本来は組織の一員である以上、しかるべき責任や義務がある。

朝9時に出社することが就業規則で決まっているのであれば、9時までに出社するのはあたりまえであり、それは義務である。社員である以上、9時までに出社する責任がある。自分自身で判断できることではない。

そう考えると、会社が設定した目標、上司から依頼された作業、期首に自分自身でコミットした行動目標――こういったものはすべて、やるべき責任がある。職務として決まっているのであれば、正しく工夫しながら遂行しなければならない。

だからこの会社では、若手のほうがよく理解していた。「それが自分にとってやるべきことだというのなら、モチベーションなんか関係がない」と言っているのだから。

では、会社に勤めている以上、すべてモチベーションなど関係がなくなるのかというと、そうではない。モチベーションが必要なケースはもちろんある。

それは、たとえば個人が自立・自律する上で、自らキャリア開発を考える場合などはそうだろう。自分自身のキャリアプランであるわけだから、自分で立てた計画であったとしてもやる義務はない。やる責任もない。

自分に投資するために英語を勉強しよう。ダイエットしよう。ランニングしよう。テレビを観る時間を制限して読書しよう――。こういった事柄は「モチベーション」に左右されても仕方がない。だから習慣化し、意識せずにできるよう、みんなトレーニングに励むのだ。

■問題意識がある人ほど謙虚である

「あるべき姿」と「現状」とのギャップのことを問題と呼ぶ。

そしてこのギャップを正しく捉え、解決していこうとする姿勢が人を謙虚にさせる。だから問題意識というのは大事なのだ。しかし「あるべき姿」や「現状」を正しく認識していない人は、問題意識が希薄だ。謙虚になることができない。

極端にいえば「目標を達成できなくてもあたりまえ」「期限を守らなくてもあたりまえ」「言われたことを率先してやらなくてもあたりまえ」という現状でも問題ではない、と捉えている。

常に目標を達成する人は、常に「あるべき姿」というものを正しく認識している。だから常にそのギャップを埋めようと、自然に体が動くのだ。問題を解決しようと行動する。創意工夫を続ける。

白い背景のアジア系のビジネスマン
写真=iStock.com/taa22
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taa22

つまり絶対達成する人は、「絶対達成するノウハウ」をもっているのではなく、ギャップを埋めようとする行動と工夫の数々が膨大だということだ。

だからこそ絶対達成する人ほど「謙虚」であり、「感謝の気持ち」をもつのは自然なこと。

このカラクリがわからないと、他者から見たらいつも目標を達成する人はものすごくモチベーションが高い人のように思えるだろう。

しかし本人にとっては「あるべき姿」とのギャップを解消しようとしているだけだから、それをやって「あたりまえ」だと捉えている。モチベーションに左右されることなく、淡々と行動できる理由はここにある。

目標達成に向かっている人は、「無理しなくてもいいよ」「あまり頑張りすぎないで」と助言されても、抑制することなどできない。

朝9時に出社するのがあたりまえなのに、「毎日決められた通り9時に出社するなんて偉いね。でも、そんなに無理しなくてもいいよ。できないときだってあるんだから」などと指摘されているようなものだからだ。

そんなことを言われたら誰でも混乱する。「あたりまえ」のことができない自分が恥ずかしい、と受け止めているからだ。

■1億円増の目標でもストレスフリーで達成できる

会社から1億円の目標を達成してくれと言われているのに、9000万円しかできない人は、「自分には9000万円ぐらいしか達成できない。あたりまえだ」と受け止めている。

一方、どのようにやったらいいかわからなくても、1億円の目標を絶対達成してくれと言われ、それが「あたりまえ」だと受け止める人は、モチベーションなど関係なく、それに向かって行動する。創意工夫し続ける。

目標を達成できるかどうかはわからない。ただ「あたりまえ」だと受け止めている事柄に対し、自然と頭と体を働かせるのである。1億円の目標を達成し、それが2億円になったとしても、思考プログラムは同じだ。

「東京から名古屋に行くことはできたが、大阪に行くなんてムリだ!」などと受け止める人はいない。それと同じことで、過去のやり方を捨て、時間通りに大阪へ到着するにはどうすればいいか逆算して考えるだけである。そこにストレスはかからないし、モチベーションも必要がない。

この思考のクセができあがれば、あとは「あたりまえの基準」を上げていけばストレスフリーで、絶対達成への階段を上っていくことになる。

2億円の目標を達成できたら、次は5億円。次は10億円……と引き上げていけばいい。そのためにはどのようなリソースが必要なのか、逆算して考えるようになる。人を雇い、設備に投資し、仕組みをつくって、対処するようになれば、どんどん「あたりまえの基準」は高くなっていくだろう。

このように、絶対達成する人は「あるべき姿」を明確にし、それを「あたりまえ」だと口にする。この言葉の使い方が脳を勘違いさせ、気が付いたら驚くべき結果をたぐり寄せている。その一点が、普通の人と異なる。

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横山 信弘(よこやま・のぶひろ)
アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長
企業の現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。支援先は、NTTドコモ、ソフトバンク、サントリー等の大企業から中小企業にいたるまで幅広い。ベストセラー「絶対達成シリーズ」の著者であり、メルマガ「草創花伝」は3.8万人の経営者、管理者が購読する。コラムニストとしても人気で、日経ビジネスオンライン、Yahoo!ニュースのコラムは年間2000万以上のPVを記録する。著書に『絶対達成マインドのつくり方』『「空気」で人を動かす』など。

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(アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長 横山 信弘)

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