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原稿を読むだけではない…日テレ藤井アナの言葉が「心に響く」と言われる"納得の理由"

プレジデントオンライン / 2022年2月26日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/whyframestudio

相手に伝えたいことを確実に伝えるにはどうすればいいのか。日本テレビアナウンサー藤井貴彦さんの著書『伝わる仕組み 毎日の会話が変わる51のルール』(新潮社)から、「話し方のポイント」を紹介する――。(第1回)

■優先順位の「高いものから順番に」伝える

何かを説明する時に、私がまず手を付けるのは「伝えたいことの箇条書き」です。伝えたいことを思いつくままに書き出して、その優先順位をつけます。そしてその優先順位の「高いものから順番に」伝えていきます。

日本テレビアナウンサーの藤井貴彦さん(写真提供=新潮社)
日本テレビアナウンサーの藤井貴彦さん(写真提供=新潮社)

説明が苦手な方の特徴として、聞いている人が求めていない情報まで織り込んでしまって、いつまでも核心にたどり着かないという傾向があります。また、大切なことを言い忘れてしまうというまさかの失敗も起こりがちです。

聞いている方は美しい説明を求めているのではなく、有益な情報を短時間に得たいと思っています。この思いにぜひ、「聴衆ファースト」で応えてあげてください。

また、優先順位の高いものから伝えると話の構成がシンプルになるので、頭の中が整理しやすくなります。

「大切な順に説明して、その補足をする」

これを繰り返すだけで十分に説明となります。

もうひとつ、別の説明の仕方があります。

まずは大切な情報だけお伝えしてしまって、質問を受けるやり方です。自分から話をする「説明」は苦手な方でも、質問に答える「回答」は比較的難しくありません。

また質問に答えることは「補足」と同じ効果を持ちますから、説明が苦手だという方はやりとりを通して説明を完成させることも一つの方法です。これで説明する方も、説明を聞く方もスッキリするはずです。

しゃべるのが苦手という方は、しゃべりのバトンを持ち続けないことが大切です。まずは相手が知りたいことを想像して、優先順位をつけてみましょう。

■映像を脳内で再生しながら話すといい

「説明が苦手」という皆さんに試してほしいことがあります。

それは自分の説明するものの「ショートムービー」を脳内で作成してから言葉にするということです。その映像に「導かれて」言葉が出てくるようになります。

例えば旅行に行った時のことを誰かに伝える時に、旅行先の風景やグルメを思い出しながら話しますよね。頭の中で思い起こすだけで少し興奮してきます。

「麺はラーメンより太くてさ、少し黄色いの。スープは透明でダシが効いててさあ、でもあっさりで全部飲み干しちゃう。紅しょうが入れてアクセントにするんだけど、テーブルに置いてあるコーレーグスっていう辛い調味料も入れると、まじうまい」

お分かりいただけたかどうかわかりませんが、これは沖縄そばの説明です。難しいテクニックは使っていません。沖縄に行って沖縄そばを食べた時のことを思い出して言葉にしただけです。

こんなにすらすら言葉が出てこないという人は、麺のこと、スープのこと、紅しょうがのことというようにブロックに分けて、文章を作ってみてください。それを暗記するのではなくショートムービーとともに「思い出しながら」言葉にするのです。

■動きをつけて説明に奥行きをもたせる

さらに、ちょっとした工夫もお伝えしておきますと、ムービーですから「動き」があると説明が楽になります。例えば、テーブルに置いてあるスマートフォンの説明をしてみましょう。

単にテーブルの上に置かれているだけのスマートフォンでは言葉が出てきませんが、持ち上げたり、裏返したり、立てたりするショートムービーを頭の中に想像すると言葉が出てきます。

「テーブルに置いてあるスマートフォンを持ち上げてみると、意外に軽くて驚いた。手のひらに乗るくらいの大きさなんだけどね。裏返してみるとカメラのレンズが3つもついていて、これ何に使うんだろうって思うよね。実際に写真を撮ろうと思って、スマホをテーブルに立ててみたら本当に薄くて、テクノロジーってすごいね」

ここまですぐに言葉が出てこないと思いますが、大切なのは動きをつけることです。研修で後輩アナウンサー達にこの手法を伝えると、急に生き生きと言葉を紡いでくれるようになります。

ビジネスセミナーでのプレゼンテーション
写真=iStock.com/kasto80
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kasto80

ただニュース原稿の場合は実体験が難しくなります。銀行強盗の実体験があったら大変ですからね。それでもなるべく原稿に近いショートムービーを作ってほしい、と伝えています。

例えば天気予報の原稿で「上空に居座る寒気の影響で、各地で雷を伴った激しい雨となっています。この天気は明日も続き、東日本から東北を中心に大気の状態が不安定となる予想です」という内容があったとします。ここでも、ショートムービーを作ります。

「空を見上げると雲があり、その上に冷たい空気が居座っていて、どす黒い雲から雷と雨が落ちてくる。また、雨が落ちるその先に日本地図を登場させて東日本から東北のあたりをペンで丸く囲んでいく」

自分の動作も頭の中に描きながら、こうするだけで新人も生き生きと原稿を読み始めます。説明が苦手という人や、焦ってしまって言葉が出てこないという人は、ぜひこのショートムービーを頭の中に作成して、言葉にする練習をしてみてください。

■コメントを書き出して、「別人格」でチェックする

あまり気づいていませんが、私たちは意思の疎通がとても下手です。

「え、どういうこと?」と聞き返されることは日常茶飯事ですね。話している本人は、当然伝わっていると思っていても、相手には全く伝わっていないことがよくあります。

実はこの問題を解決するパーフェクトな方法はありません。私たちは多くの言葉を「つぎはぎ」しながら、言葉不足を補い、意思疎通を完成させるしかないのです。

ただし、人を傷つけたり、不快な思いをさせたりする言葉不足には注意が必要です。できれば発言する前に、何らかの対策をとっておきたいところです。

私の担当しているニュース番組の中に、10分ほどの「解説」コーナーがあります。そのコーナーは別のキャスターが進行を務め、私はコメンテーターの役割を担います。合計5、6回ほどの発言のタイミングがあるのですが、私はその中で「ここは発言に注意が必要だ」という場面を見つけて、チェックをしておきます。

またそこに、自分の発言予定のコメントを書き出してみて、「別人格」でチェックします。この「別人格で」というのが大切で、発したコメントが視聴者にどう届くのかを、事前に予測しておくのです。その時点で言葉足らずな部分があれば、補足します。

新しいビジネスを企画する男性
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM

■異なる考え方を持った人への配慮

例えば新型コロナウイルスのワクチンをテーマとして扱った日に、私の発言として「接種率をなるべく早く上げたいですね」と言ったとします。ワクチンに反対する人からすれば「このキャスター、何を言っているんだ」と、反発が生まれるでしょう。

もちろん私は普段から「ワクチンは強制ではありません、まずはご家族で話していただいて、打てるかどうか検討してみてください」と伝えていますが、全ての視聴者の方が私たちの放送をいつもご覧になっているわけではありません。そのことを念頭にコメントを作成しなければ誤解を生んでしまうのです。

「接種に前向きな皆さんが接種できる環境を整えて」という言葉を付け加えて「接種率をなるべく早く上げたいですね」とコメントすれば、意思の疎通は合格点に近づくでしょう。私たちアナウンサーはここに一番神経を使っていますが、同じように注意してほしい場面が、職場にも家庭にも広がっています。

■視聴者に「心に響く」と言われる最大の理由

こういったセルフチェックの中で最も大切なのは「多様性」です。いろいろな場の人がいて、それぞれの考え方があることを前提に発言しなければなりません。ここに思いが至らなければ言葉が勝手に誤解を生み出します。

ただ、このセルフチェックはそんなに難しいものではありません。いろいろな人がいるんだということを前提に生活するだけで、誤解されるリスクをずいぶんと減らすことができます。

また私がここで言う「多様性」は人種や性別に限ったものではありません。性格や趣味嗜好(しこう)の分野も含んで多様性ととらえることが大切だと考えています。

藤井貴彦『伝わる仕組み 毎日の会話が変わる51のルール』(新潮社)
藤井貴彦『伝わる仕組み 毎日の会話が変わる51のルール』(新潮社)

全ての根底にあるのは「人権」であり、「多様性を認め合う」が肝なのです。多様性を尊重できる方なら、普段のコミュニケーションに苦しんでいないはずです。私はここまでいろいろなコミュニケーションの準備についてお伝えしてきましたが、実は人間の多様性をどう大切にするかをお伝えしてきたのだと思います。

ただ、こう言う私も、まだまだ不勉強で無知の分野がたくさんあります。どこかで誤解を生んだり、誰かを傷つけたりしているかもしれません。

しかし、背景に相手を尊重する思いがあれば、その後に誤解を解くことはできるはずです。会社でも学校でも家庭でも、互いを尊重できればコミュニケーションに問題は生まれづらくなります。

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藤井 貴彦(ふじい・たかひこ)
日本テレビアナウンサー
1971年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年2月にはバンクーバー五輪の実況担当として現地に派遣された。同年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務め、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの際には、自ら現地に入って被災地の現状を伝えてきた。

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(日本テレビアナウンサー 藤井 貴彦)

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