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人前で話すのが苦手だった…日テレ藤井アナが「あがり症」の克服に使った"ある方法"

プレジデントオンライン / 2022年2月27日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vchal

人前で緊張せずに話すにはどうすればいいのか。日本テレビアナウンサー藤井貴彦さんの著書『伝わる仕組み 毎日の会話が変わる51のルール』(新潮社)から、「あがり症を克服する方法」を紹介する――。(第2回)

■緊張を和らげるシンプルな方法

緊張は、初めての経験や慣れない場所で起こりやすいのはご存じのとおりです。よく、受験生の皆さんが受験会場までの道のりを事前に歩いて確認しますが、こういう工夫が実は、緊張しやすい方にはかなりの効果があります。

日本テレビアナウンサーの藤井貴彦さん
日本テレビアナウンサーの藤井貴彦さん(写真提供=新潮社)

私は以前同僚から、「国立競技場で実況するんだけど、ものすごく緊張している。どうしたらいい?」と聞かれたことがあります。

実は私も旧国立競技場での実況はとても緊張しました。あの厳かな建物の雰囲気にのまれていたのです。建て替え前の国立競技場は、放送席まで階段を使って上がっていきます。

もちろんエレベーターはありますが、それは解説者や重役の方が使うものであって、私たちはたいてい階段を使います。ですから放送席に着いた時には呼吸が荒れています。そのため、緊張も相まって中継のスタートまでに心拍数が落ちてくれなかったのです。

そんな経験から同僚には「もし機会があれば、当日と同じルートで放送席までの移動練習をしてください。そしてできるだけ緊張しておいてください」と伝えました。

同僚は実況の「内容」についてのヒントやアドバイスを求めていたようでしたが、もう十分な実力の持ち主だったので、力が出しきれるように、荒くなる呼吸も含めて「緊張のリハーサル」をしておいてほしかったのです。

■実力以上を披露しようとしないほうがいい

緊張を想像してみること。
そして自分から緊張を迎えに行くこと。

これは、あまり多くの人がトライしていないことだと思いますが、根を詰めてしまっている時ほど、大切なことを忘れてしまいます。実力は蓄えたけれど、それを出しきれなかった経験は誰にでもあるでしょう。

緊張した自分が本番でどうなるのかを、シミュレーションできていなかったのかもしれません。一度緊張としっかり向き合い、迎えに行くことが効果的です。

本番に強いと言われる人は、出たとこ勝負が強いのではなく、緊張に負けた経験があるか、しっかりとした緊張のシミュレーションができる人なのかもしれません。

そうは言っても、緊張と向き合うのはとても難しいですね。緊張する理由が分かっても、取り去ることはできません。例えば数学の問題であれば解き方が分かった時に全てから解放されますが、こと緊張に関しては理由が分かっていても緊張は解けません。

公共の場所でパニックになる女性
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tero Vesalainen

では緊張とどう向き合えばいいのでしょうか。私はこう考えるようにしています。

「相手のための緊張に変える」

緊張とは大抵、自分がうまくやれるかどうかが心配で起こるものです。もっと言うと、自分の実力以上のものを披露しようと思っている場合に起こります。

つまり緊張とは自分の内側でのみ起きている現象なのです。緊張している人に対して、どれだけ「大丈夫だよ」と励ましても、緊張を取ってあげられないのはそのためです。そこで私が実践しているのは、自分に向かっていたエネルギーのベクトルを外に向けることです。

■自分のための緊張を減らす

例えば、大切なプレゼンがあったとします。スタートは「自分がうまくプレゼンできるか不安」「言い間違えたりしないか不安」といった感情がわいてくると思います。その感情を誰かのための緊張に変えてみるのです。

「この提案はこの会社にとって大きなメリットになるからしっかり伝えたい」
「多くのプレゼンを聞いて疲れているだろうから、要点だけでも伝えたい」

こんな風に視点を変えてみるのです。

緊張の内向きエネルギーも「エネルギー」です。このエネルギーを利用して、誰かの役に立とうとすると不思議と緊張は軽減されていきます。

また、思ったほど緊張が軽減されなかったとしても、それが相手のための緊張ならば、本番では案外まともなパフォーマンスができるのです。

私は、ニュース番組で発音ミスをした際に、その回数を「噛んだ回数」としてカレンダーに記していますが、その原因を分析するとほとんどが自分への緊張なのです。

「このままいけば、今日はノーミスだ」なんて考えた直後に必ず噛みます。ノーミスで終えたいなんて自分のための欲が出る時点でアウトです。人間の器が小さすぎて、恥ずかしくなります。

一方で視聴者に伝わるようにとニュースを読んでいる時は、不思議と噛みません。もちろん、たまに噛んでしまうこともありますが。でも、聞いてくれている人のことを考えて、丁寧に読んだ結果のミスなら自分も納得します。

自分のための緊張を減らすことが、緊張と向き合う上で大切なのです。

■緊張を和らげるとっておきの方法

「目の前の聴衆をじゃがいもだと思え」

こんなアドバイスを皆さんも聞いたことがあると思います。これは、他人の視線を気にするなという教えを含んでいるのだと思います。ただ、聴衆を「じゃがいも」と思うことは難しいですし、じゃがいもの前で話すなんてイメージも湧きづらいですね。

実は、私も人前で話すことが苦手でじゃがいも作戦を試してみましたが、それほど効果はありませんでした。何十年アナウンサーをしていても、やっぱり人前で話すのは緊張します。

そんなアナウンサーとしてはやや失格な私が、どのように緊張と向き合ってきたかといいますと、「アウェイ感を減らすこと」に重点を置いています。味方を増やすという言い方でもいいかもしれません。

例えば、講師としてみんなの前で話をしてほしいとお願いされたとします。初めて呼ばれた講演会場は完全アウェイです。こんな時はどうしたらいいでしょうか。

私がいつも行っているのは、まず味方を見つけるということです。その会場には、講演を依頼してくれた人がいるわけですから、少なくとも1人は味方が存在します。

そこで、その人との関係を話に織り込みながら講演会に呼ばれた経緯などを話していくのです。そうすれば聴衆に関係のある人が話に登場しますし、頷いて聞いてくれる人も徐々に増えてきます。

こうして少しずつ味方を増やしていくのです。こんな、自分と聴衆の間にある小さな共通点を成長させていきながら、アウェイ感を減らしていくやり方は、おすすめです。

どんな共通点でもいいのです。講演会場の目の前にあった牛丼屋さんの話でも、天気の話でも、聞いてくれている人との間に少しでも共通点があればいいのです。

■現場は入念にチェック、緊張のシミュレーションで備える

ただ、取引相手を前にしたプレゼンなどでは、その場をホームに変えるのは難しいでしょう。相手にとっても会社の利益をかけた勝負の時間ですから、シビアに話を聞くはずです。

しかし、実はこういった場面の方が対策はシンプルになります。プレゼンをする前に相手の視線で自分を見るシミュレーションをしてください。

完全アウェイのプレゼン会場に入っていく自分、それを迎え入れる相手方の社員。こんな風にして、緊張のシミュレーションを行っておくのです。より緊張が増してしまう場合もありますが、これは仕事であり、勝負ですから仕方ありません。

藤井貴彦『伝わる仕組み 毎日の会話が変わる51のルール』(新潮社)
藤井貴彦『伝わる仕組み 毎日の会話が変わる51のルール』(新潮社)

私も以前、人気番組の司会の代打を務めた時に、ものすごく緊張しました。私以外の出演者は誰もがテレビで見たことのある有名芸能人の方ばかりでしたから。

少し時間があったので早めにスタジオに入って、緊張のシミュレーションを行いました。ニュースしか担当していないアナウンサーが、有名芸能人の前で司会をする。

考えただけで手に汗がにじみました。実際に全然うまくいかなくて、本番ではお腹いっぱいになるほど出演者の方々にいじられたのですが、本番前のシミュレーションがあったからこそ腹を決められたと思います。

アウェイの厳しい視線で自分を見ること、そして、「味方は一人もいないんだ」とはっきりさせることも大切な準備です。

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藤井 貴彦(ふじい・たかひこ)
日本テレビアナウンサー
1971年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年2月にはバンクーバー五輪の実況担当として現地に派遣された。同年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務め、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの際には、自ら現地に入って被災地の現状を伝えてきた。

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(日本テレビアナウンサー 藤井 貴彦)

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