「休日出勤でもらえる給料が変わる」社会人なら知っておきたい"代休"と"振替休日"の違い
プレジデントオンライン / 2022年3月25日 9時15分
■休日に働いても割増賃金が付かないケース
「また休日出勤か」
「明日は休日出勤の代休だから休みなんだ」
同僚や家族などと、こんな何気ない会話をすることはありませんか。
ところが、同じ休日出勤でも割増賃金が付くケースと付かないケースがあります。この違いは、代休をとるのか振替休日をとるのかによるものです。「どちらでも同じだろう」と考える人が多いのですが、代休と振替休日では意味がまったく異なります。
また、知っているようで知らない有給休暇。正社員だけでなく、アルバイトやパートなども取れる働く人の権利です。
振替休日というのは、休日を労働日に、他の労働日を休日に交換することです。そして、この交換が事前に行われているものが振替休日です。振替休日の場合、休日に出勤したとしても、その日は労働日に振り替えられているため、休日出勤にはなりません。
休日の振替は、振替休日の規定を設け、それに基づき行う方法と、規定がない場合に、個別に労働者の同意を得て行う方法があります。
ただし、1週に1回または4週に4日の休日は確保されなくてはならず、休日を振り替えることによって、このルールが守られないとなれば、休日割増賃金が発生します。
■代休をとっても「休日に働いた事実」は消えない
一方、代休とは、休日出勤をした後、その代償として他の労働日を休日にすることです。前もって休日と労働日が交換されているわけではないので、休日出勤をしたことに変わりはなく、休日労働としての割増賃金が支払われます。
割増賃金には、35%の割増が適用になる場合と25%が適用になる場合があります。
時間当たりの賃金が1500円で8時間労働をした場合、通常だと1万2000円ですが、35%割増だと1万6200円(1500円×1.35×8時間)、25%だと1万5000円(1500円×1.25×8時間)です。
月給制の場合の時給額は、「月の基本給÷1カ月の所定労働時間」で割り出します。
■休日出勤の割増賃金が2種類あるワケ
この違いは、休日出勤した日が「法定休日」なのか「法定外休日」なのかによって起こります。法定休日とは、その日に労働者を働かせると法律違反になってしまう休日のことです。
労働基準法では、原則として、労働時間の限度を「1週40時間以内」かつ「1日8時間以内」とし、「1週に1日以上の休日」または「4週の間に4日以上の休日」を与えるものとしています。これらに違反すると、使用者に対して6カ月以下の懲役または30万円以下の罰が課せられます。
つまり、週1回の休日もしくは4週4回の休日のことを法定休日といいます。ちなみに、法定休日に休日労働を行うには使用者と労働者の間で「36協定」を締結する必要があります。
■法定休日の出勤は賃金が35%割増
何曜日を法定休日とするかについては、法律による決まりはなく、就業規則等で定められていればそれに従います。就業規則に定めがなく、土日を休日とする会社の場合、土日いずれかに休日出勤をすれば、出勤しなかった休日が法定休日となります。
土日いずれも出勤していれば、暦週(日曜から土曜まで)のうちで最も後順に位置する土曜が法定休日となります(※)。ただし、1週間の始期について就業規則等に定めがあればそれに従います。
(※)「改正労働基準法に係る質疑応答」のQ10・A10
法定休日に出勤をした場合、35%以上の割増賃金を労働者に払うことが、労働基準法に定められています。もし、その日に8時間を超えて働いても時間外手当は付かず、35%の割増賃金としてカウントされるのみです。ただし、深夜帯(原則午後10時~午前5時)に働いた場合は、深夜労働割増25%がプラスされます。
たとえば、法定休日に時間当たり賃金1500円で8時間働き、そのうち1時間が深夜帯だったとすれば、(1500円×1.35×7時間)+(1500円×1.60×1時間)=1万6575円が1日の賃金となります。
■平日8時間ずつ働き、土曜に出勤する場合は…
一方、法定外休日とは法定休日以外の休日のことです。法定外休日に出勤したとしても、労働基準法上、割増賃金の支払い義務はありません。しかし、「1週40時間以内」ルールは守らなくてはなりません。多くの会社が土日休みの週休2日制にしているのは、40時間ルールがあるためです。
たとえば、日曜日に仕事を休み、月曜から金曜まで1日8時間働き、土曜に休日出勤するケースでは、1週1日の休日は確保していますから、土曜は法定外休日です。しかし、月曜から金曜までで既に40時間働いているため、土曜はすべて時間外労働となり、25%の割増賃金が支払われます。深夜帯に働けば、さらに25%割増になります。
振替休日にせよ代休にせよ、休日出勤をした同じ週にとれるなら問題はありませんが、翌週に繰り越してしまうこともあります。そうなると、休日出勤をした週は40時間を超える労働時間になる可能性があり、超過分の賃金は25%の割増となります。
■アルバイトや契約社員も有給休暇はとれる
次に、年次有給休暇(有休)についてみていきます。
労働者は、次の2点を満たしていれば、正社員だけでなく、アルバイトやパート、契約社員も有休を取得することができます。
1.雇入れの日から6カ月継続して雇われている
2.全労働日の8割以上を出勤している
正社員は就職して6カ月経つと10日間の有休が付与され、その後は1年ごとに増えていき、6年6カ月経つと20日間となり、以降は毎年20日間付与されます。アルバイトやパートなどは、勤続年数と週の労働時間に応じた日数が付与されます。有休の有効期間は2年間なので、使わないまま2年が過ぎると未消化のまま消えてしまいます。
2018年の労働基準法改正(2019年4月1日施行)により、年間10日以上の有休が付与される労働者に対して、使用者はそのうち5日について、毎年時季(※1)を指定して与えることが義務付けられました。ただし、労働者自らが請求して取得した有休の日数や計画年休(※2)の日数は除きます。
(※1)「時期」ではなく「時季」とされるのは、具体的な時期のほか、「だいたいいつ頃」という季節を指定し、具体的な時期については、使用者と調整して決めることが可能であるという意味。
(※2)労使協定による定めがある場合、有給休暇の日数のうち5日を超える部分について、計画的に付与できるというもの。
■会社の許可を得るものではなく「労働者の権利」
有休取得は労働者の権利であって、使用者が許可をするものではありません。なので、休暇の目的によっては取得を認めない、などという取り扱いはできません。ただし、労働者が請求した時季に休暇を与えることによって、単に忙しいというだけでなく、事業の正常な運営が妨げられる場合、使用者は他の時季に変更することはできます。
これを「時季変更権の行使」といいますが、両親の他界など、取得理由によっては使用者が時季変更権の行使を控えなくてはならないことも想定されます。理由を問わず取得できる有休ではありますが、使用者側に一定の配慮が求められる場合に備えて、取得理由の記載欄を請求書類に設けること自体は問題がありません。
有休は労働者の請求を受けて使用者が与えるものなので、事前に請求することが求められます。したがって、会社を休んだ後に、その欠勤日を有休にしてほしいという従業員の申し出に対し、使用者が応じる義務はありません。
■有休中の賃金は就業規則に明記されている
これは無断欠勤に限らず、発熱などで当日の朝に欠勤連絡を入れ、有給休暇の取得希望を伝えなかった場合も含みます。突然の発熱等で有休を使いたい場合は、欠勤の連絡をする際に、上司に有休取得の意向を伝えて、承認を受けておくようにしましょう。
ただし、就業規則等において、事後の届け出による取得を認める旨を定めている場合は、その定めに従います。たとえ就業規則等での定めがなくても、使用者が任意で有休取得に応じることに問題はありません。
有休取得中の賃金の計算方法として、以下の3つがあります。
1.通常の賃金を支払う(日給、週給÷当週の所定労働日数、月給÷当月の所定労働日数)
2.平均賃金を支払う(直近3カ月間で支払った賃金の総額÷暦日数(休日を含む))
3.健康保険法の標準報酬日額
使用者は、自社が採用する算出方法を就業規則に明記しなければならず、部署や従業員ごとに算出方法を変えることはできません。
■「1時間」から取得できる有休
有休中も通常の出勤として取り扱われ、通勤手当も支給賃金に含むのが一般的です。月給制で前もって定期代を支給している場合、部分的に定期代の払い戻しを受けることはできないからです。ただし、実際の出勤日に基づき、通勤手当を後払いとする場合は、支給の必要はないとされています。
有休は、時間単位での取得が可能ですが、時間単位で取得できる有休は、合算で年5日までとされています。1時間当たりの賃金は、原則として、前述の3つの方法で算出した1日ごとの賃金を、当日の所定労働時間数で割って計算します。
運用開始にあたっては、あらかじめ就業規則に時間単位の有給休暇を導入する旨、取得の条件などを記載し、労使協定を締結する必要があります。
■消化しきれなかった有休はお金になるか
会社が有休の日数を買い上げる、つまり金銭と交換するのは違法です。有休の日数を買い上げることによって、「年次有給休暇を与えなければならない」という法律に対する違反行為とみなされてしまうからです。
ただし、「未消化の有休が時効になって消滅する」とか、「まもなく退職する予定だが、有休が残っている」といった場合は、事前の買い上げではなく結果的な取り扱いとなるため、会社が買い上げても法律違反とはなりません。
ただし、就業規則に「退職時に残った年次有給休暇を買い上げる」と規定されていない限り、あくまで買い上げは会社側の配慮です。必ず会社が買い上げなくてはならないという法的な義務はありません。
休日出勤したときの「代休」や「振替休日」、「有給休暇」についてみてきました。いずれを利用するかでお給料は変わってきます。違いを知って、適切に利用することが大切です。
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ファイナンシャルプランナー
1956年生まれ。大手生命保険会社勤務後、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。金融機関に属さない独立系FP会社「生活設計塾クルー」の創立メンバーで、現在は取締役として、一人ひとりの暮らしに根差したマネープラン、保障設計などの相談業務に携わる。『医療保険は入ってはいけない![新版]』(ダイヤモンド社)、『お金・仕事・家事の不安がなくなる共働き夫婦最強の教科書』(東洋経済新報社)など著書多数。
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(ファイナンシャルプランナー 内藤 眞弓)
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