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「一人だけ登校班から外れてもらう」PTA退会で子どもへの不利益をにおわされたら親が取るべき行動

プレジデントオンライン / 2022年4月8日 11時15分

イラスト=おぐらなおみ 『さよなら、理不尽PTA!』より

いまだに“ブラックPTA”と呼ばれるようなコンプライアンス無視のPTAは多い。退会するにはどうすればいいのか。長年、PTAの改革と適正化を訴えてきたノンフィクションライターの大塚玲子さんが、子どもが犠牲にならない賢い退会のしかたを紹介する――。

※本稿は、大塚玲子(著)、おぐらなおみ(イラスト)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。

■入会後に適正化を求めるなら会長と校長に手紙を

子どもが在校生の場合、または新入生でも、既に会費を納めたり活動に参加したりしているときは、改革・適正化を求めるのはいつでもよいわけですが、新学期前後は、管理職の先生も役員の保護者も忙しいので、可能なら避けたほうがいいかもしれません。

伝える方法は、校長先生と会長さんに、同じ手紙を送るのがよいかと思います。教育委員会やP連が出した手引き(下記参照)や通知を添えるのもおすすめです。学校評価アンケートや、PTAからのアンケートに意見を記入することもできます。

参照用サイト
奈良市PTA連合会「PTA運営の手引き」
横須賀市PTA協議会「任意加入Q&A」

■PTA総会で発言すれば問題を広く共有できる

校長先生や会長さんに手紙などで要望を伝えるだけでなく、可能なら、PTA総会に出席して、改革・適正化を求めるのもいいと思います。というのは、手紙や文書だけだと、他の人たちに問題が共有されづらいからです。総会の場で発言すれば、いろんな保護者や教職員に聞いてもらえますし、そのときは改善がなかったとしても、その場にいる誰かが覚えていて、何年か後に動いてくれる可能性もあります。

文書に考えをまとめて、総会のとき、みんなに配布するのもいいでしょう。おそらくその場で結論が出ることではないので、総会では問題提起にとどめ、期限を区切って、会長や校長先生に回答を求めると、シンプルに進みます。

難しいのが、やはり発言のタイミングです。総会は基本的に「例年通り」に行われる前提なので、出席者からの発言や提案は、あまり想定されていません。事業や決算に関する質問を受け付ける時間はあっても、それ以外のこと、たとえば「意思確認が必要だから、入会届を配ってほしい」とか「必ず○人という委員決めをやめて、手挙げ方式にしてほしい」といった運営の適正化については、発言のタイミングが見当たらないことが多いのです。そのため「いつ言おう?」と思っていると、そのまま終わってしまいがちです。

終わる寸前に「ちょっと待った!」と手を挙げるのもいいですが、できれば事前に会長や役員さんに相談して、発言のタイミングを用意してもらうとよいでしょう。

誰にでもできる方法ではないかもしれません。筆者も、毎年のように一般会員として総会で適正化を求めてきましたが、「めんどくさい保護者」という視線や空気(気のせいも含め)には、いまだに決して慣れません。でももし「面白そうだ」と思った方は、ぜひ、チャレンジしてみてもらえたらと思います。

なお、PTA総会のおたよりは、よく「欠席する場合、委任状を提出」とのみ書かれていますが、委任せず欠席する場合は提出不要です。欠席のみ伝えたい場合や、記載された委任者以外の人に委任したい場合は、そのように書き入れて提出してもいいでしょう。

■退会は改革を促すひとつの意思表示になる

これまでPTAは「全員必ず入る」ことを前提にしてきたため、なかなか変わることができませんでした。どれほど運営方法に問題があっても、泣く人が出ても、会員が減らなかったからです。保護者や教職員が「賛同できなければやめる、または入らない」という選択をすることは、PTAの改革・適正化を促すためにも、大切なことです。

漫画=おぐらなおみ ※『さよなら、理不尽PTA!』より
イラスト=おぐらなおみ 『さよなら、理不尽PTA!』より

退会は、いつでも可能です。希望しないのに役員にされたときでも、集まりに欠席した友人が悪口を言われたときでも、どんなタイミングでもかまいません。会長さんか校長先生、または両方に退会届を出すなどして、退会の意思を伝えましょう。稀に会長が「退会できない」と言うことがありますが、少なくとも校長は、PTAが任意で参加する団体であることを知っていますから、退会を認めざるを得ないはずです。

■退会によって子どもに不利益があったときは?

もし「記念品をあげない」「登校班からはずれてもらう」など、子どもへの不利益を提示されたときは、なるべく書面やメールで、校長先生&会長とやりとりするのがいいでしょう。自分も「仕方なく我慢してやっている」という会長や役員さんは、感情的に非会員を敵視してしまうことがありますが、PTAという団体が学校施設を優先的に使うことを認めている校長は、非会員家庭の子どもの排除を止めなければならない立場です。大体の場合、校長先生が会長や役員さんにその旨を説明すれば、子どもへの不利益は起きないはずです。

ただ、うまくいかないこともあります。ときどき、校長まで非会員家庭の子どもの排除を認めてしまうことがあるのです。そのときは教育委員会に相談して、校長先生に話をしてもらう必要がありますが、教育委員会も稀に、校長と同様、非会員家庭の子どもの排除を認めてしまう場合があります(「教育委員会からは指導できない」という言い方をされることが多いのですが)。

こうなるともう、あとは粘り強く話し合うくらいしか、できることはないでしょう。教育委員会の手引きや通知を見せるのもおすすめです。もし、子どもの「いじめ」につながるような場合には、文部科学省に相談してください。

■個人情報の扱いについては法令を根拠に主張を

個人情報の取扱いの問題については、まずは校長先生に指摘し、改善を求めるのがいいと思います。何度も説明してきたように、そもそも正しく管理すべき個人情報を不適切な形でPTAに使わせているのは学校だからです。話をする際はあらかじめ、個人情報保護法や、自治体の個人情報保護条例に目を通しておきましょう。書籍『さよなら、理不尽PTA!』でも詳しく説明しています。

漫画=おぐらなおみ ※『さよなら、理不尽PTA!』より
イラスト=おぐらなおみ 『さよなら、理不尽PTA!』より

ただし、たまに「当自治体では、PTAへの個人情報の提供は特別に認められている」と言い出す校長先生がいます。そういったときは教育委員会から校長先生に話してもらう必要がありますが、こういう校長先生がいる自治体は、教育委員会も同じことを言う可能性が大です。教育委員会もダメなときは、自治体の個人情報保護を管轄する部署(総務課)に相談してください。ここで「やっと、初めて話が通じた!」となることは、意外とよくあります。教育委員会に対し、正しい情報の取扱いを促してもらいましょう。

ただ、残念なことに、この部署にも教育委員会から圧力がかかり、話がひっくり返ってしまうことがあります。こうなるとあとは、粘り強く話し合うのみです。他の教育委員会が出した手引きの、個人情報の取扱いの項目を見てもらい、それでもダメなら、地元の議員さんに相談するのもよいかもしれません。

大塚玲子(著)、おぐらなおみ(イラスト)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)
大塚玲子(著)、おぐらなおみ(イラスト)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)

もしそれでも改善がない場合は、学校ではなく、PTAの側の個人情報の取扱いの問題に踏み込むしかないでしょう。そのときは、個人情報保護委員会(PPC)という行政機関に相談することも可能です。相談の際は、PTAは学校と別の団体であることを最初に伝えておきましょう(ときどき知らない方がいます)。

なお、教育委員会等に「校長先生に対して、個人情報を適切に扱うよう指導してほしい」と相談すると、「任意の団体であるPTAに対して、行政は指導できない」と言われることが多々あります。PTAではなく「校長先生に指導してほしい」、とこちらは言っているのですが……。この回答には、筆者も納得しかねるところです。

■「PTAのやり方はおかしい」と思ったときに声を上げよう

一般会員や非会員の立場からPTAの改革・適正化を促す方法として、筆者が思いつくのは、ひとまずこんなところです。なお、ここでは保護者のことしかふれませんでしたが、教職員の人たちも、可能であればぜひ声をあげてもらえたらと思います。「PTAに入りません」「退会します」と言ったって、もちろんよいのです。

もちろん、これまでPTAが長年引き継いできたやり方について、今の役員さんたちを責めるべきではありませんが、少なくとも「おかしい」と感じたときに声をあげることは、むしろすべての人に求められる責務のようなものではないかと思います。「おかしい」と思いながらも黙って従えば、そのやり方を認めることになります。「おかしい」と感じたことを「おかしい」と言えることが、PTAが変わるための、最初の一歩になるはずです。

書籍『さよなら、理不尽PTA!』では、PTAの役員になって適正化・改革するための具体的な情報も掲載しています。

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大塚 玲子(おおつか・れいこ)
ノンフィクションライター、編集者
1971 年生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。PTAなどの保護者組織や、多様な形の家族について取材、執筆。著書は『ルポ 定形外家族』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』(晶文社)、『ブラック校則』(東洋館出版社)など。東洋経済オンラインで「おとなたちには、わからない。」、「月刊 教職研修」で「学校と保護者のこれからを探す旅」を連載。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。

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(ノンフィクションライター、編集者 大塚 玲子)

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