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睡眠時間はたっぷりなのに昼間に眠い…そんな人がチェックするべき「良質な睡眠」の3つの基準

プレジデントオンライン / 2022年4月8日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Gutzemberg

睡眠時間をたっぷりとっているのに、日中に眠くなる。そういう人は睡眠障害かもしれない。産業医の穂積桜さんは「睡眠研究で有名な、アメリカのスタンフォード大学が3つのチェック項目を示しているので、確認してほしい」という――。

※本稿は、穂積桜『朝型 夜型 中間型は遺伝で決まっている! クロノタイプ別 睡眠レッスン』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■人が最も長生きできる睡眠時間は7時間という調査結果

本レッスンでは、心身に不調をきたさないため、また、みなさんがよりご機嫌な毎日を過ごすために、そのベースとなる「良質な睡眠を得るためのメソッド」を紹介していきます。

そもそも、「良質な睡眠」とは、いったいどんな睡眠を指すのでしょう?

穂積桜『朝型 夜型 中間型は遺伝で決まっている! クロノタイプ別 睡眠レッスン』(KADOKAWA)
穂積桜『朝型 夜型 中間型は遺伝で決まっている! クロノタイプ別 睡眠レッスン』(KADOKAWA)

睡眠時間は削ることができない絶対的な「固定費」だとわたしは考えています。そこで、良質な睡眠を得るためには、第一に眠っている時間自体が重要となります。

パフォーマンスを上げることや、体調をベストコンディションに持っていくために必要な最低睡眠時間は、個人差こそあるものの、わたしの考えでは理想は6時間です。

稀に、3時間睡眠で有名なナポレオンのように、ごく短い睡眠でも問題なく活動できる「ショートスリーパー(短眠者)」は存在します。仮に毎日5時間睡眠を続けていてまったく日中に眠気が出ず、元気で生き生きと過ごせる人なら5時間睡眠でも問題はないでしょう。

そのショートスリーパーには、遺伝が大きくかかわっています。2009年、カリフォルニア大学などの研究チームがショートスリーパーを生む遺伝子・DEC2を発見し報告しました。

それにより、両親など血のつながった家族にショートスリーパーが多いかどうかを見ると、生まれつき睡眠時間が短くても大丈夫なタイプかを簡易的に確認できます。

アメリカで行われた大規模な調査では、人がもっとも長生きできる睡眠時間は7時間という結果が出ています。また、睡眠時間が6時間未満の人は、7時間の人と比べて居眠り運転の頻度が高いという研究もあります。

ショートスリーパーだという絶対的な確信がないなかで、たとえいまはそれほど困っていない人でも、普段の睡眠時間が6時間以内なら、きっと日中の集中力や眠気に影響が出ているはず。できるなら、最低6時間の睡眠を心掛けてほしいところです。

■眠気をやり過ごすために無駄なエネルギーを割く

以前、こんな患者さんがいました。「ある睡眠の本を読んだら『睡眠時間は3時間で足りる』と書いてあったので、1日24時間を有効利用するためにも睡眠は3時間にしていた」というのです。

しかし、睡眠記録をつけて生活スタイルを一緒に詳しく振り返ってみると、昼間の眠気がかなり強く、仮眠を取るために仕事を抜けてトイレに行ったり、空いている会議室を探したりするだけではなく、立ち上がって歩くことで眠気を取り除く努力をするなどしていたことがわかってきました。

眠気をやり過ごす努力の積み重ねのために、無駄なエネルギーを割いていたのです。

まずは、この事実を認識していただいたうえで、患者さんと相談し、いきなりそれまでの生活習慣を変えて毎日6時間睡眠にするのは難しいので、夜の予定のない日だけ6時間睡眠にすることにしました。

そして1カ月後に面談したところ、「日中の眠気の煩わしさが減ったことで、思っていたよりずっと楽になった!」と報告してくれました。

特に、「日中のパフォーマンスが落ちてきているな」と感じるようなときは、意識的に6時間から7時間くらいの睡眠時間を確保するようにしてください。

■「どこでもすぐ寝てしまうくらいに休息が足りていない」

医師として、これまでいろいろな人の話を聞いてきましたが、問題は、このパフォーマンスの低下を自覚することが案外難しい点です。

慢性的な不眠になると、眠気自体が一定以上には強くならないことがある研究でわかっています。つまり、強い眠気を感じることがないため、自分のパフォーマンスの低下にも気づくことができないのです。

また、どこでも眠れることを「体力も精神力も充実しているから」だと思っている人がたくさんいます。しかし、これは見方を変えると、「どこでもすぐ寝てしまうくらいに休息が足りていない」と捉えることもできます。

わたし自身の話であれば、通常勤務の他、月に7~8回の当直をこなしていた時代は、通勤電車で座った途端、すぐに意識がなくなるように“寝落ち”していました。

そのために、どこでも口を開けて寝てしまってもかまわないようにマスクをしていたのですが、「これで十分に仕事がまわっている」と錯覚していました。

でもいま振り返ると、当時のわたしはいつもイライラしていました。自動改札で前の人が手間取ったり、さらには歩いていて目の前の人が急に立ち止まったりするなど予想外の動きをして自分のペースを乱されると、頭が噴火するくらいに強いストレスを感じたものでした。

あきらかなパフォーマンスの低下を感じていなくても、午前や昼食後に強い眠気を感じる、朝にぼんやりする時間が長い、会議で寝てしまう。

または、気づいたら何度も同じことをしていて時間だけが経っていた、不機嫌なことが多くなった。イライラする、些細なことで不安になったり悲しくなったりする……。

こうした出来事が起きているなら、「パフォーマンス低下=睡眠不足」という体からの警告だと考えてください。

なかでも「午前や昼食後の眠気」が、自分に最適な睡眠時間を見つけるための大きな鍵となります。数日間、睡眠時間を少しずつ変えながら「午前や昼食後の眠気」をモニターし眠気を感じなくなれば、それこそが自分に最適な睡眠時間です。

どんなに多忙な人でも、年に数日は生活パターンに融通がききやすい日があると思いますので、そのタイミングで試してみてください。できれば2~3日連続で試せると、眠気の感じ方が摑みやすくなります。

■「寝ているはずなのに眠い」は睡眠障害を疑う

きちんと最適な時間の睡眠を取っていても、「日中、生理的に眠くなる時間」というものがあります。

その時間帯は起床から7~8時間後で、クロノタイプが中間型の人だと、だいたい正午から午後2時くらいまでのあいだです。この現象は、「ポストランチ・ディップ」とか「アフタヌーン・ディップ」と呼ばれています。

食事の影響を除いても、もともとの生体リズムでこの時間帯には眠気が生じやすいといわれています。自然な生理作用ですからその時間帯に多少の眠気を感じることにはなんら問題はありません。ただ、このときの目安として、10分から20分程度の仮眠を取ってもまだ眠気が強く残るようであれば、睡眠不足と考えていいでしょう。

それから、たくさん眠っているはずなのに日中も眠い、という人もいるかもしれません。わたしも睡眠外来でそのような人にたくさん出会ってきました。

そういう人の場合は、睡眠中にいびきをかいたり、呼吸が止まっていたりすることが多く、「睡眠時無呼吸症候群」になっている可能性が考えられます。

いびきや無呼吸は太っている人の病気と思われがちですが、実際は痩せている人でも、顔の骨格の影響で無呼吸になる人が存在します。

いびきの有無やその程度は、スマホのアプリなどを利用することでも簡単に調べることができます。まずは参考までに、自分が寝ている時間にアプリを使って録音してみるといいでしょう。

また、日本人の600人にひとり程度の割合で、突然病的な眠気に襲われる「ナルコレプシー」という病気の人がいることがわかっています。

他に、寝ているあいだに腕や脚が動いてしまう「周期性四肢運動障害(PLMD:Periodic Limb Movement Disorder)」といった睡眠障害の問題を抱えている可能性もあります。

ですから、しっかり眠っているつもりなのに日中に眠気に襲われることが続くなら、睡眠専門のクリニックを受診することをおすすめします。

なお、いびきの簡易検査は、保険診療を使って3000円程度で受けることができます。

■良質な睡眠が得られているかのチェック方法

みなさんが良質な睡眠を得られているかどうかを確認できる、具体的な基準もあります。

良質な睡眠、3つのチェック項目
出典=『朝型 夜型 中間型は遺伝で決まっている! クロノタイプ別 睡眠レッスン』より

これは、睡眠研究で有名な、アメリカのスタンフォード大学の研究で示されているものです。自分の睡眠について次のチェック項目を満たしているかを確認してみてください。

□ベッドに入って30分以内に眠れる
□睡眠中、起床までに起きる回数が1回以下
□「眠っている時間」が「ベッドのなかで過ごす時間」の85%以上

「さあ、寝よう」とベッドに潜り込んだのに、何度も寝返りを打ってなかなか眠れないという人もいるはずです。そういう人の場合、たとえベッドに入ってから目が覚めるまでの時間は6時間だったとしても、実はあまりいい睡眠が取れていない可能性が高いのです。

それから、前回の記事で解説した「クロノタイプ」も重要です。自分のクロノタイプと、眠る時間帯が合っているかを確認してみてください。

遺伝的に「強い朝型」の人が、夜勤明けの人のように早朝から眠るのはそもそも難しいことですし、同様に、「強い夜型」の人が午後10時にベッドに入ったとしても、悶々と眠れない時間を過ごすだけです。

もちろん、何度も申しあげるように、現在就いている仕事や、プライベートの事情ですぐに劇的な生活スタイルの改善を図るのは難しいケースがほとんどでしょう。

まずは、本来のクロノタイプとは異なる生活に順応している自分を労うべきです。そして、あとで詳しく解説する光の調節を意識してみてください。

これからの時代は、長期的な視点で見れば、働き方も生き方そのものもどんどん多様化していきます。ですから、いますぐには無理でも、できるだけ自分のクロノタイプとライフスタイルを合わせていくようにすることも一考の価値があると思うのです。

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穂積 桜(ほづみ・さくら)
産業医、株式会社MEDICIO代表取締役
日本医師会認定産業医、精神科専門医、漢方専門医、臨床心理士。2001年、札幌医科大学医学部を卒業し、札幌医科大学附属病院神経精神科、東京都立松沢病院などで精神科医として研鑽を積む。また、国立病院機構東京医療センター、北里大学東洋医学総合研究所において、内科、東洋医学の知識を幅広く習得。2014年より、精神科、内科の臨床経験のみならず、人事労務、法律の知識を併せ持つ産業医として活躍。

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(産業医、株式会社MEDICIO代表取締役 穂積 桜 イラストレーション=伊藤美樹)

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