「ご不安ならいま買わなくても結構です」売れる営業マンが躊躇なくそう言い切れる本当の理由
プレジデントオンライン / 2022年6月20日 15時15分
※本稿は、河合克仁『今日からできる ゼロストレス営業』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
■NOを突きつけられることは「負け」なのか
営業をしていて、いちばん怖いことってなんでしょうか。
それは、お客さまにNOを突きつけられることだと思います。自分ががんばって提案していることに「NO」と断られるというのは、まるで自分自身が否定されたような気がしてしまうものです。
嫌われた、拒絶された、否定された、このような感覚が、人を営業嫌いにさせてしまう大きな原因です。そして、NOを嫌がるあまり、多くの人は「どうしたらYESと言ってもらえるのか?」という方法を模索しています。
営業をゲーム的に「勝ち負け」で考えていくと、NOは負け、YESは勝ちということになるでしょう。でも、NOと言われたら本当に負けなのでしょうか?
もちろん、お客さまに即決していただけたり、競合他社ではなく自分を選んでもらえるのはうれしいことです。
しかし、YESをもらうために必死になるあまり、お客さまの都合、お客さまとの3年後、5年後の関係を無視していたとしたら、どうでしょうか?
■「お客さまの欲求に沿ったNOはどこなのか?」
私は、そのような営業を続けていけばいつか見放されてしまう時が来るのではないかと思います。「何でもいいから売れればいい」というのはあまりにも前時代的な考え方です。そもそも、お客さまがYESと言ってくださる時というのは、外的要因の影響も大きく、運の要素も強いものです。
例えば、カンカン照りの観光地でビニール傘を売らなければならないとしたら、これはどれだけ話術や経験が豊富な人でも厳しいでしょう。必要性もないし、荷物になる。わざわざ買う理由なんてありません。
しかし、突然にわか雨が降ってくれば話は別です。店先に大きなバケツを出し、その中にビニール傘を入れ、値札を貼っておけば、少々高かったとしても「助かった!」と喜ばれながらお客さま自らが買いにきます。
同じように、たまたま会社で事務処理をしていたら電話が鳴り、その電話に出るとあなたの会社の商品を購入したいという話を受けるかもしれません。
その意味で、私はいかにYESを言ってもらえるかではなく、「お客さまの欲求に沿ったNOはどこにあるのか?」を探すことが営業の基本だと考えています。
■営業にも当てはまる「負けに不思議な負けなし」
「勝ちに不思議な勝ちあり 負けに不思議な負けなし」
この言葉は、プロ野球の名監督、野村克也さんの座右の銘であり、元は江戸時代の剣術の達人・松浦静山の言葉だとされています。
その意味は、負ける時には、負ける明確な理由があるということです。
つまり営業でいうならば、「運悪くNOになることはない」ということ。そこには、買わない理由、買えない理由、買いたくない理由、決断できない理由があるのです。
商品説明がいくら完璧でも、紹介しているものがいくら画期的なサービスであっても、売れない理由を放置したままでは売れません。ところが、YESにこだわると、決断を迫り、お客さまに直接「NO」と言わせてしまうことになります。
誰でも、NOと伝えるのはストレスのかかることなのです。だから、「セールスお断り」といったシールが玄関先に貼られるようになってしまったのではないでしょうか。
YESを前提にした営業は、営業自身にも、お客さまにとってもつらいことなのです。
ですから、“ストレスのない”営業をしたかったら、まずはNOを生み出している原因を知ることが第1。第2に、その行動を極力しないように改善をすること。そして、もしも事情があって失敗してしまった時には、フォローをするということが第3の方策です。
これらのことを意識して営業をしていくと、不思議とお客さまとの関係が続いていくようになります。
1度目はYESでなくても、その原因を解決していくことで2度目、3度目と関係性が深まり、信頼が生まれ始めます。
すると、「実は……」というお客さまの本音が出始めます。そうすれば、シンプルにその本音にお役立ちできるかどうかという判断基準になり、結果的にYESが増えていくことでしょう。
■「NO」にある5つの段階
お客さまのYESには偶然の要素も大きいですが、NOには明確な理由があると言いました。では、具体的にはどんな理由があるのか?
私は、NOには5つの段階があると考えています。
〈筆者が考えるNOの5段階〉
① そもそも興味がない
② 興味はあるが、まだピンときていない
③ 検討してみてもいいが、迷う部分、納得できない部分がある
④ 自分はYESだが、まわり(社内や家族など)が反対しそうだ
⑤ 買いたいが、決めるのが怖い。背中を押してほしい
これらを一緒くたに「NO」とくくって受け止めてしまうから、言われたときに傷ついてしまうし、YESにもつながっていかないのです。それぞれの「NO」への対処法は拙著『ゼロストレス営業』に詳述しましたが、ここで少しだけ紹介します。
①そもそも興味がない
→無理にセールスをせず、あわよくば次につながる関係性を目指す
②興味はあるが、まだピンときていない
→興味を持ってくれたことへの感謝と称賛を伝える
③検討してみてもいいが、迷う部分、納得できない部分がある
→購入の可能性が1%でもあるか確認。可能性があるならば、検討ポイントを洗い出し、クリアにしていく
④自分はYESだが、まわり(社内や家族など)が反対しそうだ
→相手の要望をのみつつ、自分の望みがかなう落としどころを提案
⑤買いたいが、決めるのが怖い。背中を押してほしい
→ちょっと強めかな? くらいに押していい! むしろ押されることを待っている!
■それぞれのステージをどう見極めるか
さて、問題はこの5段階の見極め方です。
この見極めができれば、今すぐ売れなくても、たくさんのお客さまと良好な関係を築くことができ、最終的には必ず結果もついてくると断言できます。
しかし、①の段階なのに③だと勘違いしていたり、①から急に⑤にしようとして張り切りすぎてしまうと、なかなか結果につながりません。では、見極めが難しいという時にはどうすればいいのでしょうか? やはり1番確実なのは、お客さまの本音を直接聞くことです。
・「今の段階でこのテーマにご興味はありますか?」
・「ご購入の可能性は1%でもありますか?」
・「価値は感じてくださっている。でも、価格も大切ですよね?」
などなど、お客さまのぶっちゃけた本音を直接聞いてみてください。
お客さまの本音をふまえた上で、営業として、人として自分が相手にできることを探す。これがすべてにおいてのベースなのです。
もちろんその場でYESと言っていただけることがベストですが、ベストがダメならベターを探す、というスタンスが無理なく営業を続ける方法です。お客さまのこうしたい! やこんな問題を解決したい! にプラスならば、ためらいも遠慮もありません。なぜなら、それこそがお客さまが求めていることですから。
そして自分の中に経験とデータが蓄積されていくことで、「このお客さまは今この段階だな」「今はこんな言葉をかけたらいいな」ということが、少ないやりとりの中でも何となくつかめるようになっていきます。
■本音を尋ねることは失礼ではない
本音を聞くのは失礼じゃないのか? と思うかもしれませんし、私もかつてはそのように思っていましたが、そうではないのです。
確かに自分の効率や都合のために「買うの? 買わないの?」と聞けば、それは失礼な話です。しかし「自分はこの分野の専門家としてお客さまに最善を尽くしたい。だからお客さまの本音を聞かせてほしい」とお伝えして、嫌な気分になる人はいないと思います。
決して偽善ぶるのではなく「正直にいえば、自分も契約はほしいです」と伝えてもいいくらいなのです。「ですが、それ以上にお客さまにはいい選択をしてほしいんです!」とも伝えること。結局はその心があるかどうかが、重要です。
お客さまと営業というのは、「しょせんはお金でつながった関係」と捉える人もいますが、必ずしもお金だけでつながっている必要はないのです。
会社や立場を超えて関係が深まり、そこからキャリアにしろプライベートにしろ、おもしろい人間関係が始まることはいくらでもあります。
すごい営業を演じる必要はありません。世の中には、「1番」が好きなお客さまもいれば、「話を聞いてくれる」「ふとした時に相談しやすい」「○○の業界に詳しい」など、さまざまな要望があります。そうした自分の強みがわかってくれば、自分に合ったお客さまと自然と出会えるようになるのです。
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人材教育コンサルタント
1982年、愛知県豊橋市生まれ。2006年に筑波大学体育専門学群卒業後、人材教育コンサルティング会社に入社。2014年に独立し、株式会社アクティビスタを設立。筑波大学非常勤講師(キャリア教育、起業家教育)。内閣府地域活性化伝道師。共著に『世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業』(すばる舎)『世界のエリートが実践する心を磨く11のレッスン』(サンガ)などがある。
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(人材教育コンサルタント 河合 克仁)
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