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英語ができない人に英語必須の外資系の仕事を紹介…人材のプロがそれでも成功すると確信していたワケ

プレジデントオンライン / 2023年6月5日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

スキル・経験の“賞味期限”に、どう対策すればいいのか。みらいワークスの岡本社長は「自己分析も大切だが、時にはちょっと強引な依頼にも乗ってみることをお勧めする」という――。

※本稿は、岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■スキル・経験には賞味期限がある

フリーランスに付きまとうデメリットの1つに、「どうしても経験の切り売りになってしまう」ことも挙げられます。

新卒社員を採用するような企業は、「この人を育てよう」と意欲に満ち溢れています。でも、いい年をしたフリーランス人材を採用するとき、「この人を育てよう」とは誰も思いません。フリーランス人材はスキルや能力を持っていて当然。独立して高報酬をもらい続けようと思えば、それは「スキル・経験の切り売り」にならざるをえないのです。これまで経験してきた仕事、培ってきた知識で勝負するしかない。

ただ、問題はその「スキル・経験」の賞味期限が、いつまで持つかということです。今ある仕事の多くが、将来AIやロボットに奪われる時代です。残る「人間に任される仕事」のうち、どの部分を自分はできるのか。企業がわざわざ高単価を支払ってでも、自分に「働いてもらいたい」を思ってもらえる分野とスキルは何か。

■経験の切り売りから抜け出す方法

ただ、こうした自己分析も大切ですが、「時には無茶ぶりに乗ってみる」のも大いにお勧めします。フリーランスをしていると、「これもお願いできませんか?」「ひょっとしたら、これもできるのでは?」「頼みますよ、ちょっと頑張ってみてください」と、押しの強い誘いや、ちょっと強引な依頼にも遭遇します。そういうときは、「いや、できません」と断るのではなく、あえて乗ってみるのはいかがでしょうか。

もちろん、むやみやたらに未経験の仕事に首を突っこめばいいというわけではありません。社外での仕事の場合、「信用」が大切であるということは、すでに十分強調してきました。「信用」を裏切れば、そのツケは必ずわが身に降りかかってきます。

それでも、信頼できる人から、「あなたならできる」と頼まれるということは、頼んでくる相手も、「この人ならできる」と信じてくれているということです。「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」という言葉もあります。何事も、経験してみなければ、良いも悪いも分かりません。フリーランスは挑戦の機会が少ない分、訪れた挑戦の機会は、どうかその手でつかんでほしいのです。

■時には「無茶ぶり」を受け入れる勇気を

私がそう考えるのは、自分自身がかつてそのような「無茶ぶり」で、成長させてもらった経験があるからです。フリーランスとして走り始めた初期の頃のことです。

経営企画系の経験はあるものの、金融系の知識などほとんどないときに、とある大手カード会社の経営企画部門に放り込まれたことがありました。専門知識を持つ知人のフリーランスが多忙すぎたことによる「代打の仕事」でしたが、まさか企業に対し「お手柔らかに」とは言えません。必死で勉強して、寝る間を削って集中して、1~2カ月で一通り学びました。

思い返すだけで過酷で、胃がキリキリ痛むような経験でしたが、それ以来「決済系の仕事もできます」と、胸を張って言えるようになりました。自分の仕事の領域がグンと広がったのです。駆け出し当初に、かなり「無茶ぶりの仕事」も請け負ってきたことは、その後の私の仕事の幅を一気に広げてくれました。

■「やらせてください」と言い切る覚悟を

今や座学で何でも学べる時代ではありますが、やはりリスキリングで一番効率のいい学び方は、実践です。学びながら、走る。これに勝る成長スピードで勝るものはありません。

ビジネスウーマン
写真=iStock.com/Wasan Tita
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wasan Tita

そんな過去がある私だからこそ、能力はあるのに、企業名やクライアント名、領域を聞いただけで「やったことないので無理です!」と固辞してしまう人を、もったいないなと感じてしまいます。本当は1回無理して飛び込んでしまえば、いやでも学べて、自分の領域が広がるのに……と思ってしまう。

社内で様々なステークホルダーを納得させながら、物事を進める力を養うためにも、自信のないことを「無理です、できません」とスパンと切るのではなく、「何とかやってみます、私にやらせてください」と言い切る覚悟も、鍛えていくべきだと感じています。

■ポータブルスキルが新しい専門性をつくる

実は私のようなケースは、少なくありません。かつて私が担当していたフリーランスの川岸さん(仮名)の領域は、プロジェクトマネジメントでした。能力は確かでコミュニケーション力も高い。紹介する企業からは常に高評価をいただいていました。

ところがそんな彼には弱点もありました。それは、英語力。「英語ができない」ことが彼の最大のコンプレックスで、ゆえに紹介する企業はすべて日本企業に限定されてしまっていました。

しかし、そんなある日、外資系企業からプロジェクトマネジャー人材の紹介要請があったのです。その企業が望むスキルに彼は完全にフィットしています。そう、英語力さえ除けば……(その企業で働くためには、最低限の英語能力はマストでした)。

私は思い切って彼をその企業に紹介しました。もちろん、本人は「無理です!」と固辞しましたが、それを「いや、できるから、絶対!」と無理やり押し込んだのです。

彼ならできると考えた理由もちゃんとありました。これは私の持論ですが、母国語でのコミュ力の高さは、他言語でも通用するのです。

逆にどんなに語学力があろうと、他者と関わろうという意欲に乏しければ、円滑な業務遂行は望めません。川岸さんにはたぐいまれなコミュニケーションスキルがありました。たしかに現時点での英語力は流暢とは言えませんが、素地さえあれば、あとは仕事をしながら鍛えられるはずです。

通りを一緒に歩く幸せなビジネスマンのグループ
写真=iStock.com/Xsandra
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Xsandra

■高負荷な仕事がスキルアップにつながる

何も英語で文学作品を読んで議論しろというのではないのです。その領域での専門用語を身に付ければいいわけですし、特に技術系やコンサル系の英単語は、その多くがカタカナ語として日本でも流通しています。彼ほど勉強意欲が高い人であれば、多少の困難は最初感じても、いずれ慣れるだろうと確信したうえでの紹介でした。

もちろん相手の企業にもきちんと事情は話し、「最初こそキャッチアップに多少時間はかかるだろうけれど、能力は確かです」と太鼓判を押すことで、お試し期間がスタートしました。結果はこちらの予想通り。彼はまもなく業務委託先に馴染み、依頼主からも「彼で良かった!」と好評でした。仕事における確かな知識と相手の懐に入り込めるコミュ力が、英語上達にもつながったケースです。

その後、彼はどうなったか。もともと持っていたスキルに加え、「英語」という新たなカードが加わったのです。当然、フリーランスとしての仕事の幅も広がりましたし、紹介できる企業数も各段に増えました。

もちろん、仕事の単価もアップします。最初こそ「無茶ぶり」で「高負荷な仕事」だったかもしれませんが、確実にスキルアップにつながった好例と言えるでしょう。

■「仕事を選ぶ嗅覚」を磨く必要性

今度は、「実はフリーランスとして働いてみたら、厄介な仕事だった!」という事例も紹介しましょう。フリーランスとして働くことのメリットの1つは、「いやな仕事は断れる」ことだと述べました。勤めていた時は、いやな仕事でも上司に言われたら断れないけれど、フリーになったら、「これはやらない」と決めることができる。

ただし、始まる前には「いやな仕事」だと見破れないこともあります。そういうときのためにも、フリーランスは、仕事を選ぶ嗅覚を鍛えていく必要があります。

「外部からは見えなかったけれど、実際にやってみたら厄介な案件だった」ケースには、「最初からスケープゴートにする目的で外部人材を使う」場合が隠れています。企業に勤めていると、社内事情の複雑なアレコレ、ありますよね。社内政治や複雑で込み入った事例。誰かが請け負わなくてはならないけれど、社内では誰もやりたがらない。あるいは社内人材が携わると角が立つので、外の人にやってもらおうというような、いわゆる大人の事情案件です。

ビジネスマンの手はテーブルの上に落ちるブロックを停止します。
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

■スケープゴートとして働くリスク

実は、これは私の体験談です。とある企業は当時、同業他社3社が合併した直後でした。部長、部長代理、部長補佐の3ポジションを、元の3社出身者が持ち回りで任務にあたり、毎週の会議でも常にその3人にお伺いを立て、最大公約数的合意を元に話を進めていかなくてはなりません。運悪くそのうちの1人への事前根回しに失敗すると、目も当てられません。会議は険悪な空気に満ち溢れ、天からの怒号が降ってくる始末。○○派、△△派、××派に分かれる社内メンバーの調整役をひたすらやり続ける毎日に、私は気づけばだいぶメンタルが追い詰められていました。それなりに対価はもらえているけれど、自分のスキルアップには1ミリもなっていない。

そもそもこれは誰のための仕事で、何の価値を生み出しているのだろう……。仕事に意義を見出せず、ついに仕事開始4カ月目で辞めさせてもらいました。おそらく今ならば、もっと上手に継続できていたはずです。

そもそも始める前に、「ああ、こういうタイプの案件か」と気づくこともできたでしょう。その会社の沿革、置かれている状況、ステークホルダーの面々、M&Aでどことどこの会社が一緒になったのか、そして直属の上司となる人がプロパー(生えぬきの人材)なのか“外様”なのか……、それによって立ち回り方がまったく変わってくることを、当時若くて経験値も低かった私は気づけなかったのです。

■事情を察する能力は不可欠

岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)
岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)

もちろん最初から、それを分かったうえで引き受けるのならばいいのです。「今回の仕事は(お金のための)ライスワーク」と割り切って、淡々と業務をこなせばいいのですから。

ただ、それに気づかないまま仕事がスタートしてしまうと、厄介な事態に陥ります。当時、虚無感を味わいつくした私のように……。付け加えますが、その企業が悪かったわけではありません。

どこの会社でも、多かれ少なかれ、似たような事情は発生します。だからこそ相場よりも高い報酬を提示して、外から人に来てもらっているのです。要するにフリーランスとして働く場合は、このような案件も混ざってくることを承知のうえで、そのあたりの嗅覚を磨く、事情を察する能力を鍛えていく必要があるということです。

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岡本 祥治(おかもと・ながはる)
みらいワークス代表取締役社長
1976年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)株式会社に入社。金融、通信業界などのプロジェクトに参画した後、ベンチャー企業の経営企画部門へ転職。海外・日本47都道府県などの旅を通じて「日本を元気にしたい」という想いを強め、2007年に起業、2012年に株式会社みらいワークスを設立。働き方改革やフリーランス需要の拡大とともに急成長し、2017年に東証マザーズへの上場を果たす。現在は、独立プロフェッショナルのためのビジネスマッチングサービス『フリーコンサルタント.jp』、転職支援サービス『プロフェッショナルキャリア』、都市部人材と地方企業をマッチングする副業プラットフォーム『Skill Shift』、地方創生に関する転職マッチング・プラットフォーム『Glocal Mission Jobs』などを運営するほか、45歳以降のセカンドキャリア構築を支援する『HRソリューション』、企業・自治体のオープンイノベーションを支援する『イノベーション・サポート』といったソリューションを展開するなど、事業を通じて「『人生100年時代』を生き抜く為の社会インフラ創造」「東京一極集中の是正」「人材流動性の向上」といった社会課題の解決に取り組む。

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(みらいワークス代表取締役社長 岡本 祥治)

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