「お世話になっております」をいつもタイピングする人はヤバい…仕事ができる人の「コスパがいい働き方」
プレジデントオンライン / 2024年5月2日 10時15分
※本稿は、塚本亮『要領よく成果を出す人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■やることとやらなくていいことを明確に区別する
アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズは、こう言ったそうです。
「最も重要な決定とは、何をするかではなく、何をしないかを決めることだ」
目の前の仕事に一生懸命に取り組み、日々の暮らしに追われていると忘れがちですが、人生には必ず終わりがやって来ます。ずっと休まずに活動することはできません。
人の時間もエネルギーも有限なのです。
要領のいい人たちは、時間やエネルギーといったリソースが限られていることを、よく理解しています。そのため、すべてに全力を尽くすのではなく、成果につながる仕事や自分にとって最も意味のある活動に集中しています。
彼・彼女らは、自分の目標や価値観に基づいて、「やること(力を入れること)」と「やらないこと(力を抜くこと)」を明確に区別しているのです。
しかし、恥ずかしながら、かつての私はこの区別ができていませんでした。
私が執筆した『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)は、先延ばしを解消し、効率的に行動するための方法を提供することで、シリーズ50万部を超えるベストセラーとなりました。
この本の成功により、私には「すぐやる人」というイメージが定着し、本業以外の仕事が数多く舞い込むようになりました。
■まずは仕事の依頼をすべて受けるのをやめた
確かに、依頼が増えることは嬉しいことです。しかし、仕事を選ばずに受け、目の前の仕事を必死にこなしていると、同時に自分がすり減っていくような感覚を覚えました。
「すぐやる」ことは、仕事をするうえで大切な習慣ですが、私は「自分がやらなくてもいいこと」ですら、力を入れて取り組んでいたことに気がつきました。
その後、私は仕事の依頼をすべて受けるのではなく、自分の興味や気分に合わないものは断るようにしました。
また、メールの即時返信をやめ、特定の時間に集中してチェックするように変更しました。
このように、いくつも「やめること」を決めたことで、集中力が増し、最小限の努力で成果が出るようになってきたのです。
そうした経験から、「忙しさが必ずしも価値につながるわけではない」ことを学びました。
仕事で求められるのは嬉しいものです。しかし、これは罠でもあります。
忙しいと、何かをしている気になるのですが、忙しさに溺れてしまうと、成果につながる仕事や、自分にとって価値のある活動に集中できなくなるのです。
だからこそ、「何をするか」よりも「何をしないか」を明確に決めることが重要なのだと、身をもって理解できました。
■その仕事をやらなかったらどうなるか、自分に問いかける
そうはいっても、「手を抜けない」「人に仕事を任せられない」から、「やること」と「やらないこと」を明確に分けられずに、タスクを抱え込んでいる。そんな人は少なくないと思います。
「やること」と「やらないこと」を区別するにあたって、まずやってみてほしいことがあります。
それは、「その仕事をやらなかったら、どうなるか?」という自分への問いかけです。
その仕事をやらなかったとしたら、どんな影響が出るだろうか?
それをしないと、仕事が成立しないのか?
その仕事は、自分(あるいはチーム)の目標達成に必要なことなのか?
改めて自分に質問してみましょう。
案外、すでにいらない社内慣習だったり、新しい方法に置き換えられることがわかるのではないでしょうか。
であれば、慣習そのものを廃止したり、新しく提案することで改善できます。
本当に重要なことを見極め、やらなくてもいいことを遠ざける。これが、人生を豊かにする秘訣です。
この問いかけは、自分自身の目標達成に集中するために「やらないこと」を決める第一歩です。
要領のいい人は、時間を浪費するものからなるべく距離を置き、自分にとって最も価値のある活動に時間を費やします。
あなたにとって何が重要なのかを特定してください。それがわかれば、それ以外のことはあなたの人生にとって大きな意味を持たないことがわかります。
■重要な場面で全力を出すために「2:8」でエネルギーを配分
要領がいい人たちは、すべてに全力を投じるわけではなく、エネルギーの配分を賢く行っています。彼・彼女らは、サッカーの名選手リオネル・メッシのプレースタイルを彷彿とさせます。
実はメッシは試合中、常に全力で走っているわけではありません。ゴールへの瞬間的なダッシュや、試合の行方を左右する決定的なシーンでのドリブルなどで力を発揮しているのです。それ以外は、結構休んでいたりします。
これは単にサボっているわけではありません。
「力の入れどころ」、つまり重要な場面で全力を出すために余力を蓄えているのです。
緩急のコントロールが巧みなこのアプローチは、「パレートの法則」とよく似ています。全体の20%の努力で80%の成果が得られるというこの法則は、重要なタスクにエネルギーを集中させることの必要性を示しています。
要領がいい人たちは、この20%のタスクに焦点を当て、残りの80%には適度な労力を割り当てます。
たとえば、メールの対応を考えてみましょう。
要領がいい人は、すべてのメールに同じように時間をかけるのではなく、特に重要な文面のみ集中して作成し、「いつもお世話になっております」などといった定型文は、予測変換で対応しています。
また、要領のいい営業マンは、成約の可能性が高い顧客に対して優先的にアプローチしています。成約の可能性が低い顧客に同じ労力は割かないでしょう。
このように、要領がいい人たちは、「力の入れどころ」を見極め、自分の力を最適に配分しています。必要なときに必要なだけ力を発揮することで、効率的かつ効果的に目標を達成します。
■長く働くためにも緩急のコントロールは有効
緩急のコントロールは、「いざ」というときに力を発揮することに役立つだけでなく、持続可能なパフォーマンスを維持することにもつながります。
疲弊することなく、長期的な成功を収めることができるのです。
現役時代を長くしたいと願うのは、サッカー選手に限った話ではなく、ビジネスパーソンも同様です。
■何十年と仕事人生を送る中で常に全力疾走ではいられない
これからの時代、65歳以上も現役として働き続けなければならない人は増えていきます。大学を卒業してから40年近く、高校を卒業してすぐに社会に出た人ならもっと長く、働き続けることになるのです。
そこで、常に全力疾走で仕事人生を駆け抜けることはできるでしょうか。もちろん、なかにはできる人もいるでしょう。ですが、そんな人は全体のなかでも数%です。
いくら健康に気を配っていても、多くの人は気力や体力が衰えていきます。これは、抗いがたい事実です。
だからこそ、80%の成果が得られる全体の20%を見極め、「ここぞ!」というタイミングで全力を尽くす働き方にシフトしていくべきなのです。
結局、成功への道は、目の前のタスクをこなすことだけではなく、それが大きな目標にどのように貢献しているかを常に意識することから始まるのです。
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トモニツクル京都山城代表取締役、ジーエルアカデミア代表取締役
1984年、京都生まれ。同志社大学経済学部卒業後、ケンブリッジ大学で心理学を学び、修士課程修了。帰国後、京都にてグローバル人材育成「ジーエルアカデミア」を設立。主な著書に、『ネイティブなら12歳までに覚える 80パターンで英語が止まらない!』(高橋書店)、『頭が冴える! 毎日が充実する! スゴい早起き』(すばる舍)、『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)などがある。
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(トモニツクル京都山城代表取締役、ジーエルアカデミア代表取締役 塚本 亮)
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