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呼吸を整え意識で、意識を、意識する…プロカウンセラー「いずれ訪れる死の瞬間を迎えるための3つの心得」

プレジデントオンライン / 2023年5月1日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kaisorn

人生の最後はどう迎えるべきか。明治大学文学部教授の諸富祥彦さんは「チベット死者の書では、死ぬ瞬間に大きな『光』から目をそむけずに見ることを教えている。たとえ光がこなかったとしても、死ぬ時の心の準備として、意識で意識を意識することだ」という――。

※本稿は、諸富祥彦『50代からは3年単位で生きなさい』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

■死の瞬間のまばゆい光から目をそむけてはいけない

人生の最後の瞬間にできる最大のこと、それは、最後の瞬間に訪れる、まばゆいばかりの光から目をそむけずに、それを見ること。目を見開いて見ること。これです。

これが人生の最後の瞬間に最も大事なことだと『チベット死者の書』は教えているわけです。

チベットでは、死ぬ瞬間には、近親者はそばにおかないんです。この世への執着を刺激するので、家族、恋人、親、子ども、妻、夫はそばにおかないんです。この世への執着を刺激してしまうので。そばにいることができるのは僧侶のみ。

それで、ただ光を見るという、この体験のために備えるわけです。

それは、よい転生、生まれ変わりのためであり、さらには解脱のためです。

よい転生をするためです。

大きな光がくると、まばゆいので、思わず目をそむけてしまう。そして、小さい光のほうに目を向けてしまう。

すると、あまりよくない生まれ変わりになってしまうということなんですね。

ですので、小さな光に目をやりたくなっても、決して大きな光から目をそらさないこと。大きな光を見続けること。これが、何よりも重要なことなんだと『チベット死者の書』では言うんです。

ケン・ウィルバーというトランスパーソナル心理学最大の思想家でインテグラル理論の創始者がいます。この方が、がんで亡くなっていく奥さんを看取る時にも、「その光だよ」「目をそむけるな」「その光を見るんだ」と、励ますわけです。

光を見る。

私も死ぬ時に、しっかりと覚えておきたいことは、目を見開いて光を見る。まばゆいばかりの光から目をそらさない。しっかりと光を見る。これを忘れないようにしたいものだと思っています。

けれども、本当にそういう光がやってくるのかというと、それはわかりません。

■昏睡状態では「意識で意識を整える」だけ

知人の方で、昏睡体験をされた方のお話です。

昏睡状態でその方が体験した世界は、本当に真っ暗だった。薄暗い闇ではなくて漆黒の闇。真っ暗な闇の中で、まったく身動きがとれない体験。ただただ真っ暗で、何の光もない。ただただ真っ暗な漆黒の闇の中で、手も足もない。身動きすることもできない。

叫んでも、叫んでも、声も出ない。「助けて~」「助けて~」と心の中では何度も叫んでいた。けれども、何度叫んでも、声も出ない。手も足もなくて、身動きひとつとれない。

想像してみてください。

手も足もなくて、身動きひとつとれない。叫んでも、叫んでも、声も出ない。ただただ漆黒の闇の中に放り出されている。

この方は、いろいろな信仰のマントラ(人に霊的な変容をもたらすとされる聖なる言葉)を唱えたそうです。けれどもマントラも通用しない。届かない。

意識も朦朧としてくる。意識もあるか、ないか定かでなくなってくる。

もうダメだ。

もう終わりだ。

結局、昏睡状態からこの方は生還して、今でも元気に活躍しておられるわけですが、真っ暗な闇の中に放り出されて手も足もない。まったく身動きができない。いくら叫んでも声が出ない。届かない。もうダメだ。まったく何もできない。そう思った時に唯一できたことは、「意識で意識を整える」。これだけだったと言います。

暗いトンネルからの出口を見つける誰かのショット
写真=iStock.com/Yuri_Arcurs
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuri_Arcurs

ただ意識だけがある。意識で意識を整える。これしかできなかったとおっしゃる。

意識で、意識を、意識する。
意識で、意識を、意識する。

できたのは、ただこれだけだと。

こうおっしゃるわけなんです。

■いずれ訪れる死の瞬間を迎えるための3つの心得

私も、最後の瞬間にしたいのは、まず呼吸に意識を向けて、整えたい。

鼻から入ってくる息、鼻から出ていく息に、まず意識を向けたい。

どんなにまばゆい光が襲ってきても、目をそらさずに、目をカッと見開いて、見続けたい。

けれども、この方の体験のように、もし光が来なければどうするか?

あきらめるのではなくて、「意識で、意識を整える」「意識で、意識を、意識する」。

最後はただ、これしかできないのであれば、これをやっていきたい。

死ぬ時には、これをやる。

これが最後にできることだろうと思って、死ぬ時に向けて、心の準備をしておきたいと思っています。

死の最期の瞬間に私がしたいと思っているのは、次の3つです。

1つ目。まず呼吸を整える。鼻呼吸に意識を向ける。鼻から入ってくる息に。いのちとは息ですから。キリスト教圏でも、こう言います。いのち(スピリット)、スピリット(spirit)というのは、息、息吹。スピリットというのは霊であると同時に、いのちである。それは呼吸、息という意味でもあるのです。

「入ってきているなあ~」「出ていっているなあ~」「入ってきているなあ~」「出ていっているなあ~」と、呼吸にゆっくり意識を向けたい。

諸富祥彦『50代からは3年単位で生きなさい』(河出書房新社)
諸富祥彦『50代からは3年単位で生きなさい』(河出書房新社)

2つ目。『チベット死者の書』が教えてくれるように、本当にまばゆい光が来たならば、目を見開いてそれを見たい。小さな光に意識を奪われることなく、目を見開いて、しっかりと光を見続けたい。

3つ目。光が来ないかもしれない。「えっ、光が来ないよ。どうしよう?」そうなった時には、「意識で、意識を、意識する」。

意識で、意識を、意識する。

ただこれを繰り返す。意識で、意識を、意識する。

意識を整えるということ、ただそれだけをやっていく。

この3つのことを心得て、いずれ訪れるであろう死の瞬間を迎えたいと思います。

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諸富 祥彦(もろとみ・よしひこ)
明治大学文学部教授
1963年福岡県生まれ。教育学博士。臨床心理士。公認心理師。教育カウンセラー。「すべての子どもはこの世に生まれてきた意味がある」というメッセージをベースに、30年以上、さまざまな子育ての悩みを抱える親に、具体的な解決法をアドバイスしている。教育・心理関係の著書が100冊を超える。

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(明治大学文学部教授 諸富 祥彦)

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