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爆笑ネタもすべらない話も持っていない…でも「輪の中心にいる人」が心がけている"絶妙なポジション"

プレジデントオンライン / 2023年6月18日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eli_asenova

とっておきの話題がないのに、周囲との会話が弾む人がいる。元TBSアナウンサーの堀井美香さんは「このような人は、天気の雑談すら大切にしている。必ずしも場を盛り上げる必要はなく、いい空気の会話の流れさえできればいい」という――。

※本稿は、堀井美香『聴きポジのススメ』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

■相手の考えは「ひとつの考え方」でしかない

誰かと話していると、ときに自分とはまったく違う考えに出会うこともあります。ともすれば議論になってしまうようなテーマもあるでしょう。そんなとき、「聴きポジ」(聴き手のポジション)はどうすればいいのでしょうか?

答えは、「争わないし、受け入れない。でも、受け止める」です。

ひとたび「相手の考えを変えてやろう」という考えが頭に浮かぶと、上手に聴くことができません。反論の機会をうかがい、相手の論の矛盾を突き……と、戦闘モードになってしまう。

そんなときは、心の中でこう唱えましょう。

「あなたはそう思うんですね」

それぞれ別の考え方を持っているという事実だけを受け止め、「どっちが正しい」という価値づけをしないことが大切です。正しいも正しくないもないのです。

このように、相手の話を「受け止める」ことは大切です。しかし、すべてを「受け入れる」必要はありません。そうでないと、「聴きポジ」につくなかで、自分の軸が揺らいでしまいますから。

私は、だれかにいただいたお話は、どんな内容であれすべて自分の「内なる引き出し」にしまっていくようなイメージを持っています。たとえば自身と相反する考え方の人がいても、「ひとつの考え方」と引き出しにしまっていく。

争わないし、受け入れない。でも、受け止める。このスタンスでいれば、自分の軸を守りつつ、たくさんの価値観をインプットしていけるはずです。

■美容院の「お天気雑談」はどう対応すべきか

会話は、盛り上がらなくて構いません。

もちろん始終お通夜のような雰囲気はさすがにつらいですが、盛り上がりでいえば「そこそこ」で充分です。とっておきのネタや驚き、爆笑がなくても、まったく構いません。

淡々と、和やかに気持ちよく過ごせれば、百点満点。そしてその「気持ちよさ」は「聴きポジ」に託されているのです。

たとえば美容院で、次のような会話を経験したことはないでしょうか。

美容師「今日、3月にしてはずいぶんあったかいですね」
堀井「そうですよね。あ、しかもセーター着てらっしゃるから……」
美容師「そうなんです。朝晩は冷えるから、むずかしいですよね。昨日も帰り道、寒くて家までずっと走ってきました。」

こうした「お天気雑談」は、「定型文」として否定的な意見を耳にすることが少なくありません。「適当に話しかけないでほしい」とか「話す意味がない」とか。

美容師と客
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu

でも、そういうふうに斜に構えるのは、もったいないと思います。

大切なのは、相手や会話を評価せず、素直な気持ちで接することです。

2人の関係を育むために、必ずしも意味のある会話をしなければならないわけではありません。記憶に残るような会話ができなくても、「なんだかいい人だったな」「楽しかったな」で充分なのです。

■場を盛り上げるよりいい空気の会話をつくる

ときどき、会うたびにとっておきのネタを持ってくる人、飲み会などでその人を中心に大盛り上がりする人はいます。その話術がうらやましくなるかもしれませんが、彼らは「レアキャラ」。おもしろいしありがたい存在ではあるけれど、目指す必要はありません。だって私たちは一般人なのですから、「すべらない話」なんて持っていなくて当たり前。

私自身、おもしろい話は一切できない人間だと自覚していますが、それでも――いえ、だからこそ「聴きポジ」を選び、円滑に周りと「うまくやって」こられたのだと思います。「お天気雑談」も、しょっちゅうします。それで損をしたことはありません。いい空気の会話をつくるプロになる、という戦略もあるのです。

■「盛り上げを期待されない人」を狙おう

こうした場をあたためるやりとりでは、「聴きポジ」の観察やレシーブ力がものを言います。先の例では、「聴きポジ」である堀井が「セーターを着ている」という相手の情報をキャッチし、投げ返しているのがわかるでしょうか。そこから、話し手が会話をふくらませていくというわけです。

堀井美香『聴きポジのススメ』(徳間書店)
堀井美香『聴きポジのススメ』(徳間書店)

このように、「聴きポジ」は方向を決めてボールをトスする役割を担っているのです。そしてこれはやや余談ですが、「聴きポジ」が板についてくると、場が盛り上がらないときに焦らなくなります。「自分がなんとかしなきゃ」と、余計なこと(そして無理なこと)を考えなくなるからです。身勝手な言い方ですが……無責任になれるんですね。

そして責任を負っていないと肩の力が抜けてリラックスできますから、「そういえば、この前の出張どうでした?」など自分が気になる質問をさらりと振れるようになります。がんばって絞り出した質問ではなく、心から聴いてみたいことが。

場を取り繕う必要はありません。それは「聴きポジ」の仕事ではありませんし、かえって場はしらけてしまうことが多いです。

場を素直に楽しみつつ、周りから「盛り上げ」を期待されない人。そんなポジションを虎視眈々(たんたん)と狙いましょう。

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堀井 美香(ほりい・みか)
フリーランスアナウンサー
1972年、秋田県生まれ。1995年、TBSにアナウンサーとして入社。永六輔、みのもんた、久米宏、竹中直人(いずれも敬称略)など、個性的な先達のアシスタントを長年にわたって務めた。2022年3月に退社し、現在はフリーランスアナウンサーとして活動。ジェーン・スーとの大人気ポッドキャスト「OVER THE SUN」など、独立後の活躍も目覚ましい。著書に『OVER THE SUN 公式互助会本』(左右社)、『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)、『一旦、退社。』(大和書房)がある。

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(フリーランスアナウンサー 堀井 美香)

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