稼いだカネを何に使いたいか…「お金持ちになる人」と「ならない人」では回答が決定的に違うワケ
プレジデントオンライン / 2023年6月21日 10時15分
※本稿は、高森 勇旗『降伏論「できない自分」を受け入れる』(日経BP)の一部を再編集したものです。
■現在の行動は「未来の目的」から引き起こされている
「自分が成功することを、許せ。お前は、自分が成功することを許していない」
自己を変革するために言葉を変え、行動を変え、あらゆるストレスを引き受けているにもかかわらず、一向に成果が出ない日々が続いていた。これはそんな時「電車に乗るな」と言った経営者からいただいた言葉である。
「自分が成功することを許していない」とは、一体どういう意味なのか。その言葉を理解するには、少し時間が必要だった。
心理学者のアルフレッド・アドラーは、「目的論」を強く説いている。現在の行動は過去の原因からではなく、未来の目的から引き起こされている、という考え方だ。
例えば、“引きこもり”は、過去に人との交流によって受けた自分のトラウマが原因となって起きていると解釈するのではなく、「人と会いたくない」という目的を達成するために、“引きこもり”という症状をつくり出している、といった具合である。
自らが潜在的に、本質的に望んでいる方向に、無意識に行動は引き起こされる。そしてその行動が、結果を引き寄せる。言い換えるならば、現在目の前で起こっている結果はすべて、自分が望んだ通りの結果ということだ。
■成功する勇気を持たないといけない
私には、思い当たる節がかなりあった。というのも、過去を冷静に振り返ってみた時に、私は本当にプロ野球で“成功したい”と思っていたのだろうか。どこかで、一生懸命練習している自分、2軍でもがいている自分、ひたむきに頑張っている自分に酔い、そこで満足していたのではないか。
1軍の世界で、真剣勝負の舞台にさらされ、そこで明確な結果を突きつけられるよりも、「2軍のホープ」でいる方が圧倒的に楽なのだ。チャンスさえ与えられれば、時期さえよければ、アイツはきっと活躍できると言われている方が、自尊心も保たれ、結果にさらされることもなく、ある意味で安泰でいられる。実は、深層心理ではこれを望んでいたのではないか。
私自身の経験も含めて言えることがある。どれだけ頑張っても結果が出ないとしたら、あなたがそれを望んでいるからに他ならない。結果が出ない方の未来を、自らが望んで選び取っているのだ。なぜなら、その方が自分にとって利益が大きいからだ。
結果にさらされなくていい、ひたむきに頑張っているポジションでいられる方が、楽だからだ。なんだかんだ言って、そのままの自分が好きで、変わらない方がいいと潜在的には思っているのだ。成功することによるリスク、責任を負う大変さ、自己変革によるストレスを受け入れることが怖いのだ。
本当に結果を出したいのであれば、自分が成功することを許さなければならない。そして、成功する勇気を持たなければならない。
■欲しかったポルシェに乗れなかった理由
以下は、数年前に私がコーチングを受けていた女性コーチとの会話である。
「いま、欲しいものは何?」
「うーん、ポルシェが欲しいです」
「へぇ〜。どうしたら、買えるの? それ」
「もっと稼いだら、買えますね」
「ふーん。じゃあ、あなたが誰だったら、ポルシェにふさわしいの?」
「えっ、誰だったら?」
「うん。いまないってことは、ふさわしくないんでしょ?」
「そういうもんですかね。誰って、どういう意味ですか?」
「あなたの中では、どんな人がポルシェにふさわしいの?」
「うーん、もっとエレガントな人ですかね」
「じゃあ、あなたがもっとエレガントであれば、ポルシェに乗れるの?」
「そう、思います」
「ちなみにさ、あなた、いま稼いでないんだね」
「えっ、どうしてそれを……」
「だって、“もっと稼いだら”って、稼いでない人が言うセリフよ」
「た、確かに……」
「“稼いでない”って自分で認識している人が、稼ぐことはないわよ」
「えっ、じゃあどうすれば……そうはいっても、稼いでないですよ、いま」
「稼ごうなんてしなくていい。ただ、エレガントであればいいのよ」
「エレガントで……ど、どのように?」
「あなたさ、お金稼ぐの得意?」
「えっ、いや、時と場合によるというか、不得意とは思いませんが……」
「あのさ、得意? って聞かれたら、0.2秒で『得意』って言って。そう思ってなくても。もう一回聞くね。あなた、お金稼ぐの、得意?」
「はい、得意です。お任せください」
「そう、それでいい。あとはエレガントに生きていればね」
■「行動」より前にあるもの
行動を起こしたことが、結果となる。
しかし、行動はいつもあなた自身から生まれる。どんなあなたが行動を起こすかは、実は結果に大きな影響を与える。無論結果を引き寄せるためには、行動しなければならない。
行動の方に意識が向きすぎて、自分自身がどう“在る”かに注意を払う人は少ない。自らがどんな行動を起こすかではなく、その行動を起こすあなた自身は、“誰”なのか。どう在るのか。
そこが、実は成果を分ける。
■何をするか誓っているのではダメ
初詣に行き、神様の前で「今年こそ○○にチャレンジします!」といったように、“何をするか”を誓う人は多い。しかし、「今年こそチャレンジャーでいます」という、自分がどう在るかを誓う人は少ない。英語で表現するところの、Doing(行動)領域は、我々が最も意識しやすく、そして多用されている言葉だ。
私は~~~~にチャレンジします。
これが、一般的に多用されているDo動詞の文章で、
私はチャレンジャーです。
これが、Be動詞の文章である。
Do動詞は、常にこれから起こすことを表現している。前述したように、「もっと稼ぐ」という表現は、いま稼いでいない人が“これから”稼ぐという世界観だ。
つまり深層心理では、“いま稼いでいない自分”を認めている。稼いでいない自分、極論で言うと、貧乏な自分がこれから稼ぐために行動を起こすというわけだ。
残念ながら、このマインドでは結果を引き寄せられない。自分の潜在意識が選んでいる、ベースとなっている在り方は、I am poor(私は貧乏で在る)だ。こういう人から生まれてくる行動(Doing)は、結果として貧乏(poor)を引き寄せる。
前述したように、「〜にチャレンジします!」と言っている人はどういう人かというと、現在チャレンジをしていない人である。Being(在り方)に注目し、I am a challenger(私はチャレンジャーで在る)と言っている人から生まれる行動(Doing)は、必然的にチャレンジングな行動だ。行動を起こすその人のBeing(在り方)が、すでにチャレンジャーだからだ。
行動だけでは、結果に到達できない。肝心な行動はあなた自身から生まれてくるのだから、あなた自身がどう在るかに、もっと注意を払わなければならない。
■超富裕層は一見、お金持ちに見えない
そもそも、お金持ちとは何か。野村総合研究所の調査では、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の世帯を、富裕層としているそうだ。
純金融資産とは、預貯金や株式、債権や生命保険などの金融資産から、負債を差し引いたものである。現金、株式、債券、保険の保有額から借金を引いて、なおかつ1億円以上ある人を富裕層と呼ぶらしい。
ちなみに、これが5億円以上となると「超富裕層」という呼び名に変わる。私は、超富裕層の方々ともたくさんお会いしてきた。彼らは、一見すると“いわゆるお金持ち”にはまったく見えない。上品で派手ではないものを好み、無駄遣いをせず、何かをひけらかしたりすることはまずない。
代わりに、時間を大切にし、約束を守り、ボランティア活動に興味を持つ。超富裕層の中には、生まれながらにその宿命を背負っている者もいるが、多くは自らの手で財産を築き上げた者たちだ。
■お金持ちになれるかわかる「ある質問」
彼らは総じて貧乏からスタートし、超富裕層に成り上がった。また、現在進行形で成り上がっている人々にもたくさんお会いしてきたし、残念ながら成り上がりかけて消えていった人々にも同じくたくさんお会いしてきた。超富裕層や富裕層になる人、なりかけてなれない人。
彼らを分けるものとは、一体何なのか。
私は、「お金持ちになりたいです!」という人とかなりたくさんお会いしてきた。というより、この願望がまったくない人はおそらくこの世にいないだろう。かく言う私自身も、この思いを強く持っていたし、いまでもある。
私は、こういう人に必ず、「いいですね。具体的に、いくら稼いだらお金持ちになったと言えますか?」と聞くようにしている。その額は人によって実にさまざまであるが、実はこの質問自体はそんなに意味がない。その後に聞く質問が私にとって重要である。
「稼いだお金を、何に使いたいんですか?」
■お金持ちになれない人の回答
この答えこそ、その人の持つ“お金持ち”のイメージを現している。ここでの回答はいくつかに分類される。
「いや、ただ稼ぎたいのであって、何に使いたいかは特に決めてない」
という、何も決めてないがとにかくお金持ちになりたい人。
「いいところに住んで、良いクルマに乗って、おいしいものを食べたい」
という、漠然と生活の質を上げようとしている人。
「1億円の家に住んで、ベンツに乗りたい」
という、具体的に生活の質を上げようとしている人。
「旅行に行ったり、欲しかった高級時計を買いたい」
という、娯楽や物欲を満たそうとしている人。
このように回答する人の多くは、“お金持ち”になりたいのではなく、お金を“使いたい”のだ。お金を使って手に入れるものは、もっと良い、少なくともいまよりはずっと良い生活だ。
確かに治安が良く清潔で、医療や教育の体制が整い、利便性の良い街で暮らすに越したことはないだろう。
しかし、本当にダイヤモンドの指輪やピアス、高級腕時計は必要なのだろうか。お金持ちになりたいのではなく、お金を“使いたい”人の多くは、お金を使うことで“優越感”を得ている。これは非常に強い快楽を伴い、一時的に強烈な満足感を得ることができる。ただ、この快楽はすぐに元に戻り、“より強い”快楽を求めて、さらに多くのお金を使うことを求める。
こうして、実際に多額のお金を稼ぎ出す人であっても、真の意味で“お金持ち”になる人は実は少ない。まとめて言うならば、彼らはお金持ちになりたいのではなく、お金持ちと“思われたい”のだ。私は、このグループに属する人たちを、資本主義と承認欲求の罠にかかった“大量消費者”と呼ぶようにしている。
■お金持ちになる人の回答
稼いだお金を何に使いたいかという問いに対する、真の意味で“お金持ち”になるグループの回答は、上記とは性質が異なる。
このグループの回答は、
「投資の資金の元手にしたい」
「そのお金を元手に多額の資金を借り入れて、事業を起こしたい(または、不動産を買いたい)」
といった、いわゆる“レバレッジ”をかける方に意識が向いている。
彼らの多くは、お金が“増える”ことよりも、“減る”ことを極端に嫌がる。だからこそ、何も生み出さない消費(例えばブランド物のアクセサリー)にはほとんど目もくれないかわりに、長期的に利益を生み出すものには惜しみなく資金を投入する。
そんな彼らにも、お金を増やすからには最終的には何かに使う欲求があるだろう。「何のためにお金を増やすのか?」と問いかけてみると、驚くべきことに、ほとんどが同じような回答をする。
「“お金”から自由になるために」
「“お金”によって阻まれる人生から解放されるため」
「選択肢を多く持てるようにしておくため」
といったものだ。
彼らは、何かの物を手に入れるためではなく、自分の状態のためにお金を増やす。ちなみに、彼らに物欲がない訳ではない。彼らは、自分の状態を高めるためであれば、躊躇(ちゅうちょ)なく大金を使う。
■自分への投資はもっとも利回りがいい
お金持ちがもうひとつ惜しみなくお金を使う領域がある。それは、“体験”である。
お金持ちになる多くの人は、刺激的な体験、面白い人との出会い、新しい考え方を得るためなら、お金を惜しまない。
彼らは、それらの体験によって自らの視野が広がり、それが自らをより働かせることを知っている。“自分に投資する”ことが、最も利回りが良いことを知っているのだ。
「贅沢はしてもいい、見栄は張るな。これは、代々受け継がれた教え」
これは何代も続く名家に生まれ、生まれながらにして超富裕層の知人の言葉だ。
彼は現在大企業の経営者であるが、贅沢なお金の使い方はするが、派手な使い方は一切せず、お金を使うとしたら社員に還元すると言い、実際にそうしている。彼が個人で購入する洋服はいつも超高級品で、イタリアで行われるそのブランドのパーティに日本人で唯一招待されるほどのVIPでもある。しかし、そのことを自分の口から言うことはまずあり得ない。私は、このことをその洋服店の店員さんからこっそり教えてもらった。彼は、言う。
「贅沢で潰れる会社はない。何が良いものかを知るためには、贅沢はしなければいけない。潰れる時は、“見栄”で潰れる。絶対に、見栄のためにお金を使ってはいけない」
“お金持ち”というものを生まれながらに背負い、そして教えを受けてきた者の言葉には、より一層の深みを感じる。
■「贅沢」と「見栄」の違い
ある日、別の超富裕層の方と一緒に銀座の高級クラブに飲みに行った。この時一緒にいたもうひとりの方が、高級なシャンパンを飲もうと提案をした。その時、すかさず超富裕層の彼は言った。
「この飲み代はみんなで割り勘だけど、そのシャンパン、お前の奢りなら飲んでもいいぞ。お前の見栄は、お前だけで張ってくれ」
一点の嘘もない、紛れもない正論である。彼にとって、高級シャンパンが一本開いたところで、痛くも痒くもない料金だ。
しかし、彼には明確なルールがある。ただ、銀座の高級クラブで堂々と切り出すことはかなり難しい。豪快に笑いながら、何の躊躇もなく言ってのける彼の凄さを目の当たりにし、私は超富裕層がいかにして成り上がるかの一端を見た気がした。
真のお金持ちは、一時的に自分の欲求を満たす消費や、見栄や優越感のためのお金は使わない。お金から解放されるために、お金そのものを増やしにかかる。そして、お金がお金を生み出して溢れた分で、贅沢を思う存分楽しむ。
お金持ちと“思われる”べく、一時的な感情に支配され、大量消費者となってしまっては、お金持ちにはなれない。
誰しもがお金持ちになろうとは思っていないかもしれないが、人生でお金の問題から解放されることを想像してみてほしい。綺麗事ではなく、ほとんどの問題は解決するはずだ。「金持ち喧嘩せず」とは、真実を捉えた言葉である。
■どのように生きるかを決めよう
私は、「どのように稼ぐか?」という行動(Doing)領域と同じように、「どのように生きるか?」という在り方(Being)に厳重に注意を払うようになった。
私が目指したのは、“エレガント”な在り方。“I am elegant”と決めて生きた時、あらゆる自らの言動が気になるようになった。実際に私がエレガントであったかどうかは、分からない。
ただ、とにかくエレガントに生きると決めたのだ。
(エレガントな人は、ここで何と言うだろうか?)
(エレガントな人は、ここでどのように立ち振る舞うだろうか?)
(エレガントな人は、ここで何を選ぶだろうか?)
私は、自分の一挙手一投足に注意が向くようになった。自然と姿勢が良くなり、歩き方も、言葉遣いも、表情も、生活習慣にまで影響を与え始めた。エレガントに生きると決めてから9カ月と27日後、私はポルシェを購入した。
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元プロ野球選手・ビジネスコーチ
1988年富山県高岡市生まれ。2006年、横浜ベイスターズ(現DeNA)から高校生ドラフト4位で指名を受け入団。12年に戦力外通告を受け引退。引退後は、データアナリスト、ライターなどの仕事を経て、ビジネスコーチとしての活動を始める。延べ50社以上の経営改革に関わり、業績に貢献。
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(元プロ野球選手・ビジネスコーチ 高森 勇旗)
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