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断っても断っても鮮魚のおみやげを渡してくる…取引先担当者の謎行為の裏にあった"ちょろまかし"の手口

プレジデントオンライン / 2023年7月13日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

身に覚えのないことを取引先から自分のせいにされている場合、どうすればよいのか。人材育成コンサルタントとして、ハラスメント行為者へのカウンセリングを専門に行う松崎久純さんは「対策としては、決して個人的なこととは受け止めないようにすることです。彼らは機会があれば、他の人にも同じことをしているものです」という――。

■身に覚えのないことが自分のせいにされている

何年も前から、取引先の担当者に手みやげを渡されることが多かったのですが、その担当者は、毎回、会社経費で自分にも同じものを買い込み、すべて私に渡したように社内で会計処理をしていることがわかりました。大事な取引先なので、事を荒立てたくありませんが、あまりに非常識ではないでしょうか――30代の会社員の方からのご相談です。

社会人生活をしていると、身に覚えのないことが自分のせいにされている――こんなことがあるものです。

変な噂を立てられたり、悪意のある吹き込みをされることもあれば、私などは、勤務先で机の中から認印を後輩の女性従業員に勝手に持ち出され、悪用されていたことさえあります。

相談者の方が悩んでおられる、いわゆる「ちょろまかし」に利用されたのも一度や二度ではありません。

顧客が「松崎さんを接待するために使った」ことにして、何年も継続して経費を私的に使っていたのです。

世の中には、平気でうそをつける人たちがいますから、やっかいです。

■「ちょろまかし」が横行している

残念なことに、昔も今も「ちょろまかし」をする社会人は大勢います。実例から、典型的なものを紹介しましょう。

いくつもの企業から参加者を募って行われる勉強会。合宿所を会場として提供してくれた企業の担当者が、夕食を兼ねた懇親会では幹事も務めてくれました。そのことは非常にありがたかったのですが、この担当者は、合宿所に常備されている地元産のワインを懇親会の参加者が何本も余分に飲んだことにし、持参した自分のボストンバッグに内緒で忍ばせていました。

あなたならこれを見て、その場でどのような反応をするでしょうか。

物事は目の前で見ると、いろいろなことがわかるものです。私がこれを見たときには、この担当者はそれをするのがはじめてではなく、おそらく常習犯であるのが感じ取れました。

それでも、これは社会人により行われる「ちょろまかし」の中では、かわいいものでしょう。なぜなら、確かに不正は行われているものの、特に誰かが利用されたわけではないからです。

ところが同じ数千円か数万円程度のことでも、誰かを利用して「ちょろまかし」が行われると、それは途端に、簡単には許せない悪質なものとなります。

■断っても渡されるおみやげの謎

取引先で行われる不正行為に自分が利用されていた――この実例を見てみましょう。

私も相談者の方と同じように、顧客企業の担当者から「おみやげ」を渡されることがありました。おみやげとして渡されるそれは、いわゆるギフト品として販売されている品ではなく、その企業の事務所近くの漁港で水揚げされた鮮魚が何匹も入った発砲スチロールの箱でした。

はじめてそれをもらったときには驚いて、特別な贈り物として渡されたのだろうと思っていました。しかし、しばらくするとまた同じものが用意されていて、次第にその頻度は増し、ついに毎月訪問のたびに渡されるようになったのです。

正直に言って、私はそれをもらうたびに、まるで嬉しくないどころか、迷惑に感じていました。私は当時一人暮らしで、鮮魚をもらっても扱いに困りましたし、何時間も電車を乗り継いでその会社を訪問していましたので、ただでさえ手持ちの荷物が多いのに、自宅に持ち帰るのは大変だったのです。

新鮮な魚介類
写真=iStock.com/ahirao_photo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ahirao_photo

■おみやげが担当者の懐に…

先方の年配の担当者に何度も遠慮したい旨を伝えましたが、「まあ、そうおっしゃらずにどうぞ、どうぞ」と言われるのです。

「いえ、本当にありがたいのですが、今日持ち帰りましても、明日からまた出張に出かけますし……」と説明しても聞いてもらえません。

担当者の周囲の人たちも見かねて、「これは持ち帰るだけでもたいへんですよ」と助け船を出してくれるのですが、

「いや、別に電車内に置いていくだけでしょう」となり、取り付く島もありません。

そのため一度、年配の担当者の助手役で、いつもその鮮魚を市場へ買いに行っている若い社員に、「なぜAさん(年配の担当者氏)は私に魚を持たせたいのですか」と尋ねると、その社員は、鮮魚をたっぷり詰め込んだ発砲スチロールの箱を二つ積んだ車のトランクを私に見せて、「Aさんが一つ持って帰るからですよ。両方ともおみやげとして松崎さんに渡したことになっているんですよ」と言うのです。

そして、「Aさんは魚が大好きですから楽しみにしているんですよ。でも、これ持って帰るの大変でしょう。もし本当にいらなければ、私がもらって帰りたいくらいですよ」と続けました。

私は当時、お酒を飲みませんでしたので、私に用意されたのは鮮魚だったのですが、やはりAさんが担当者だった他の同業者は、私が手渡されていたのと、まったく同じように、毎回日本酒をもらって帰っていたようです。これは後になって知ったことです。

■個人的なこととして受け止めない

このAさんから依頼を受けていた仕事は朝が早かったため、私はいつも前乗りで現地入りしていました。

仕事は翌朝からですから、夜遅くに到着すればいいのですが、Aさんからは、できるだけ夕方6時までには到着して食事会に参加してほしいと言われていました。そして、間に合わないと言おうものなら、「いやいや、どうしても何とかなりませんか」と迫られるのです。

なぜ私にそれほど参加を促すかと言うと、Aさんは1回の接待で5万円まで自分の裁量で使える権限を持っていて、私のような業者を接待したとなると、5万円を上限に、料理屋で好き放題に飲み食いができるからです。

いつも豪華な料理と高級な地酒で、べろんべろんになるまで、どんちゃん騒ぎをしていました。

Aさんが経費を精算するときに、会社に領収書を提出して、私を接待したとするのかと思うと、決してよい気分はしませんでしたが、どうすることもできませんでした。

こうした経験もありますから、相談者の方の気持ちはよくわかります。ただ私の場合は、Aさんが、あからさまに、そうした行為をする人でしたので、周囲の人たちが皆そのことを知っていたのが救いでした。

相談者の方が不愉快に感じられているのは、ごもっともでしょう。対策としては、決して個人的なこととは受け止めないようにすることです。彼らは機会があれば、他の人にも同じことをしているものです。

お酌をする手元
写真=iStock.com/kanzilyou
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kanzilyou

■「ちょろまかし」文化は受け継がれてしまう

前出のAさんの行為は、私さえ我慢をして、見て見ないふりをすれば、問題なく収まるように思えるかもしれません。

実際に、私からクレームなどしたことはなく、Aさんの会社内でも問題になったとは聞いていません。

しかし、Aさんの行為は、組織に確実に悪い影響を及ぼします。

Aさんのような人がいると、その行為を見ていた周囲の若い人たちが、同じようなことをしはじめるのです。

全員ではありませんが、「ちょろまかし」をすることに抵抗を持たない人が出てきます。

簡単に想像できることに聞こえるでしょうが、それを見たときには、なかなかのショックを受けたものです。

Aさんの部下だったBさんは、少し出世して、ある程度の経費を使える立場になると、私のような業者を会社の会議室ではなく、都心の一流ホテルのラウンジに呼び出すことが増えました。

そこで打合せと称して、大して重要でない話をして、ラウンジの利用を楽しんでいるのです。「ここは今日2回目。さっきまで別の人と打合せをしていた」という調子です。

■出張経費にするために利用される

Aさんの別の部下であるCさんからは、朝から何度も電話メッセージが残っていて、折り返すと、どうしても今日時間をとってほしいと言います。

私が終日外出の予定で時間が取れないと言うと、「何とかして横浜市内で会ってくれ。新横浜の駅まで来てくれないか」と言ってききません。

無理をして予定を変更し、新幹線から降りてきたCさんに会うと、どうしても打合せをすべき大事な要件があるとのことだったのが、顔を突き合わせて座った喫茶室では、何とも要領を得ない世間話になります。

そして、しばらくすると「もう帰っていいよ。俺もこのあと他に用事があるから」と言うのです。

どうやら横浜で古い友人に会うことになっており、それにかかる費用をすべて出張経費としたかったようで、私と面会したという事実と、その証明となる喫茶室の領収書がほしかったのです。

複数枚の領収書
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

■「ちょろまかし」はシリアスに捉えるべき

これらはほんの一例ですが、私から見ると、Aさんが残した負の遺産と呼ぶべきものでした。こんな体質が見事にできあがってしまっていたのです。

相談者の方は、取引先との関係は上手に維持すべきですが、直面されていることについては、それを反面教師としてシリアスに捉えたいところです。

もしかすると取引先の担当者がたまたま横着なだけでなく、そのような体質の組織と取引をしているのかもしれません。

少なくとも私たちは、自分たちの組織ではそんなことが起きないよう、モラルを保ちたいものです。

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松崎 久純(まつざき・ひさずみ)
サイドマン経営・代表
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』『英語で学ぶトヨタ生産方式』など多数。

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(サイドマン経営・代表 松崎 久純)

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