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新NISAでこんな投資信託を買ってはいけない…1900本の中からNG商品を確実に外す"究極の消去法"

プレジデントオンライン / 2023年7月23日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Seiya Tabuchi

2024年1月から新NISAが始まる。どのように投資先を選ぶと失敗を避けられるのか。セゾン投信創業者の中野晴啓さんは「つみたてNISAの投資対象となる投資信託は、金融庁がスクリーニングしたものだが、それでも『いかがなものか』と思われるものはある。成長枠投資の場合は、もっと避けたほうがよいものが含まれている」という――。

※本稿は、中野晴啓『50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■「いかがなものか」と思われる投資信託

新NISAのつみたて投資枠の対象となる投資信託は、現行制度のつみたてNISAと基本的に同じになると思われます。

2023年4月6日現在、金融庁が公表しているつみたてNISAの対象投資信託は、「指定インデックス投資信託」が191本、「指定インデックス投資信託以外の投資信託(アクティブ運用投資信託)」が27本、そして「上場投資信託(ETF)」が7本の、合計225本です。

つみたてNISAについては、相当程度、対象投資信託が絞られていますし、一応は金融庁が、長期積立投資をするうえで望ましいのではないかという基準を定めてスクリーニングしたものなので、どの投資信託を選んだとしても、それほど支障は来さないと思います。とはいえ、それでも、正直なところ「いかがなものか?」と思われるものもあります。

一方、成長投資枠で購入できる投資信託については、①信託期間の残りが20年未満の投資信託、②レバレッジをかけて運用されているハイリスク・ハイリターンの投資信託、③毎月分配型の投資信託、という3つのタイプは対象外になることが発表されています。これにより、現在運用されている公募投資信託のうち3分の2は除外されるともいわれています。

■約1900本から選ぶのは至難の業

2023年2月末時点で設定・運用されている追加型株式投資信託の本数は5698本もあります。このうち3分の2を除外すると、約1900本になります。これはあくまでも概算ですが、成長投資枠を利用する場合、約1900本もの投資信託のなかから投資対象を選ばなければならないのです。

1900本といったら、結構な本数です。いちいち、そのすべての素性を調べて、投資できるかどうかを判断するのは、あまりにも骨が折れます。

そこで、消去法で考えるようにしましょう。「この投資信託を買ったほうがいいのか?」を考える前に、「新NISAでの購入に適さない投資信託はどれか?」という観点で絞り込んでいくのです。

厳密に行う必要はありません。大雑把なスクリーニングで十分です。気になる投資信託があったら、まずは、ここで説明する「新NISAでの購入に適さない投資信託」の条件に合致するかどうかを調べてみてください。

■1.純資産総額が50億円に満たない投資信託

最初に避けなければならないのは、純資産総額の規模が小さい(50億円未満)投資信託です。

純資産総額は、投資信託に組み入れられている株式や債券などの時価総額で、投資信託の規模を示す代表的な数値です。これがあまりにも小さいと、運用面においてさまざまな影響が生じてきます。

まず、十分な分散投資ができなくなる恐れがあります。

最近は、「ファミリーファンド方式」といって、複数のベビーファンドで、ひとつのマザーファンドを共有する仕組みを持つ投資信託が増えています。これなら、マザーファンドの純資産総額が比較的大きくなるので、個別ファンド(ベビーファンド)の純資産総額が小さいとしても、十分な分散投資効果が得られます。注意しなければならないのは、ファミリーファンド方式ではなく、その投資信託が直接、株式や債券に投資している投資信託の場合です。

投資信託は、純資産総額の規模の範囲でしか、株式や債券を購入できません。したがって、純資産総額の規模が小さくなるほど分散投資効果が下がり、投資信託ならではともいうべき分散投資メリットを活かせなくなると考えます。

「マル」「バツ」の記号が描かれたブロック
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Seiya Tabuchi

■繰上償還リスクが高まる

また、純資産総額が小さいと、償還日前なのに強制的に償還されてしまう「繰上償還リスク」があります。

投資信託を保有していると信託報酬というコストがかかります。

信託報酬は、投資信託を運用する投資信託会社、投資信託の資産を管理する信託銀行、投資信託の販売窓口となる販売金融機関の3者で分ける報酬です。純資産から一定率を差し引く形のため、純資産総額が小さいと、金額ベースで受け取れる額が減ってしまいます。

受け取れる信託報酬の額が小さく、その投資信託を運用するのにかかるコストを下回るようになると、運用を続ければ続けるほど投資信託会社の赤字がかさんでいくことになります。そのため、繰上償還されるケースがあるのです。

繰上償還されると、償還日の基準価額で計算された償還金が戻ってくるのですが、償還日時点の基準価額が購入時点のそれに比べて値下がりしていると、損失が実現してしまいます。

投資信託は、基準価額が下落していたとしても、解約しない限り、損失はあくまでも評価損であり、基準価額の回復によって損失が埋められる可能性があるのですが、その可能性がゼロになってしまうのです。

■繰上償還にならないボーダー

また、繰上償還されたら、運用をするためには、また他の投資信託を買い直さなければなりません。すると、新たに購入時手数料がかかることになり、コストの面でも不利になります。ですから、投資信託を購入する時は、一定の純資産総額を維持しているものを選ぶ必要があります。

後述するように、赤字でもなかなか繰上償還できない事情もあるようなのですが、基本的に純資産総額の小さい投資信託は繰上償還リスクが高いということを認識しておく必要があります。ファンドごとの事業者側の採算という点では、ベビーファンドも懸念は同じです。

では、どのくらいの純資産総額があれば繰上償還リスクを回避できそうかということですが、純資産総額の規模が、ある程度の期間を経ていて、50億円に満たない投資信託は、運用の持続性という面でいささか疑義があると考えられます。

なぜなら、投資信託の約款に記載されている「繰上償還条項」には、「受益権口数が30億口を下回った場合」と書かれているケースが多いからです。30億口ということは、運用当初の基準価額が1万口あたり1万円でのスタートだとすると、30億円に相当します。また、基準価額が1万6700円程度まで上昇すれば、受益権口数が30億口で純資産総額が50億円程度になります。

これらの数字から見て、純資産総額が50億円程度あれば、当面、繰上償還にはならないだろうという、大雑把な話です。

■2.資金流出が続いている投資信託

投資信託の主力である追加型投資信託は、基本的にいつでも購入できますし、解約もできます。したがって、日々、資金の流出入が生じます。購入によって流入する金額に対して、解約によって流出する金額のほうが大きければ、「資金純流出」になります。逆に、購入額が解約額を上回れば「資金純流入」になります。

投資信託は、多少、純資産総額の規模が小さくても、資金純流入が続いているうちは大丈夫です。問題なのは、資金の純流出がある程度の期間続いている場合です。

資金純流出が続くと、ファンドマネジャーは投資信託に組み入れられている株式や債券などの一部を売却して、解約資金をつくらなければなりません。

仮に、マーケットが下落している時も資金流入が続けば、将来有望な企業の株式を、安い株価で買い付けることができます。そして、安い株価で買い付けた銘柄は、そう遠くない将来、株価が再び上昇した時、大きな利益を生むため、投資信託の運用成果を押し上げるのに貢献します。

ところが、解約による資金流出が続くと、保有している株式や債券を売却する一方になり、運用成果を改善させるために必要な措置を何もとれなくなります。結果、ジリ貧になるのです。

だんだん減っていくコイン
写真=iStock.com/marchmeena29
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marchmeena29

■資金が流入しているか流出しているかを把握する方法

資金が流入しているのか、それとも流出しているのかを把握するのに、純資産総額の増減は役に立ちません。

前述したように、純資産総額は投資信託に組み入れられている株式や債券などの時価総額なので、仮に資金が流出していたとしても、組み入れている株価が大きく値上がりすれば、その値上がり益によって純資産総額が増えるケースもあるのです。

逆に、順調に資金流入していたとしても、組み入れている株式などが大きく値下がりすれば、純資産総額は減少します。

このように、純資産総額の増減は、資金の流出入と組入資産の値動きとの合計になるため、純資産総額の増減だけをもって資金の流出入を判断することはできないのです。

では、どうすればいいのでしょうか?

方法は2つあります。

ひとつはウエルスアドバイザー(元モーニングスター)のウェブサイトにあるデータを活用することです。ウエルスアドバイザーのサイトにアクセスし、投資信託のタブをクリックすると、ファンド名を打ち込むスペースが出てきます。そこに任意の投資信託の名称を打ち込んで検索すると、その投資信託の各種データを見ることができます。そのなかに、「リターン」というタブがあるので、それをクリックし、さらに「月次資金流出入額」というタブをクリックすると、過去4年程度の資金流出入状況がグラフで表示されます。これを見れば一目瞭然です。

もうひとつの方法は、少々面倒ではあるのですが、自分で計算することです。それほど難しい計算式ではないので、安心してください。

必要な情報は「純資産総額」と「基準価額」の時系列データです。これはホームページにデータを掲載している投資信託会社もありますし、なかったらYahoo!ファイナンスのホームページからもデータをとることができます。

電卓で計算
写真=iStock.com/Xesai
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Xesai

■資金が流出しているかどうかを計算で出す方法

投資信託の基準価額は、「受益権1口あたりの純資産総額」です。したがって、1口あたりの基準価額で純資産総額を割れば、受益権口数が求められます。

たとえば、

・純資産総額……100億円
・1万口あたり基準価額……1万5000円

だとしましょう。すると、1口あたり基準価額は、

1万5000円÷1万口=1.5円

です。次に純資産総額を、今計算した1口あたり基準価額で割ります。

100億円÷1.5円/口=66億6666万6666口

これが、この投資信託の受益権口数になります。

これを週次、あるいは月次くらいの頻度で、できるだけ長期間の計算を行います。すると、受益権口数が継続的に減っているのか、それとも増えているのかが分かります。

これら2つの方法のどちらかで資金の純流出入を把握し、資金流出が長期化している投資信託は買わないほうが無難です。

■3.信託期間が有期限の投資信託

かつては信託期間を無期限にしている投資信託が結構あったのですが、最近は追加型投資信託なのに、当初の信託期間を10年、あるいは5年程度にするものが少なくありません。

これには理由があります。それは純資産総額が小さいまま運用を継続せざるを得ない状況を回避したいからです。

前述したように、純資産総額が小さい投資信託は、投資信託会社にとって赤字要因でしかないので、できれば早々に繰上償還させたいところなのですが、それを簡単に許してもらえない事情もあります。それは販売金融機関の都合であることが多いです。

信託報酬は投資信託会社、信託銀行、販売金融機関の3者で分け合うことになっているので、販売金融機関にとって信託報酬は、ほとんど労力をかけることなく入ってくる継続的な収入です。だから、たとえ少額だとしても失いたくないので、繰上償還に反対の立場をとりがちです。その結果、なかなか繰上償還が進まず、純資産総額が1億円程度の投資信託がたくさん残されているのです。

「信託期間が満了しました」という理由があれば、販売金融機関に文句をいわせることなく、償還することができます。

■投資信託を育てるつもりがあるのか

つまり、信託期間を有期限にしているのは、経営面で赤字要因でしかない、純資産総額の規模が小さい投資信託を少しでも減らすための、投資信託会社にとっての苦肉の策であるともいえそうです。

もちろん、投資信託会社としては、5年、あるいは10年程度で運用を終わらせようとしているつもりはないと思います。投資信託の信託期間は延長が可能だからです。仮に当初信託期間が5年だとして、その期間が終了する直前の純資産総額が大きくなっていたら、そのまま約款を変更して、さらに信託期間を5年間延長させることも可能です。

しかし、だからといって信託期間を短くするのは、何の努力もせずに言い訳をしているだけのようにも思えてきます。

本来、純資産総額がなかなか増えないのであれば、それを増やす努力をすべきです。1本の投資信託にそこまで手間をかけられないという声も、投資信託会社の側にはあるのかもしれませんが、だとしたら、なぜ1本の投資信託を大事に販売し、かつ運用することができないのか、という点を改めて考えるべきでしょう。

大概の投資信託会社には、販売金融機関の意に沿った投資信託を組成してきたという歴史があります。信託期間を有期限にするのは、1本の投資信託を大事に育てる意思がないことを露呈しているかのようにも思えてきます。

■4.コストが割高な投資信託

投資信託には「購入時手数料」と「信託報酬」という2大コストがあります。

購入時手数料は、購入金額に対して定率の手数料を、販売金融機関に対して支払うものです。たとえば購入金額が100万円で、購入時手数料率が2%だとしたら、2万円が販売金融機関に対して支払う購入時手数料になります。

ただ、最近の傾向としては購入時手数料を取らない投資信託が増えているのも事実です。つみたてNISAの対象となる投資信託は、スクリーニング条件のなかに「購入時手数料を取らない」ということが盛り込まれているため、その後を引き継ぐ新NISAのつみたて投資枠でも、それは踏襲されると考えられます。

また、インターネット証券会社では、基本的に購入時手数料を取らない投資信託のラインナップを大きく増やしているので、対面営業型の販売金融機関でない限り、今は多くの投資信託が購入時手数料を取らないと考えてもよさそうです。

いささかややこしいのが信託報酬です。

信託報酬の料率は、低いものだと年0.1%程度、高いものだと年3.0%程度です。年0.1%と年3.0%とでは、ものすごい差になります。当然、投資信託を保有している受益者としては、低いに越したことはありません。

■信託報酬率は低ければいいというものでもない

ただ、信託報酬率は低ければ低いほどいいのかというと、いささか厄介な問題をはらんでいます。というのも、投資信託会社にとっては信託報酬が唯一の収入源なので、これが大幅に低率になった時、投資信託会社の経営が成り立つのか、という現実に直面してしまうからです。

中野晴啓『50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)
中野晴啓『50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)

もちろん、たくさんの投資信託を設定・運用していて、かつ年金なども運用しているような、規模の大きな投資信託会社であれば、極めて信託報酬率の低い投資信託を運用しても、会社全体の収益はバランスされると思います。しかし、それでは高い信託報酬の投資信託を購入している受益者の犠牲のもとに、信託報酬率の低い投資信託を購入している受益者に便宜を図っているのと同じです。

このように考えると、信託報酬率は一概に低ければいいというものではないことに気付かれると思います。この点については明確な答えを出すのが非常に難しいのですが、ひとついえるとしたら、納得感のある信託報酬率の投資信託を選ぶしかない、ということでしょうか。

『50歳からの新NISA活用法』では「新NISAでの購入に適さない投資信託」の特徴をこのほかに6つ紹介しています。

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中野 晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信 創業者
1963年生まれ。東京都出身。明治大学卒業。1987年、現在のクレディセゾンへ入社。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用のほか、外国籍投資信託をはじめとした海外契約資産等の運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾン インベストメント事業部長を経て、2006年にセゾン投信を設立。2023年6月に代表取締役を退任。セゾン文化財団理事。著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)などがある。

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(セゾン投信 創業者 中野 晴啓)

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