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「1ドル=140円」なら「円安」というわけではない…子供に「今って円安なの?」と聞かれたときの正しい答え方

プレジデントオンライン / 2023年7月25日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PashaIgnatov

子供に「円安って何?」に聞かれたとき、どう答えるのが正解なのか。新刊『にゃんこ大戦争でまなぶ!お金のヒミツ』(KADOKAWA刊、監修:大河内薫、ポノス株式会社)の内容を、一部を再編集してお届けしよう――。

■国や企業のリーダーたちだけが考える話ではない

円高・円安になると社会がどうなるかというのは、国や企業の未来を考えるリーダーたちだけの話ではなく、会社員にも、商売をしている人にも、個人事業主にもダイレクトに関わってきます。円高・円安がわかれば、自分たちの未来がどうなっていくのかが見通せるようになり、適切な行動をとれるようになります。実は誰もが理解しておくべき基本的な知識なのです。

そこで今回は、お子さんに円高・円安について聞かれたとき、子どもにも理解できる言葉で説明ができるようになりましょう。

■円高・円安のポイントは3つ

円高・円安の概念を理解するためのポイントは3つあります。

① 為替レートの変動
② 円高・円安そのものの意味
③ どちらが得かはケースバイケース

そもそも、為替レートは常に変化していることを前提として知っておく必要があります。同じ1ドルと交換するにも、ある日は100円あれば交換できるけれど、別の日には150円も必要になってしまったりするわけですね。大人にとっては当たり前のことですが、子どもは意外と知らなかったりします。

ちなみに、ここで「為替レートは常に変化していて……」と言うと、きっとお子さんに「為替レートって何?」と聞かれます。為替というのは、銀行の口座から口座へお金を移すときのように、現金を移動させずに行うお金のやりとり全般のことを言い、為替レートとは外国のお金と日本のお金を交換するときの交換比率のことです。なお、外国とのお金の取引は「外国為替」と呼ばれます。

ポイント① 為替レートとその変動
・為替レート……ある国のお金を別の国のお金に交換するときの交換比率
・為替レートは常に変わっていて、同じ1ドルでも、ある日は100円で交換できるが、別の日には150円出さなければ交換できなかったりする

■価値が高くなれば円高、価値が低くなれば円安

円高・円安に話を戻しましょう。この用語は、ひと言でいえば「外国のお金に対して、日本円の価値が高いか・低いかを表す言葉」です。価値が高くなれば円高、価値が低くなれば円安ですね。

では、「価値が高い・低い」とはどういうことなのか。

たとえば1ドルの缶詰があったとして、ある日は1ドルが100円だったなら、その缶詰は日本円で100円であるわけです。でも次の日に1ドルが150円になったとしたら、その缶詰は150円になってしまいます。これはつまり「円の価値が下がった=円安」ということ。逆に1ドルが50円になったとしたら、缶詰は50円で購入できます。

つまり、外国のお金と交換するのにたくさんの日本円が必要になると円安、少しの日本円で済むときは円高というわけです。

【図表】たとえば1ドルのネコカンを買いたいとき
出典=『にゃんこ大戦争でまなぶ!お金のヒミツ』

■円高・円安は「前と比べてどうか」で決まる

注意したいのは、円高・円安という言葉は、基本的に「前と比べてどうか」という変化について使われるものであるという点です。一概に「150円だから円安」「50円だから円高」と、金額で決まるものではありません。ですから、1ドル=150円の為替レートが変動した「1ドル=140円になった円高」や、1ドル=100円の為替レートが変動した「1ドル=110円になった円安」も当然起こり得るわけです。

たとえば今年の6月には、5月に130円台だった円が140円台に突入し、円安の傾向が加速していると言われていましたが、第二次世界大戦後の20年ほどは、1ドルが360円で固定されていた時代もありました。そのころと比べれば、今も十分円高です。円高・円安は数字の大きさだけで判断するものではないのです。

ポイント② 円高・円安そのものの意味
・円高……外国のお金と交換するときに少しの日本円で済む場合
・円安……外国のお金と交換するときにたくさんの日本円が必要になる場合
・円高と円安は「前と比べてどうか」で決まる

■どちらが得かは立場によって変わる

先ほどの缶詰の説明を聞いて「1ドル150円よりも、1ドル100円のほうが得!」と考えるお子さんもいると思うのですが、どちらが得をするかはケースバイケースということも伝えておきたいポイントです。

たとえば海外旅行に行って1ドルで売っているジュースを飲むなら、

円安:1ドル=150円の場合 →150円かかる
円高:1ドル=100円の場合 →100円で買える!

となり、当然ながら円高のほうが都合がいいわけです。
ですが、逆に日本から外国に1ドルでものを売るなら、

円安:1ドル=150円の場合 →150円もらえる!
円高:1ドル=100円の場合 →100円しかもらえない

となり、受け取る日本円の金額が大きくなる円安のほうがいいと言えます。

たとえば親御さんが海外に製品を輸出する企業でお仕事をされているとしたら、円安になったほうが会社の業績がよくなり、給料が上がる可能性が高まります。でも夏休みに家族で海外旅行に行くなら、円高であるほうが少ない予算で楽しむことができます。どの視点で見るかによってどちらが得かは異なるのです。

ポイント③ どちらが得かはケースバイケース
・外国からものを買う場合→円高が得
・外国にものを売る場合→円安が得

■ハンバーガーの値段で世界の経済を比べられる

日本と海外のお金の話で言えば、「ニューヨークではラーメンが2000円以上する」といった話を聞くことがあります。大人でも瞬間的に「高っ!」と反応してしまったりしますが、物価は国によって異なり、日本で100円出せば買えるものが海外でも100円で買えるとは限らない(10円だったり1000円だったりする)ことも、子どもに教えておきたいですね。日本人から見て高い、あるいは安いと思えるものも、現地の全体的な物価を考えるとどうなのかという視点は大切です。

国ごとの物価についての面白い指標があります。ファストフードのマクドナルドの商品、「ビッグマック」は世界の多くの国で売られていますが、この値段で世界経済の状況を比べるというデータがあるのです。

その名も「ビッグマック指数」。同じビッグマックでも、物価や景気によって国ごとに値段が異なるため、その値段を比べることで、各国の経済状況を比べることができるというものです。

■子供の質問はマネーリテラシーを身に付けるチャンス

『にゃんこ大戦争でまなぶ!お金のヒミツ』(KADOKAWA刊、監修:大河内薫、ポノス株式会社)
『にゃんこ大戦争でまなぶ!お金のヒミツ』(KADOKAWA刊、監修:大河内薫、ポノス株式会社)

イギリスの経済誌『The Economist』で毎年公開されていて、たとえば2023年1月には日本のビッグマックは3.15ドル(1ドル=140円換算で441円。以降同じ)、スイスは7.26ドル(1016円)、アメリカは5.36ドル(750円)、ブラジルは4.44ドル(621円)、中国は3.54ドル(496円)といったデータが発表されています。お子さんと一緒に調べて、お金についての話のきっかけにするのもいいでしょう。

日ごろ耳にするお金の用語に対し「何だかよくわからない、自分には関係ない」と反応するのか、「それってこういうことだよね」と反応できるようになるかで、お金との付き合い方はまったく変わります。日本人がマネーリテラシーを身につけることで、日本社会がもっと元気になり、世界と対等に戦える下地になるはずです。お子さんの口から「円安って?」という言葉が出たら、ぜひ説明してあげられるようになってください。

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大河内 薫(おおこうち・かおる)
税理士
芸術学部卒という税理士として異色の経歴を持ち、芸能・芸術・クリエイターに特化した税理士事務所を経営。また、税理士として日本最大級のYouTubeチャンネルを運営し、登録者は33万人超(2023年7月現在)。音声メディアや各種SNSでお金の知識を発信。現在はオンラインコミュニティ「マネリテDAO」を活動の中心に据えて、お金の教育を義務教育に導入すべく活動中。小学校から大学まで、生徒・学生へ直接お金の授業を行っている。著書に『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』(サンクチュアリ出版)、『貯金すらまともにできていませんが この先ずっとお金に困らない方法を教えてください!』(サンクチュアリ出版)、監修に『にゃんこ大戦争でまなぶ!お金のヒミツ』など。

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(税理士 大河内 薫 構成=城戸千奈津)

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