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ワンルーム投資は地獄への片道切符…不動産Gメンが「素人は絶対に手を出すな」と警告する理由

プレジデントオンライン / 2023年8月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CHUNYIP WONG

不動産投資で儲けることはできるのか。「不動産Gメン」として活動する滝島一統さんは「ワンルーム投資に手を出すのは危険だ。入居者から得た家賃の一部がサブリース業者に手数料として吸い上げられてしまい、不労所得が得られるどころか赤字を出し続けることになる」という――。(第1回)

※本稿は、滝島一統『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■不動産投資は誰でも儲かるわけではない

不動産会社の一日は、日々更新される物件の情報をチェックし、星の数ほどの物件から投資価値のある物件を見つけ出すことから始まります。

満室を維持でき、家賃を確実に得ることができ、オーナーの手元に収益が残る物件。築年数を重ねてもむしろ家賃が値上がりするような物件。そうした物件を探します。しかし、驚くほど合致する物件がありません。それは半年に1件、見つかるかどうかです。

その一方で、わずかな頭金で不動産投資を始めている人は少なくありません。ローンも簡単に借りられて、物件を見に行くこともせず、不動産を購入する。待っているのは夢の家賃収入ではなく、赤字の穴埋めに四苦八苦する地獄です。

相談を受けた私が知恵を絞ったところで、失敗した案件が蘇(よみがえ)るわけもなく、親に頭を下げてお金を借りたり、婚約者に隠したり、自己破産したりする人もいます。

■いま手軽に買える物件には「裏」がある

なぜこんなことになるのか。

物件が見つからないというのは、「収益性が高い物件が見つからない」ということで、価格が高騰していることが要因です。それを知らずに、手軽に買えるものを買ったり、無理して高いものを買ったりすれば、収益を得るのは難しくなります。

買いたい時に買う。始めたい時に始める。そんな発想で儲かるほど、不動産投資は甘くありません。

私は大手ハウスメーカーや不動産会社を経て、25歳で不動産会社を起業しました。

家賃4万円の賃貸住宅から20億円のビルの売買まで、幅広い物件の仲介をしています。2022年からはYouTubeで、賃貸物件を内見する際のチェックポイントや不動産会社に騙(だま)されない方法など、さまざまな情報発信を行っています。これまで、不動産会社が話すことがなかったような裏側を、本音でお話ししているのが特徴です。

YouTubeをご覧になった方から、日々、不動産投資に関するたくさんのご相談があり、その数は月に100件以上を数えます。そのほとんどが、赤字に苦しんでいるという内容で、中にはアポなしで突然会社を訪ねてくる方もいらっしゃいます。それだけ苦しんでいる人がいる、切羽詰まっている、ということです。そうした様子から痛感するのは、残念ながら、不動産会社、そして、不動産投資をする人、どちらのレベルも十分ではない、ということです。

■ノルマに追われる営業マンは「売れればいい」

日本では、多くの方が、部屋を借りる時はA社、貸す時はB社、買う時はC社、売る時はD社など、異なる不動産会社に依頼されます。そこで出会うのは、毎月のノルマに追われている営業マンたちです。お客様のライフスタイルや、資産形成など、1ミクロンも考えていません。貸せればいい、売れればいい。長い付き合いになるお客様なら別ですが、一度限りのお客様、浮気される前提のお客様ですから、その人のことをしっかり考える必要などないのです。

不動産投資の魅力は家賃収入が得られることですが、その魅力を大きくしてくれるのが、「レバレッジ効果」です。1000万円を利回り6%で運用した場合のリターンは60万円です。対して不動産投資では、1000万円を頭金に4000万円を借りる(年利2%・35年返済)ことで5000万円の投資ができ、6%で運用すればリターンは141万円(家賃収入300万円−ローン返済159万円)です。借入分の金利を抜いた元本94万円を含む実質的なリターンは253万円とかなり大きくなる。これがレバレッジ効果です。

入居率が高い物件なら、他人(入居者)が家賃を支払う形でローンを返してくれます。遅滞なく返済できれば信用が高まっていき、それによって次の融資が受けやすくなり、別の物件への投資が可能となります。最初にいい物件を買えば芋づる式に物件を増やすことができる、というわけです。

しかし最初に収益性のない物件を買ってしまうと、そのツケを払わされるのに時間がかかり、スタートが遅れてしまいます。場合によってはその時点でアウトです。

■私は1軒目の中古ビルを買うのに8年かけた

私自身も不動産投資をしていますが、最初の物件を買うまでに8年かかりました。

最初の5年は頭金とローンを借りるための信用を増やしながら物件を探し続け、5年目以降くらいからいい物件に出合うようになりました。しかし、いい物件を探している人はたくさんいて、別の人に先を越されることが続きました。

紙の家のあるオープン新聞の前にガラスを拡大。家賃、検索、不動産の購入の概念。
写真=iStock.com/SvetaZi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SvetaZi

探し始めて8年目にようやく購入できたのは、渋谷区の中古ビルです。そのビルの賃料収入で得たお金で別の事業を始めて、そこで得た収益と信用でまた別の不動産を取得することができました。いずれも、収益を生んでくれています。今は海外にもいくつかの物件を保有しています。

そうした連鎖を作ることができたのは、8年待って納得できる物件を買ったからにほかなりません。待ち切れずに適当な物件を買っていたら、不動産投資で収益を得ていないかもしれませんし、今の私はいなかった可能性があります。

■不動産投資に必要なのは「絶対的な法則」

これを読んでいただいている方は、不動産投資をしたいと思っている方、興味を持っている方だと思います。せっかくそう思っても、間違った方法で投資してしまうと、不労所得どころか借金を背負うことにもなりかねません。

冒頭でも述べたように、不動産投資に関する情報はたくさんありますが、本当に必要なのは「詳細な知識」ではなく、「絶対的な法則」です。

どんな間取りがいいか、立地は駅徒歩何分までか、なども大切ではありますが、大したことではありません。

人口減少&低成長の日本においては、

●家賃が下がったとしても赤字にならない物件を選ぶ
●価格の上昇は期待しない
●一棟建てに絞る
●物件探しと同時に金融機関巡りをする
●価格が高い間は手を出さず、機が熟すのを待つ

など、「経済環境や社会情勢に合った」「絶対的な法則」が重要なのです。

売ってなんぼの不動産会社が「待つ」などと言うのもどうかと思いますが、それが不動産投資の神髄です。

誰でも儲かるわけではない。

では儲かるにはどうすればいいのか。じっくりお話しします。

■ワンルーム投資は地獄への片道切符

ワンルーム投資で絶望の淵に立たされている人から、多くの相談が寄せられます。

どうして損をしてしまうのか。

逆説的ですが、そこには不動産投資で成功するための教訓が隠れています。

ワンルーム投資は年収500万円くらいあれば始めることができ、頭金ゼロもしくは10万円程度の少額で購入可能、というのが最大のセールスポイントです。

不動産投資を行うには、多くの場合ローンを組む必要がありますが、会社員などが不動産投資のために融資を受けるのは難しくなっています。そのため、「融資が受けられる」というのはとても魅力的に聞こえるのです。「資金もほとんどないのに、ローンを組んで不動産投資ができる。ローンは家賃で返済すればいいのだし、毎月、不労所得が入ってきて、マンションという資産が持てる!」などと舞い上がってしまいます。不動産会社によっては、「銀行が融資をしてくれるのは、いい物件だとお墨付きをくれたようなものです」などと言うこともあるようです。

しかし、ワンルーム投資への融資をしているのはごくごく一部の銀行で、物件が優れているから融資をしているわけではありません。

■「頭金ゼロ」に飛びつく人は投資してはいけない

頭金ゼロで購入できるのも、大きな問題です。

不動産投資を行う際には、物件価格の20%相当を頭金として用意するほか、手数料や税金など購入時にかかる諸経費として物件価格の数%程度、合わせて物件価格の25%程度の自己資金が必要です。しかし、ワンルーム投資では、頭金ゼロでも購入できるものがほとんどです。ローン金利が低いのであえて頭金ゼロにして多額のローンを組むなどの戦略もありますが、ワンルームを頭金ゼロで買っている人のほとんどは、貯蓄がないから頭金ゼロ、のパターンです。

はっきり申し上げましょう。そういう人には不動産投資をする資格はありません。

病気や収入ダウン、失業など、人生にはさまざまなアクシデントがあり、それに備えるための貯蓄が必要です。家電が次々壊れることもあるでしょうし、キャリアアップのための勉強にまとまったお金がかかることもあるでしょう。貯蓄がないので分割払いで買う、借金するなどしていたら、仮に不動産投資で収入を得ても、元も子もありません。

貯蓄に余裕がないということは、収入が少ないのかもしれませんし、そもそも貯める努力をしていないのかもしれません。収入アップを目指すなり、支出をコントロールするなりして貯蓄を増やすことが先決であり、ローンを組んで投資をしている場合ではありません。頭金ゼロで買っていいのは、貯蓄があるけれどあえて戦略的に頭金を入れない人であり、貯蓄がない人ではないのです。

■大損する元凶は、サブリース契約にあり

ワンルーム投資の最大の問題は、「サブリース」です。

サブリースとは、不動産会社が家賃を一定程度保証してくれるものです。

図表1にもあるように、サブリース業者が貸主(物件の所有者)から住戸を借り上げ、転貸人(入居者)と賃貸借契約を結びます。入居者はサブリース業者に家賃を支払い、その中から手数料を引いた額が貸主に保証賃料として支払われる仕組みです。

サブリース契約とは?
出所=『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール』

ワンルーム投資では、基本的にほとんどの物件にサブリースが付いており、不動産業界ではスキームワンルーム、スキーム物件などと呼んでいます。

不動産投資では入居者が入らない「空室リスク」があり、家賃が入らなければローンを貯蓄などから返さなければならず、大きな赤字になります。サブリースの契約をすれば空室であっても家賃が入ってきますから、「それなら安心……」と思ってしまう人は少なくありません。しかし、それが大きな落とし穴なのです。

■家賃収入108万円でも赤字が出るカラクリ

サブリースがあると家賃が確実に入ってくる安心感(誤った安心感)があります。

しかし、デメリットもあります。前述のように、入居者から得た家賃の一部が、サブリース業者に手数料として吸い上げられることです。

手数料には明確な基準はなく、新築の時期は家賃の5~10%程度、それ以降では同10~20%程度です。家賃が10万円、手数料10~20%なら、所有者に入ってくるのは8~9万円です。この手数料は大きな負担です。

2500万円の物件を頭金ゼロで購入する例を見ていきましょう。

登記費用と不動産取得税の約100万円のみ、自己資金として用意します(不動産会社が自社物件として販売するので仲介手数料はなしと仮定)。

頭金ゼロですから全額の2500万円を金利1.5%、35年返済で借り入れます。

すると、毎月の返済額は7万6500円です。では収支はどうなるでしょうか。

不動産会社の想定では、家賃は9万円、年間108万円です。利回りは約4%です。

経費は固定資産税・都市計画税で10万円、修繕積立金・管理費が18万円、ローン返済が91万8000円、火災保険料6万円です。

家賃収入108万円に対し、支出は125万8000円。なんと年間で17万8000円の赤字です。

■不労所得どころか、5年で140万円以上の損に

さらにサブリースの手数料もかかります。この物件の場合、家賃の10%で年間10万8000円です。実際の収入はサブリース手数料を引いた97万2000円となり、ここから経費125万8000円を引いた年間28万6000円が赤字となるのです。

滝島一統『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール』(KADOKAWA)
滝島一統『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール』(KADOKAWA)

不労所得が得られるどころか、赤字を出し続けることになります。生活に余裕を持つため、将来に向けて資産形成するために投資をするのに、逆に毎月2万円以上の持ち出しになってしまうのでは、何のために投資したのか分かりません。少なくとも5年で140万円以上もの損ですから、逆に生活が苦しくなってしまいます。

これだけでも驚きですが、さらにびっくりすることに、この物件のパンフレットには、「月2万円払うだけで2500万円のマンションが手に入る」という趣旨のことが書いてありました。収益どころか最初から月に2万円の持ち出しになることを正々堂々と謳(うた)い、むしろ、とても魅力的であるかのように書いているのです。ものは言い様ですが、恐ろしいことです。

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滝島 一統(たきしま・かずのり)
不動産系YouTuber
1976年東京都生まれ。明治大学商学部卒業後、ミサワホーム入社。25歳の時に渋谷区初台に不動産会社光文堂インターナショナルを設立。2011年より海外不動産事業にも進出。2022年6月、YouTubeチャンネル「不動産Gメン滝島」をスタート。不動産業者に騙されないための情報、物件の見方など、ユーザー目線の情報をコワモテで語る動画が人気を集め、1年で登録者数26万人を突破した。漫画原作者として『SWEET DEAL(スウィートディール)』でデビュー。

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(不動産系YouTuber 滝島 一統)

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