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80代父所有の一棟アパート、相続対策のはずが「エリア不人気・空室激増」+返しきれない借入金まで…50代息子、戦々恐々【FPが助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月9日 13時15分

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(画像はイメージです/PIXTA)

都内の不動産価格や家賃価格の上昇が続いていますが、すべてのエリアが該当するわけではありません。もしも人気のないエリアに築古かつ家賃収入の下がった賃貸物件を所有していると大変です。対応策はあるのでしょうか? ある50代男性の事例をもとに、FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

高齢父が相続対策で建築した1棟アパート、経営困難に

いま80代の父が、25年前に相続税対策として、自宅そばに賃貸アパートを1棟建築しました。信託銀行の提案で、購入代金のほとんどは銀行の借入金でまかなっており、現在も返済中です。これまでは満室でなんとか回っていましたが、昨年あたりから空室が増えて家賃収入が激減してしまい、不安でいてもたってもいられません。いまから家賃の減額、もしくは大がかりなリフォームを検討するべきでしょうか?

足立区 58歳 男性

まず、賃貸物件に空き部屋が出てきたということは、家賃を下げなければいけない状態にあるということです。それ以外にも、周辺物件の家賃相場が下がっていることも、原因として考えられます。

「空室が出ていて、家賃相場が下がっている」となれば、売却しても価格が安くなってしまうと思われるかもしれませんが、東京都内の中古マンションの価格は、いまだ上昇が続いています。東日本不動産流通機構によれば、売買平均単価とマンション賃料平均単価のいずれも上昇しているのです。

中古マンション価格は2017年から上昇していましたが、2020年の東京オリンピック後は下がるだろうといわれていました。ところがその後、価格が下がるどころか、さらなる上昇が続いています。

日銀のゼロ金利政策もあり、低金利で住宅ローンを借りられたことが、価格の上昇をもたらしたのではないかと推察されています。

賃貸物件の表面利回り「4%」で限界に

東日本不動産流通機構によれば、賃貸マンションを売却するとした場合、投資家からは4%ほどの表面利回りが要求されることが予想されます。

2017年から2020年6月までは、表面利回り5%から7%は要求されていました。その後、2023年に入ると、一気に低下して4%に留まっています。しかし、賃貸経営にかかわる経費を考えると、この表面利回りが限界で、これより下がったら赤字に転落してしまいます。

日銀がゼロ金利政策を解除したため、「金利上昇→銀行借入金を抱える賃貸経営は赤字」となってしまうのではないか、という懸念を抱く方もいることでしょう。

確かに、借入金を抱えていると、金利支払いと元本返済が発生します。赤字にならないとしても、元本返済を考えると、現金は出ていく一方になる可能性があるため、今後の賃貸経営は苦しくなることが予想されます。

家賃引き下げでは対処不可能…売却しか手がない

賃貸経営が苦しくなる主な理由は、賃料の低下と金利の上昇、修繕費など経費の増加で、これらの問題は、事業開始後20年くらいして顕在化することが多いようです。借入金の返済が終わっても、それで安泰になるわけではありません。

筆者は上記の相談者の方から「マンション建築当時、ハウスメーカーが事業収支シミュレーションを見せながら〈将来30年間にわたって黒字の安定経営が続く〉といった説明をされた」ことを、あわせて伺いました。実際、このような話をされてアパート建築に踏み切った方も多いと聞きます。

しかし、そういった事業収支では、賃料収入が30年にわたって一定だったり、空室リスクや修繕費用が加味されていなかったりと「受注のための楽観的な内容」になっていることが多いのです。

では実際に、どれほど家賃の引き下げをすればよいのでしょうか? 新築物件と中古物件の賃料を比べると、中古物件の賃料のほうが低くなります。東京都でも築年数が1年異なれば、賃料単価は1%ほど低くなります。

同じ立地で新築なら月額10万円の家賃でも、築25年になれば月額7万5,000円程度になるでしょう。入居者の入れ替えのたびに、賃料は下がる可能性があるのです。

管理会社とサブリースを結び、賃料保証がある場合は、ある程度の空室リスクを軽減できますが、サブリースでも賃料の引き下げを求められることがあるため、賃料引き下げによる収入減は免れません。

空室率の問題もあります。空室率を割り出すには、入居から退去までの期間と、入居者入れ替えのために空室になる期間の比較が必要となります。一般的に、退去後に部屋の原状回復工事や入居者募集活動には、3ヵ月ほどかかります。入居から退去まで平均4年と仮定すると、4年間のうち3ヵ月間が空室となるため、どれだけ頑張っても、6%ほどの空室率が発生します。

これらの問題点を総合的に考慮すると、相談者の方の物件は、この先賃貸経営を立て直すことは難しいと思われます。したがって、借入金を返済できなくなる前に、思い切って売却することをお勧めします。

岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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