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なぜデキない人ほど「死ぬほど忙しい」アピールをしてしまうのか…現代人が抱える「多忙崇拝」という病

プレジデントオンライン / 2023年8月21日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alphaspirit

なぜ仕事のできない人は「忙しい」とアピールしてしまうのか。組織心理学者のジョン・アメイチさんは「現代人は忙しいことを組織の活躍ぶりを示す尺度だと思い込んでいる。だが、忙しいことは珍しいことではなく、くだらない言い訳でしかない」という――。

※本稿は、ジョン・アメイチ『巨人の約束 リーダーシップに必要な14の教え』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。

■社会人は「多忙崇拝」に冒されている

「死ぬほど忙しい」

これは、いざというときにすぐに使える常套文句だ。上司であれ、駅のプラットフォームで会った見知らぬ人であれ、人から「調子はどう?」と訊かれるたびに「とても忙しい」と答えなければ、社会人としての価値がないかのように思い込んでいる――多忙崇拝だ。

この言葉には他の言い訳がついてまわる。

「どうせわたしは歯車に過ぎませんから」
「官僚主義のせいです」
「こういうしきたりですから」
「わたしは外向的なので、こういう仕事は合わないんです」
「わたしは内向的なので、こういう仕事は合わないんです」

どれも本当のことかもしれない。だが、嫌なことや難しいことを避けるために、こんな言い訳をしてはいけない。そもそも、どれも鉄壁の言い訳ではない。おまけに、どれもリーダーが発言すべき言葉ではない。真のリーダーなら、快適な状況や個人的な利益を犠牲にしようとも、こうした言い訳を絶対に使わないと約束してほしい。

■「忙しい」を活躍の尺度として使っている

職場でもっともよく使われる言い訳は「時間がない」だ。この言い訳が広く使われ、いとも簡単に了承されるのは、多くの人が「忙しい」を活躍ぶりを測るための尺度として使っているからだろう。

ビジネスに貢献する人は忙しくなければならない。毎日、さまざまなタスクを詰め込まなければならない。さらに、忙しいことを周囲に気づいてもらわなければならない。同僚が「忙しい」と愚痴るのを最後に聞いたのはいつか? あなたが忙しいと最後に愚痴ったのはいつか? 週の最後にエレベーターのなかで会話するのと同じように、職場では忙しさを競い合うような会話がごく標準的なおしゃべりとなった。

「金曜日ですね」
「ああ、金曜日だ」
「忙しいですよね」
「ああ、忙しいね」

■「多忙」は新しい基準になっている

想像してみてほしい。同僚に調子はどうかと尋ね、相手が「最高だよ。仕事は着々と消化しているし、未処理の書類ボックスには何も入っていない。理想的なワーク・ライフ・バランスを維持していて、8時間睡眠を取り、寝る前に読書する時間が30分もあるんだよ!」。

するとあなたは、頭がおかしいのかと言わんばかりの目で同僚を見るだろう。さらに悪い場合は、この人は怠け者か、野心がない人だと見なすか、または「忙しい」日々を送るほど優秀でも有能でもないのだろうと考える。

常に多忙だと感じること――少なくとも多忙だと発言すること――は新しい基準となっている。この価値観がどこから来たのかはわからない。ヴィクトリア朝時代の救貧院の倫理観の名残か、従業員を最大限に利用しようとする利用文化が発達したために必然的に起きたことなのか――この文化の下では、従業員は常に経営者の前で忙しそうにして、自分の価値を示さなければならない。

読者のなかには、厳しい生産性目標が定められていて、それに従って勤務評定、給料、上司の評価が決まる人もいるだろう。勤務時間中にあなたが「お金を稼いだ」時間数とそのクオリティによって、組織内での昇進・降格が決まってしまうため、常に忙しくなければならないと感じているかもしれない。

巨大なファイルの山
写真=iStock.com/RapidEye
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RapidEye

■忙しいことは決して珍しいことではない

だからわたしは、あなたが忙しそうな振りをしているのではないと理解している。また、うちのチームとわたしは、利用文化は古い労働観であり、(少なくとも今と同じ形では)今後も続くとは思えないということを、経営者に認識してもらおうと働きかけている。

サービス業に従事する人のなかには、たとえば棚卸しをしたり、店で顧客対応にあたったりしながら、スケジュールに休憩時間を入れて身体と心を休めなければと感じつつも、一つのタスクが終わったら急いで次のタスクに取りかかる人がいる。彼らはまさにフル稼働しており、多忙崇拝というわたしの冷淡な考え方を拒否するかもしれない。それでも、あなたにはその違和感に目をつぶっていいのかと疑問視し、経営者の近視眼のために、自分を犠牲にしないでほしいと思う。

みんな、いつだって忙しい。忙しいことは決して珍しいことではない。つまり「忙しい」はくだらない言い訳なのだ。

にもかかわらず、「誰にそんな時間があるのか?」といった言い訳を何バージョンも聞いた。適切なタイミングで実行可能なフィードバックをしろって? 「そうだね、そうしたいのはやまやまだけど、誰にそんな時間があるのか?」。チームのみんなの意見を聞いて、取り上げてほしいって? 「確かにそれは名案だけど、誰にそんな時間があるのか?」

■デキる人・組織は「今のやり方をどう変えられるか」で時間を作る

優れたリーダーシップ、チームの生産性、すばらしい友人関係に必要なのは、時間を多くかけることではなく、時間を有効に使うことだ。

確かに時間は貴重で、限りある資源だ。何もないところから魔法のように時間を作り出そうと提案しているわけではない。わたしが提案したいのは、あなたの願いを実現するために時間をどう使うかを考える前に、現在のやり方をどう変えられるかを考えてほしいのだ。

次の二つについて考えてほしい。

一つ目は、自分の時間のなかで、集中力、活力、効率を高めるにはどうしたらいいか?

数年前、わたしは将来プロのバスケットボールチームでプレーしたいという夢を持つイギリスの子どもたちのために動画を撮った。熱心なだけの子どもを大勢見てきた――一生懸命練習し、効果的と言われる「方法」をいくつも試し、くたくたになって体育館を後にするが、上達しているとは言えない子どもたちだ。

そこでわたしがスポーツ界に進出したときだけでなく、スポーツ界から引退したあとも、わたしの前進を後押ししてくれたものについて話したい。それを「〈FEE〉をする」と呼んでいる。

■地味で退屈なルーティンこそ重要

いかなる分野であれ、成功するには生まれながらの身体的、精神的、認知的な才能が必要だと想像しがちかもしれないが、トップレベルの人たちの話を聞くと――わたし自身の経験もあるが――そうした能力よりも、成功するために地味な練習に取り組み続ける能力の方が重要だと感じる。

計画に従って、何の刺激もなく退屈でおもしろみのないルーティンに耐える能力だ。身体的にも精神的にも負担がかかる面倒な練習に何時間も繰り返し熱心に取り組むうちに、やがてそれが結果につながり、いとも簡単そうにできるようになる。

〈FEE〉とは、集中力、努力、実行力の頭文字を取った言葉だ。

Focus(集中力):しっかり定義された明確かつ個別の目標または達成目標を定め、それに向かって、ゆらぐことなくひたむきに集中して前進し続けること。

Effort(努力):日常的なタスク、やっかいなタスク、目立たないタスクや準備にも、積極性と熱意を失うことなくしっかり取り組むよう規律を保つこと。

Execution(実行力):何をするにも不必要な無駄を省くことを意識し、すべてのことに努力して取り組むだけでなく、計画どおりに正確に実行すること。

■「忙しい」は地味なタスクを断る言い訳になる

「個人の勤勉さ」があれば成功できると思うかもしれないが、残念ながら、機会の平等が保障されていないこの分断された社会では、勤勉さだけでは不十分だ。多くの人は限界まで自分を追い込むことなく、だらだらと仕事をしている。

人間は〈パーキンソンの法則〉(「仕事の量は、それをやり遂げるために利用できる時間の限り増える」という格言)に陥りがちなので、苦痛になるレベルまで「多忙」になることはないし、重要な成果を出そうと能力の限界まで努力することもないだろう。

人前で慌ただしそうに働くことにはメリットがある。いわゆる「できたらいいね」程度の地味なことを、断る言い訳ができるのだ。たとえばみんなが潜在能力を発揮できるよう、真の同僚、チームメイト、リーダーになるといった地味な活動を拒否できるということだ。

ジョン・アメイチ『巨人の約束 リーダーシップに必要な14の教え』(東洋館出版社)
ジョン・アメイチ『巨人の約束 リーダーシップに必要な14の教え』(東洋館出版社)

以前に作った動画を見てほしい(古い動画だ。わたしは白髪交じりの大きなあごひげを生やしていないので、安心してほしい)。次に、人生のあらゆる制約のなかで、もっと効果的に〈FEE〉をするにはどうしたらいいかを考えよう。

自分の時間とその使い方について考えるときに、次にすべきことは、誰でも(あなたも)わずかな時間でも何かができることを認識することだ。

目的を持って集中すれば、時間を有効活用できる。それを最初に教えてくれたのは母だった。そしてその教訓はわたしの人生に大きな影響を与えた。

(ジョン・アメイチ(OBE))

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