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「膣から子宮が垂れ下がる、ジャンプで尿が漏れる」中高年の約5割が悩む"膣まわり"の老化トラブル回避法

プレジデントオンライン / 2023年8月21日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

膣のゆるみや尿漏れ、不快なニオイや性交痛など、年齢とともに増える膣まわりの悩み。人に相談しづらく、病院に行くのをためらう人が多い。東邦大学医学部教授の永尾光一さんは、「出産後の尿漏れや、臓器が下垂する骨盤臓器脱は、珍しい病気ではない。若いうちからのケアで防ぐことができる」という——。

■女性ホルモンが低下すると膣粘膜が萎縮

女性の体は、女性ホルモンによって守られ、コントロールされています。美しさと健康を保つために欠かせない女性ホルモンは、加齢によって分泌がゆるやかになり、更年期症状に代表されるようなさまざまな不調につながります。

実は膣周辺の悩みもその一つ。膣や膣前庭部と呼ばれる膣の入口は筋肉と粘膜でできています。女性ホルモンにはこれらをふっくらと柔らかく保つ働きがありますが、閉経に向かって分泌が低下すると、膣や周辺の潤いが減り、粘膜が委縮。

その結果、乾燥しやすくなり、若いころより性交時に痛みを感じる、陰部が乾いてイガイガ・ヒリヒリする、潤いがなくなりかゆみや違和感があるなどの“膣まわり”のトラブルが現れます。また、尿漏れや頻尿の悩みも増加。

ほとんどが女性ホルモンの影響を受けているため、30代よりも40代、40代よりも50代と、年齢を重ねるほど感じやすくなり、閉経が近づくと一気に進行するのが特徴です。

女性を悩ませるこのような諸症状に対して、近年「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」という病名が提唱され、新しい治療が進められています。

■加齢により雑菌が繁殖しやすくなり膣のニオイが変化

40代以降では、昔より膣周辺のニオイがきつくなったと感じる女性も多いようです。おりものの量が多く、ニオイが強い場合に考えられるのが、性感染症などの病気です。性交渉によって感染するクラミジア感染症や淋菌感染症、膣周辺のかゆみや熱さを感じる膣トリコモナスなどが挙げられます。

しかし、ニオイが気になるすべての人がこれらの病気に当てはまるとは考えにくいでしょう。多くの人は、雑菌の繁殖によるものと考えられます。陰毛が生えている毛穴には、アポクリン線という汗腺が存在し、雑菌がつくとニオイが発生しやすくなります。

また、加齢によって新陳代謝が低下することもニオイの原因に。皮脂や汗がうまく代謝しなくなることで、肌や毛の周辺にとどまる時間が長くなり、雑菌の増加につながります。

ニオイが気になる人は、雑菌のすみかになりやすい陰毛を短くカットするか、陰部を洗って乾燥させ、清潔に保つことが重要。ただし、膣には自浄作用があり、膣内は乳酸菌によって他の菌が繁殖しないように酸性に保たれています。そのため、ニオイが気になるからといって膣の中まで指を入れて洗うのはNG。陰毛や陰部周辺の洗浄にとどめましょう。

■尿失禁罹患率は10〜46%、出産経験者の44%が骨盤臓器脱

女性ホルモン低下による膣粘膜の萎縮が、性交痛や膣周辺の違和感につながると解説しました。それ以外に、女性の膣や膣周辺が大きく変化する原因となるのが出産です。

出産中の女性の手を握る夫と医療従事者
写真=iStock.com/Nimito
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nimito

当然ながら女性にとって出産は、膣や会陰、骨盤の下から臓器を支える骨盤底筋群などに大きなダメージを与え、尿漏れや膣のゆるみにつながります。笑ったり動いたりして下腹部に力が入ったときに、尿が漏れた経験がある人は多いのではないでしょうか。

健康な女性における尿失禁罹患(りかん)率は10〜46%とされ、決して珍しくない病気なのです(EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン)。

また、骨盤底筋群がゆるむと、膀胱や子宮などの臓器が下垂してくる骨盤臓器脱に。「臓器が下がってくる」というと不安に思うかもしれませんが、骨盤臓器脱の有病率は、20~59歳女性の30%、50歳代女性の55%、出産経験者の44%といわれ、多くの女性が経験しています(Samuelssonら Am J Obstet Gynecol1999)。

お風呂に入ったときに股のあたりに違和感がある、おしっこの向きが変わってきたなどの変化があれば、臓器脱のサインかもしれません。その場合は、早めに泌尿器科へ相談しましょう。

■骨盤底筋を鍛えるセルフケアで膣周辺の悩みを軽減

尿漏れや骨盤臓器脱を予防するために一番大切なのは、出産後のケア。組織が弱っている産後2カ月間は、膣の入口に装着するクッション性の医療機器などを使用することをおすすめします。膣や膀胱などの臓器を下から持ち上げ、臓器脱や尿漏れを防ぎます。

産後からしばらくたっている人も、あきらめる必要はありません。臓器をハンモックのように下から支えている骨盤底筋を鍛える運動で、尿漏れや膣のゆるみ、骨盤臓器脱を予防できます。

やり方は、膣と肛門をギューッと10秒間締めて、そのあと10秒ゆるめる。これを10回繰り返します。仰向けで寝た状態もしくは椅子に座って行い、1日3セットを目安に毎日継続しましょう。軽度の尿漏れならば、この骨盤底筋訓練で症状の改善が期待できます。

骨盤底筋トレーニング中の女性
写真=iStock.com/Saito Fam
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Saito Fam

骨盤臓器は骨盤低筋に支えられています。そのため適度に運動を行い下半身の筋肉を鍛えることは、全身の健康のみならず膣まわりの引き締めにも効果的です。ウオーキングや筋トレを習慣にして膣を若々しく保ちましょう。また、ニオイが気になる人は陰毛のお手入れをして、雑菌が繁殖しないように清潔に保つことも忘れずに。

■セルフケアで改善しない悩みは早めに医療機関へ

前述した骨盤底筋訓練を続けても、症状が改善しない場合は、泌尿器科や婦人科などの医療機関の受診をおすすめします。女性ホルモンの低下とともに膣の萎縮が起こり、症状が進行する可能性もあります。

尿漏れや骨盤臓器脱、膣のゆるみ、性交痛など、このようなデリケートな悩みは人には相談しづらいかもしれません。しかし医療の手を借りて治療している人は多く、決して珍しい病気ではないのです。

医療機関によりますが、膣粘膜を引き締めるレーザー治療のほか、膣や膀胱などの深層部の筋肉に働きかける高強度の磁気刺激など、負担の少ない新しい治療法が確立されつつあります。

膣まわりの悩みがあると、女性にとっては日常生活を送ることが不快になります。どれか一つでも症状を感じたら、早いうちの膣ケアを始めましょう。

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永尾 光一(ながお・こういち)
東邦大学 医学部 泌尿器科学講座教授
昭和大学で形成外科学を8年間専攻後、東邦大学で泌尿器科学を専攻、形成外科、泌尿器科の両診療科部長に。東邦大学医学部泌尿器科学講座教授、東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター長、同・尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長を務める。日本形成外科学会専門医、日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本性機能学会専門医、日本生殖医学会(旧日本不妊学会)生殖医療専門医。

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(東邦大学 医学部 泌尿器科学講座教授 永尾 光一 構成・文=釼持陽子)

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