「同僚のレベルが低すぎる」はむしろチャンスである…キャリアづくりのプロが「すぐに辞めるな」というワケ
プレジデントオンライン / 2023年8月23日 13時15分
■勇気が出ない人は「エア転職」がおすすめ
――「転職を考えているものの、勇気が出ない」という人は多いと思います。周りの人が転職するたびにうらやましいと感じても、さまざまな事情からなかなか行動できないこともありますが、こういった気持ちにどう向き合い、整理したらよいのでしょうか。
【徳谷】誰しもこうした気持ちはあるので自然なことだと思います。まず、うらやましいと思う背景や要素をちゃんと言語化した方がいいと思います。なぜうらやましいと思うのか、勇気がないと言っているのはどういうことなのか、もやっとしたものをちゃんと言語化して具体的にしてみてください。働く中で得たいものや優先的なもの、今課題に感じていることなどを全部でなくても洗い出してみるのもよいです。
気持ちを整理する上では、自身の価値や見られ方を客観視することも有効です。転職した場合、どのように見られるのかを確かめるために、「エア転職」をしてみることもおすすめです。
「エア転職」とは、実際には転職しなくとも、転職「活動」をすることです。フラットに向き合ってくれるエージェントに自分のキャリアはどう捉えられるのか壁打ちしてもらうのもいいかもしれません。相談相手は必ずしもエージェントである必要はありません。社内でも社外でも、本音で話せる人がいるようでしたら、まずはもやもやしているということからでもよいので、相談してみてはいかがでしょうか。
■転職後3カ月間は「定着期」
――「エア転職」とは面白いですね。実際に転職することを決めた場合、次に「人間関係の構築が心配」という方も多いのではと思います。当たり前ですが、会社が変われば人も変わるので、これまでの人間関係はリセットされます。新しい職場でやっていけるのか不安な人もいると思いますが、転職したら、まず何をしたらよいでしょうか?
【徳谷】拙著『キャリアづくりの教科書』の6章で、新たな組織にジョインした後の3カ月間を「定着期」と呼んでいます。その時にまず大事になるのは組織のカルチャーやメンバーを理解することです。
この期間中は、自分ができることを過剰にアピールするよりは、その会社の組織は何を大事にしていて、どんな人がいて、どんなモチベーションで働いているのかを、恥を恐れずに理解すること、具体的にはどんどん聞いてみましょう。最初が一番聞きやすいはずです。
可能であれば、組織理解を深めつつ、少しずつ自己開示できると関係を築きやすくなります。自分がどんな人間で、なぜこの組織に入ってきたのかを伝えるのも有効です。また、選考過程の人事の方や、同一組織内の方、中途同期入社など誰か一人でも相談相手がいると気持ちはだいぶ楽になると思います。
いずれにしても、会社の人たちに自分を知ってもらうためには、まずは自分が知ろうとすることがスタートだと思います。
■現場との接触を拒否する会社は要注意
――実際に入社してから「会社のカルチャーが合わない」という悩みをよく聞きます。とても重要ですが、入社前にはわからないことも多いと思います。転職前に何をすべきだったのでしょうか。
【徳谷】この現象は、中途の方よりも新卒の方に多いですよね。選考過程では、人事担当ばかり見ていて、実際に現場に行ってみたら想定と全然違っていた、という事態は多いものです。というのも、面接担当を「候補者受けするような方」にしている会社も実際に存在します。ですので、選考時の終盤には現場の人や、特に自身が一緒に働く可能性がある方とも話す機会を意図的につくりに行った方がいいですね。選考の最終フェーズで、現場との接点をリクエストしても、明確に拒否するような会社の場合、裏表がある可能性もあるので、より慎重に判断する必要があると思います。
■「転職先のレベルが低い」はむしろチャンス
――入社したら、思いのほか「周りのレベルが低すぎて萎(な)えてしまう」という声も聞きます。こういった場合、再度転職を考えがちですが、短いスパンで転職を繰り返すと職務経歴に傷がついてしまう気もします。一定期間は耐えた方がいいのでしょうか。
【徳谷】入社後に想定とギャップがあると残念に思いますよね。ですが、あまりにも安易なラベリングは危険なことも。高い低いというか軸が違うこともあるからです。新しい環境のため、自分には見えていない、もしくは重視していない面で他者のレベルが高いということもあります。まずは本当にレベルが低いのか客観的に見てみる必要があると思います。
例えば、コンサル出身の方などが「周りの頭が悪い」といった不満を持つケース。ただ、そう言っているご本人にも、コミュニケーションをないがしろにしているなど課題があることも結構あります。環境が変われば求められる能力が異なる前提でのアンラーニングも必要です。
本当にレベルが低いのかは客観的に検証してほしいのですが、とはいえ、本当にレベルが低いのであれば、逆に、チャンスと捉えて、自分がリードしてその組織をよりよく変えていけないか、あるいは他者にない自身の強みを生かしてより大きな価値を創れないかということをまず考えてみてほしいと思います。
それでも、やっぱり違うと思うのだとしたら、あえて縛られずに、少ない回数であれば転職もしてもいいと思いますが、安易な繰り返しは危険です。短期離職を繰り返すとジョブホッパー的に見られ市場からは敬遠されやすいのは事実です。
重ねて、注意してほしいのは、ご自身が入社前に想定していた人のレベル感とギャップがあったという事実を受け止めることです。転職前の見極めをしないと、また同じことが起こるかもしれません。
■「やりたいことは全部させてもらえる」わけではない
――人間関係も、レベルについても、実際に転職する前の見極めが重要ということですね。まれですが、「転職したら、入社前に聞いていた部署とは違う部署に配属された」というケースもあります。「話が違う」と困ってしまうと思うのですが、どうしたらいいでしょうか?
【徳谷】もし強いギャップを感じているのであれば、その配属に関わった人事の方や上長に相談した方がいいと思います。少し違う部署に配属されたことの裏にはいろいろな目的や背景があるかもしれないし、違うと思っていても、実際には、通じているところもあるかもしれません。
とはいえ、会社都合で所属予定だった部署がなくなるようなケースもあります。やむを得ず違う部署に配属されたのであれば、3カ月か6カ月程度など、一定までは、期限を切ってやってみてはどうでしょうか。その上で元々のWillや、成長したかったことと重ねてあまりにも違うと思うのであれば、その違和感を的確に伝え、「このままだとこの組織で働くことが難しい」と考えている旨を伝えた方がいいと思います。いきなりやめてしまうのではなく、事前にコミュニケーションを取ることが大事です。
30代以上だとこのような思い込みは少ないのですが、新卒や若手社員で時々あるのが、例えば、「事業開発できると思っていたのに、最初は営業配属だなんてありえない」というケースです。ただ、事業の現場を知らないと事業開発はできないという意図で営業に配属していることもあるので、そういった組織側の意図もあるかもしれません。
さらにいうと、全部が全部、自分の望む機会ばかり得られるわけではありません。仕事で成果を出し、力をつけることではじめてやりたいことができる機会が得やすくなると思います。はじめから「自分のやりたい機会は全部与えられて当然」と思い込むことは危険です。
■仕事で使わざるを得ない環境に身を置く
――機会をつかむためには、まずは力をつけるということですね。ただ、もし、今の仕事と「やりたいこと」がかなり離れている場合はどうしたらよいのでしょうか。私にも、本当は外資で働きたいと考え、英語の勉強をしているものの「なかなか上達しないので諦めようか」と悩んでいる知人がいます。どうやって判断すべきでしょうか。
【徳谷】突き放すようですが、本気で行きたいなら勉強するしかないと思います。ですが、結局勉強だけをしていても必ずしも仕事で使えるようになるわけではないので、多少粗い状態でも挑戦し、「仕事で使わざるを得ないからインプットする」環境に身を置く方が成長は早いです。例えば、いま英語が流暢な方も、最初はそうでなかった方もたくさんいます。
外資で働いている人が周りにいないとのことですが、いろいろとたどっていけば誰かしら一人ぐらいはつながることができるはずです。少しずつでも行動して機会をつかんでいくことで人は成長していくと思います。
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エッグフォワード代表
京都大学卒業後、大手戦略コンサルティング会社に入社。国内プロジェクトリーダーを経験後、アジアオフィスを立ち上げ代表に就任。業界トップ企業から、先進スタートアップまで数百社の企業変革や出資によるハンズオン支援を手がけると同時に、個人の可能性を最大化するべく、2万人以上のキャリア支援に従事。NewsPicksキャリア分野プロフェッサー。PIVOT社長改造コーチ、東洋経済Online連載、Podcast「経営中毒 ~だれにも言えない社長の孤独~」メインMC等を担当。
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(エッグフォワード代表 徳谷 智史)
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