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わが子に「頭がいいね」は絶対NG…地頭のよさを強調された人がその後、深刻な伸び悩みに陥る科学的理由

プレジデントオンライン / 2023年8月25日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

人生をいい方向に導くためにはどんな心の持ち方をすればいいのか。心理学者のキャサリン・A・サンダーソンさんは「知能や性格などの基本的な特質は固定されているというマインドセットより、努力次第で変化するものだと考える成長型マインドセットが心理的・身体的な幸福感、人間関係の質、寿命にまでいい影響を与えている」という――。

※本稿は、キャサリン・A・サンダーソン『ポジティブ・シフト 心理学が明かす幸福・健康・長寿につながる心の持ち方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、本多明生訳)の一部を再編集したものです。

■マインドセットとは何か

ステレオタイプ以外に、私たちの行動は、自分自身や世の中に対して身につけている特定のマインドセット、あるいは心の枠組みによる影響も受けます。私たちのマインドセットには、思考や信念、期待が含まれますが、マインドセットは私たちの人生における出来事の捉え方と反応の仕方を決定づけます。

マインドセットには自分の能力、特性、特徴に対する自己認識が含まれます。自分は楽観的なのか、悲観的なのか? 数学が得意なのか、それとも苦手なのか? 人付き合いが好きなのか、それとも内向的なのか? つまり、私たちの個性とは、自分自身を個々人として定義するものなのです。

マインドセットの基本的なポイントについて説明します。マインドセットとは、これらの属性が時間の経過とともに変化する可能性について、私たちが身につけている信念のことです。

スタンフォード大学のキャロル・ドウェック教授(心理学)は、このような信念が人々によって異なることを示す数多くの研究を行いました。

例えば、ある人々は、知能や性格などの基本的な特質は固定的で安定したものだ、と考えています(固定型マインドセット〈fixed mindset〉)。一方、別の人々は、そのような特質は可鍛(かたん)性があるもので、努力次第で時間の経過とともに変化するものだ、と考えています(成長型マインドセット〈growth mindset)〉。

様々な状況へのアプローチの仕方、ミスや失敗への対応、課題の捉え方と対応の仕方は、あなたのマインドセットが固定型なのか、それとも成長型なのかの影響を受けています。

マインドセットがどれほど私たちの行動に強く長期的な影響を及ぼすのか、について一例をあげます。

■ほめ言葉「頭がいい」が有害である理由

たくさんの親や教師は、悪気なしに、子どもの学業成績をほめるときに「頭がいい」というレッテルを貼ることがあります。この言葉は、一見するとほめ言葉です。確かに自分の知的能力について、このように言われたい、と思うかもしれません。しかし、現在では、このレッテルが子どもたちの学習環境における楽しさ、持続性、達成感にとって有害であることを示す多くの証拠が示されています。

「頭がいい」と言われることの欠点は何でしょうか? このレッテルは、子どもたちに、知能は固定化された特徴であること、つまり、頭がいいのは生まれつきで、そしていつまでも賢い、ということを信じ込ませてしまいます。

「頭がいい」と言われた子どもは、しばしば知能の性質について固定型マインドセットをもつようになり、このレッテルを否定される可能性について深く悩むようになります。

将来、この子どもがあるテストで悪い成績を出した、としましょう。そうすると、子どもは「ダメな点数をとっちゃったから、やっぱり自分はそんなに賢くないのかもしれない」と考えます。したがって、このたった一度のネガティブな結果は、子どもにとって、衝撃的なものになるのです。

子どもたちは、期待に応えられないかもしれない、という不安に対処するために、パフォーマンスを低下させることで対応する場合があります。すなわち、自分が確実に解くことができる問題だけに挑戦するようになるのです。

その結果、そのように対応した子どもは自分自身が挑戦し、成長するための機会を失ってしまいます。タフツ大学人文科学部長のロバート・スタンバーグは「失敗を恐れていると、仕事で学ぶことができなくなり、『失敗しないようにしなければ』という防御的なアプローチをとるようになってしまいます」と指摘しています。

家族
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

一方、自分の能力や特性は努力と実践によって変えられる、と考える成長型マインドセットをもつ人は、大きなメリットを得ることができます。その人にとっては、間違いは学び、成長するためのチャンス、として捉えられるので、その力を伸ばすためにチャレンジングな課題に取り組むようになります。

例えば、「知的能力は成長する」という信念をもつ中学1年生は、学校の勉強が難しくなり、成績基準が厳しくなる中学1〜2年の間でも成績が上昇しますが、そのような信念をもたない生徒にはそのような上昇が示されなかった、という研究があります。

同様に、成長型マインドセットのアスリートは、才能だけでは不十分であること、真剣な努力と厳しいトレーニングが成功への鍵であることを理解し、より高いレベルの成果を上げています。ある研究では、精神的な問題を抱えていたティーンエイジャーに、成長型マインドセットと、時間をかけて変化し改善する能力について、30分間のレッスンを行ったところ、9カ月後には不安や抑うつのレベルが下がったという結果も得られています。

このように、変化する力とその可能性に焦点を当てたマインドセットを取り入れると、大きなメリットが得られます。

■マインドセットの重要性

基本的な個人的資質が変更可能かどうかについての信念は、人生のほぼすべての場面に影響します。

例えば、どんなに努力しても自分の不安や抑うつのレベルを変えることはできないと信じている人は、そうでない人に比べて不安や抑うつの症状が強いことがわかっています。こうした信念をもつ人は、心配や悲しみのレベルが高く、手汗やパニック発作といった不安に関する身体的症状を報告します。

同様に、老化に対する考え方も、認知能力や身体的な健康に影響を及ぼします。ある研究によると、61歳から87歳の研究参加者のうち、老化のプロセスは固定的で避けられないものだ、と考えていた人は、老化についてのネガティブなステレオタイプを想起した後に、記憶力テストの成績が低下し、血圧も高くなったことが報告されています。

一方、老化のプロセスは変えることができる、と考えていた人は、このような反応が示されませんでした。老化のプロセスを変えることができる、と考えていた人は、そのようなステレオタイプが必然的なものだとは信じていないことから、ネガティブな結果に悩まされることはないのです。

シニアカップル
写真=iStock.com/Paul Bradbury
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Paul Bradbury

私たちのマインドセットは他者との関わり方にも基本的な部分で影響を及ぼします。共感性には柔軟性があるのか、すなわち、他人の立場にたつ能力は努力次第で高めることができるのかどうか、についての信念の影響を調べた研究があります。

研究参加者は、人間の共感性はその人にとって基本的なもので変化することはないと思うか、それとも、人間の共感性は変えることができると思うか、を答えました。そして、個人的に重要な社会的、あるいは政治的な問題について意見が異なる人に共感しようとするときの意欲が測定されました。

研究者の予想通り、共感性には柔軟性がある、という信念をもつ人ほど、相手の立場を尊重し、理解しようとする意欲が高いことが示されました。このように努力しようとする傾向は、より良い人間関係の構築や対人葛藤の減少につながる可能性が高い、と思われます。

マインドセットが親密な人間関係の問題を解決する意欲に影響する、ということは驚くことではないかもしれません。運命の人がいるというマインドセットをもつ人は、良い人間関係を築くためには正しい相手を選ぶことが大切だ、と信じています。そういう人は人間関係を一か八かで捉えています。

残念ながら、この信念は2種類の機能不全行動を引き起こします。それは、問題を無視すること(何らかの問題があればそれは人間関係が悪いことを意味するからです)、あるいはあきらめること、です。恋愛関係にある大学生カップルを対象にした研究によると、このようなソウルメイト型マインドセットの人は、人間関係でストレスがかかる出来事に直面すると、物事を解決しようとする時間を減らしてしまうこと、基本的に努力することをやめてしまい、あきらめる傾向があったことを報告しています。

■努力型マインドセットの人が性的満足度も高い

一方、努力型マインドセットの人は、強い人間関係を構築するためには、オープン、かつ建設的な方法で、問題を認めて解決することが不可欠だ、と考えています。ストレスが強い出来事に直面したとき、そういう人は物事を解決しようと努力し、問題をポジティブな方向に捉え直そうとします。人々の性的満足に関する信念を調べた研究もあります。

キャサリン・A・サンダーソン『ポジティブ・シフト 心理学が明かす幸福・健康・長寿につながる心の持ち方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、本多明生訳)
キャサリン・A・サンダーソン『ポジティブ・シフト 心理学が明かす幸福・健康・長寿につながる心の持ち方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、本多明生訳)

この研究では、特に、性的満足は「正しい」パートナーを見つけることによって得られるのか(固定型マインドセット)、それとも努力と頑張りによって得られるのか(成長型マインドセット)を調べました。その結果、性的満足に関する成長型マインドセットをもつ人は、性的満足度や関係性の満足度が高いことがわかりました。

この研究では、パートナーも同じように高い性的満足度を報告したことから、良いセックスには時間と努力が必要だという信念をもつことがカップルの間の関係にとって有益であることが示唆されています。

これまで説明してきた研究の例は、自分自身の特定属性が固定的なものなのか、それとも可変的なものなのかについての信念が、心理的・身体的な幸福感と同様に、人間関係の質や寿命にまで重大な影響を及ぼしていることを示しています。

(心理学者 キャサリン・A・サンダーソン)

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