1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「この仕事はあの人に頼もう」仕事ができる人がすぐにベストな”キャスティング”を思いつける理由

プレジデントオンライン / 2023年9月14日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

結果を出せるチームをつくるにはどうすればいいのか。ビジネスプロデューサーの山川隆義氏は「半径3メートルにいる人材でどうにかしようと考えるのはもったいない。会社全体のリソースを使ってできることを考えるのが重要だ」という――。

※本稿は、山川隆義『瞬考 メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■BTSの曲は世界中の作曲家たちが複数でつくりあげている

かつての曲作りは、作詞家と作曲家の二人がいればそれでよかった。

シンガーソングライターに至っては、一人で全部やる。

日本においては、作詞印税3%、作曲印税3%、歌唱印税1%が大体相場なので、シンガーソングライターは7%の印税が入る。

昔は、レコードやCDがヒットすれば100万枚単位で売れたので、凄まじい印税収入になったわけだが、かつてほどCDが売れなくなった今ではそうでもないはずだ。

よって、なるべく少人数で制作したほうがよいというのが、日本の発想かもしれないが、K−POPではまったく異なる。

K−POPの曲作りは、下手すると10人くらいが関わっている。

BTSが新たな曲を作るとなると、世界中からメロディーメーカー、トラックメイカー、作詞家が集まってくる。

BTSという魅力的な池に、我先に飛び込んでくるのだ。

そのため、著作者としてクレジットされていても、二小節だけ担当、四小節だけ担当などの著作者も存在すると言われている。

10人もいると取り分が少なくなりそうだが、彼らの場合は市場が世界であり、凄まじく売れるので、まったく問題ない。世界中のトップクラスの作詞家、作曲家が参加して作り上げるわけだから、当然素晴らしい曲ができあがる。

■エンジニア同士のネットワークから生まれたLinux

コンピュータの世界でも、UNIXコンピュータが市場に出たとき(1980年代後半から1990年代前半)は、ヒューレッド・パッカード、IBM、DEC、サン・マイクロシステムズとそれぞれが独自のOSを作っていた。

ところが、どこのメーカーにも属さないLinuxがUNIXのOSを席巻する。

Linuxの開発に参加していたのは、IBMのエンジニアかもしれないし、ヒューレット・パッカードのエンジニアかもしれない。

世界中のエンジニアが参加し、不具合が出ると、すぐにパッチを当てて修正するので、どんどん改善していく。自社のOSは改善が遅れたりするので、お客様に文句を言われるわけだが、Linuxは誰かがすぐに修正する。

これはエンジニア同士が1990年代初頭、ネットでつながり出したので、できたことである。

つまり、コンピュータもネットにつながって、人間同士がつながると、世界中から優秀な人材が集まって、開発できるということだ。

曲作りも、Linux型に変わりつつあるが、他の分野でも同様のことが起きる可能性がある。

■原作と作画の分業が当たり前になっている縦スクロール漫画

元来、日本の漫画はストーリー作成から作画まで一人で行うのが主流だったが、徐々にこれも変わってきている。

2000年以降、インターネット上で、スクロールして読むウェブトゥーンが登場した。当初は一時的なものと思われたが、スマートフォンが普及した現在、スクロールして読む縦スクロール漫画も普及してきている。

それに伴い、原作者と漫画家が別に存在するのが主流になりつつある。日本でも人気のピッコマやLINEマンガでは、多くの作品で原作と作画は別人だ。

確かに、ストーリーやキャラクターを構想する作家としての能力と、絵を描く能力はよく考えると異なる種類のものだ。

今までは、漫画家はストーリーも考え、絵も描くというシンガーソングライターばりにすべてを行っていたわけだが、分業制になるとまったく違うプレイヤーも出現する。

絵は描けるが、ストーリーはできない。またその逆の人もいるわけで、そうなると新たな新人が出現するチャンスが出てくる。

こうなってくると、今まで日本のお家芸だった漫画も、うかうかしていられない。

■人材をキャスティングしてとりまとめるプロデューサーが重要になる

絵を描くだけだったらうまい人は多数いるだろう。しかし、絵が描けて、かつストーリーを作ることができる才能の持ち主は限られている。

となると、いい原作があれば、その原作をうまく表現してくれる絵をつけることで、今までは漫画にならなかったものも、世に出てくるわけである。

実際、世界の小説UGC(User Generated Contents)サイトを大手プレイヤーが買収する動きは多数出てきている。

小説UGCサイトは、グローバルに存在するため、世界中からストーリーのネタを集めることができる。

そうなると、「この小説にこの漫画家で作れば売れるのではないか?」と着想し、それを実現できるプロデューサーの役割がより重要になってくる。

クリエイティブなオフィスのチームワーク
写真=iStock.com/FangXiaNuo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FangXiaNuo

■コモディティ化したスペシャリストで生き残れるのは一握り

昭和はサラリーマン全盛の時代。平成はスペシャリストの時代であった。

しかし、スペシャリストが増えた今、もはやコンサルタントも会計士も弁護士もかつてよりはるかにコモディティだ。

今から参入しても、そこはレッドオーシャンである。

もちろんスペシャリストを目指すのも悪くはないが、世の中がインターネットによってつながってきており、情報も透明化されつつある。そうすると、仕事の指名は各分野のスペシャリストもトップ層に集中してかかるようになるはずだ。

前述したが、曲作りも、作詞に数名、メロディーに数名、トラックに数名と、制作に携わるメンバーを世界から集めて束ねるプロデューサーが不可欠である。

漫画も、作画・ストーリーと分業制を取りまとめるプロデューサーが必要だ。

よって、人々がつながったこれからの時代は、プロデューサーの時代である。

誰にどのような能力があり、どのようなことが得意かを把握して、物事の実現に向けて、最適な人を集め、実行をプロデュースする人材、「ビジネスプロデューサー」が求められる。

「このドラマには、この俳優とこの俳優、そしてこの脚本家で、この監督」というように、キャスティングを決めるのはプロデューサーの仕事である。

企業においても、何かプロジェクトを実行するときに、社内外から最適な能力を持つ人材を集めて、実現に向けてあらゆるものを動かしていく人材が求められる。

■誰が何を得意としているか、広い範囲で把握しておく

山川隆義『瞬考 メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す』(かんき出版)
山川隆義『瞬考 メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す』(かんき出版)

ビジネスプロデューサーとしての働き方を実践するためには、誰がどういうことができて、どういうことが得意かについて、常に視野を広範囲に向けて、広く知っておくことが重要だ。

仮定の話になるが、もし世界中の人材について、誰に、どんな能力があり、どんなことができるかを把握していると、課題解決にかかる時間も異常なほど短縮され、出される解も非常に高いレベルになるはずだ。

視野を世界中に広げるのは実現困難な理想論のように聞こえるかもしれないが、それでも視野を広げる習慣を作って、その習慣を継続することには意味がある。

BTSは、世界中のトップクリエーターが集結して楽曲制作をしているわけで、事例がないわけではない。可能性としてはありえるのだ。

■半径3メートルにいる人材でなんとかしようと考えない

大抵の場合は、そこまで視野を広げず、「自分の部下数名、半径3メートルにいる人材で何かできないか」と考えてしまうことが多いのではないかと思う。

そうではなく、実現可能性は一旦無視して、視野を広げることを意識し、会社全部のリソースを使って何かできることを考える。そして、今いる従業員だけでなく、退職してしまったOBや取引先など……この世に存在するあらゆるリソースを含めて構想すると、面白い、そして社会の役に立つビジネスプロデュースができるはずである。

----------

山川 隆義(やまかわ・たかよし)
ビジネスプロデューサー
京都大学工学部および同大学精密工学修士(生産システム工学 専攻)。横河ヒューレット・パッカード株式会社(現在の日本ヒューレット・パッカード合同会社)、ボストン コンサルティング グループ(BCG)を経て、2000年に株式会社ドリームインキュベータ(DI)創業に参画。2005年取締役副社長、2006年から2020年まで代表取締役社長。現在はビジネスプロデューサーとして、エンターテインメント、証券、産業財、ヘルスケア、IT分野の企業における社外役員及びアドバイザーとして活動するとともに権利マネジメントビジネスを実践。

----------

(ビジネスプロデューサー 山川 隆義)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください