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トラブルは「極力事前につぶす」が大前提…仕事のできる人ほど頻繁に「締め切りを延ばす」納得の理由

プレジデントオンライン / 2023年9月15日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

仕事で評価の高い人は何をしているか。戦略コンサルタントの田中耕比古さんは「今問題がなく順調でも、仕事をどんどん先に進めようと考えてはいけない。トラブルは未来にある。リスクを早めに検知して、先手を打っていく姿勢が大切だ」という――。

※本稿は、田中耕比古『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■「何もない」ときこそ未来に起こるトラブルを考える

幸いにして、遅れが発生していない、問題らしき問題は見当たらない、ということもあります。素晴らしいことです。

そのまま仕事を進めればいい……と思うかもしれませんが、ここでもうひと手間加えましょう。順調なときに、油断しないのが「仕事ができる」と評価されるためのコツです。

「遅延がない、問題がない。だから仕事をどんどん先に進めよう」は、一見すると素晴らしく思えますが、この思考法ではトラブルを回避できません。

なぜなら、トラブルは「未来」にあるからです。

「遅延がない、現状問題がない」というのは、「過去」のことでしかありません。もちろん現在の状況把握も大事ですが、これから先に起こることを考えることが仕事をスムーズに進めるポイントになります。

「今のところ遅延も問題もないが、この先滞りそうなことはないか?」

と考えることが大切です。

そもそも、遅れにつながっていないミス、大事(おおごと)になる前に気づいて修正された問題……そういうものは仕事をしていれば、当たり前のように起こっています。

「何もない」は、あり得ないのです。

それらのなかには、あなたが気づいてうまく処理したものもあれば、ほかの誰かが気づいて事なきを得たものもあるでしょう。そうしたものを棚卸しして、「本当に、見すごしておいてよいのか」をチェックしておくべきです。

小さな遅れは簡単にリカバリーできますが、それが積み重なった大きな遅れは取り返しがつきません。そして今回お話しているのは、さらにその一歩手前で「遅れが発生する前に潰し込む」という考え方です。

具体的には「何か予定外のことはなかったか」を考えましょう。

■過去の失敗パターンを「見える化」し共有する

順調に見えている仕事でも、こんなことが起こってはいないでしょうか。

・お客様から確認の電話がかかってきて、契約書を送り忘れていることが発覚したが、すぐにバイク便でお届けしたために問題にはならなかった
・経理部から「同じ金額の見積書が2枚来ているが、2枚とも処理してよいか」と言われて確認したところ、別々の担当者が同じ内容で経理処理を行っていた。二重計上になる前に片方を取り下げた
・打ち合わせ予定時刻にお客様が来社されず、確認のお電話をすると日時が間違っていた。幸い、翌日に打ち合わせのお時間をいただけたので進捗には問題がなかった
・必要な部品が届かないので確認したところ、自社の発注確定処理が行われていなかった。幸い、先方に十分な在庫があったため、即日納品をお願いして事なきを得た

これらが、いわゆる「ヒヤリハット」です。背筋がヒヤリとしたり、驚いてハッとしたりしたけれど、事故にはつながらなかったラッキーな状況です。こうしたことが起こっていても、遅れにつながっていなければ「進捗に遅れなし」となります。

これらについても、遅れと同様に原因究明を行い、再発防止策を考えましょう。先々のリスク、将来の事故の芽を潰すのです。

リスクブロックを取り除く人間の手
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

ヒヤリハットを潰す具体的な方法としては、

・過去にあったミスや事故、失敗のパターンを「見える化」し、共有しておく
・仕事に取り掛かる前にチェックリスト化する

などが有効です。

もちろん、あまりやりすぎると、チェックのためのチェックになり、作業時間をどんどん食い潰してしまうことにもなりかねませんから、ほどほどに留めておかざるをえません。

しかしながら、先々のことを頭の片隅に置いている人と、まったく考えもしない人では、仕事の品質に雲泥の差が出ます。ぜひ、先読みできる人になりましょう。

■トラブルを事前に潰し切ったら、加点を狙う

なお、トラブルを未然に潰し切ったときにだけできる理想の打ち手があります。

それが「プラスアルファを考える」です。

これまでに書いてきたことは、すべて「減点を防ぐ」ための打ち手でしたが、これは「加点を狙う」打ち手です。

やってもいいし、やらなくてもいい。しかし、やればお客様あるいは、上司・先輩の要望をより多く満たすことができる。より大きな成果につながる。そういうことがないかを考えてみるのです。

仕事ができるという評価は、「いい意味で期待を裏切る」ということを積み重ねた結果として得られることが多いです。

「まさかそんなことまでやってくれていたの?」
「これは思ってもみなかった! ありがとう」
「ありきたりな感謝の言葉では足りないよ!」

などという言葉を、相手から引き出すチャンスです。

心に余裕のあるときには、よいアイデアが降ってくるものです。機会があれば、ぜひトライしてみてください。これにトライする余裕があるならば、その時点で、その仕事は大成功だと考えてよいでしょう。

■スケジュールを無理に合わせようとすると破綻する

細かく仕事を分解して作業時間を見積もり、緻密(ちみつ)にスケジュールを組んでいくと、作業に着手する前に、「締め切りに間に合わない」と明らかになることがあります。

もちろん、再度、作業時間見積もりを行って短縮できるところがないか考えてみるのもよいのですが、大切なのは「無理して帳尻を合わせて押し込もうとしない」ことです。

「逆引き線表」という言葉があります。これは、締め切りに無理矢理間に合わせようとして、表面上だけ取り繕った線表(スケジュール)のことです。これを作ってしまうと、ほとんどの場合、破綻します。

実業家の残業
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

間に合わないものは、どうしたところで間に合わないからです。

「間に合いそうにない」となった場合、最初に考えるべきことは「締め切りを延ばせないか」です。当然ながら、締め切りが設定されている以上、そこにはなんらかの理由があるはずなので、簡単に延ばせるとは限りません。

そのため、多少無理をしてでも、なんとか間に合わせたいと思う人も多いでしょう。

しかし、無理して押し込んで結局間に合わないよりは、最初から締め切りを延長して、遅れない計画を立てるほうが数万倍マシな選択です。

いろいろ交渉してみたものの、「締め切りは絶対に動かせない」という話になった場合は、「やることを減らせないか」と考えましょう。

■複数の仕事なら「ほかの仕事を調整する」ことも考える

たとえば、予定されていた業界調査や顧客調査の作業時間を短縮するために、上司や先輩、あるいはお客様などの有識者にヒアリングさせていただいて代替する、などが考えられます。

何かを100個作る、という話であれば、まずは50個だけ納品する、みたいなオプションもあります。また、チームを増員してもらうとか、外部業者に作業をお願いするなどのやり方で、担当する仕事の量を減らすこともできます。

「減らせること」「短縮できること」を考えても、まだ間に合わないときには、「ほかの仕事と調整できないか」を考えます。

一般的に、単一の仕事だけをやっている人は少なく、たいていは複数の仕事を担当しています。そこで、ほかの仕事のほうを調整するわけです。

ほかの仕事・作業は、この仕事の締め切り後に回す。ほかの仕事を、あなた以外の別の人にお願いする。ほかの仕事のいくつかを、やめる・やらないことを認めてもらう。そういう工夫の余地を探ります。

そこまで考えても、どうしても間に合わないのであれば、やはり、締め切りを延ばすしか選択肢はありません。ここまで準備してきた内容をもとに、締め切り延長の交渉をしていくべきでしょう。もちろん、上司や先輩が、もっとよいアイデアを持っているかもしれませんので、そのあたりを「相談」しましょう。

■相手が困るのは、ギリギリのタイミングでの延長

スケジュールに合意して仕事が始まったら、計画通りに進めることは極めて大切です。しかし、もしも「間に合いそうにない」ときには、早め早めに納期変更の相談をしていくことが重要です。

田中耕比古『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』(フォレスト出版)
田中耕比古『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』(フォレスト出版)

もっとも相手が困るのは、ギリギリのタイミングでの延長です。

そもそも、上司や先輩は敵ではありません。強い味方です。

スケジュールに関して、上司、先輩に怒られた経験のある人もいるでしょう。しかし、それは、スケジュールが変更になったことで怒られているのではありません。

たいていは「締め切り直前、ギリギリになってから、間に合わないと言い出した」から怒られるのです。

早めに伝えれば怒られることはまずありません。

ぜひ、早い段階で間に合いそうにない旨を伝え、どうやったら間に合うのか、あるいは、どの程度なら後ろ倒しにしても許されるのか、などをしっかり話し、スケジュールの見直しを一緒に行ってもらいましょう。

リスクを早めに検知して、先手を打っていく姿勢が大切です。

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田中 耕比古(たなか・たがひこ)
ギックス取締役、共同創業者
1977年生まれ。2000年、関西学院大学総合政策学部卒業。商社系SI企業に入社。2004年、アクセンチュア株式会社戦略グループ入社。幅広い領域での戦略コンサルティングプロジェクトに参画。2011年、日本IBM株式会社入社。ビッグデータのビジネス活用を推進。2012年、株式会社ギックス設立。取締役に就任。2022年3月、東証マザーズ(現グロース)に新規上場。著書に『一番伝わる説明の順番』、『仕事の「質」と「スピード」が上がる仕事の順番』など。

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(ギックス取締役、共同創業者 田中 耕比古)

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