パチンコや競馬よりも還元率が悪い…1億円貯めたFPが「生命保険に入ってはいけない」と主張するワケ
プレジデントオンライン / 2023年9月27日 9時15分
※本稿は、品田一世『“カナダ式”で幸福度も資産も増え続ける!いつのまにか億り人になれる 超マネーハック』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■ギャンブルはゲームの中でも非常に勝ち目が薄い
依存性の高いお店としては、キャバクラなどの夜の店のほかに、パチンコなどのギャンブルもあげられます。ギャンブルはサンクコスト効果(それまでの投資によって使った費用や労力を考えて行動を続けてしまう)でお金をつぎ込んでしまう最もわかりやすい例でしょう。
サンクコスト効果に加えて、たまに勝った時の快楽が人を夢中にさせます。ギャンブルは脳の仕組みとしてドーパミンをドバドバ出させます。勝った喜びで負けの苦しみを忘れるように設計されています。
そもそも、ギャンブルは非常に勝ち目の薄いゲームです。マイナスサムゲームだからです。経済学のゲーム理論では、マイナスサム、ゼロサム、プラスサムの3つがあります。
ゼロサムゲームは参加者全体の損得がゼロになります。
例えば仲間4人でゲームのマリオカートの大会をやるとします。その時、1人1000円ずつ出しあって1位が4000円をもらえるようにします。この場合、参加者から4000円集めて、全額を賞金として還元しています。つまり、勝った人が得をした金額と、負けた人が損をした合計金額が同額で、トータルでプラスマイナスゼロです。
■「買えば買うほど損をする」ようにできている
一方で、参加者から集めたお金よりも還元するお金の方が大きい場合は、プラスサムゲームになります。例えば、合計4000円集めて賞金総額が5000円のような場合です。
反対に、参加者から4000円集めて、賞金総額が3000円の場合はマイナスサムゲームといいます。
期待値で考えると、プラスサムゲームだと自分たちが出したお金より返ってくるお金の方が多く、ゼロサムゲームだと同じ、マイナスサムゲームだと自分たちが出したお金より返ってくるお金が少なくなります。ですから、マイナスサムゲームは単純に考えれば「買えば買うほど損をする」可能性が高くなります。
パチンコ、競馬、競艇、そしてその他ギャンブルも全てマイナスサムゲームです。これらは全て、そもそも胴元が儲かる仕組みになっています。還元率(使った額に対してどのくらい戻ってくるかの割合)はパチンコ・パチスロが80~85%で競馬が70~80%といわれています。
つまり胴元が2割程抜いた後の金額を分け合っているのです。参加者がかけた金額以上のお金が参加者に返ってくることはありません。ですから、基本的には一般客である私たちは負けるようになっています。
■年末ジャンボ1等に当たる確率は…
「ギャンブルをしなければ死ぬ」という病気でもなければ、負ける確率の方が圧倒的に大きいゲームで勝負する必要はありません。
「イッセイさん、ギャンブルなんてやりませんよ。私はたまに宝くじを買うくらいです」という人もいるかもしれません。ちょっと待ってください。夢が広がるドリームジャンボ宝くじとCMが流れていますが、夢が広がるのは実は胴元だけです。
確率論の観点からいえば、宝くじは「愚か者の税金」といわれています。リターンの期待値で言うとギャンブル以下です。還元率は約46%とギャンブルと比べてもかなり低いです。
ピンとこない人に説明すると、年末ジャンボの1等に当たる確率は、交通事故で死亡する確率の約588倍も低いです。
宝くじを買うことが趣味などでなければ、今後の購入はおすすめしません。ギャンブルや宝くじに費やす分のお金をコツコツ貯金したり、積み立て投資に振り向けたりするほうが結果的に蓄えは増え、夢も広がります。
■生命保険は還元率だけでいえば最悪
「イッセイさん、私はギャンブルも宝くじもやりません。マイナスサムゲームなんてバカらしくて手を出しませんよ」
そう思われた人も少なくないでしょうが、本当でしょうか。
実は日本人の多くが何も考えずに参加しているマイナスサムゲームがあります。大半の人はそのことに無自覚に胴元を儲けさせてしまっています。
生命保険や医療保険です。
オフィスバトン「保険相談室」代表の後田亨さんは東洋経済オンラインの記事で、ライフネット生命が開示している、保険料に見込みで含まれる保険会社の運営費の割合(付加保険料率)をもとに、医療保険やがん保険などの還元率を推計しています。
商品にもよりますが、だいたい40~70%くらいだそうです。還元率だけでは、パチンコや競馬よりも悪いわけです。
もちろん、保険はギャンブルとは違った性質があります。一家の稼ぎ頭が突然亡くなっても、死亡保険に加入していたことで救われる家庭もあるでしょう。ただ、それでもマイナスサムである性質は理解して、内容に納得した上で契約すべきです。
日本人は保険が大好きな国民です。「株を買った」というと、「え、大丈夫」と反応されますが、「保険に入る」といっても多くの人は「ふーん」で終わりです。誰も「大丈夫?」とは聞かない国です。
■国民皆保険がない米国より高いお金を払っている
これは余談ですが、生命保険を日本に初めて紹介したのは福沢諭吉です。欧米に旅行する人向けの手引書で生命保険を人の「生涯を請け合う事」としています。非常にポジティブな印象を与えますよね。
実際、人生の中で2番目に高い買い物が保険といわれるほど、日本人の保険料は世界的にも突出しています。
アメリカは国民皆保険ではありません。日本のように優れた社会保険はありません。それでも、日本国内の死亡保険への加入金額は平均すると、アメリカよりもかなり高い水準です。医療保険やがん保険が日本で売れていることも、いかに保険好きかを物語っています。
昔から日本には、「生命保険は社会人になって入社と同時に入るもの」という慣習があります。入社と同時に職場に出入りする保険のセールスの勧誘で加入した人もいるでしょう。自動で給料から天引きされているので、生命保険に入っている感覚が薄い人もいるはずです。
■プラスサムゲームなら長期投資がいい
そのため、自分が加入している保険の内容を全く知らない人も少なくありませんが、内容をきちんと確認すると高すぎる保険料を支払わされていたり、不要な保険やオプションをつけられていたりするケースも珍しくありません。
保険は1度見直すと、年間で10万円、10年ならば100万円というかなり大きな支出の削減にもつながります。
私のクライアントも私と一緒に保険を見直して、不必要な保険を解約して年間10万円、多い人だと50万円という金額を節約して投資や貯蓄に回しています。
私はクライアントに、とにかくマイナスサムゲームを避けて、プラスサムゲームだけに手を出していくようにアドバイスしています。そして、プラスサムゲームの代表例が長期の金融投資です。
世界経済全体やアメリカ経済全体は伸びていくことが予想されます。結果的に投資した人みんなが出したお金以上の利益を得られる可能性が非常に高い仕組みになっています。
お金を出す際には、世の中の常識に惑わされずに自分の頭で、マイナスサム・ゼロサム・プラスサムのどれに該当するかを考えましょう。
■持ち家を勧める不動産神話に騙されない
「持ち家か賃貸か」。30~40代の方の中にはこの二択で悩んでいる人も少なくないでしょう。
結論からお話ししますと、迷っているのであれば、日本では家を買うべきではありません。条件のいい物件を買えば後述するように、もちろん不動産価格は上がります。
不動産営業の人が必ず使う口説き文句があります。
「買えば資産になりますよ」
「家賃を払っても何も残りませんが、不動産は売れますよ」
でも、これらは本当でしょうか。
最近はマンション価格が高騰しています。大都市圏では年収の7~8倍にも相当し、これはバブル期に迫る勢いです。大都市圏の郊外のマンションも2000年代には3500万円程度だった3LDKが7000万円を超えるのも珍しくありません。
ただ、地価をよく見てみると、三大都市圏でも昔からあまり人気のなかった地域や交通の便が良いとはいえない地域は横ばいです。地方に至っては一部の新築マンションは高騰していますが、大半の地域は下落が止まりません。軒並み高騰したバブル期とは全く様相が異なります。ごく一部の高騰している場所と横ばいの場所、そして下落している場所に三極化しています。
■日本中の家は余り始めている
理由は簡単です。日本は人口が減るからです。日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少局面に入っています。2030年には1億1662万人、2050年には9515万人まで減少する見通しです。半世紀も経たずして、3000万人以上が減る見通しです。
すでに、今でも地方では土地も家も余っています。空き家問題も大きな社会問題になっています。都市圏でもこれからそうした状況が出てくるでしょう。
「老人になったら貸してもらえないから家を買った方がいい」という意見もありますが、老人だからという理由で、賃貸の更新ができずに家を追い出された人をみなさんは見たことがありますか。これからは家も余ります。大家さんも何とかして空室を埋めたいはずです。住む場所に困るということは考えづらい状況です。
ですから、「家が資産になる」状況も考えづらくなります。日本中に家が余っているのに買いたい人が少なくなる一方なのですから、よほど条件の良い家でなければ資産にはなりません。売ろうと思っても売れない、そんな状況がくるはずです。
■「不動産こそ王道」は日本には当てはまらない
もちろん、都心の超一等地はこれからも人気でしょう。「銀座の超一等地の不動産を買う」となったら話は別ですが、おそらくそうした人は本書を手に取っていないはずです。もちろん、都心部でしたら超一等地でなくても優良物件はあるはずです。
ただ、正直、その見極めは素人には難しいでしょう。そもそも、日本で数少ない優良物件の情報は富裕層にだけ届きます。株式の世界と同じで富める者はさらに富む構造にあります。万が一、そうした不動産の情報を手にしたところで大きな問題があります。いつ買って、いつ売るかのタイミングは不動産のプロでもわかりません。
歴史的観点や再現性の高さから見ても、投資の王道は株式と不動産なのは間違いないですが、日本には当てはまらないと私は考えています。
確かに海外でしたら、家は資産になります。北米や欧州では家を直して住み続ける文化があります。エリアによっては古い家ほど価値が上がる可能性もあります。土地だけでなくて上物にもしっかりとした価値があります。
これは気候とも無縁ではありません。天災が少なく、湿度が低いため、家が傷みにくいことが関係しています。北米は人口が増えていることもあり、バンクーバーでは投資のことなど何も考えずに家を持っていただけで不動産長者になった人も少なくありません。
■マイホームの夢がなければ、賃貸にすべき
一方、日本は地震も台風も多いですし、湿度も高いので家が傷みます。メンテナンスも大変です。また、長く住み続ける文化というよりは新築文化です。買った瞬間に不動産価値は下がります。
そして、さきほどお伝えしたように人口も減り、土地の価値も二束三文になりかねません。海外に比べて日本で私たち中流家庭が不動産を資産として位置づけるのは難易度がかなり高いといえるでしょう。
もちろん、どうしても家が欲しいという人は買ってください。子だくさんで持ち家でないと住みにくい、好き勝手に改修したいので持ち家が欲しいという人もいるでしょう。はっきり言って、持ち家が子どもの頃からの夢だった人が家を買わないのはナンセンスです。
ただ、資産として考えていたり、賃貸か持ち家かで現在悩んでいたりする人は、買うことはおすすめしません。
これからは間違いなく、誰も買い手がいない土地が日本中にどんどん増えます。住む場所には困りません。日本人を長く洗脳してきた不動産神話を捨て去りましょう。
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ファイナンシャルプランナー
1984年生まれ、神奈川県出身。Canadian Flower Inc.代表。リカレント市民大学客員教授。日本の大学在学中はプロキックボクサー。三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、渡米。ニューヨーク工科大学大学院にてMBA取得。ロイヤル・バンク・オブ・カナダを経て、バンクーバーでファイナンシャルプランナーとして独立。2023年7月よりクアラルンプール在住。極真空手カナディアンチャンピオンシップ70キロ級で13年、16年王者に。趣味は投資とアウトドア。Twitter(現X)では「イッセイ」として発信している。
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(ファイナンシャルプランナー 品田 一世)
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