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「じゃ、あなたが買えば?」投資勧誘の営業マンに問いただしたときに必ず返ってくる"共通の答え"【2023上半期BEST5】

プレジデントオンライン / 2023年9月15日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Biserka Stojanovic

2023年上半期(1月~6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。投資・資産運用部門の第2位は――。(初公開日:2023年1月11日)
あやしい儲け話にだまされる人が後を絶たないのはなぜか。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「何人もの営業マンに話を聞いてみましたが、彼らには共通する話術があるのです」という――。

「この商品に投資すれば、ほぼ儲かります」といったセールス文句に、「じゃあ、あなたが投資すれば?」とは思ってはいても、なかなか面と向かっては言えないもの。

でも、かつて血気盛んな若手ファイナンシャル・プランナー(FP)の頃、私は言ってみたことがあります。

そのときの、相手の反応は……。

そして、相手の反応から気づいた、セールス側の共通の思惑とは……。

■未公開株の勧誘で営業マンが語った内容とは

今からもう10年以上前のことですが、当時は、「未公開株を買いませんか?」とのセールス電話がよくかかってきました。

ほとんどの人は「興味はありません」とスパッと電話を切るのでしょうが、ちょうどそのころ、自称新進気鋭のFPとして「リアルな投資ネタ」を欲していた私は、そんなセールスに対しても、電話を切らず、対応をしておりました。

そんな私に、業者が喜々として勧めてくる銘柄は、特許を持つ医療ベンチャーや最新技術を持ったIT企業など、どれもこれもきらびやかな企業ばかり。地味な製造業や小売業など、まずありませんでした。そして、それらの企業がいかに素晴らしいのか、そして将来有望であるかをまくし立ててくるのでした。

ただ、ハッキリと「必ず儲かる」や「絶対に損はしない」とは言いません。

しかし、いかにその企業が素晴らしいか、そして上場間近であるかを滔々(とうとう)と語るその言いっぷりからは、投資をすれば100%儲かるかのようなにおいを、これでもかと醸し出してくるのでした。

■禁断の質問には、どう回答したか

もちろん、FPとして基本的な投資知識や、それなりの投資経験のあった私は、絶対に儲かる投資などないことは分かってはおりました。

なので、最初は「リアルなあやしい投資話ネタ」と割り切って聞いておりました。

しかし、自信満々に、さも「必ず儲かる」かのように話してくるセールスを何度も受けているうちに、FPとしてのプライドが刺激され、禁断の質問をしてしまったのでした。

それがタイトルにもある「じゃぁ、あなたが投資をすれば?」です。

実際には、そんなストレートな聞き方ではなく、「そんなに素晴らしい銘柄なら、あなたは買っているのですか?」と柔らかく聞いてみたのです。

気分を害して怒ってこないかな……とドキドキしながらの質問でしたが、返ってきたのは、「買えるのなら買いたいのですが、社内規定で買えないのです」といった、丁寧かつ、無難な回答でした。

■とにかく、企業の素晴らしさを語りたい

そんな丁寧な回答にホッとした私は、調子に乗って、「でも、ほぼ儲かるのなら、なんとかして、ご自身が手に入れたいのではないですか?」と、少々あおるような聞き方もしました。それには、「いや、それができれば、ねぇ……」と言葉を濁し、すぐさま、「でも、この企業の特許は、本当に注目されているのですよ」と、銘柄の有望性を語ります。

さらに私は、「では、友人名義で買ってみるとか?」と、余計なおせっかいを言ってみるも、「さすがに、それは、ねぇ……」と歯切れが悪くなり、すぐさま、「でも、この企業の技術は、学会でも認められているんですよ」と、流暢に切り返してきます。

ただ、なんだか、話がかみ合わず、何とも言えない違和感を覚えたのでした。

こちらが何を言っても、「どうしても社内規定で買えない」といった感じでサラッとやり過ごし、すぐに話を、その企業の特許や技術、社長の経歴などに切り替え、いかにその銘柄が有望なのかを語ってくるのでした。

ちなみに、論点をちょっとズラして、「上場の話はどこまで進んでいるのか」「過去に上場した銘柄を取り扱ったことはあるのか」といった質問をするも、それらについてもサラッと、「そのあたりは守秘義務がありまして……」と深入りさせず、やはり、銘柄の有望性を滔々と語ってくるのでした。

ディスプレイ上のトレーディングチャート
写真=iStock.com/da-kuk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/da-kuk

■「かわいそうな人」と捨てぜりふを吐いた営業マン

実は当時、未公開株投資だけでなく、「排出権取引」や「FXの自動運用システム」など、他にも、さまざまな投資話のセールスを受けておりました。そして、そんな投資セールスの対応に慣れてきた私は、それらのセールスに対しても積極的に、「じゃぁ、あなたが投資をすれば」的な質問をしてみるのでした。

それに対する対応は、ほとんどの業者は「規定でできない」の一点張り。

中には、「私が投資してしまうと、皆さまへの販売枠が減るので申し訳ない」といった理由もありましたが、いずれにせよ、勧めてくる投資商品を、実際に自分でも投資している営業マンは皆無でした。

そして、彼らは話題をすぐさま切り替え、「排出権取引は地球温暖化を食い止める」「自動運用システムは世界で認められている」など、その投資(商品)の将来性を語り、それらがいかに有望なのかを、再び熱く語ってくるのでした。一度、「それほど素晴らしい投資なら、やっぱり自分で投資していないとおかしいですよ」と、ねちっこく食い下がった時には、「人を信じられないなんて、かわいそうな人ですね!」との捨てぜりふを吐かれ、ガチャリと電話を切られたこともありました。

■業者は、自分の「土俵」に引きずり込もうとする

そんな反応を見てきて確信したのが、とにかく業者は、自分の「土俵」に引きずり込もうとするということでした。

その土俵とは、「その投資(商品)が、いかに素晴らしいのか」ということ。

それが未公開株投資であれば、その企業(銘柄)の持つ「有望な特許」や「最新のIT技術」などを語り、さらには社長の華々しい経歴、雑誌等のメディア掲載実績などをアピールしてきます。そのよどみのない説明は、これは相当トレーニングされているな、と感じずにはおられませんでした。

業者とすれば、とにかく、その投資(商品)がスゴイとさえ思わせれば、すなわち、自分の「土俵」にさえ引きずり込めば、あとは相手が勝手に(これは必ず儲かると思って)盛り上がって投資してくれる可能性が高いわけですから、とにかく「土俵」に引きずり込みたいわけですね。

ですから、「じゃぁ、あなたが投資すれば?(なぜ、投資をしないの?)」と、土俵とは違うところに関心を持たれては困るのです。なので、そのような質問が出ても、決して深入りせずにサラッといなして、再び土俵に引きずり込もうとするのです。

土俵にさえ乗せれば、その投資(商品)そのものに関心が集中するので、そのような質問をされる可能性は低いのですから。そして、どうしても土俵に乗ってこない人は、向こうも諦めるわけです。

■社長直々のセールスで未公開株に即決投資して大失敗

このように、私は今でこそ冷静に分析をしていますが、かつて、業者の土俵に上がってしまい、損失を被ったことがあります。

それは、某ホテル運営会社の未公開株投資でした。

その勧誘時には、「豪華な施設」だけでなく、「世界の幸せとつながる」といった、他のホテルとは一線を画すコンセプトを熱く語り、やはり、その会社の素晴らしさと滔々と訴えてくるのでした。

ただ、他の未公開株投資セールスと違ったのは、その勧誘が、社長直々だったこと。

とある異業種交流会の場で話が盛り上がり、不意に投資勧誘の話となったのでした。なので、私もまったく身構えてはおらず、ガードが下がっていたことも、相手の土俵に上がってしまった要因でした。

そして、土俵に上がってしまったが最後、滔々と語る世界平和への思いは純粋にスゴイと思い、(一人で勝手に盛り上がって)投資を即決してしまいました。今、冷静に考えれば、理念先行のかなり荒唐無稽な経営理念でしたが、そのときは土俵に上がってしまったがゆえに、視野が極端に狭くなっていたわけです。

現在、その会社は上場していません。

というか、ホテル運営実績などまったくない状態が続いており、年1回の株主総会通知以外、連絡はまったくなし。当然、配当金はなく、未上場株式なので、売るに売れない状態です。10万円程度の投資額でしたが、これは丸損になったと諦めております。土俵に上がってしまってからでは、冷静な判断は難しいことを、今になって実感している次第です。

■投資しています、とは、まず答えない

結論として、「あなたが投資すれば?」に対して、「はい、投資しています」と答える業者はいませんでした(少なくとも、唐突に電話セールスしてくるような業者には)。

もし、「投資しています」などと答えれば、「では、その成果は?」と突っ込まれるでしょうから、そこは突っ込まれたくはないのでしょう。業者が関心を持ってほしいのは、その投資(商品)の素晴らしさであって、そこから「儲かる」と思ってほしいわけです。実際に儲かるか否かを検証されることは、絶対に避けたいのだと思われます。

なので、何かと理由をつけて、投資していない(できない)とだけサラッと答えて、すぐに、関心を持ってほしいテーマに話を戻すわけですね。すなわち、業者の土俵〔投資(商品)の素晴らしさ〕に引きずり込もうとするわけです。

そして、投資詐欺等に引っかかる場合は、そんな土俵に乗せられていたとのケースが多いもの。

もっとも、「自分の土俵に引きずり込む」ことは、投資詐欺に限らず、あらゆるセールスの常套手段でもあるので、このことは普段から意識しておきたいところですね。

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藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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(ファイナンシャルプランナー 藤原 久敏)

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