「株式投資をするなら米国株一択」は正しいのか…これから「伸びる日本株」を買っておくべき理由
プレジデントオンライン / 2023年10月4日 13時15分
※本稿は、中山大輔『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネジャーが明かす 逆転の思考法』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■株式市場の「循環」と「相対」を見抜く
株式市場では、大勢の人が「良い」と思っていることの反対側に、常に「駄目だ」と思われているものがあり、潮目の変化でお互いが入れ替わったりします。
このように、「相対」する動きが至るところで見られるのが、株式市場の面白さでもあります。
具体的にいうと、「大型株と小型株」、「バリュー株(割安株)とグロース株(成長株)」、「内需株と外需株」などが代表的なところで、資産クラス別でいうと、「債券と株式」もそれに該当します。あるいは米国株にリスクシナリオが浮上している一方で、日本株復活のシナリオが浮上しているのも、そのひとつといってよいでしょう。
もうひとつ、マーケットを見るうえで注目しておきたいのが、「循環」です。循環というと少し難しいような印象を受ける方もいらっしゃると思いますが、平たくいうと「良い時があれば、悪い時もある」という話です。
これはトレンド転換のことであり、マクロ経済も企業経営も、「循環」するように浮沈を繰り返しています。その変化率の大きなところに資金を投じるのが、株式投資でリターンをより高める、あるいは確度を高めるポイントのひとつになります。
長く続き、大きく膨らんだトレンドが転換する時ほど、次に現れる別のトレンドも、長く大きなものになる可能性があります。だとすれば、企業価値の向上に伴う、日本企業の株価上昇は、長く続く可能性があります。
こうした循環をさまざまな観点から探り、その循環の転換点を見つけるようにし、その循環に乗れる企業を探します。
■産業ごとに「循環」が起きている
テクノロジー
循環は景気やマーケットだけでなく、特定の産業にも見られます。たとえばIT情報通信、半導体産業などのテクノロジーには、15~20年周期のサイクルが確認できます。
1960年代はカラーテレビがあり、1985年はVTR。そして1990年代は携帯電話やパソコン、液晶、さらにはインターネットの普及に伴って、そのインフラ関連技術がもてはやされました。
2010年代には再生可能エネルギーやスマートグリッド、EV、DX、GAFAMに代表されるピュアデジタル的なものが登場し、普及していきました。こうした新しいテクノロジーの「開発→高付加価値化→普及→日用品化」のサイクルは、今後も15~20年おきに出現するものと思われます(もしかすると、AIの能力が人智を超えた場合、こうしたサイクルや、これまでの人間世界での常識は大きく変貌するのかもしれませんが)。
パチンコ、消費者金融
各種規制、規格変更によって生じるサイクルのようなものもあります。
たとえばパチスロなどは典型的でしょう。パチスロ機は検定を通過しないと遊技場に設置できないのですが、射幸性の強い機種が出てくると、ギャンブル依存症の社会問題などが顕在化することに対応が求められ、規制を強めて射幸性を下げるといった流れがあります。
それによって人気が低下し、パチンコ業界全体に不況風が吹き始めます。不振の時代が続くと、そうこうするうちに何らか正当性のある理由が出てきて、単純に規制が緩まるというわけではないですが、結果的に新しいゲーム性が提案されることで顧客支持が高まり、業界全体の業績が上向くということを繰り返しています。
■パチスロブームの浮沈
たとえば2005、2006年あたりは、パチスロ4号機がブームになってパチスロ専門店が街中に増えましたが、ギャンブル依存症の人が増えたとか、遊技場の駐車場の車内に子供を乗せたまま遊んでしまう親が増えたとか、さまざまな社会問題が起こりました。
その結果、短時間の出玉制限やボーナスのストック機能を禁止にするなど、規制を強化したため、多くのパチスロ専門店が撤退しました。4号機は2007年に完全撤去され、その代わりに、規制強化を反映した5号機が出てきたのです。
しかし、5号機によってパチスロ業界は苦境に追い込まれたのも事実で、業界そのものが大きく縮小していくなか、5号機の登場から10年を経て、2018年2月から6号機が登場しました。ここから徐々にゲーム性の解釈の多様化が進み、現在、遊技場に設置されている6.5号機は、メダルレスで時間あたりの出玉数が拡大したスマートパチスロも登場し、人気を博しています。結果、パチスロ関連企業の株価も大きく上昇しました。
■「むじんくん」で業界が一変
消費者金融業も、法律や規制を背景に、同様のサイクルがあります。上限金利の引き下げ、事業参入への要件が厳格化するなど、法律や規制の引き締めというのが基本的なものですが、事業環境が激変することで淘汰(とうた)が一気に進み、「強い会社が伸びる」といった事例がありました。
例えば、コスト改善の観点から、業界初の「自動契約機」(アコムの「むじんくん」)が登場して、社会現象レベルのブームになったことがあります。その手軽さから利用者層が一気に広がり、新規の申し込みが急増。業界全体の構造が一気に変わり、高成長セクターになっていったという事例があります。
詳細は省きますが、2010年以降、「過払金返還」という業界全体の重しとなっていた業績悪化局面においては、この問題の影響低下を見据えて投資したこともあります。これは一定のパフォーマンスを上げることができました。
■規格変更によって生じるサイクル
5Gなど通信システム
他にも、規格変更によって生じるサイクルも考えられます。
たとえば通信関係の設備投資サイクルがそうです。3G、4G、5Gと来て、これからは6Gの時代が来るでしょう。このように通信システムの世代交代が行われると、それに伴って新たな設備投資が必要になります。
今後の展開はまだ見えていない部分もありますが、これまで10年ごとに世代交代が進んできたことからすれば、2030年代は6Gの時代が来ると考えられますし、光通信、光半導体の世界観では、宇宙・衛星通信なども含めて、現時点では想像できないようなサービスが普及し、関連企業の大躍進が実現しているのではないかと「妄想」しています。
■30、40年の長期チャートを活用する
自分自身で投資したい企業が見つかったら、まずはその企業の株価の長期チャートをチェックしてみて下さい。
過去30年、40年のチャートを見て、まずはその高値と安値を抽出し、それぞれの局面でどのような出来事があったのかをプロットしていきます。
たとえば半導体製造装置で世界的なシェアを持つ東京エレクトロンの過去40年くらいの株価チャートを見て、まさに今、高値をつけにいっているとしたら、過去、東京エレクトロンの株価が高値をつけた時の経済情勢が、今とどこが類似しているのか、あるいは東京エレクトロンと同じように株価が大きく上昇した企業はどこなのか、逆に悪かった企業はどこなのか、といったことを調べていくのです。
このように長期の株価の推移とともに、高値を付けたところ、安値をつけたところのそれぞれで、何が起きたのかを把握しておくと、前回と同じような動きをした時に、何が似ているのか、どこが違っているのかがイメージでき、マーケットの行方を判断するうえでの参考材料になります。
■成功の秘訣は、転換点に気づき、アクションを起こすこと
全く同じ動きにはならないにしても、参考材料が多ければ、転換した、あるいは転換しつつあるマーケット状況に気が付くことができるでしょう。事前にいろいろと考えを巡らし準備できていれば、転換点の早めの時点でアクションを起こせる幸運に恵まれるかもしれません。
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」などの言葉が想起されるところでしょう。
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元JPモルガン・アセット・マネジメント ファンドマネジャー
1969年生まれ。大阪大学経済学部卒業。93年日本生命保険に入社し、株式部、年金運用部、ニッセイアセットマネジメントで経験を重ねる。2005年JPモルガン・フレミング・アセット・マネジメント・ジャパン(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。同社の代表的な日本株アクティブファンド「JPMザ・ジャパン」の運用担当者を、06~23年3月末まで務めた。23年8月からPolymer Capital Japanで日本株アクティブファンドの運用に携わる。著書に『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネージャーが明かす逆転の思考法』(PHP研究所)がある。
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(元JPモルガン・アセット・マネジメント ファンドマネジャー 中山 大輔)
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