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「受け身の患者は死に、うるさい患者は生き残る」ステージ4のがん再発後3カ月で寛解した30代女性がしたこと

プレジデントオンライン / 2023年10月14日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vadimguzhva

全米で23万部のベストセラー本を著したがん研究者ケリー・ターナー氏は、がんが劇的に寛解した1500以上の症例を分析。世界中の数百人ものがんサバイバーたちにインタビューした結果、奇跡的な回復を遂げた患者たちには、ある共通点があることがわかった。そのうちの一つが、「自分自身で治療をコントロールすること」だった――。

※本稿は、ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■同じ種類のがんでも治療法は人によって違う

天然痘を治すようにがんを「治す」ことは、まだできません。それは、がんがあまりにも個人差が大きいからでしょう。たとえば、乳がんの女性が2人いたら、同じ種類のがんに思われるかもしれませんが、分子レベルではまったく違う病気であり、治療法もまったく異なるでしょう。

がんの分子的性質の違いに加え、この2人の女性は、根本的な遺伝子プロファイルや免疫システムが異なり、環境やライフスタイル、心理的要因など、生涯にわたって異なる発がん因子にさらされてきたはずです。したがって、この2人のがん患者が根本的に異なる治療法を必要としたとしても驚くべきことではありません。

これが、がんの「治療法」が見つからない理由の一つであり、また劇的寛解者が複数の治癒戦略を必要とする理由の一つです。そして、こうした治療法を研究し、実行するためには、劇的寛解者たちが自分の健康に関して力を引き出す(エンパワーする)必要があります。

私は前著『がんが自然に治る生き方』の中で、この治癒要因を「自分の健康をコントロールすること」と呼びました。しかし、この研究が進むにつれて、私が対話した劇的寛解者たちは、この呼び方を微調整してくれました。

がんや人生全般を完全にコントロールすることは不可能なので、この治癒要因をより正確に表現するなら、「自分自身に力を与える(エンパワーすること)」だと私は学びました。寛解した人たちは、次のような特徴を強化することで、自分自身に力を与えています。

・自分の健康に対して積極的(受動的ではなく)になる
・自分の生活に(ときには思い切った)変化を起こそうとする意欲がある
・友人や家族、医師からの抵抗に対処する能力

■「受け身の患者は死ぬ。うるさい患者は生き残る」

自分の健康をビジネスとして考えて、自分がその会社のCEO(最高経営責任者)だと想像してみてください。あなたはビジネスのあらゆる部分がどのように機能しているかを理解し、優秀で信頼できる従業員からなるチームに囲まれたいと思うでしょう。質問をしたり、思い込みに異議を唱えたり、選択肢を調べたり、セカンドオピニオンやサードオピニオンを求めたりして、チームの優秀な医療専門家と協力しながら、治癒戦略の次のステップを決定したいものです。

優れたCEOであれば、ときには事業戦略を変更することも厭(いと)わないはずです。劇的寛解の生存者たちは、たとえ時間がかかったり、感情的に困難な場合でも、つねに自分の生活を分析し、変化を起こそうとします。

がんを魔法のように治す即効性のある薬や手術はないため、彼らはその代わりに身体・心・精神のシステム全体を癒やすために時間と感情的な資源を投資しています。これには、パーソナルケア用品や掃除用具を取り替えたり、食生活を見直したり、ストレスの多い仕事を辞めたり、新しい家に引っ越したりすることが含まれます。

最後に、劇的寛解を経験した人たちは、正確な手順に従わないと治療を拒否する医師や、自分の選択を怖がる恋人、自分の決断を受け入れようとしない友人など、周囲の多くの善意の人たちからの批判や抵抗に対処するための強い気骨が必要であると報告しています。上流に向かって泳ぐことは、とくに命の危険を感じるときには困難なことですが、劇的寛解者はみな、この決意が生き延びるための鍵であることを知っています。

率直に言えば、劇的寛解者たちは、“悪い患者”というレッテルを貼られることを恐れていません。寛解者であるジェーン・マクレランドは、「受け身の患者は死ぬ。うるさい患者は生き残る」と表現しています。

■ステージ4のがん再発からわずか3カ月で寛解に

1994年、30歳の若さでステージ3の子宮頸がんと診断されたジェーン・マクレランドが「うるさい」患者になるまでには、5年の歳月が必要でした。彼女は医師が勧める広汎子宮全摘出術に従いましたが、それは生殖能力の喪失を意味しました。

最初はあまりに落ち込んでいたため、従来の治療法以外に目を向けることができず、医療チームが積極的にがんを攻撃するがままに任せて、当時、最善策と考えられていた手術や放射線、化学療法という従来の治療計画に従いました。

理学療法士だったジェーンは自然と、さらなる治癒を求めるようになります。その2年後の1996年、母親が乳がんで亡くなったとき、ジェーンは従来のケアでは十分でないことに気づきました。そして、自らの手で問題を解決することにしたのです。

自分自身を実験台にして、食事や運動、サプリメントなどの治癒の要素を、本来の目的以外に薬を使用すること(いわゆる「適応外使用」)も含めて調べはじめました。彼女は食事や運動、サプリメント、ビタミンCの点滴、紫外線照射(少量の血液を紫外線にさらし、身体の免疫反応を高めて感染症を防ぐ方法)を慎重に続けた5年間、幸いにも寛解状態を維持することができました。

しかし、残念ながら、1999年末にジェーンの子宮頸がんは再発し、今度は肺に転移したためステージ4に分類されました。このステージでの生存期間は通常、数週間であり、ジェーンは末期であることを告げられました。

ジェーンは再び手術と化学療法という従来の治療法に加え、補完療法を積極的に取り入れます。彼女は、アスピリンを抗炎症剤とCOX-2/VEGF阻害剤(注:COX-2とVEGFは腫瘍周辺の血液の成長を促進する酵素)として使用するなど、新しい適応外薬をサプリメント療法に追加。さらに、ベルベリンを使用して血糖値(炭水化物に含まれる単糖)を下げ、健康的な脂肪代謝を促進し、腸の感染症を撃退しました。

驚くべきことに、ステージ4の再発からわずか3カ月後の2000年はじめに、ジェーンは寛解状態に戻っていたのです。ところがその3年後、ジェーンは末期の白血病と診断されます。これは、強い放射線と化学療法を受けた副作用の可能性がありました。まだ39歳だったジェーンはショックで、ひどく落ち込みます。

病院の窓から外を見ている患者
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

■自分自身で治療をコントロールする

このときジェーンは、医療業界が適応外薬を軽視してチャンスを逃していると確信しました。さらに彼女は、化学療法を受けるようにという忠告を無視し、代わりに信頼できる統合医療の医師と協力して、独自の適応外薬の「カクテル」をつくりました。

このカクテルには、従来の医寮では長い間忘れられていた薬や、がんの治療以外の目的で使われていた薬(通常は高コレステロールの治療に使われるロバスタチンや、糖尿病のコントロールに使われるメトホルミンなど)が含まれていたのです。

医療業界で働いていたことがあったジェーンは、新薬の特許取得にばかり気をとられ、医師が「がんを飢えさせる」のに役立つ古い(しかも安価な)薬の可能性を見落としていると考えたのです。自分自身で治療をコントロールするときが来たのです。

「私は、多くの患者が死ぬのは、がん専門医に対する礼儀正しさと、愛する人を動揺させることへの恐れからだと理解するようになりました。しかし、私はすでに統合医療の医師と補完的な治療法を見つけ出していました。

また、私は知識によって自信を得ました。私はどっちつかずの状態で待っていたのではありません。もっとできることがたくさんあったのです。

がんの治療がますます困難になることを知りながら、ただ斧が振り下ろされるのを待つのではなく、積極的に行動し、コントロールすることが大切だと思ったのです。そう、私は頑固になるつもりでした」

ジェーンのたゆまぬ探究心は、3度目の寛解をもたらしましたが、これも長くは続きませんでした。いつも非常に厳格だった食事療法とサプリメント療法を「挫折した」翌年、再び腫瘍マーカーのレベルが急激に上がったのです。

彼女は適応外薬とがん撲滅サプリメントのカクテルを飲むのを再開し、今回は3カ月以上服用しました。今でも時々、「静かなパニック」になった際には薬を服用しています。

うれしいことに、ジェーンの寛解は15年以上続いています。2004年以来、病気の兆候もありません。現在、彼女は世界中のがん患者に、適応外薬の使用や自然なアプローチでがん細胞を飢餓状態にする方法について教えながら、自身の治癒の旅を詳細に描いたベストセラー本『How to Starve Cancer』を執筆しました。

■診断は信じるが予後は信じない

私の前著『がんが自然に治る生き方』が出版されて以来、ジェーンを含む多くの劇的寛解者が、最初に診断を聞いたときに感じた強い恐怖について述べています。それはしばしば、「とにかく早くがんを取り除きたい」という切実な願いです。医師は患者に治療に関する迅速な決定を急(せ)かすことで、この恐怖をなんの気なしに増大させてしまうのです。

劇的寛解者はこのようなパニックと即断即決のプレッシャーを感じつつ、たとえ数日でも考える時間を医師に求めるだけの力があるとも感じています。劇的寛解者は、この重要な時間を利用して、第二、第三の医師の意見を求めたり、補完代替療法について調べたり、治療の最初のステップを決定するのに十分な情報を得ることができるのです。

劇的寛解者が陥りがちなもう一つの心理的変化は、「診断は信じるが予後は信じない」というものです。彼らはがんの統計が正確であると信じてはいますが、悲惨な統計は信じようとしません。とくに、その統計が多様な病気に対処するための多角的な戦略ではなく、がんを治すための一つの方法しか試していない人たちのものである場合には、なおさらです。

従来の治療法以外の選択肢を広げるために、多くの劇的寛解者はインターネットで調べることからはじめますが、これは恵みでもあり、災いでもあります。

いい面としては、インターネットによって患者は膨大な医療や健康情報を利用できるようになり、医師だけに頼る必要がなくなりました。長期の劇的寛解者の多くは、二十数年前には図書館に行って一冊ずつ調べなければならなかった時代を覚えているでしょう。今ではあらゆる百科事典や医学雑誌の情報が指先一つで手に入り、利用できるようになりました。

劇的寛解者にとって絶対に必要なオンラインリソースの一つがPubMed.govです。アメリカ政府は、世界中でおこなわれたほぼすべての医学研究を、この包括的なウェブサイト(税金で賄われています)に掲載しています。

このサイトでは、がんの種類や治療法ごとに最新の研究を調べることができます。たとえば、「乳がん」や「鍼灸(しんきゅう)治療とがん」と検索すると、1970年代以降におこなわれた科学的研究に瞬時にアクセスできます。自分の知識を増やすと同時に、医師から相手にされる確率を上げるチャンスでもあるのです。

■がん治療に「いい/悪い」はない

近年、がんに対する身体・心・精神のアプローチについて、オンラインで教える提唱者が急増しています。私たちのデータベースであるRadicalRemission.comや、クリス・カー、アニタ・ムアジャーニ、クリス・ウォークといった劇的寛解者たちのオンライン・プラットフォームやソーシャルメディア・グループを含め、世界中の人たちが自身の治癒体験や方法をオンラインで共有しているのです。オンライン・サミットやウェビナーの人気は急上昇し、その視聴回数は数百万回に上ります。

こうしたテクノロジーの進歩により、従来の医療や統合医療、代替医療といった各分野の専門家による最新の研究や理論に安価にアクセスできるようになったため、がん患者にとっては重要な情報源となっています。これは、私たちラディカル・リミッション・プロジェクトにとって喜ばしいことです。

最近のある研究では、テクノロジーによって、患者は自分の健康に対してより積極的になることができると示されています。インターネットのおかげでがん患者が健康に対するさまざまなアプローチ、とくにがん専門医が訓練を受けておらず、知らない可能性のある統合医療や補完医療などのアプローチについて、容易に学べるようになったのは間違いありません。

統合的がん治療を専門とする自然療法医のマーク・ブリッカ医師は、統合的がん治療のパイオニアであるドワイト・マッキー医学博士の下で研修を受けました。統合的がん治療に対する需要が非常に高まっているため、現在新しい患者を受け入れることはめったにありません。

ブリッカ博士は、このような患者の意欲の高まりや、還元主義的な健康観(身体を相互に関連した全体として扱うように訓練された医師ではなく、身体の一つの専門分野や部位のみを扱う訓練を受けた医師)からの脱却が進んでいることに勇気づけられる一方で、懸念すべき傾向についても指摘しています。

「インターネットが普及し、多くの情報が手に入るようになったことで、医療を選択する際に十分な情報を持っている人たちが増えました。しかし、残念ながら多くの人は、がん治療に対して従来の治療法と代替療法との間に白黒をつけ、『いい/悪い』を区別しているように見受けられます。本来は、がん治療に『いい』『悪い』はなく、それぞれの人が置かれた状況に応じて、多かれ少なかれ助けとなる治療法があるにすぎないのに、これは残念なことです」

ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)
ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)

劇的寛解を経験した人たちは、従来の治療法と代替療法の両方について、混乱させたり、ときには矛盾したインターネットの情報をかき分けていくことが、いかに困難であるかを知っています。劇的寛解者の多くは、まるで「がん入門講座」から「がん大学院」へ、がんの短期集中コースを受講させられたように感じたと言います。

こうした気が遠くなるような気持ちをやわらげるのに役立つのは、治療チームの専門家の数を増やすことです。劇的寛解者にとっては、従来の医師は治療チームの一員にすぎず、唯一のメンバーではありません。なぜなら従来の医師は、人全体を見るのではなく、還元主義的な方法で病気を治療するように訓練されているからです。

そのため、劇的寛解を経験した人たちは、心理療法士や自然療法士、漢方医、整体師などの専門家や治癒へ導く助言者たちを自分の治療チームに加えることがよくあります。

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ケリー・ターナー(けりー・たーなー)
がん研究者
腫瘍内科学領域の研究者。ハーバード大学で学士号、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。過去15 年にわたり10 カ国で研究をおこない、1500以上の劇的寛解の症例を分析してきた。著書『Radical Remission』はニューヨーク・タイムズ紙でベストセラーとなり、現在22 カ国語に翻訳されている。RadicalRemission.com のRadical Remission Project の創設者であり、患者やその愛する人のために、コースやワークショップ、治癒の物語の無料データベースを提供している。また、劇的寛解に関する科学的研究を促進することを使命とする非営利団体、ラディカル・リミッション財団の創設者でもある。

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(がん研究者 ケリー・ターナー)

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