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「日本の子どもは世界でいちばん礼儀正しい」イギリス育ちの息子が日本の小学校に入学して大感動したワケ

プレジデントオンライン / 2023年12月15日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

日本の学校は、海外と比べてどんな特徴があるのか。イギリス在住で著述家の谷本真由美さんは「日本の子どもは社会性や協調性が優れているから、小学生でも動物を飼育したり、給食当番や掃除をしたりできる。イギリスの子どもとは大違いだ」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない5』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

■「日本の学校に行くこと」が夢だった

この夏、我が家の息子「みにろま君」は私の実家となる地元の公立小学校に体験入学させていただきました。なお、私が普段「X」などでは「めいろま」と名乗っているので、ここでは息子のことを「みにろま君」と呼びます。

みにろま君は3年以上も日本の学校における生活の動画やアニメを毎日毎日見続けてきたのです。彼は日本の学校に行くことが夢でした。

アニメや動画で学校独自のワード、たとえば「センパイ」「キリツ、レイ」などを独自に学び、靴を脱ぐ作法、授業のシステム、運動会、文化祭などを熱心に研究してきました。彼は小学校1年生からヨーロッパの配信サイトで放映されている日本のアニメを勝手に探しては観てきました。

「侵略!イカ娘」「とらドラ!」「干物妹!うまるちゃん」などのラノベ系が多いので、日本の学校に大いなるあこがれを抱いてきたのです。すべてがイギリスやヨーロッパ大陸と違い、子どもたちの楽しそうな様子、ほんわかとした雰囲気、男女のキャラの気を遣った関係など、英語圏とはまったく違うユーモアに大変な興味を抱いてきました。

■子どもの好き嫌いがひどいイギリスの先生

そして実際に日本へ出かけてみたら予想より何倍もすばらしかったそうなのです。

まず、先生方がイギリスとまったく違うようです。イギリスの先生らはごく一部を除きビジネスライクで、お金のためにやっている人もおり、子どもの好き嫌いがひどく、親身になる感じではない人も少なくないようです。

自分の担当以外の仕事は一切しないし、時間になればさっと帰ってしまいます。嫌いな子どもには話しかけないし、怒るときは小学生に対しても軍隊口調で怒鳴りつけます。

■教室がゲロで汚れても、業者が来るまで放置

ところが日本の先生方は子どもたちをまるで家族や親戚のように扱ってくれて、心底温かい対応をしてくださったというのです。暑さで具合が悪くなってゲロをはいてしまったときは、先生が自ら掃除をしてくれたそうです。これはイギリスではありえないことです。掃除はすべて外注の業者がやるからです。

とはいえ業者の人がいつもいるわけではないので、そういう教室は閉鎖され、ひどい場合は3日間も放置されるようです。一方、日本の学校では先生が5分も経たずに片づけてしまい、子どもたちはとても親切に手伝ってくれたというのです。

そしてまた彼は日本の学友らの気遣いに驚いたそうです。

同級生の皆さんはたいへん親切で、新参者で単なる訪問者にすぎない自分に気を配り、挨拶を欠かさず、みんな仲良く遊び、ゴミは処分場まで持っていって捨て、給食当番や掃除も規律正しくされていたとのことでした。

■「新参者」とも友だちになってくれる優しさ

小学1年生でもこんな大人のような振る舞いができることに、みにろま君は大変な衝撃を受けたそうです。さらに登下校時にも同級生が気を遣い、「いっしょに帰ろうよ」と声をかけてくれ、下駄箱の場所やさまざまな物の使い方を教えてくれます。

ランドセルを背負う子どもたちのイメージ
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

こうして一生懸命、日本語と英語混じりでコミュニケーションをとってくれたというのです。また初日から友だちができたことにも感動していました。

イギリスの学校では新参者は警戒され、友だちは何カ月もできず、持ち物が古いとか髪型のことなどを揶揄するのが当たり前で、とても意地悪な子どもがいるのです。

しかもクラス内では人種や親の職業で派閥ができてしまっており、○○ちゃんを誕生会に招いた招かないでいじめが横行しています。暴力的ないじめもあります。

でも日本で通った小学校はごくふつうの学校なのに、そんな厳しい現実とは無縁だったのです。みにろま君がお客さんだったからというわけでもなく、そのクラスの子たちは普段から仲が良く、みんなで親切にし合っていて全体が友だちのような雰囲気らしいのです。

■裕福な子ほど、ゴミや食べ物を投げ捨てる

さらに、みにろま君が驚いていたのが、生徒たちは「カナヘビ」というトカゲを飼育し、虫かごに入れて「かわいいね」といいながら撫でたりして大事にしていたことです。

イギリスの学校では小動物や爬虫(はちゅう)類を飼うことはありません。虫や爬虫類を発見すると、踏み潰して殺したり、いたぶって遊んだりする子どもが多くいます。小さなものを大事にする感性のある子どもは少なく、自然にもあまり興味を抱いていません。

それでも、みにろま君が住んでいるところは自然がかなり豊かで、日本の郊外に比べても田舎なのです。学校も理科には力を入れているのですが、子どもたちには自然を大切にする感性が欠けています。

イギリスの子どもらは裕福な家の子でも、ゴミを床や道に投げ捨て、並ぶべきところできちんと並ばず、人を押しのけ、私語だらけで大騒ぎし、気をまったく遣わず、意地悪をし、トイレや劇場を汚しまくり、食べ物を床に投げて足で踏み潰し、カーペットになすりつける。こうして大人の使用人に掃除させるからです。また学校では備品を投げつけたり壊したりするのを堂々とやります。

散らかったごみのイメージ
写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liudmila Chernetska

■日本の子どもは世界でもっとも礼儀正しい

さらに授業参観ですらイギリスの子どもらは親の前で学用品や学校の教材を投げつけまくって遊び騒ぎ、ケーキを手づかみで食べ、ほかの子どもからも奪っていました。

この調子が「標準」どころか、これは進学校で裕福な階層なのです。貧しい地区とか貧困な階層はもっとひどいのです。

学校のプールでの放尿、トイレから糞を持ってきて手洗い場にぶちまけ塗りたくった子どもたちもいました。それは知的障害がある子どもではなく、親が教員で豊かな家の子どもです。大人の「使用人」が片づけるのを知っているからわざとやるのです。

だから日本の公立校に通うごく普通の小学生がイギリスの小学校に転校した場合、おそらくほぼ100%の確率でその子どもは礼儀や行動評価で全学年のトップどころか、国のトップレベルになってしまうでしょう。

■テストでは測れない非認知能力が発達している

この日本の子どもたちはレベルが高いわけではなく、私の実家である田園地帯の子たちで、この街はそれほど裕福ではありません。日本の子どもらは全体的に礼儀や共感性がしっかりしており、小さな子でも非認知能力が恐ろしく発達しているのです。

非認知能力とは「社会情緒」に関する能力のことで、感情の動きをつかさどる働きをします。それは「社会性」「協調性」「忍耐力」「意欲」「自己肯定感」「予測力」「共感性」などで構成されます。もっと具体的にいうと以下のようなことです。

◇同級生の体調を気遣う
◇相手の都合を考えて予定を調整する
◇お客さまのニーズを察知する
◇グループ活動をやり目的を達成する
◇ものごとをやり遂げる
◇周りの人と上手にコミュニケーションをとる

なお記憶力や学力テストで数値化できる能力は「認知能力」であり、算数や国語など試験の成績に当たります。

■日本の「普通」は決して普通ではない

近年における英米の脳科学や発達心理学の研究でも非認知能力は認知能力よりも大人になってからの成功、さらにはその社会やコミュニティの発展に影響が大きいとされています。そして教育でも情緒や社会性を高める科目と活動が重視されているのです。

谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない5』(ワニブックスPLUS新書)
谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない5』(ワニブックス【PLUS】新書)

中国でも算数や国語ばかりで試験漬けの子どもらの問題行動が目立つので、最近では野外活動やダンス、演劇など芸術活動に力を入れて、子どもの社会性や情緒を伸ばそうという傾向が高まっています。

ところが、みにろま君が遭遇した学友や街で出会う日本の子どもたちは、かなり高いレベルで成熟した非認知能力を身につけています。私が学校へ迎えにいっても、小学1年生が私にきちんと挨拶をしたり、たいへん丁寧に世間話をしたり、さらには下駄箱に靴をきちんとしまうのです。

私が待ち時間のときに観察していたところ、遠足から帰ってきた5年生はバスから下車して点呼が終わるまで10分かかりませんでした。統制がまったくないイギリスやフランス、アメリカの子どもなら同じ行動に40分ほど要するはずです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)
著述家、元国連職員
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

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(著述家、元国連職員 谷本 真由美)

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