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偏差値71の灘中出題「漢字しりとり」が話題…大人も解けない難問をスイスイ攻略する子の親が実践する家庭教育

プレジデントオンライン / 2024年1月23日 14時15分

撮影=プレジデントオンライン編集部

2月1日からスタートする2024年度の東京・神奈川の中学入試よりひと足先に関西圏で本番の入試に突入した。中学受験塾を主宰する矢野耕平さんは超難関として知られる灘中の国語の知識問題「漢字しりとり」に着目。そこには、「学校側が受験生やその家庭に求めるものが端的に表れている」という。果たして読者の皆さんは正解できるだろうか――。

■偏差値71の灘中の「漢字しりとり」に挑戦!

2024年1月13日に灘中学校の入試(1日目)が実施された。1日目の国語入試問題では、読解問題に加えて、かなり「クセのすごい」言語知識問題が毎年のように出題されている。そのうちの1つ、「漢字しりとり」問題を今回は取り上げよう。同中の偏差値は東京の開成の72に次ぐ71(日能研)で、関西では断トツの難関であり、大人であっても、すぐに正解に辿り着くのは至難の業かもしれない。

[2024年度灘中学校(1日目)国語 大問6より]

次の〔例〕とI~IIIの漢字しりとりは、1~4の〔条件〕を満たしています。これについて、後の問いに答えなさい。

〔例〕漢(A)―(A)作―作(B)―(B)景―景(C)―(C)議

I 法(A)―(A)注―注(B)―(B)角―角(C)―(C)胸

II 街(A)―(A)明―明白―白(B)―(B)力―力(C)―(C)破

III 母(A)―(A)得―得(B)―(B)情―情実―実(C)―(C)師

〔条件1〕それぞれのA・B・Cの漢字を適切な順序で並べると、三字熟語になります。
〔条件2〕どの漢字も、すべて音読みです。
〔条件3〕どの漢字も、読み方は毎回同じとは限りません。
〔条件4〕三字熟語は、次のア~オのいずれかの意味です。

ア 季節の感じをよく表している事物。
イ 影絵が映し出される器具で、「思い出が次々と心の中に現れる」時のたとえとして用いられる言葉。
ウ 自分の考えの中に入れないでおくこと。
エ だしぬけに行動に出るさま。
オ 武道やスポーツで重んじられる三つの要素をならべたもの。

問1 I~IIIの(A)~(C)に入る漢字をそれぞれ答えなさい。
※〔例〕では、A「詩」・B「風」・C「物」。

問2 I~IIIの(A)~(C)に入る漢字を並べかえて、三字熟語をそれぞれ答えなさい。
※〔例〕では、「風物詩」。

問3 問2で答えた三字熟語の意味として、最も適当なものをそれぞれ〔条件4〕のイ~オから選び、記号で答えなさい。
※〔例〕で答えた「風物詩」の意味は「ア」。

「中学入試の問題って小学生が解く問題だろ」と甘く見た人は、ひょっとしたらその難しさに驚くかもしれない。同中の1日目の国語は80点満点であり、この「漢字しりとり」は解答欄1つを1点と数えると15点もある。

関西圏を中心に指導する塾講師によると、2~3年前までは灘の1日目の国語はいま以上に難解な知識問題が多く、さほど得点できなくても問題はなかったらしいが、最近はこれらの問題を取りこぼさないことが肝要だという。不正解となると即、合否に直結する可能性が出てくるのだ。

■わかりやすい〔条件〕から取り組もう

わたしの考える本問題を対処するポイントは〔条件4〕の選択肢(イ~オ)を先に見て、それに相当する三字熟語を思い浮かべることだ。イとオであればすぐに思い浮かべられたという人が多いかもしれない。

イは、今際(いまわ)の際(きわ)に頭の中でこの現象が生じるという話がある。そう、「走馬灯」である。

オはさほど難しくないだろう。同じような要素の漢字を三つ並べた熟語である。たとえば、「雪月花」、「松竹梅」などはこれと同じ構成(それぞれの漢字が独立している構成)である。これは「心技体」となる。

ここまで出来れば、「走馬灯」がIIの、「心技体」がIIIの空欄(A)~(C)に入ることが分かるだろう。

さて、残ったIは「漢字しりとり」に愚直に取り組むのが一番の近道かもしれない。特に「角(C)―(C)胸」については、「角」から始まる二字熟語がかなり限られていることに着目したい。これは、「角度―度胸」になる。そうすると、ウかエは「度」を含む三字熟語であることが分かる。これはウに相当する「度外視」となる。なお、正解を導く上では関係ないが、エの意味を持つ三字熟語は「短兵急」である。

灘中学校・灘高等学校ウェブサイトキャプチャ
灘中学校・灘高等学校ウェブサイトより

■中学入試の「言語知識問題」は語彙の多寡を問う

試しにわたしの手元にある中高生用の国語便覧の「三字熟語」の欄をチェックすると、「風物詩」「度外視」「走馬灯」「心技体」のどれも掲載されていない。そういうレベルなのだ。

例年の灘の過去問には同じような、いやこれ以上にレベルの高い語彙(ごい)についての問題が出題されている。例えば、季語と季節についての知識を試すもの、慣用句やことわざをさまざまな角度から問うもの、動作や様子を示す難語、接尾語などの知識の有無を見る問題など、どれもクセが強い。その系譜にある今回の「漢字しりとり」は学校側にとっては標準レベルということなのだろう。

要するに、付け焼刃の対策は無意味ということである。それまでの生活の中で、子どもたちが身に付けてきた語彙の多寡を問うているのである。人間はことばで考えるゆえ、どれだけその受験生に深い思考力、洞察力が備わっているかを測るために、学校としてはこの手の知識問題の出来不出来でチェックしたいということだろう。

そして、この手の問題を出題するのは灘に限らない。東西問わず、中学入試の国語では大人であっても苦戦するような言語知識問題がてんこ盛りだ。

■難問の漢字知識問題をスイスイ解く子の親がしていること

では、いかに語彙のスキルを高めていけばいいのか。わたしは小学校低学年より、「ことば調べ」の習慣を付けてほしいと考えている。たとえば、小学校3年生のときに次の文を読んだとしよう。

(例文) 公園のベンチの下に捨てられた二匹の子猫が段ボールの中でふるえていて、わたしはいとおしい気持ちになった。

「いとおしい」ということばが理解できなかったとしよう。わたしは次の3つのステップで取り組むことをすすめている。

ステップ1 前後のコンテクスト(文脈)から「いとおしい」の意味を推測して書き出す。
ステップ2 実際に辞書を引いて、ステップ1で推測した意味との「ズレ」を確かめる。
ステップ3 「いとおしい」を含んだ例文を自作する。

ポイントはすぐに辞書に頼らない点である。辞書を引いてそれだけで分かった気になってしまうのを避けるためである。また、自らが予測した意味と照らし合わせることで、「正しい意味」がより印象に残りやすい。そして、実際に知らなかったその表現を用いて自分で例文を作成するというアウトプットは大変に重要な作業である。語彙レベルの高い子どもたちは「聞き上手」であるとともに、「話し上手」でもある。言い換えれば、語彙獲得のためにはインプットとアウトプット双方が求められるということだろう。

そして、文章の中に登場する知らないことばについて何でもかんでも調べようとすると、それだけで子どもたちは気が滅入ってしまうもの。そこで保護者の出番である。塾や学校などで読み解きをした文章を見て、1~3つくらいの「ことば」を指定するとよい。保護者も一緒になってこの3つのステップの「ことば調べ」をおこなうと、自然に会話が弾み、わが子の現時点での語彙レベルを把握できるだろう。

繰り返すが、中学入試の国語では、さまざまな角度で「言語知識問題」が出題され、子どもたちの語彙のレベルが試される。実際のところは配点が低いものの、落としてはいけない問題であり、得点できないのは厳しい。灘中に限らず、国数理社の合計の合格最低点にわずか1、2点で不合格というケースが多いので、この手の問題を軽視するのは実にもったいない。

親子でこれらの問題に挑み、悩み、答えを導き出すことで、わが子のことばに対するアンテナの強度を高めたい。

わたしが代表を務める塾ではさまざまな「難語」を用いた例文作成を学年やレベルに応じて実践している。これまでを振り返ると、例文作成が抜群に上手だった子どもたちが何名か思い浮かぶ。そうした子は桜蔭、女子学院、雙葉、聖光学院、武蔵、豊島岡女子学園、海城といった難関校に進学した。中学入試の読解問題の素材になる文章は大人向けのものばかりで、知識問題だけでなく、読解においても大人顔負けの語彙レベルが求められていて、それにしっかり対応できたということだろう。

矢野耕平『わが子に「ヤバい」と言わせない親の語彙力』(KADOKAWA)
矢野耕平『わが子に「ヤバい」と言わせない親の語彙力』(KADOKAWA)

なお、灘やこうした難関校の最近の漢字知識問題に関していえば、単純な暗記では太刀打ちできない性質のものが好まれるトレンドが見られる。よって、語彙力を直接的にトレーニングするような教材に取り組むよりも、ふだんから「はじめて知る」ことばに敏感になり、それを「使えることば」として自身の内に取り込むことが大切になる。

昨秋に刊行した拙著『わが子に「ヤバい」と言わせない親の語彙力』(KADOKAWA)では、私立中高一貫校で出題された「言語知識問題」を数多く盛り込み、親子で楽しみながら取り組めるようにしている。22年度の灘(1日目)の国語で出題された「敬語の誤用の指摘」を取り上げた。

問題の解説だけでなく、その言語テーマごとの学習ポイント、また、言語への興味の枝葉を広げられるようなコラムも掲載し、「親がいかにしてわが子の語彙レベルが向上するようにいかに導いていくか」というポイントも明示した。中学入試問題は「ことばの宝箱」と形容することもできる。親子で宝探しをして、新たなことばをたくさん獲得してほしい。その延長上に、志望校「合格」があるのだとわたしは考えている。

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矢野 耕平(やの・こうへい)
中学受験専門塾スタジオキャンパス代表
1973年生まれ。大手進学塾で十数年勤めた後にスタジオキャンパスを設立。東京・自由が丘と三田に校舎を展開。学童保育施設ABI-STAの特別顧問も務める。主な著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校vs.新名門校』』(SB新書)など。

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(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平)

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