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ビジネス雑談は「最初の一言」が9割…経営コンサルが「居酒屋、タクシー、美容室」で顧客を掴んだ"魔法の一言"

プレジデントオンライン / 2024年2月22日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

優秀な営業マンはどんな工夫をしているのか。経営コンサルタントの河田真誠さんは「まずは相手の悩みを引き出すといい。『悩みなんてなさそうですね?』と問いかければ、多くの人が『いやいや、悩みばかりだよ』と答えてくれる。そこから相手の課題と理想を聞き出せれば、ビジネスチャンスにつなげることができる」という――。(第2回)

※本稿は、河田真誠『売らずに売れる技術』(ワン・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■悩みを引き出すための“効果的な問いかけ”とは

話せる関係になったら、タイミングをみて、商談(あなたの仕事につながる話)もしていきましょう。ただ、このときも「よし売るぞ!」という気持ちにならないほうがいいです。まずは「相手を知る」ことが大切です。

まず、相手から聞き出したいのは、「今、どんな悩みや問題があるのか?」です。僕はこれを聞き出すために、「今、悩みなんてなさそうですね?」と問いかけることがあります。こう問いかけると、多くの人が「いやいや、悩みばかりだよ」と答えてくれるんですね。

そこで、「そうなんですね。具体的にどんな悩みがあるんですか?」と問いかけると、相手は自分の悩みを語ってくれます。相手は、問いかけられて語ることで、自分に「悩み(問題)」があることに気づいていくのです。

先日、ある社長と雑談をしていたときのことです。「◯◯さんは、最近、仕事がうまくいっていそうですよね。悩みなんてないでしょう?」と問いかけると、「いやいや、売り上げはいいんだけど、社員がね……。みんな業務に追われていて、疲れている感じがするし、未来のことを考える時間もないし、人間関係も少しギクシャクしている感じがあるんだよね。でも、売り上げがいいから、つい後回しになっちゃって……。今はいいけど、数年後が少し心配だな」と答えてくれました。

これで、彼は自分の中に「悩み(問題)」があったことに気づいたのです。

■「特に悩みはない」と言われたらどう返すべきか

他にも、「最近、僕の周りで◯◯で悩まれている人が多いのですが、◯◯さんはどうですか?」と問いかけることもあります。こう問いかけると、「たしかにそうだね。私も同じような悩みがあるな」と自分の中に悩みがあることに気づいてくれます。

その後、「それはどんな悩みなんですか?」と問いかけると、具体的に話してくれます。悩みではなくて「願望(夢)」の場合もあります。悩みと願望は、実はほぼ同じものです。それを、「悩み」と捉えるか、「願望」と捉えるかは、相手次第です。

たとえば、「やせたい」「モテたい」「いい仕事がしたい」「もっと収入を増やしたい」「遊びたい」など、これは悩みや問題でもあるし、願望や夢でもあると言えますよね。もし、「何か悩みがありますか?」と問いかけて「特にない」という反応のときは、「何か叶(かな)えたいことはありますか?」と問いかけると、答えが返ってくることがあります。

向かい合って話をするビジネスマン
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

■手段ではなく目的にアプローチする

悩み(問題)を相手から聞き出したら、次は「理想の姿」を話題にします。

先ほど紹介した「売り上げは上がっているけど、社員の人間関係に悩んでいる」と教えてくれた社長に、僕は、「そうなんですね。どうなったら最高ですか?」とさらに問いかけました。するとしばらく考え込んで、「強制的にでも時間を取って、みんなが思っていることや、感じていることを話し合う時間があるといいな」と話してくれました。

以前、洋服屋さんに行ったときのことです。店員さんが、「服を買って、どんな感じになったら嬉しいですか?」と聞いてくださったんですね。そこで僕は、「講師をしているので、お客様からは、発想が自由で、アイデアがたくさんあって、信頼できる人と思われたいんです。なので、服でそんな印象を与えられたら嬉しいです」と答えました。店員さんは「こうなりたい」という僕の目指す「理想の姿」を引き出してくれたんです。その後、一緒にそのイメージになるような服を選ぶことになりました。

「どうなったら最高ですか?」というのは言い換えると、「何のために?」です。以前、花屋さんで「なぜ、花を買おうと思ったんですか?」と聞かれて「元気が出るように」と答えたことがあったのですが、それも同じです。「理想の姿」を引き出してくれています。

このように、「自分にどんな悩みや問題があるのか」「どうなりたいと思っているのか(理想の姿)」を相手に問いかけ、自分の言葉で語ってもらうことで、現状が整理されて、解決したいという気持ちを引き出すことができます。

■「理想の姿」がイメージできれば商談につながる

社員が100名くらいの会社の社長と出会い、飲みに行ったときのことです。

「最近、これまでと同じやり方をしていたのでは売り上げが上がらないと悩んでいる経営者が多いみたいですね。◯◯さんのところはどうですか?」と問いかけると、社長は、「たしかに! うちも、営業も人材採用も、少し前はうまくいっていたんだけど、最近、反応が悪いんだよね。なんでなんだろうね? (悩みに気づく)」と答えてくれました。

そこで、僕が、「それって、どうなったらいいんでしょう?」と問いかけると、社長は、「今の時代に合ったやり方が必要なんだろうね。私は古い人間だから、若い社員が中心になって、会社を盛り上げてくれるといいのにな(理想の姿に気づく)」と答えてくれました。この会話の中で、この社長は、「我が社のこれまでのやり方は通用しないという悩みがあること」と「それを若い社員が中心になって解決してほしいと思っていること(理想の姿)」に気づいたんですね。

この話をお聞きした後日、僕が、「先日の社長の悩みなんですが、僕、解決できると思うんです。興味あります?」と話したところから、この会社にも研修に行くことになったのです。居酒屋での何気ない会話が商談になっていくのです。

■なにげない雑談から仕事につながる場合も

数年前、出張先でタクシーに乗ったときのことです。

運転手さんに地元のおいしい料理を聞いたりして、会話が盛り上がりました。そうしていると、運転手さんに「何のお仕事をされているんですか?」と聞かれたので、「僕はコンサルなんです。最近、企業でベテラン層と若手層の価値観が合わなくて、ベテランの人が若い人に言いたいことも言えない……みたいなことがあるんですよ。そんなことを解決するような仕事なんです。運転手さんも、若い人とどう付き合えばいいんだろうと悩むことがありますか?」そう問いかけてみたんですね。

すると、そこからずっと、若手社員の不満を話してくれました(笑)。そのときは時間もなくて、この話だけで終わったのですが、僕はこの運転手さんとまたお会いしたいなと思ったので、「今日の夕方、また駅までタクシーで行きたいので、17時くらいに来てくれませんか?」とお願いしたんです。そして、帰り道の途中でも、いろいろな話をお聞きして、すっかり打ち解けたんですね(ここのコツは「聞く」と「問う」)。

最後に僕が、「今日、泊まりなので、この後、一緒に飲みに行きましょうよ!」と、お誘いしたことで、そのまま一緒に飲みに行くことになったのです。そうしたら、なんと、その飲みの席に、「面白い仕事をしている人がいるって話したら、会いたいって言うから……」と、自分の会社の社長を連れてきてくださったんです。そのご縁で、今もその会社に毎月、研修に伺っています。

夜の街を走るタクシー
写真=iStock.com/mbbirdy
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mbbirdy

■会話の流れを「得意な分野」に持っていく

僕が、歯科医院、美容院、居酒屋チェーン、整体院などにコンサルティングや研修にお伺いしているのも、雑談の中で、相手の悩みや問題などを引き出しているからなのです。

みんな、僕に問いかけられることで、自分の悩みや問題を自分で話してくれます。そこで僕から「その問題を解決するのが、僕の仕事なんですよ」と言われると「お! ちょうどいいところに、ちょうどいい人がいた」となり、自然と商談になっていくのです。

「雑談をすればいい」と言っても、この雑談が「売れる」につながっていかないと意味がないものになってしまいます。たとえば僕の場合、「売り上げが上がらない」「上司と部下の関係が良くない」「会議が盛り上がらない」などは、得意なテーマです。しかし、お金、法律、契約、マナー、マニュアル作成、労務管理などのテーマは苦手なので、話せなくなってしまいます。

そこで僕は、相手との話題を、自分が得意な分野にもっていくようにしています。方法は簡単で、問題を聞き出すときに「他にありますか?」と話題を広げて、自分が得意なテーマになるまで、答えを引き出していくのです。ここまでの話題の下地もあるので、1、2回「他にありますか?」と問いかけると、自分のテーマに沿った問題を聞き出すことができます。

そうなったら、その話題を取り上げて、「現状の整理」に移っていくと自然に話題を絞っていけますね。

会話をする二人のシルエット
写真=iStock.com/PrathanChorruangsak
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PrathanChorruangsak

■売るべきタイミングを見極めることができる

また、前述したように「最近、僕の周りで◯◯で悩んでいる人が多いのですが、あなたはどうですか?」といった問いかけをすれば、その話題にしかならないので、簡単に自分の望むテーマの話ができます。

もし、この段階で、自分が得意なテーマ(問題)が出てこないときには、目の前にいる人は、今はまだお客様になるタイミングではないのかもしれません。その場合は無理して売ろうとしても売れませんし、相手が話したいことを聞く時間にするといいですね。

問いかけをしても「悩んでいることも、叶えたいと思っていることもない」と言われることがあるかもしれません。それは、「本当に悩んでいることや叶えたいことがない」のではないのです。本当はあるのです。

■自分から心を開かなければ距離は縮まらない

では、なぜ、「ない」と答えるのか。

それは、まだ、あなたとの信頼関係ができていないからではないかと思います。たしかに、質問されると考えないといけないから面倒くさい、そして自分に関する情報を話すのは嫌だなという気持ちも分かりますよね。そこで大切なことは、「質問されるのは楽しい!」「あなたと話すと楽しい!」と思ってもらうことです。

河田真誠『売らずに売れる技術』(ワン・パブリッシング)
河田真誠『売らずに売れる技術』(ワン・パブリッシング)

そのためには、まずはどんな話も「いいね!」と聞くことが大切になります。「いいね!」と聞いてもらえると人は嬉しくなるので、相手も「もっとあなたに話したい!」という気持ちが大きくなります。また、悩みを打ち明けるのにふさわしい人だと思ってもらうことも大切です。

「答えたくない」となる原因は、「あなたに話しても意味がない」と思われているからです。そうならないためには、どんな仕事をしているのかを自己紹介でお伝えしておくと、「この人は悩みを解決してくれるかも」という期待から話してもらえるようになります。こちらが先に心を開くこともポイントです。

心を開いた分だけ、相手も心を開いてくれます。こちらが先に心を開かないと、相手は心を開いてくれません。

売れる技術
雑談で「悩み(問題)」と「どうなったら嬉しいのか(理想の姿)」を引き出す

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河田 真誠(かわだ・しんせい)
経営コンサルタント
1976年生まれ。広島でデザイン会社を経営後、2010年より東京を中心に、企業へのコンサルティングや研修、小中高校大学での講演、起業家や士業のサポートなどをする。主な著書に『革新的な会社の質問力』(日経BP)、『人生、このままでいいの?』(CCCメディアハウス)、『悩みが武器になる働き方』(徳間書店)、『悩み方教室』(CCCメディアハウス)、『売らずに売れる技術』(ワン・パブリッシング)などがある。

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(経営コンサルタント 河田 真誠)

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