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1日1回、サラダや卵にかけて食べるだけ…血糖値の上昇を劇的に抑える「ちょい足し調味料」の名前

プレジデントオンライン / 2024年3月13日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gbh007

生活習慣病を防ぐためにはどうすればいいのか。北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟さんは「2017年以降の研究では、脂質やコレステロールを制限しても意味がないどころか、健康リスクを高めることがわかっている」という――。

※本稿は、山田悟『糖質疲労』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

■効果的なのは「糖質制限+カロリーと脂質は無制限」

太らないため、そして生活習慣病を予防するため、とにかく油(脂質)を目の敵にして、なるべく食べないようにしている人がいます。

しかし、それは古い情報にしばられているのです。「脂質をとりすぎると体に悪い」という概念は、1950~1970年代に提唱されました。脂質をたくさん摂取している国では心臓病が多かったという研究結果が報告されたからです。

余分な脂質は血液で全身をめぐり、脂質異常症になり、脂肪細胞に吸収されれば肥満になり、血管にこびりつけば動脈硬化症を引き起こし、最終的には心筋梗塞や脳卒中など致死的な病気の原因になる、確かに、漫画的で理解しやすい概念です。

しかし、脂質を減らし、しかもカロリー制限も加えた食べ方で、実際に体重減量に効果的かどうかを検証した3つのグループの無作為比較試験では、この食べ方(脂質制限+カロリー制限)の減量効果が一番弱く、それよりもカロリー制限かつ脂質積極摂取のほうがまし。

それよりもゆるやかな糖質制限食が一番体重減量効果を示しました(ほぼロカボと同様の糖質摂取:1日120g)。この糖質制限食のグループは、カロリー無制限、脂質無制限、たんぱく質無制限でした。

■「脂質をとりすぎると体に悪い」は20世紀の話

この研究こそ、私がロカボを提唱する契機となった論文なのですが、どうしてこのような研究結果になったのか、この研究が発表された2008年当時は誰も説明ができませんでした。

しかし、2013年頃までに、その機序を説明するいくつかの研究結果が報告されました。すなわち、脂質を控えるとカロリー消費が1日300kcalも低下してしまうことや[16]、たんぱく質や脂質を摂取すると満腹感を作るホルモンの数値が高く、長く分泌され、空腹感を感じさせるホルモンの数値が低く、長く抑制されることなどが報告されたのです。

油脂を控える食事法は、それまで50年近く、健康によいと信じられてきましたが、実は何の意味もない食事法だったということが2008年にはっきりとしたのです。

残念ながら、この概念を(こうした脂質制限食の意義を検証した無作為比較試験の結果を)きちんと把握できている医療従事者があまり多くありません。ですので、いまも、医療従事者(医師や管理栄養士)でありながら、脂質制限を推奨している人たちがいます。どうぞ20世紀の栄養学に惑わされないでください。

■脂質まで制限すると糖質疲労を起こしやすい

ちなみに、2006年に報告された、5万人規模で行われた脂質制限食の無作為比較試験の結果は、全体としては動脈硬化症の予防効果はありませんでした。その時にはあまり強調されていなかったのですが、その後2017年に明示された二次的解析結果では、実は、研究に登録された時点ですでに心臓病の既往のあった人では明確に再発率が上昇し、死亡率も上昇してしまっていたのです。

さらに、脂質制限食では元来糖尿病だった人(すなわち、糖質疲労の先にある人)で、さらに血糖値を上げてしまったことも報告されています(※1)。糖質疲労の方の疲労感を助長し、病気に進展させることを懸念させます。

2017年以降、脂質制限は、単に無意味なばかりではなく、人によっては危険性すらあるという食事法という立ち位置になっていることをご理解ください。

脂質の質を問題になさる方もいらっしゃるようです。そういう方の多くは、動物性脂肪=飽和脂肪酸が問題だと思っていらっしゃいます。しかし、2013年には動物性脂肪(飽和脂肪酸)を控えることでかえって死亡率を上昇させてしまうという論文がシドニーのグループから発表されました。

※1:Am J Clin Nutr 2011; 94(1): 75-85

■「卵は1日1個まで」を守る必要はない

こうした状況を受け、2014年6月、表紙に「Eat Butter(バターを食べろ)」と記された雑誌が発行されました。それは、世界200カ国、2000万人が読むと公表されている英文週刊ニュース誌『TIME』です。20世紀の脂質制限の概念は間違いだったという特集が組まれたのです。2016年にもほとんど同じような内容の論文がミネソタのグループから発表されています。

2014年のTIME誌
図版1(出所=『糖質疲労』)

ちなみに、「日本人は動物性脂質の摂取量が多いほど脳卒中の発症率は低い」という論文が出ています。観察研究のレベルですら、飽和脂肪酸を制限することを是とはできない状況なのです。日本人を対象に飽和脂肪酸を制限するべきだと主張する方は、どんな根拠でそんなことを言うのか、きっちりと科学的根拠を示す必要に迫られています。

先ほど、TIMEという雑誌の名前を出しましたが、このTIMEという雑誌は、1980年代に卵とバターを控えましょうという特集記事を作成しています。この頃は飽和脂肪酸(バター)に加えて、コレステロール(卵)摂取も制限すべきだとされていたのです。卵は1日1個までなどという言葉をお聞きになったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

1980年代のTIME誌
図版2(出所=『糖質疲労』)

しかし、現在の食事摂取基準では、こうした食品中のコレステロール量の上限の設定はなくなっています。食べるコレステロールを控えると、それを補うように肝臓がコレステロールを合成して血中に放出し、食べるコレステロール量が増えると、肝臓がコレステロール合成を休むからです。

■コレステロールを控えるのは無意味

もちろん、何らかの食べ方でコレステロールに若干の(10mg/dl程度)影響があることは報告されています(私が高コレステロール血症の患者さんに、くるみやナッツや大豆を積極的に摂取するようお勧めするのはそうしたデータがあるからです。そして、ロカボ指導によっても、やはり数mg/dlのコレステロール値の改善が生じることを論文で報告しています)。

ただ、いずれの方法であっても食事によるコレステロールへの介入で数年以上にわたって十分に高コレステロール血症を改善できたという無作為比較試験は存在せず、さらには、心臓病や脳卒中を予防できたという論文も存在しません。

要は短期的で表面的な効果しか確認されていないのです。しかも、高コレステロール血症の際に下げたいコレステロールのレベルは50mg/dl以上であり、実は、それは薬物療法で比較的簡単に達成できます。しかも、こうした薬物療法(スタチン剤と呼ばれる薬剤です)では、心臓病などの動脈硬化症の予防効果が多くの無作為比較試験で確認されています。

ちなみに、卵を普通に食べる群と卵の黄身を除外して食べる群を比較した無作為比較試験の結果では、両群の結果のほとんどに差異はなかったのですが、全卵を食べている群のほうが糖代謝が良かったと報告されています。繰り返しになりますが、食べるコレステロールを控えることは、血中コレステロールの低下や動脈硬化症の予防には無意味とお考えください。

■腹持ちをよくしたいなら米より「お肉とバター」

一方、お米を食べないと腹持ちが悪いと刷り込まれている方もいらっしゃるようです。しかし、科学的に腹持ちがよいとわかっているのはお肉やバターを食べることなのです。

脂質やたんぱく質をしっかり食べると、消化管ホルモンの「グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)」、「ペプチドYY(PYY)」などの分泌が高まり、満腹中枢が刺激され、「お腹いっぱいでもう食べられない!」となります。脂質摂取比率を高くしても、カロリーオーバーになって太るというのは極めて難しいことなのです。

また、たんぱく質と脂質は、空腹感をもたらすホルモンである「グレリン」の分泌を長く抑制するので、満腹感が長続きします。逆に糖質はグレリンを抑える作用が弱いので、お腹いっぱい食べても、小腹が空きやすいです。

ダイエット中、過食と余計な間食を防ぎたいなら、脂質をカットするより、しっかり食べたほうがいいわけです。

焼肉
写真=iStock.com/corp_aandd
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/corp_aandd

■血糖値を劇的に抑えたのはマヨネーズだった

さらに、糖質疲労(食後高血糖)を予防するという観点でも、脂質の摂取は重要です。

日本人を対象にした4種類の食事メニューで食後の血糖の変動を検討した研究では、白米ばかりを食べる300kcal台の食事が一番血糖値を上げ、同じ量の白米に豆腐と卵(たんぱく質)を加えた400kcal台の食事がその次に血糖値を上げ、その次がさらにマヨネーズ(脂質)を加えた500kcal台の食事で、一番血糖値が上がらなかったのが、さらにほうれん草など(食物繊維)を加えた600kcal台の食事でした。

中でも劇的に血糖値を上げにくくしたのがマヨネーズを加えたときです。この研究でその機序を解明するべく細かく検討したところ、油脂を摂取することでGIP(血糖依存性インスリン分泌刺激ペプチド)の分泌が増えていました。

先ほどのGLP-1とGIPを合わせてインクレチンホルモンと言います。インクレチンとは、腸から分泌されてインスリン分泌を高めるものという意味です。

■健康のカギを握る“肥満改善ホルモン”

しかし、これらのホルモンはインスリンを分泌させるのに、低血糖(インスリンの作用が過剰な際に生じる現象です)を起こしません。血糖依存性インスリン分泌というのは、血糖値が高いときだけインスリンを出させるということなのです。

山田悟『糖質疲労』(サンマーク出版)
山田悟『糖質疲労』(サンマーク出版)

しかも、インスリンを分泌させると肥満(脂肪細胞にカロリーが取り込まれるため)が懸念されるのですが、これらのホルモンを糖尿病患者さんのために注射製剤にしてみたところ、満腹感を高めて肥満治療にもなることがわかりました。

最近、糖尿病でもない方に、これらの注射製剤が(保険適応ではないので自費で)処方され、世界的に製剤が不足して糖尿病治療に使用できないということが社会的問題になりました。それくらいに肥満改善作用が強いのです。

たんぱく質を食べてGLP-1、脂質を食べてGIPを体から出させることは、糖質疲労(食後高血糖)を改善させるばかりでなく、体重の適正化(20歳の頃の体重に近づける)に資することなのです。

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山田 悟(やまだ・さとる)
北里研究所病院 糖尿病センター長
1970年生まれ。94年慶応義塾大学医学部卒業。2013年(一社)食・楽・健康協会を設立。ロカボ=ゆるやかな糖質制限を提唱し、企業に対して啓発活動を行うなど、日本人の健康増進のために日夜活動中。著書に『糖質制限の真実』『カロリー制限の大罪』(いずれも幻冬舎新書)などがある。

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(北里研究所病院 糖尿病センター長 山田 悟)

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