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「墓じまいをしたい」と言ったら、お寺から30万円を請求された…「お墓のトラブル」が起きる原因と残念な現状

プレジデントオンライン / 2024年3月19日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hachiware

お墓や葬儀におけるお金のトラブルを防ぐ方法はあるのか。国民生活センターによると、墓・葬儀サービスに関する相談は増加傾向にある。墓じまいの際にお寺から「離檀料」を請求された事例や、葬儀サービスで高額なプランを勧められるといった事例が届いているという。ライターの高橋ホイコさんが国民生活センターに取材した――。

■墓や葬儀関連で起こる“お金のトラブル”は近年増加している

日本の高齢者人口は増加を続けており、2025年には団塊の世代すべてが後期高齢者になります。65歳以上が総人口にしめる割合・高齢化率もおよそ3割と世界で最も高い水準になっています(内閣府「令和5年版高齢社会白書」)。

そういった時勢を反映してか、“終活”に対する関心は高まりを見せており、全国の消費生活センターに寄せられる「墓・葬儀関連サービス」に関する相談も増加傾向にあります(国民生活センター 各種相談の件数や傾向「墓・葬儀サービス」2023年9月1日更新)。どちらもお金がかかることなので、気になる人は多いことでしょう。

定年を迎えて、お墓をどうしようか考えはじめた人もいるのではないでしょうか。最近では、先祖のお墓を引っ越しする“改葬”が増えています(厚生労働省「衛生行政報告例」)。理由は「お墓を近くに移したい」「法事やお葬式以外では疎遠になっているお寺との付き合いをやめたい」などさまざまです。また「子どもに負担をかけたくない」などの理由から先祖のお墓を処分する“墓じまい”を希望する人もいます。

■「改葬」には改葬元の許諾が必要

ところが改葬は勝手にはできません。一般に、改葬元の承諾を受けたうえで、自治体へ申請する必要があります。また、墓石の撤去が必要なことが多く、石材店に依頼し更地にして返還することになります。そこで起きうるのが、改葬元である菩提(ぼだい)寺や石材店とのトラブルなのです。

一方、葬儀関連サービスでは、広告では安価に見えたのに実際には高額になってしまったとのトラブルが発生しています。2020年3月には、「必要なものが全てコミコミ」「家族葬 これっきり価格」などあたかも追加料金がないかのように見える広告表示が、事実とは異なっていたために行政処分を受けた事例もありました(消費者庁「株式会社よりそうに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」2020年3月27日)。

お墓や葬儀は供養をしたいとの気持ちからすることなので、お金で嫌な思いはしたくないものです。全国の消費生活センターにどんな相談が寄せられているのか、国民生活センターに取材をしました。事例を読みときつつ、対応方法を考えていきましょう。

※消費生活センターは、商品の購入やサービスの利用に関する契約トラブルの相談を受け付ける都道府県・市区町村の機関。国民生活センターは、これらの機関に寄せられた苦情相談情報を収集し、情報提供を行っています。

■「離檀料」には明確な基準がない

【事例1】菩提寺があとから文書で離檀料30万円を要求してきてトラブルに

最初に紹介するのは、墓じまいをしようとしたところ、菩提寺から高額な離檀料を請求されたという40歳代の男性からの相談です。

男性は家族が亡くなった際、「先祖の墓が自宅から遠いので、墓じまいをしたい」と住職に申し出ました。離檀料が必要だろうと思い聞いてみましたが、具体的な金額は言われませんでした。ところが、後日、お寺から離檀料30万円を要求する文書が届きました。高額で納得できないと、消費生活センターに相談がありました。(2023年8月相談受付)

本来は、お布施をお寺から要求することは有り得ないのですが、いろいろな事情があるのでしょう。檀家(だんか)をやめるときに寺へのお礼として慣習的に支払う、いわゆる離檀料を要求されたという相談は多くみられます。

支払いの義務はありませんが、改葬や墓じまいには菩提寺の許可が必要なので、こじれてしまうとやっかいです。離檀料には明確な基準がありません。金額に納得がいかない場合は、基本的にはお寺と話し合うことになります。

■「墓石の撤去」で石材店とトラブルに

【事例2】石材店から110万と聞いていた墓石の撤去工事。あとから125万円の請求が

改葬や墓じまいをする際、墓石の撤去が必要になることがほとんどです。お墓のお引っ越し・改葬をする場合でも、改葬先となる墓地が新しい墓石を建てることを条件にしていることが少なくないうえに、運搬する方が高くつくこともあるため、古い墓石は処分するケースが多数です。

墓地墓石と花
写真=iStock.com/taka4332
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

ここで起きうるのが石材店とのトラブルです。80歳代の女性からあった相談を紹介しましょう。

墓地が指定する業者が墓石の撤去をすることになっていました。事前の説明では110万円と聞いていましたが、「基礎が思ったよりも頑丈で人手が必要だったから」と工事が終わってから言われ、およそ125万円を請求されました。(2024年1月相談受付)

墓石の撤去には改葬元の許可が必要で、公営墓地以外では提携先の石材店があることが一般的です。不信感を持ったからといって別の事業者に依頼できないこともあります。事前に細かく見積もりを取るなど、きっちりとした確認を取ることを心がけたいものです。

■葬儀業には届け出や登録制度はない

【事例3】葬儀社の広告には「34万から」と書いてあったのに……

葬儀サービスで目立つ相談は「希望とは違う葬儀になってしまった」「想定より高額になった」といったものです。40歳代女性からの相談を見ていきましょう。

女性は家族が亡くなる少し前に、インターネットで業者を探しました。「34万円から」との表示を見て、やり取りを始めました。すると、業者から安いプランではオプションがつかないと言われ、高額なプランを勧められました。女性は急いでいたので、勧められた200万円のプランで契約しました。
葬儀自体は豪華なものではありました。しかし、終わってから冷静に考えると不信感が募りました。説明が強引な印象もあったので、消費生活センターに相談しました。(2023年12月相談受付)

聞くと驚くかもしれませんが、葬儀業には認可制度どころか、届け出や登録制度もありません。誰でも始めることができるので、中には電話一本で取次ぎ、斡旋を行っている葬儀ブローカーもいます。葬祭業に関わる事業者は4000~5000社とも言われています(第37回消費者契約法専門調査会「葬儀業界の現状」2017年4月28日)。広告を頼りに探す場合、この玉石混交の集まりから1社を選び抜かなくてはならない状況に追い込まれます。

■複数社に見積もりを取る余裕はなかった

しかも、葬儀社を選ぶ際には時間がないことがあります。筆者の経験では、夜10時に家族が病院で亡くなり、翌日の朝には遺体を引き取らなくてはいけませんでした。複数社に見積もりを取るなどという余裕はまったくありません。対面でしっかり説明を聞く時間もありません。電話口での説明だけで契約先を決めざるを得ませんでした。

となるとトラブルに遭わないためには、時間があるときに事業者選びをした方がいいということになります。事前相談窓口を設けている事業者もあるので、相談をしてみて、ていねいに対応してもらえるか確認してみるのも一つの方法です。とはいえ、元気なうちから行動する気は起きないという人もいるでしょう。

筆者も同様です。ですので知人の葬儀に参列したときに、いい葬儀だなと思ったら葬儀社の名前をメモしています。聞ける間柄であれば、落ち着いた頃合いを見計らって、喪主に料金や評判を聞いておくなどもしています。知り合いからの口コミ情報は、案外、役に立つものです。

喪服を着て数珠を持つ手を合わせる人
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■「全葬連」が自主基準やガイドラインを設けている

しかし、めどが立っていないうちに不幸が訪れることもあるでしょう。葬儀業には直接管轄する法制度はありませんが、経済産業省の認可を受けた唯一の葬祭業専門団体である全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)が、消費者利益の保護のために自主基準やガイドラインを設けています。

ここでは「見積書を交付する」「商品目録と価格表は必ず提示する」「パックやセットで提供する場合は構成内容および料金を明記する」といったことがルール化されています。ただし、ニッポン消費者新聞によると全国組織率は50%に満たない(※)ため、守らない業者があることは事実ですが、事業者選びの参考にはできるでしょう。

※ニッポン消費者新聞「安心で納得できる葬儀を 急がれる葬儀環境の整備 横行する誇大なネット広告 不当性目立つ勧誘行為 事業者届出制度の導入待ったなし 全葬連が働きかけ」2024年1月1日

同団体は「良い葬儀社、悪い葬儀社の見極め方」との動画も出しています。パンフレットや価格表を求めても「葬儀というのは特殊なものですから、そういったものはないのが業界の常識なんですよ」と横柄な物言いをするなど、トラブルになりやすい“悪い葬儀社”の特徴がわかりやすく説明されています。こういう業者との契約は避けたほうがいいでしょう。

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高橋 ホイコ(たかはし・ほいこ)
ライター
元国民生活センター職員。在職中は商品テスト、相談情報データベース(PIO-NET)、ホームページを通じた広報活動の業務に従事。現在はフリーライターとしてウェブメディアを中心に活動中。

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(ライター 高橋 ホイコ)

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