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こうすれば「年金ひとり暮らし」が一気に優雅になる…楽しく節約しながら脳イキイキの法則

プレジデントオンライン / 2024年4月25日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AaronAmat

老後の年金生活を充実して過ごすにはどうすればいいか。精神科医の保坂隆さんは「たいていの人は『老後の人生をエンジョイする資金』はそう潤沢ではない。だからこそ企業経営ではよく使う『選択と集中』を『年金生活』にも採り入れるといい。自分の好きなことにある程度のお金を使い、それで気持ちが満たされれば、ふだんは『粗衣粗食』でも精神的に貧しくなることはない」という――。

※本稿は、保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■この先は美しくて優雅な節約生活をめざしましょう

老後、それも「ひとり老後」の不安となると、お金のことを第一に挙げる人が少なくないでしょう。

実際、私のクリニックにやってくる方からは「先生、この先、いつお金が底をつくか、不安で不安で……」という声をよく聞きます。

そんな人に「いくらあれば、不安を感じないで済みますか?」と尋ねてみると、「……」と返ってくることがほとんどです。

要するに、不安に思う人というのは、自分の持っているお金の多い少ないにかかわらず不安なのです。

その一方で、「これだけで大丈夫なの?」と、こちらが心配になるような状況でも、それほど不安を感じない人もいます。

つまり、不安だと思うから不安になる。それが不安の正体だと私は考えています。

たしかに老後は、たいていの場合、収入が減ります。でも、これから先はもう、それほどお金にこだわらなくても好きなように生きていけるのではないでしょうか。

まして「ひとり老後」なら、いっそう自由度は高いでしょう。

「ひとり老後」のあなたにおすすめしたいのは「美しく優雅な節約」です。

節約というと、なんだかわびしい、みすぼらしいというイメージがつきまといがちですが、ここで私がいう「節約」はそうではありません。

ダイエットに成功すると心身ともに晴れやかになるように、暮らしにおいても、不必要なものをそぎ落とし、簡素で落ち着いたものに整えると、わびしいどころか精神的にはいちだんと深まった、清々(すがすが)しい日々を実現できるのです。

人生の後半期、それもひとりでめざす「節約生活」とは、世間の価値観にわずらわされず、自分らしいお金の使い方をすることだといえます。

そこで待っているのは、このうえなく深い充実感に包まれた暮らしです。それこそが真の「ゆとりある生活」だと言い換えてもいいでしょう。そこには一抹の不安もありません。

■やりくりは脳トレゲームとして面白がる

「やりくり」「節約」などと聞くと、それだけでイヤな気持ちや暗~い気持ちになってしまう人は少なくないかもしれません。

しかし、年金生活者のあなたはこの先も「ひとり」で生きていくのでしょうから、そうそう他の収入は見込めません。だとするなら、この先もずっとずっとイヤな想いを抱えたままで生きていかなければならないのでしょうか。

そうではありません。ここはひとつ発想の転換をしてみましょう。「やりくり」や「節約」を苦しいととらえるのではなく、「脳トレゲームとして楽しんでいる」と考えてみませんか。

「やりくり」をしながら生活していけば、必要以上の贅沢はしないでしょう。嗜好品のお酒などは減らせるかもしれません。

さらに、毎日のように生活費を計算していれば、脳が衰える暇もありませんから、いつまでも元気で長生きできる可能性もぐんと高まります。

「足るを知る」という言葉があります。中国古典で有名な老子が残した「自勝者強」(自ら勝つ者は強し)という言葉に由来し、「満足することを知っている者こそが、本当に豊かで幸せな人だ」という意味です。

つまり、年金が少ないから生活が苦しいと、不満を言っていても幸せにはなれません。じつは、医学的にも不満や怒りが強いと、コルチゾールというストレスホルモンが大量に分泌されることがわかっています。

コルチゾールには脳細胞を死滅させたり、免疫力を衰えさせる働きがあり、不満や怒りを感じれば感じるほど不健康になります。

現状を素直に受け入れて、「やりくり」や「節約」をゲーム感覚で楽しんで生活してほしいと思います。

■お金がなくても、やる気があれば学ぶ方法がある

ある日の昼休み、散歩をかねて病院の周りを少し歩いた後、近くのカフェに入りました。すると、シニアミセスとおぼしき3、4人が盛大なおしゃべりの花を咲かせていました。

カフェでおしゃべりする3人のシニア女性
写真=iStock.com/Masaru123
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masaru123

どうやら、話題は共通のミセス友だちについてのようです。その友だちは数年前からフラダンスを習っていて、近いうちに発表会があるらしいのです。ひょっとして、見にきてほしいと誘われているのでしょうか。

「いいわよねえ、彼女は。私なんか、お稽古事するお金なんてないわ」

そのうちのひとりがこう言うと、別のひとりも応じます。

「年金暮らしですもの。私だって、そんな余裕ないわよ」

でも、テーブルを見ると、飲み物以外にスイーツも並んでいます。本当に厳しい暮らしを強いられているのだったら、カフェでお茶というわけにはいかないでしょう。

たしかに、年金暮らしが経済的にけっこう厳しいというのは本音でしょう。

だからといって、お金が足りないからという理由で、自分のやりたいことをあきらめてしまうなんて、せっかくの人生経験が泣いてしまいます。

そんな毎日では、残りの人生があまりにももったいないと思いませんか。

「やる気さえあれば道はある」と信じ、やりたいことを実現する方向に動かしていく――。

そういう知恵を持ち合わせているのが、経験豊富なシニアではないでしょうか。

逆に言えば、ふんだんにお金をかけて学ぶことは誰にだってできます。

費用のかからない“学びの場”を探すこともひとつの方法なら、学ぶための資金をどうにかして捻出するために知恵を絞るのも、これまたひとつの方法でしょう。まずはお金をかけないで学ぶ方法を探してみるのはいかがでしょうか。

■年金暮らしも「選択と集中」で

年金暮らしになっても、毎日の食べるものや光熱費、健康保険料や介護保険料に「シルバー割引」はないので、これらを差し引くと、たいていの人は「老後の人生をエンジョイする資金」はそう潤沢ではないでしょう。

では、資金が潤沢でない場合はどうしたらいいのでしょうか。

企業経営では、よく「選択と集中」という言葉を使うそうです。

あれもこれもと手を広げるのではなく、特定の領域に目標を絞り込み、そこに資金や人材などを集中的に投入する経営戦略だとか。

この「選択と集中」という考え方は、私たちの「年金生活」にも採り入れるといいのではないでしょうか。

以前、中学時代の先輩と久しぶりに一杯やったとき、彼も同じようなことを話していました。

先輩は姉が一人いる二人きょうだい。お姉さんは伴侶を亡くし、先輩は少し前に熟年離婚をし、どちらも「ひとり老後」を送っています。二人とも平均的な年金暮らしを送っているそうですが、それでいて「暮らしぶりがそれぞれまったく違うんだよ」と笑います。

お姉さんは「食道楽」。年中、あちこちへ食べ歩きに行ったり、全国からおいしいものを取り寄せては、訪ねてくる子供や孫と一緒に食べているのだそうです。

■ふだんの暮らしは『粗衣粗食』主義

一方、ご本人は「芝居やオペラ公演」などには惜しげもなくお金を使っているといいます。先輩の話はそこで終わりではありませんでした。

「その代わり二人とも、ふだんの暮らしは『粗衣粗食』主義なんだよね。食べるもの、着るものは贅沢しない……」

粗衣粗食を言葉どおりに受け止めると、耐乏生活を送っているような印象になるかもしれません。しかし、老後に食べるものは簡素なくらいのほうがむしろ健康的ですし、改まった外出の機会が減るので、着るものにかけるお金も自然に少なくなってきます。

「粗衣粗食」は、老後生活の自然なあり方といえるかもしれません。

先輩きょうだいのこの例も「選択と集中」といえるでしょう。

老後は一般的に収入は減るものの、自分の好きなことにある程度のお金を使い、それで気持ちが満たされれば、ふだんは「粗衣粗食」でも精神的に貧しくなることはないでしょう。

「選択と集中」――。現役時代に培ったノウハウやものの考え方が、老後の暮らしに役立つこともあるようです。

貯金箱を持つシニア男性
写真=iStock.com/D-Keine
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/D-Keine

■買い物には毎日行く必要はない

コロナウイルスが蔓延中は、多くの人が“自粛”を強いられました。たしかにその期間はなにかと不自由でしたが、新しい発見もいくつかあったように思います。その代表的なものは、次のふたつではないでしょうか。

・会社には毎日出社しなくても、オンラインのやりとりで済んでしまうことも少なからずある

・買い物には毎日行かなくてもそれほどの不便はない

ここでは、後者について取り上げたいと思います。

コロナ禍以前は、とくに深く考えずに習慣だからと、毎日買い物に出かける人が少なからずいらっしゃったように思います。

ところがコロナ禍に襲われて、できる限り人との接触を避けるために買い物は控えるようになりました。

当初は、それでは不便でたまらないと思ったかもしれませんが、そうではありませんでした。最近は日持ちする商品も多く、週に1、2度買い物に行けば、これまでと変わらない日常生活を送ることができたのです。

つい余計なものまで買ってしまう機会が減ったというのも、とくに主婦やひとり暮らしの方にはありがたい発見でした。

家計のことを考えるのなら、この習慣は続けたほうがいいと思います。

■食料品も衣類も「量より質」へ

さらに付け加えるのなら、妥協した買い物はしないと決めることも大切です。「特売だったから」「オマケしてくれたから」などといった理由で必要以上に買っても、使いきれずに捨てることになって、かえって高くついてしまう……。とくにひとり暮らしのあなたは、そんな結果になりがちでしょう。

その代わり、これまでよりも質にこだわってみるのはいかがでしょう。食料品は言うまでもなく、衣類なども「量より質」への切り替えを身につけたいところです。

ある程度年齢を重ねたら、数にこだわるのではなく、自分が好きなもの、そしてできるだけ上質なものを選んで身に着けてみませんか。

いいものは軽くて温かく、着心地も満点で、しかも長持ちするので、結局は得になります。さらに言えば、「高級品を身に着けている私」という自己満足感も得ることができるでしょう。

では、無用なものを買い込まないためにはどうしたらいいのでしょうか。

保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)
保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)

衝動買いに走る最大の要因はストレスです。寂しさやうつうつとした気分のときは、ふだんなら手を出さない、とんでもない高いものを買ってしまったりしがちです。

ですから、気持ちがクサクサしたり、なんとなく面白くない気分だったりするときには買い物に出かけないようにすることです。

そんな日にもかかわらず、つい出かけてしまったときには、花やスイーツを買うというのはいかがでしょう。こうしたものなら、ちょっと張り込んだとして大きな金額にはなりません。

それでいて、寂しい心をやさしく癒してくれます。

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保坂 隆(ほさか・たかし)
精神科医
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際病院診療教育アドバイザー。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、2017年より現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術』『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』(大和書房)、『精神科医が教えるちょこっとずぼら老後のすすめ』(海竜社)など多数。

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(精神科医 保坂 隆)

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